【かつ丼】食欲もモリモリ!?アップアップガールズ(仮)森咲樹の“かつドル”への道【アイドルめし】

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2011年結成、鍛え抜かれた肉体と激しいライブパフォーマンスで「体育会アイドルグループ」との呼び声も高い7人組アイドルグループ、アップアップガールズ(仮)、通称「アプガ」。

2016年11月8日には初となる武道館単独公演「武道館大決戦(仮称)」を控え、その勢いはますます加速している。そんなアプガのなかでも一番の高身長を誇り、スタイル抜群なアイドル。それが森咲樹だ。

彼女の夢は、“かつドル”になること。

 

ちょっとなにを言っているのかわからない『メシ通』読者のために説明すると、森咲樹こと森ティー大のかつ丼好き。

常日頃からSNSではかつ丼に対する愛を語り、この取材前日のSNSにも「明日はかつ丼の仕事なんです!」と言っちゃうくらいなのだ。恐らく、「かつ丼の仕事」という単語を使うことは人生の中でそうそうないことだろう。

そんな森ティーのかつ丼の仕事を遂行すべく、我々は四谷・荒木町とへと向かった。

 

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今回訪れた「とんかつ鈴新」は創業60年、お店の看板にもなっているご主人が2代目となる老舗とんかつ店。ランチタイムともなればお店の外まで列をなすお店だ。数々のメディアにも登場し、とんかつ通の間には名の知れた名店でもある。

 

とんかつはもちろんのこと、かつ丼がとにかく美味い。揚げたてのかつをたまねぎと特製タレで煮て卵でとじた「煮かつ丼」、ごはんの上に揚げたてのかつをのせたサクサク感のたまらない「かけかつ丼」、特製ソースたっぷり、だけど大根おろしを添えてさっぱりといただける「そうすかつ重」。どうやらこの三種類のかつ丼のことを「鈴新」では「かつ丼三兄弟」と呼んでいるようだ。

 

そんな有名店に、チェーン店でしかかつ丼を味わったことのないという、森ティーを投入したらどんな化学反応が見られるのだろうか。楽しみである。

 

「かつドル」森ティー、かつ丼ファン垂涎の「かけカツ丼」を初体験!

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「肉!!」

思わずそう叫んでしまいたくなる存在感の、すごい豚肉が登場しました。

 

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「鈴新」の名物店主である鈴木洋一さん。まさに東京のとんかつ界の重鎮であります。熟練の手つきで茨城県産のヨークシャー肉を贅沢にスライスしていきます。

 

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「スーパーとかで売ってるラードは白いでしょ? あれは着色料を使ってるの。うちのラードはちょっと茶色いでしょ? これが自然な色なんですよ。サラダ油は使わないでラード100パーセント使用してるんです」

 

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「かつから湯気が立ってきたら揚がった証拠なんですよ」

 

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「湯気が見えます……!」と興奮気味に語る森ティー。こんがりきつね色に揚がったかつを包丁で切る音が心地良い。

 

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「ああもう、この音をケータイの着信音にしたい!」

その気持ち、よくわかります。では、さっそくいただきましょう。

 

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「どうしよう……緊張する……

 

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▲かけかつ丼(1,200円)

 

最初に食べていただいたのはこれ。このお店一番の好評メニューだという。

 

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それでは森さんが完全に素の表情でかつ丼を堪能する姿を動画でご覧ください!

 

 

「幸せです……。なんだかすごく神聖なモノを食べる気分……

口の中に入れた瞬間、サクサクっと小気味いい音が聞こえます。

 

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「うふふ……

無意識なんだろうか。食べている最中に自然と笑みがこぼれています。

「お肉だけじゃなくてたまねぎも味わいたい人なんですよ。このかつ丼はたまねぎも甘いです。カツ丼は人を幸せにしますね」

 

“かつ丼同盟”にファンを勧誘中!

──以前、SNS上で「かつ丼ツアーをやりたい!」って言ってましたよね。

 

森咲樹「ファンの人と一緒にいろんな地域に行ってそこのかつ丼が食べたいんです。新潟のタレかつ丼とか名古屋のみそかつ丼とかいいですよね。卵とじ丼も食べたいから23日の日程でやりたいです!」

 

──結構な倍率になりそうですね。

 

森咲樹「握手会とかでファンの人をかつ丼同盟に勧誘してるんですよ。意外と入ってくれる人が多いから結構倍率は高いかもしれないですね」

 

──森さんがかつ丼に関する発言が多いからファンの人も自然とかつ丼好きになってしまうのでは?

 

森咲樹「そうです!『森ちゃんのせいでかつ丼食べたくなっちゃったよ』とか言われたりしますもん。ファンの方の中でかつ丼が嫌いな人がいるんですけど、『森ちゃんのおかげでかつ丼が好きになったよ』って言ってもらえたんですよ~!」

 

──ここまでくると“かつドル”を超えて“かつ丼大使”ですね。

 

森咲樹「かつ丼は世界で1番好きなんです!」

 

そんな森さんの表情を見て、「よかったね。大好きなかつ丼の仕事がきて……」としみじみと語るマネージャーさんなのであった。

 

──ところであと2種類食べていただきますが、お腹の方は大丈夫ですか?

 

森咲樹「大丈夫です! コンディション整えてきたんで!

 

さすが体育会系アイドル! まるでアスリートのような発言です。

お米は新潟のコシヒカリを使用。炊き方はシーズンによって変えているようで、新米のときは水を少なめで炊いているのだとか。盛り方にもこだわりがあるらしく、ご飯の中に空気が入るようにフワッと盛るのがポイント。しかし、こだわりはこれだけではありません。

 

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▲そうすかつ重(1,200円)

 

鈴木洋一さん「これは特別なソースを使ってるんですよ。ソースかつ丼のソースにプラスアルファが入っていて、通常よりちょっと辛めなんです。我々は白い山脈って呼んでます」

 

おろしの白が下のソースに映えてとても綺麗です。

 

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「断片すご~い!! サクサクもしてるし、タレがおいしい。シンプルだからタレの味が感じられます。おろしのさっぱりさがあるからどんどん箸が進んじゃいますね!

 

森咲樹「豚汁にもなにか秘密があるように感じる!」

 

鈴木洋一さん「豚汁はね、自家製でいろんな具をいっぱい入れてるんですよ。いろんなエキスが出てくるから時間が経つほどおいしくなるんですよ」

 

森咲樹「鈴新さんのかつ丼はたまねぎもやわらかすぎず、シャキシャキとした歯ごたえがあって、お肉も肉厚だし、パーフェクトです!点数をつけるとしたら200万点!!」

 

いろんな食材が最上級な顔を見せてくれる

──「鈴新」のかつ丼を他のものに例えると何ですか?

 

森咲樹「アプガのライブみたいですね! それぞれ最上級のパフォーマンスを魅せるというのがアプガのライブなんですが、ここのお店のかつ丼もいろんな食材が最上級な顔を見せてくれるから似てるなって思います!」

 

──森さんもゲン担ぎの意味でかつ丼を食べたりしますか?

 

森咲樹「自分自身にを入れるときに食べますね。先日、Zeppツアーが終わったんですが、Zeppツアーの初日の前には気合を入れる意味でも、夜遅くに一人でかつ丼を食べに行きました。それ以外にも、気持ち的に落ち込んじゃってるときなんかにも食べたりしますね」

 

──夜遅くにかつ丼を食べることもあると言っていましたが、なぜそんなにスタイル抜群なんでしょうか?

 

森咲樹「やっぱり、ライブですね。アプガのライブはスポーツ並みに激しいですからね。アプガのライブがあるから好きなものを気にせずに食べられるのかもしれません」

 

──アプガの衣装って基本的に袖がないものが多いですよね。それはいつでもアッパーカットできるようにですか?

 

森咲樹「それもありますが、あとは腕の筋肉がきれいに見えるようにするっていう意味もありますね。生地量が少ない方が可動域も少なくていいからっていうのもあるのかな(笑)」

 

そう答える森ティーの丼を持ち上げる上腕二頭筋も、ハッとするほど美しいのであった。

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人生は一度きりだから食べることで後悔したくない

──森さんは食べることが好きですが、アプガのメンバーの中で一番の食いしん坊は?

 

森咲樹「私ですね(笑)。食い意地もすごく張ってるし、他のメンバーからも『森ティーってごはん食べるときは怖いよね』って言われたりもするんです。森ティーのテリトリーの中にあるものは取るなというのが暗黙の了解になりました」

 

──今回ですね、実は森さんに内緒で他のアプガメンバー全員からアンケートを取ってきました!

 

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「えぇぇぇぇぇ!! なにそれ!」

 

──そちらでも全員一致で森さんが「アプガでいちばんの食いしん坊」だという結果が出ています。

 

森咲樹「……やっぱり!!(笑)」

 

そんなアンケートの中から印象的な回答をご覧いただきましょう。

 

佐保明梨佐保明梨:森ティーとごはんに行くと、だいたいお店の人と仲良しでサービスをしてくれます。

 

古川小夏古川小夏:みんなでごはん食べようって日に、なぜか森だけごはんを食べてから来たことがありました。

 

新井愛瞳新井愛瞳:食べることになると、人が変わったかのように夢中になってしまうんです。

 

佐藤綾乃佐藤綾乃:ごはんを食べていると、森咲樹の視線を感じる。

 

──以上、メンバーからのご報告でした。これはもう森さん、前世で餓死していたレベルじゃないでしょうか(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20160816215021j:plain「お腹が空くと、人の話に集中できないんですよ(笑)。だから女子会の前とかでもお腹は少し満たしておかなくちゃいけないし……。それにしても私、そんなに食べている人のこと見つめてたんだ……。これホント、無意識でやってますね。それにしてもこのアンケート、おもしろすぎます。気をつけないと!」

 

──森さんのお寿司に手をつけてしまった佐保さんにいたっては、「トラウマになっている」とのことです……

 

「申し訳ない!(笑)」

 

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結論。森咲樹は、食い意地が異常なまでに張っている。

 

──そんな食い意地の張っている森さんですが、最後に武道館公演に向けて意気込みをお願いします!

「正直、無謀な挑戦だとは思っています。だけどアプガは、これまで無謀なこととか破天荒なことに挑戦してきて絶対に成功させてきたし、それがメンバー同士の絆を深めるきっかけにもなりました。武道館のライブがゴールだとは思っていなくて、次の切符を手にするための通過点だと思っているので、今度の武道館公演は絶対に成功させなくてはいけないと思っています」

 

──ファンの皆さんもすごく楽しみにしています。

「新曲の歌詞のなかで『成功がゴールじゃない』っていうところが大好きなんですよ。失敗を恐れないで、アプガらしく全身全霊で挑みたいと思っています! お祭り騒ぎな武道館公演にしたいと思っているので、普段騒ぐことが好きな人や毎日のお仕事でストレスがたまってるっていう人も、み~んな足を運んでほしいです。今日は来てよかったなって絶対に思わせる公演にします! 気合はモリモリです!

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最後には自身の名前をもじった渾身のアピールも飛び出した。かつ丼パワーで武道館へ! アプガファミリーもここ「鈴新」にライブ前に立ち寄ってみてはいかがだろうか。

 

お店情報

鈴新

住所:東京新宿区荒木町10-28 十番館ビル1F
電話:03-3341-0768

営業時間:11:3013:30、17:0020:30(LO 20:15
定休日:日曜日・祭日

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

【閉店】【作者インタビューあり】 燻製カレー店「くんかれ」と漫画『いぶり暮らし』の燻製カレーの魅力に迫る!

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メシ通レポーターの森が今、気になっている料理ナンバー1は、燻製料理!

そもそも燻製料理とは何かといいますと……。様々な食材を木材などを使って燻し、食材に風味を加える調理法のこと。身近な燻製の例としては、ベーコンやスモークサーモンがありますが、他にもバナナや豆腐など多種多様な食材を燻すことで、一味も二味も違った美味しさを引き出すことができるのだとか。

燻製が気になり出したきっかけは、燻製料理を楽しむ同棲カップルを描いた漫画『いぶり暮らし』。

「燻製って時間と手間がかかる」、「アウトドアで楽しむもの」、「渋い大人の味で、とっつきにくい」といった燻製に対するイメージを見事にくつがえしてくれました。

『いぶり暮らし』を読んでいくうちに、燻製にもいろいろな種類があり、簡単なものは家の鍋やカセットコンロを使って短時間で作れるということ、燻製は食材本来の旨味を引きだす調理法であることがわかり、俄然、燻製料理への興味がわいていったのです。

 

何より『いぶり暮らし』に登場する、同棲カップルの巡と頼子の燻製ライフがすごく楽しそうで憧れてしまいました。まったりと2人の休日を楽しみながら、今日燻製にして食べたいものを相談し、食材を燻している間、仲良くゲームをしながら待って、できあがった燻製を「おいしいね」と言いながら食べる……。くぅ~、なんて幸せな休日の過ごし方なんだ! 『いぶり暮らし』は美味しいものをじっくりと、時間をかけて作る喜びを思い出させてくれます。

 

グルメ漫画『いぶり暮らし』の魅力

 それでは、そんな『いぶり暮らし』の中身を少しだけ!

今回は燻製カレー特集ということで、第1巻の燻製を使ったカレーの話をご紹介します。

 

同棲カップルの巡と頼子は、2日目のカレーを美味しく食べる方法を考えていました。スーパーで安いひき肉を見つけ、ひき肉を燻して、カレーに入れて、キーマ風カレーにしよう! とひらめきます。

 

さっそく家に帰って、燻製を作り始めます。

スモークウッドを燃やして、鍋の底に置き、その上にひき肉と玉子をセット。

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少し隙間をあけた状態でフタをしたら、燻す準備完了!

たったこれだけで、玉子とひき肉の燻製はできるんですね。意外とお手軽です。

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30分くらいで、燻製が完成!
ほわっといい香りが漂います。
頼子によれば「炒めただけではでない香り」。

この燻製の香りはカレーの中に入れても消えず、あまりの良い香りに「食べる前から美味しい」と巡が名言を発します。

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カレーに燻製玉子と燻製ひき肉を投入!

キーマカレーといえば、やっぱり玉子が必須ですよね。

しかも燻製玉子っていうところが贅沢。2日目のカレーの中でいい感じにとろとろになったお野菜と燻製ひき肉が混ざって……。う~ん、見てるだけでたまらない!

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待ちに待った一口目。

辛くても、燻製の香りをしっかり感じることができるようです。

2人とも思わず目を閉じて、味をかみしめています。

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©大島千春/NSP 2014

 

「うめーっ!!」って思わず叫んじゃう美味しさ……。

2人とも幸せそうな笑顔までシンクロしています。

「“隠し味”じゃなくて、ちゃんと両方が活かされた美味さ!」、それ素敵です……。

たいていのものはカレーに入れると、カレーの風味に負けて、隠し味になってしまいますが、燻製はカレーの濃さに負けずに主張しつつ、マッチするんですね。

 

作者・大島千春先生に直撃!

なんと、『いぶり暮らし』を描いている作者・大島千春先生がインタビューに答えて下さったので、ご紹介します!

 

──燻製カレーの魅力を教えてください。

カレーのスパイスに薫香が混ざると、とても味わいが深くなります。

私は、ひき肉を燻してキーマカレーのようにして食べましたが、熱々を口に運ぶと鼻からふわっと燻製の香りが抜けます。おいしい!!!

 

──今まで作った中で、特にお気に入りの燻製料理を教えてください。

カレーや肉まん、ハンバーグ、餃子等、「ひき肉と燻製の組み合わせ」が大好きです。ソース系に混ぜるとふんわり薫るし、ハンバーグや肉まんは一口ごとにガツンと>香ります。

 

──カレーに入れるのにおすすめの燻製の具材を教えてください。

ひき肉しかやった事がないです。……が、肉のように油っ気があるものは上手くいきやすいです。

ルーも油で固めてあるので、ルーを燻して好きな食材でカレーを作るのもアリですね。

 

──『いぶり暮らし』を描く上で特に大切にしていることを教えてください。

絶対に、自分で実際に作ってみる事です。

実際に作ってみようと思ってくれた人の為に、どこが難しかったか・どうすればもっと簡単にできるかをよく考えます。

  

──これから燻製作りを始めたいと思っている人へのメッセージをお願いします。

ベーコンにするためのでっかいお肉やお刺身など、スモーカーに入れるには勇気の要るものがあります。

いきなり難しいものに挑戦して失敗してしまうより、
まずはソーセージや玉子など、簡単に短時間でできるもので試してみるのをオススメします。

  

大島先生、どうもありがとうございました!

毎回、燻製を自分で作って、読者に使える情報を提供しようとされているんですね。

真心をこめて作品を描かれていることがよくわかりました。

また、今回の燻製はどこがどう美味しいのか細かく魅力的に描いていらっしゃいますし、燻製の上手な作り方も本当に丁寧に描写されています。

読むだけでも楽しいし、実際に燻製を作る際にも役立つ情報が満載の読んで作って二度楽しい素敵なグルメ漫画です。

『いぶり暮らし』、ぜひ読んでみてください!

 

『いぶり暮らし』は「WEBコミックぜにょん」にて好評連載中!

WEBコミック ぜにょん

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『いぶり暮らし』(第①巻~④巻)発売中
大島千春
定価:本体580円+税
発売:徳間書店

 

手軽に燻製カレーを味わえる「くんかれ」へ

『いぶり暮らし』のように自分で燻製を作る暮らしにも憧れますが、とりあえず、一刻も早く燻製料理を味わってみたい! ということで、燻製料理のお店「くんかれ」に行ってきました。なんと、カレーのルーとカレーに乗せる具材の両方を燻製しているのだとか。

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というわけで、やってまいりました、「くんかれ 人形町本店」。人形町本店の最寄り駅は人形町駅と水天宮前駅。お店の近くには水天宮があり、周辺はオフィス街のようですが、雑貨屋さんやカフェもあったりして、おしゃれな雰囲気も漂っています。

 

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それにしても「くんかれ」のロゴの文字とおなべのイラストは、とってもかわいくて親しみが持てますね。

 

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扉を開けてビックリ! 内装がおとてもしゃれです。

赤い壁に黒いイスの組み合わせが粋です。ニューヨークスタイルの内装なのだとか。

これなら女性も入りやすいですね。

実際、女性のお一人様も結構いらっしゃるのだとか。

お客さんの男女比は男性:女性=6.5:3.5くらいなんだそう。

年齢は30~40代が多いのだとか。

ちょっと大人な男女が燻製を楽しむお店なのですね。

 

お店では「くんかれ」を運営する「株式会社プレミアムダイニングアンドパートナー」の代表取締役・宮島一人さんが取材を受けてくださいました。

 

まずは実食してから、お話をうかがおうということで、カレーの辛さを決めてオーダーすることに。

 

「あのぅ……。私、ちょっと辛いのが苦手でして……」

中辛までなら平気で食べられることが多いのですが、中辛がかなり辛いお店もあるので、初めてのカレー店ではとりあえず甘口を食べることにしています。

 

とはいえ、大人な味の燻製と甘口のカレーはミスマッチなのではと心配していたところ、「甘口の方がむしろ燻製の風味がよくわかっておすすめですよ」と宮島さん。

 

あまり辛口すぎると、燻製の味は辛さにまぎれて、わかりづらくなってしまうのだそう。

なるほど!

そもそも、こちらの燻製カレーは燻製の味わいを引き立てるために玉ねぎをたくさん入れて、甘めな味にしてあるんですって。ルーもこだわり抜いて作られているのですね。

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それでは、いよいよ実食。

一番好評の「燻製全部のせカレー (980円)」を甘口でオーダー。

なんだこれ! うますぎる~!

一口食べた瞬間、衝撃が走りました。

すごく深みがある味。

食欲をそそる香りも最高。

 

こんなカレー食べたことない。

というか確かにカレーなんだけど、普通のカレーとは全くの別物です。

私、久しぶりに食べ物で感動しました。

 

なんてったってトッピングだけでなく、ルーまで燻製にしているので、一口ごとに薫香が口の中に広がります。ああ、最高!

ルーはさらさらしていて、スープカレーに近い感じです。

 

トッピングは、燻製されたチキン、チーズ、玉子、ベーコン。

どれも食材の旨味が濃く引き出されています。

ほどよく溶けたチーズに、噛めばじゅわっとジューシーなベーコン、とろっとした半熟で濃厚な黄身の玉子、こんがり焼き目のついたチキン……どれも素晴らしい。

いろんな味が楽しめるトッピングとルーを混ぜて口に運ぶたびに至福。

最後まで飽きず、ペロリと完食してしまいました。

いや~美味しかった!

 

「くんかれ」にハマったお客さんの中には週一でお店に通う人もいるのだとか。

わかる! だって濃厚で、独特で癖になる味ですもん。

とにかく燻製カレーの魅力は絶対に食べてみなくちゃわからないですね。

食べたら、この味がドンぴしゃな人は絶対、「なんでもっと早くこの味に出会わなかったんだ」と後悔すると思います。

 

ところで、こんな魅力的な燻製カレーは一体どういう経緯で生まれたのでしょうか?

燻製カレーを発明したのは、居酒屋さんのマスターだった方で、時々燻製料理を提供していたところ、お客さんに「カレーって燻製できないの?」と聞かれて挑戦してみたのだそう。

すると、思いのほか美味しい燻製カレーができて、評判のメニューになっていったのだとか。

そして、燻製カレーを食べた宮島さんがその美味しさに衝撃を受けて、作り方を学び、さらに万人受けする方向に味を調整して、今の「くんかれ」ができあがったのだそうです。

 

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「くんかれ」では、燻製のおつまみと一緒にお酒も楽しめるんです。深い味わいの燻製とお酒の組み合わせは絶対にいけるはず!

ビール、ウィスキー、カクテル、ワインと幅広くお酒がそろっています。

特に注目すべきはワイン。

燻製料理と相性の良いワインを選んでそろえているのだとか。

どんなワインが燻製に合うのか宮島さんに聞いてみたところ、渋みがあって、濃いめの味のものが合うそうです。

燻製の味が濃いのでワインはあっさりめが合うのかと思ったけど、そうでもないのですね。カレーと燻製、濃い味同志の相性が良いようにワインも濃い味の方が燻製に負けず、いい感じのハーモニーを奏でるようです。

ワインとのマリアージュもぜひ体験してみたい!

 

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こちら、「燻製盛り合わせ (2人前 980円)」。

この他にも燻製オイルのアヒージョなど美味しそうな燻製のおつまみがたくさんあります。

今回、燻製の魅力のとりこになった私は全種類制覇したいと思いました。

 

最後に宮島さんに今後の展望について聞いてみました。

「お店を広げていきたいということと燻製のギフトボックスを作りたいということですね」

燻製のギフトボックス。それ、絶対いいですよ。

プレゼントや手土産として最高じゃないですか!

 

『いぶり暮らし』では家でまったり手軽にできる燻製カレー、「くんかれ」では ルーから燻した本格燻製カレーをご紹介しました。

二通りの燻製カレーの楽しみ方、どちらもぜひ試してみてください。いつもと一味違う至福のカレータイムが待ってますよ。

 

お店情報

【閉店】燻製カレー くんかれ 人形町本店

住所:東京都中央区日本橋人形町1-12-11 リガーレ日本橋人形町A棟1階
電話番号:03-3664-3411
営業時間:ランチ 11:00~15:00(LO 14:30)、ディナー 17:00~23:00(LO 22:30)ただし、土曜日・日曜日・祝日は~21:00(LO 20:30)
定休日:不定休
ウェブサイト:燻製カレー くんかれ
※くんかれ大久保店、BAR & dining decora 63 恵比寿でも燻製カレーが味わえます。

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:森佳奈子

森佳奈子

1984年生まれ。岡山県出身。甘いものを食べている時が最高に幸せ。新作アイスが発売される度、ついつい買ってしまう。

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江戸時代から続く駄菓子屋さん「上川口屋」で子ども時代にタイムスリップ!

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東京には江戸時代から続く駄菓子屋さんがあるらしい……という情報をキャッチしたメシ通レポーターの森 佳奈子です。

 

明治や大正でも古い感じがするのに、まさかの江戸時代!? そもそも江戸時代から駄菓子ってあったの? これはぜひ、この目で確かめたい、ということで行って参りました鬼子母神へ!

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……え?

 

いやいや、行先を間違えてはいませんよ! なんとその駄菓子屋さんは鬼子母人堂の境内にあるんです!

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境内に入ってすぐに樹齢約700年と言われる、大いちょうの木に目を奪われます。方々に勢いよく伸びた枝からは豊かに葉が生い茂っています。これは紅葉の時期は格別だろうなあ……。

 

この大いちょうだけではなく、境内にはたくさんの木々が植えられ、木々の間を抜ける風が涼しくて心地よいです。なんだかほっと一息つける空間なんです。

 

この日は梅雨入り前だというのに、夏のように暑かったのですが、境内は木陰が涼しくて、ちょっとしたオアシスのようになっていました。

 

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そして大いちょうのすぐ隣には……なんとも味わいのある建物が! こちらが今回ご紹介する「上川口屋」。 ここだけ、まるで時が止まったかのような……ノスタルジックな佇まいに感動。

 

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店主の内山雅代さんによると、なんと今から実に235年前から「上川口屋」はここでお店を開いていたとのこと。看板にも堂々と「創業1781年」と記載されています。1781年というと、フランス革命や天明の大飢饉が起きる少し前のころだそうです。

 

す、すごい……フランス革命なんて、はるか昔の話という感じですが、そのころからここでお店を開かれていたのですね!

 

「上川口屋」が江戸時代から続いていることを示すものもちゃんとまだ残っています。当時、大名もこちらのお店で買い物をすることがあったそうで、お店は大名に失礼がないように接客できる構造になっているのです。

 

例えば、屋根の下の軒の手前に天井の部分があるんですが、これは、雨が降ったときに大名が濡れずに買い物ができるようにとの配慮。

 

工夫はこれだけにとどまりません。

 

商品を並べる棚がとても低い位置に設置されているのも、決して大名より頭を高くすることなく、棚ごしにお会計などのやりとりができるように作られているのです。

 

このお店は身分に差があったころの歴史を感じられる現役の文化財なんですね。

 

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さて、お店の中をじっくり見まわしてみると……。

 

「あ、昔好きだった駄菓子だ! 懐かしい~」「なにこれ、初めて見た! おいしそう~」とテンションが急上昇!

 

子どもの時、駄菓子屋さんで宝探しのようなワクワクを感じていたことを思い出します。言わずと知れたベビースターラーメン、チョコボール、ミルキー、たべっ子どうぶつ、マーブルチョコ……定番のふ菓子にミルクせんべいもありますよ!

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たこせんべい、えびせんべい、するめなどおつまみにもなる駄菓子も豊富に揃っています。

 

ビンにたっぷり詰められた色とりどりの駄菓子はビジュアル的にもかわいらしく、童心をくすぐられます。

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洗濯バサミに吊り下げられたジャイアントカプリコとわたパチ……なかなか斬新な眺めです。

 

洗濯バサミも、このような用途に使われるとは夢にも思っていなかったことでしょう。

それにしても、妙にしっくりときています。カプリコの上のきゅっとなっている部分は洗濯バサミで挟みやすくするための仕様なのではと錯覚をおこしそうなほど……。

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お米のお菓子、ぽん菓子をカラフルな袋に詰めた「人参」。

 

これを見るまで、すっかり忘れていたけど、子どものころ、よくぽん菓子を食べてました~。あれ美味しいんですよね~。また食べたくなってきました!

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きなこもちは爪楊枝にささって、すぐに食べられる状態で売られているのがうれしい。

 

ちなみに、このお店の商品には一切値札がついていません。そういうところも昔ながらのお店という感じです。でも、駄菓子だから大人買いしても安心! 値札を見ずに買い物をして、なんちゃってセレブ気分を味わえちゃいます。

 

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スーパーBIGチョコにくるくるぼーゼリー、名優歌舞伎せんべい、蒲焼さん太郎……。

甘党の人もそうでない人も満足できる品揃え。

 

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駄菓子屋さんの定番、ラムネもあります。かなり好評のようですね。暑い日にぐいっとやるラムネは最高ですからね~。

 

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こちらはお店の名物猫、石松くんのポストカード。

 

石松くんはずっと「上川口屋」で店番をしていたのですが、2016年1月に亡くなってしまったそうです。17歳(人間でいうと、90代くらい)まで長生きしたのだとか。お客さんの中には「あの猫、どうしましたか?」と質問される方もいて、みんなに愛されていたことがうかがえます。

 

私も石松くんに会いたかったなぁ~。

 

「上川口屋」の魅力はレトロな雰囲気と豊富な駄菓子だけではありません。 店主の雅代さんもとっても魅力的なんです。「上川口屋」十三代目店主の雅代さんはハキハキしているけれど、やわらかい雰囲気の方です。突然訪問した私をこころよく受け入れてくださった上に、たくさんの楽しいお話をしてくださいました。

 

「音楽の話をすると止まらなくなっちゃう」というくらい、音楽が大好きな雅代さん。余暇にはよくピアノを弾かれるそうで、お気に入りはバッハの「平均律クラヴィーア」。なんと合唱で「第九」を歌ったこともあるのだとか。近くにある東京音楽大学で行われるコンサートにもよく行っていたのだそう。

 

「こういう商売をしていると、おかげで、いろいろなことに詳しくなれるんですよ」とおっしゃいます。いろいろなお客さんと会話が弾むから、知識の引き出しも自然と増えるのでしょう。駄菓子屋さんの仕事も余暇も心から楽しんでいる雅代さんは、イキイキとしていて、話していると元気がもらえる感じです。

 

私もこんな風に歳を重ねられるといいなぁ……と憧れてしまいました。

 

雅代さんに昔の「上川口屋」の写真を見せていただきました。 

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真ん中が雅代さんのお母さん、向かって右が御祖母さん、そして向かって左が当時14歳の雅代さんです。

 

現在、75歳の雅代さんは10歳のころから「上川口屋」でお手伝いをしてきたのだそうです。

 

なんと駄菓子屋歴65年! こんな昔の写真なのに、お店の様子は今とほとんど変わっていないのも驚きです。

 

大きな違いは千歳飴やゆず飴の大きな看板があること。実は「上川口屋」はもともとオリジナルの飴を製造しており、その飴が大評判だったのだとか。

 

「上品な甘さでほんのりゆずの風味が効いたすごく美味しい飴でしたよ」と話す雅代さんのうっとりした表情から、本当に美味しかったことがうかがえます。今は残念ながら、製造していないとのこと。食べてみたかったな~。

 

「お客さんはやっぱり子どもが多いですか?」と聞いたところ、「少なくなりましたね~」と残念そうな雅代さん。駄菓子屋さんの主役といえば、やっぱり子どもですが、最近は子どもがあまり駄菓子を買いにこないのだそうです。少子化の影響に加え、今は便利な時代で、コンビニでもスーパーでも手軽に駄菓子を買えるからです。

 

しかし、「上川口屋」では他では味わえない体験ができると思います。たくさんの駄菓子を実際に手にとって、友だちや店主と談笑しながら、じっくりとお気に入りを選ぶ楽しい時間……。こんな温もりの感じられる買い物体験がここではできます。わざわざ足を運ぶ価値は十分にあると思いますよ。

 

しかもこの「上川口屋」、池袋駅から徒歩で約15分くらいと結構都心にあるんです。昭和を感じるいやし空間が身近なところに! これはもう行くしかないですね。

 

かつて子どもだった皆さん、童心を思い出しに「上川口屋」を訪れてみませんか? お子さんがいらっしゃる方はぜひ、お子さんを連れていってあげてください! 昭和な空間と優しい店主との出会い……。きっと良い思い出になると思いますよ。

 

本当に久しぶりに駄菓子を満喫しました~。駄菓子の大人買いって楽しいですね!

懐かしの駄菓子の味が恋しくなったら、「上川口屋」をのぞいてみてはいかがですか?

 

お店情報:

川口

住所:東京都豊島区雑司が谷3−15−20 鬼子母神境内
営業時間:10:00~17:00
定休日:雨、雪、台風などの日

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:森佳奈子

森佳奈子

1984年生まれ。岡山県出身。甘いものを食べている時が最高に幸せ。新作アイスが発売される度、ついつい買ってしまう。

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業界屈指のグルマン放送作家・すずきB氏に、グルメ番組に関する「素朴なギモン」をぶつけてみた

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動物や子ども同様、テレビで最も視聴者を引きつけると言われるものが“グルメ”。画面に映る誰かが料理を作ったり、お店の料理に舌鼓を打つ姿は、もはや見なれた景色だと言ってもいいくらい。そう、もはや「グルメはテレビのお約束」なのです。

 

そんな中、数多くのグルメ系番組の企画・構成に携わっており「業界屈指のグルメな放送作家」とも呼び声が高い人物がいるのをご存知でしょうか?

 

それがこちらの「すずきB」さんです!

 

話す人:すずきB

すずきB

1970年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中、雑誌『HotDogPRESS』(講談社)のライターをするかたわら『さんまのナンでもダービー』で放送作家デビュー。その後『学校へ行こう』など多くのバラエティ番組を担当し、2004 年『魂のワンスプーン』を企画。『業界人がススめる魂のレストラン』の出版を機に『龍虎飯店』『嗚呼! 花の料理人』など、食にまつわる番組を次々と企画。『元祖でぶや』『新どっちの料理のショー』『ウチゴハン』等にも参加。2016年7月現在『秘密のケンミンSHOW』『ぷっすま』『ヒルナンデス』等を担当する他、数多くの料理・食にまつわるプロジェクトや執筆活動も行なっている。オフィシャルウェブサイトはこちら

 

そんなすずきBさんお気に入りのお店にて、グルメ系番組に関する「素朴なギモン」をぶつけてみました!

 

美食家もうなる! 恵比寿横丁「浜椿」

待ち合わせに向かった場所は意外にも、ほどよいカジュアルさが若者にもウケている恵比寿横町。にぎわうサラリーマンやOLたちの中にすずきBさんの姿が。

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訪れたのは、横丁内にある中華料理店「浜椿」。

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──恵比寿横丁にもいらっしゃるんですね(驚)。てっきり西麻布や目黒の隠れ家的なお店かと……。

 

恵比寿横丁ってよく「そこまでグルメな場所ではない」と言われがちなんですが、この「浜椿」ではかつて『料理の鉄人』にも出演していた方が亭主を務めており、本格的な中華の味が楽しめます。実はここの奥の席が穴場でして……。横丁の中でもゆっくり落ち着いて料理を食べることが出来ますよ。

 

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▲「まずはぜひこれを!」ということで、すずきBさんおすすめの「レモンサワー (600円)」を注文。レモンシャーベットが中に入っており、溶けても味が薄くならないのだとか

 

──放送作家といいますと“バラエティ番組”のイメージがありますが、なぜこれほどまでに“グルメ番組”を?

 

もともとバラエティ番組を担当していたのですが、20代のある時に、先輩作家のおちまさとさんに「お前が“これだけは”誰にも負けないってものは何だ?」「これからは何か得意ジャンルを作っておいた方が良いぞ!」とアドバイスをいただきまして。そこで、自分の場合は何だろう? と考えた際に「食べ歩きをするの好きだから、グルメに関する知識ならそう簡単に負けない」という結論に至りました。

 

──そこから、徐々にグルメ番組をやるように?

 

そうですね。まだブログがなかった時代にホームページで食日記をつけたり、バラエティ番組の会議でも積極的にグルメ系企画を提案するようになりました。そうしているうちに、自分が企画した『魂のワンスプーン』(2004年〜)という番組が始まったこともあり、徐々に「すずきはグルメ番組の作家」というイメージを持たれるようになっていった気がしますね。

 

──ご自身の担当番組でもかなりの飲食店や料理人をご紹介されていますが、そうしたお店の情報は、どのように入手・調査されているのでしょう。

 

若手のころに担当した番組『学校へ行こう!』の演出だった合田さんという方が僕の食の師匠でして、当時は色々なお店に連れて行っていただいたり、教えてもらった美味しいお店のリストを作って自らの足で通ったりしていました。もともと自分が好きなことだったので、番組の為に調査するというよりは、楽しく食べ歩きをしていくうちに自ずと色々なお店に詳しくなっていったと言った方が良いかもしれませんね。今では仕事の縁で色々な食通の方とも交流を持たせていただいていることもあり、SNSを開くだけでも「◯◯のお店に行った!」なんて投稿でタイムラインが埋まっていて、ちょっとしたグルメ雑誌代わりに使っていますよ(笑)。

 

──もはや、生活するだけでグルメ情報が舞い込んでくる、と。

 

大げさにいうとそう言えるかもしれません。そこで気になったお店にも、やはり仕事に関係なく足を運んでしまいますね。おかげで平日は外食ばかりの上、土日も家族と外食に行ったりしているせいで、自宅では自分用の茶碗はいつの間にかどこかに仕舞われてしまっているようで……。先日たまたま自宅でご飯を食べる際に、自分の茶碗が探し出せなくて、息子の小さい茶碗を借りて食べるハメになりました(笑)。

 

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▲「ピータンとトマト冷製 (700円)」。ゴマ油たっぷりの玉ねぎのすりおろしが余計に箸を進ませます

 

「本当にグルメかどうか」は見て分かる

──たくさんのグルメ仲間がいらっしゃるようですが「この人はグルメだなぁ!」と思う著名人は?

 

やはりアンジャッシュの渡部さんなどはグルメだなと思いますね。食通や料理人との交友関係が広いですし、番組の食レポを見ていても、料理の良いところを見つけるのが上手い。それを伝える語彙のセンスも卓越しているなと感心してしまいます。それと、世間ではグルメのイメージはまだないんですが……フェンシング日本代表の太田雄貴選手はかなりグルメだと思います。

 

──意外な一面ですね!

 

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▲グツグツと煮えるアンのとろみと、サクサクな感のあるオコゲとのコンビネーションがたまらない「海鮮おこげ (700円)」。芳ばしい香りも食欲をそそります

 

──逆に、プロの目からいろんな食レポの場面を見て「この人って本当はグルメじゃないんだよなぁ」と思う芸能人もいたりして。

 

意地悪な質問ですね(笑)。例えば番組の食レポを見ていて、食べ物の「香り」を「におい」と表現する方には、あまり美食家な印象を持てないかもしれませんね。「本当にグルメな人はワインの楽しみ方にも詳しい」という自負がありまして、そういう方ってワインを必ず「香り」という言葉で表現するんですよ。間違っても「におい」とは言わない。

 

──なんとなく、おっしゃることは分かります。

 

あとは、たとえば上質な肉を食べたときのリアクション。これはあくまで個人的な見解ですけど、肉には「噛みごたえ」という美味しさの要素もあるんですが、なんでもかんでも「柔らかい」「とろける」の一点ばりでほめる人にはあまりグルメでない印象を持ってしまいますね。

 

──食レポしてて、つい言いがちになっちゃう、おきまりのフレーズってありますよね。

 

麺類ですと、途中で噛み砕いて食べる方にはあまりグルメでない印象を持ってしまいますね。反対に一気にすすりながら上手に食べる方は、その都度一口に対する分量をちゃんと計算していて、常に量や味を考えながら料理を楽しめているんだなと思います。

 

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▲麵を食べる際の動きを実演中のすずきBさん

 

──美味しそうに食べているシーンを見せるのにも技術が要るんですね。

 

これ業界内では有名なんですが、芸人であり、グルメリポーターとしても昔から活躍されている某タレントさんが、何でも食べそうに見えて実は長ネギが大の苦手なんです。だから、もし食レポで長ネギが入った料理が出てきたら、視聴者には分からないようにこっそり箸で器の奥側に隠すって言ってましたね。長年の食レポ仕事で得た、立派なテクニックですよね。

 

街歩き系グルメ番組はガチでなく台本?

──最近のテレビを見ていて思うのですが、なぜ芸能人が街に出ていろんなお店を食べ歩く番組が多いのでしょう。

 

実はスタジオでの収録って、セットを組んだりするのに想像以上にお金(美術費など)がかかるんですよ。それこそシェフが料理をスタジオで作るとなると、キッチンや火気の設備も整えなければなりませんし。近年、街歩き系番組が多いのは、その影響も少なからずあると思います。

 

──街で「偶然すごく美味しいお店入っちゃた!」みたいな流れ、 あれも今はやっぱり台本通りなんですかね……?

 

うーん、まぁ番組によって多少事情は違ってくると思いますけど、今の街歩き系番組は基本的にガチンコですよ。意外かもしれませんが、むしろ昔の方がきっちりと台本を決めていたと思います。今の視聴者がそういった作り込みがあからさまに分かる番組を嫌う傾向もありますよね。台本ですべて段取りを決めてしまうと、どうしても臨場感とか緊張感のなさが画面から伝わってしまうので。例えばある番組での「アポなし訪問企画」などでは、事前にある程度コースとかお店の候補はこちらで想定しますが、実際にお店を決めたりアポを取る内容は台本に書かれていません。だから、本当にアポが取れず、交渉しているシーンすら放送させてもらえないなんてことも多々あります。やはり取材NGのお店も結構ありますからね。

 

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▲パリッとしていて香ばしい「横丁餃子 (800円)」。餃子王国・静岡県出身のすずきBさんも、ここの餃子は大好物なのだとか

 

──ご自身が放送作家としてグルメ番組に携わる上で、心がけていることは?

 

われわれ放送作家の仕事のひとつに、ナレーターが読む「ナレーション原稿」を書く作業があるんですが、その際の言葉のチョイスには気をつけています。文字で見せて分かる表現だからといって、声だけで聞かせて伝わるとは限らない。たとえば「燻香」(くんこう)とか「燻味」(くんみ)という言葉って、字面で見るとなんとなく分かるけど、耳で聞くといまいち分からなかったりするじゃないですか。

 

──なるほどー!

 

それと「絶品!」「激ウマ!」といった、ありきたりな言葉ではなく、もっと具体的に美味しさが伝わる言葉の表現を常に考えていますね。

 

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▲「黄ニラ炒め (700円)」。中華ならではの一品

 

今後のグルメ番組はどう進化していく?

──グルメ系番組に関していう限り、かつては「スタジオでの料理人対決もの」が話題になり、最近は「街歩き・食べ歩きもの」が流行っていますよね。今後は、どのようなトレンドになると思いますか?

 

僕は、どの料理でも種類が細分化され、マニアックな情報を紹介する流れがきていると見ています。

 

──といいますと?

 

ラーメンなどではすでに「つけ麺」「家系」「鶏そば」など、たくさんのジャンルに分かれていますよね。それが例えばチャーハンでも「パラパラ系」「シットリ系」「ふわパラ系」と、当たり前のようにジャンルが細分化されていき、それだけに特化して詳しいタレントさんが人気者になったりするのではないかと思うんです。今こうして飲んでいるレモンサワーだって、レモンサワーだけにに異常に詳しいタレントさんや評論家がいたりしても、面白いですね。

 

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──今後、注目している食べ物はありますか?

 

今は「ポテトサラダ」に注目していますね。あと「鶏の丸揚げ」なども、最近食べ歩いていますよ。

 

──ありがとうございました!

 

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ちなみに、すずきBさんの知人の中には、若かりし頃にご自身の担当番組への出演を夢見て料理人になった方もいるのだとか。実は、自分もそのような過去の伝説の番組を学生時代に拝見し、いま同じ放送作家になった身でございます。

近い将来に同じ番組でご一緒し、いつしか美味しいお店に連れて行っていただけるよう精進致します!

 

お店情報

浜椿

住所:東京渋谷恵比寿1-7-2 恵比寿横丁内
電話番号:03-3447-5923
営業時間:17:00〜翌4:00
定休日:不定休

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:石田ケント

石田ケント

1988年生の放送作家。法政大学卒業後、独学・フリーで活動開始。考案した番組に日本テレビ「言わせろ!リアクションワード」「超年の差バトル! 神童 VS 老神」「衝動に負けましたSP」「なれそめザペアレンツ」など。日本テレビやTOKYO MXの番組の企画・構成、コント脚本を中心に活動中。担当レギュラー番組等はTwitterをご覧下さい。

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「Seasar2」開発者・比嘉康雄氏が求めるエンジニアの理想的なワークスタイル・食・結婚とは?

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東京都港区芝浦にあるKITCHEN Buona Donna

このお店をよく訪れるのが、オープンソースのJavaアプリケーションサーバー「Seasar2」の開発者の比嘉康雄さんだ。

技術界隈ということで共通の知り合いはちょこちょこいるものの、筆者は比嘉さんのことをよく知らなかった。彼はいったいどんな人で、なぜこの業界にいるのか。お酒を交わしながら話を聞いた。(レポーター・太田智美)

 

比嘉康雄

話す人:比嘉康雄

株式会社 電通国際情報サービス (ISID) 所属。子どもの頃からシャーロックに憧れている。問題を探し出し、解決するのが大好き。現在は「人はどんなときに踊りたくなるのか」という問題を解くために、DJ活動に取り組んでいる。

 

必死で取る1番より、遊んで2番がいい

「努力はカッコ悪い。努力は悪だ」──大学生になるまでずっとそう思っていたと比嘉さんは言う。彼は小学校高学年から常に「努力せずに達成できる方法」を考えてきたそうだ。

 

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例えば、こんなエピソードがある。大学受験といえば、たいていの場合、塾に通ったりおすすめの参考書を買ったりして勉強する。しかし彼は違った。まずやったのは「いかに勉強せずに大学受験に合格するか」の研究。そのために毎日1時間ほど、本の帯などに書いてあるたくさんの合格体験談を本屋で立ち読みしたという。

 

大学受験で一番効率が良いのは「基礎問題を解くこと」と「行きたい大学の過去問をひたすら繰り返し解くこと」。特に基礎問題は、中級くらいまでの問題がすべて解けるようにしておくことが重要。

 

これが、彼の導き出した研究結果だ。当たり前といえば当たり前。私が注目したのは、彼の行動そのものだった。

 

彼はトップクラスに属することにはこだわるものの、地道に努力するのが得意ではない。初めは一番いい成績を取ろうとして効率よく勉強するが、すぐトップクラスの成績を取り、飽きてしまうという。「朝から晩までコツコツ勉強する人には追い抜かれていく」と、比嘉さんは赤裸々に話す。

 

努力して成績が良いのは当たり前。1番はもちろんうれしいけど、必死になって1番良い成績を取るより、遊んで2番の方がいい。(比嘉さん)

 

彼がこの業界に入ったのは、自分や他人を「ラク」にしたかったから。企業において、どれだけシステム化をしているかが人をラクにするキーになると考え、当初志望していた経営コンサルタントから技術者へ舵を切った。

 

ワインの味と香りをすべて言語化しデータにまとめる

そんな彼が、「まじめにやること」に一瞬目覚めた出来事があった。大学1年生の頃に通っていたワインスクールでのことだ。それまでブラインドテイスティング(どんなワインかわからない状態でテイスティングすること)は味覚、嗅覚の優れた人ができるものだと比嘉さんは思い込んでいたが、科学的に能力を伸ばす方法を発見した。それはすべての感覚を言語化すること。彼は何冊ものノートに味覚を書きとめた。

 

どのような香りがして、どんな味がするのか、その香りや味は土地に由来するものなのか、それともぶどうの品種によるものなのか。異なるワインの中にもし共通点が見つかれば、メモに加えた。そして分析が終わるとノートは捨てた。

 

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彼がワインスクールに通い始めたのは、有名グルメ漫画に影響を受けてのことだった。主人公が牡蠣とシャブリ・ワインを合わせたところ「牡蠣に合うのは日本酒だ。白ワインと合わせると苦味が出る」と反論する人がいた。そのころ「牡蠣には白ワイン」とい

うのが世間の常識だったが、この漫画を見て比嘉さんは自分の舌で確かめたくなったと言う。

あれこれ試してみて分かったのは、「合う、合わないは牡蠣やワインの種類、それに食べ方次第」だということ。例えば、「牡蠣にレモンを絞れば白ワインと合う」といった具合に記録を付けていった。同様に、映画のワンシーンに出てきたいちごにシャンパンを合わせるという組み合わせも実践したそうだ。

しかし、

 

辛口のシャンパンにいちごは合わない。

 

それが彼の結論だった。

このように、すべてを自分の舌で確認し、ワインだけでなく、食べ物と飲み物の組み合わせもすべてノートに記録していった。

 

しかし人間の味覚とは相対的であいまいなものだと比嘉さんは言う。

 

ワインはシチュエーションによってかなり左右され、一緒にいた人やそのときの会話などが味覚の要素として加わってくるんです。そのため、僕は基本的に、自分の味覚を記録し、それを世間一般で言われてる評価と照らし合わせていくプロセスも大事にしています。

 

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比嘉さんが最近飲んでいるのが、コンビニエンスストアで見つけた「KWV(南アフリカブドウ栽培協同組合)」の800円ほどの赤ワイン。

 

特に固有の香りがしない、しいていうなら赤紫色の花びらを垂らしたような香りで、味はおだやか。和食やスープ、パテのような料理に合うワインですね。

 

ちなみに、安いワインは固有の香りがしないのだとか……。

 

人生で食べたラーメンは10食

ここで彼のライフスタイル、とりわけ食生活について聞いてみた。

比嘉さんは「太ること」について、強い拒否感を示す。

 

個人的な意見ですが、太っているというのは健康的でなく、ガタがきやすい。太っているのはだめだと思うし、自分自身絶対に太りたくはない、と考えています。

 

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▲本日の前菜5種盛り合わせ(1,480円)

 

エンジニアの大好物といえば深夜のラーメン。しかし、そんなラーメンさえも比嘉さんは人生で10食ほどしか食べたことがないという。

 

僕自身ラーメンが好きなのか嫌いなのか、実際にどうなのかは分からない。確実に言えることは、自分自身をマインドコントロールしているということ。ラーメンは太る食べ物だから嫌いだし、同様に太りそうな食べ物は嫌い。卵かけごはんなども、炭水化物だから食べたいとは思わない。(比嘉さん)

 

そのスタンスは徹底しており、日頃から炭水化物をあまり摂取せず、深夜におなかがすいたらたんぱく質を取るようにしているという。

 

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▲ボナドンナ風パテ・ド・カンパーニュ(880円)

 

比嘉さんが最近ハマっているのが、コンビニエンスストアで売っている「ザバスプロテインミルク」という商品。1本170円弱くらいの値段で、空腹時に飲むと満腹感が得られるという。

飲み会のあとギトギトのラーメンを思う存分食べる派の筆者にはとても考えられない生活だが、これが比嘉さんの健康の秘訣のようだ。ただし、お酒の量はあまり気にしないとのこと。

 

結果を出したいなら、子どもが出来る前に

毎日の睡眠時間は約5~6時間。朝は6時に起きて夜は12時半に寝るというサイクルで、次の日に頭をフル回転させるための睡眠を取るようにしているという。

比嘉さんにとって一番大切なのは、脳が働き続けること。睡眠はもちろん、仕事中30~40分に1回は席を立ち廊下を歩くなど、血流を良くするための運動も欠かさない。

 

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▲ツブ貝とマッシュルームのエスカルゴバター焼き(980円)

 

ところで、プライベートの比嘉さんは1児のパパでもある。だからこそ、仕事とのバランスは常に考えておくべき、と語る。

 

子どもはとてもかわいいけど、それによって失うものも正直多い。中でも、やはり圧倒的に時間が削られます。どうしたって自分の時間は4割減りますから。夜中に子どもが起きるかもしれないし、何かと子ども中心の生活となっちゃうし。だからエンジニアとして何らかの結果を出したいなら、結婚して子どもが出来る前に成し遂げた方がいい。

 

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卒研テーマは「カバンの持ち方」

技術者の場合「自分ごと」からサービスがはじまることも多い。例えば、GitHubやEvernoteがそうだ。自分が欲しいと思ったツールを自分で作り「これいいでしょ、便利だよ。みんな試してみて!」というところから始まった。

 しかし、比嘉さんの場合はそうではない。

 

自分はもっと文系っぽいのかもしれませんね。

 

比嘉さんの名を世に広めた「Seasar2」を作った動機は、友人にあった。

ある日、友人に「こういう機能があるアプリケーションサーバーを探してるんだけど、何か知ってる?」と問われたのがきっかけだ。

そのとき、比嘉さんは「よく知らないけど、僕なら作れるよ!」と言って作り始めた。自分が欲しかったわけではない。

それが2002年のこと。「Seasar2」が正式リリースされる2年前のことだ。

 

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そもそも彼には「問題を解決する方法を考える」ということ以外興味がない。ITそのものが好きなわけでも嫌いなわけでもなければ、好きな言語や技術、環境、愛用のテキストエディタがあるわけでもない。

 

エンジニアは自分の好きな技術や環境に囲まれて仕事をすることを好む傾向があるけど、ぼくは興味がないんです。

 

比嘉さんの徹底した「問題解決思考」は一貫している。大学受験、ワインの言語化、「Seasar2」……。すべて課題を解決するために一番効率の良い方法を選択したに過ぎない。

何より優先すべきは「自分がやりたいことよりも、誰に何を求められているか」だった。

 

そのことを示す、ちょっとおもしろいエピソードがある。大学の理学部生命理学科に在籍していたとき、卒業研究に選んだテーマはなんと「かばんの持ち方」。年代・性別によってかばんの持ち方がどう違うかを道でカウントした結果「女性は、赤ちゃんに心音を聞かせながらだっこすることが、遺伝子にプログラムされているので、
かばんを左ひじに掛ける人は女性に多い」という結論を出したそうだ。

ただ、この結論が正しいかどうかは彼にとって興味がない。「(研究者や教授ではない)一般聴衆に求められるような面白い結論かどうか」が彼にとってもっとも重要なことだった。研究として正しいかどうかではなく、どんな結果であれば一般聴衆が面白いと感じる研究になるか、そんな視点で論文を書いたという。

 

彼はこのIT界隈ではめずらしく、24年間一度も転職をしたことがない。

頭を使うのが好きで、難しい問題を自分なりに解くのが好きなアーティスティックなエンジニア。お気に入りの白ワインを揺らしながら、今日も独自の目線で問題に立ち向かう。

 

話を聞き終えたころ、筆者の右手にはもう7杯目となるジンジャーハイボールが空いていた。

 

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最近は、人の動き(主にダンス)を楽譜化するという技術をベースに、ビジネス化に取り組んでいるという。

 

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いったい人は、どんなときに踊りたくなるのか、どんなときに体を動かしたくなる(エクササイズなど)のか。最近はこの問題を解くため、DJ修行をしたり、パーソナルトレーニングジムで体を鍛えているという。

 

お店情報

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KITCHEN Buona Donna (キッチン ボナ ドンナ)

住所:東京都港区芝浦2-1-10 K.T.Y芝浦ビル1F
電話番号:03-6453-8228
営業時間:11:30(日曜日は12:00)~15:30 、17:30(土曜日・日曜日は18:00)~23:00(LO 22:30)
定休日:不定休
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:太田智美

太田智美

小学3年生より国立音楽大学附属小学校に編入。小・中・高とピアノを専攻し、大学では音楽学と音楽教育(教員免許取得)を専攻し卒業。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。人と人とのコミュニケーションで発生するイベントに対して偶然性の音楽を生成するアルゴリズム「おところりん」を生み出し修了した。2011年、アイティメディアに入社。営業配属を経て、2012年より@IT統括部に所属し、技術者コミュニティ支援やイベント運営・記事執筆などに携わる。2014年4月から2016年3月までねとらぼ編集部に所属、2016年4月よりITmedia ニュースで記事執筆などを行う。プライベートでは約1年半、ロボット「Pepper」と生活を共にし、ロボット―パートナーとして活動している。2016年4月21日にヒトとロボットの音楽ユニット「mirai capsule」を結成。

パイオニアたちの姿に心酔! 映画 『カンパイ! 世界が恋する日本酒』監督インタビュー

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日本酒業界に生きる3人のパイオニア

7月9日(土)に公開される映画『カンパイ! 世界が恋する日本酒』は、日本酒業界に生きる3人の男を主人公としたドキュメント・フィルム。この人選が実にユニークで、とても見応えのある内容になっています。

 

まず、岩手県二戸市「南部美人」の五代目蔵元、久慈浩介さん。

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蔵元というのは、いわば経営者。酒造りを担当するのは杜氏(とうじ)と呼ばれるリーダーを中心とした職人たちで、経営と実務は完全分業が日本酒の世界では当然のルールとなっていました。

それを久慈さんは、蔵元でありながら自ら酒造りにもたずさわります。また日本酒輸出協会という団体を立ち上げ、世界に日本酒を発信するスポークスマンとしても活躍してきた、業界改革者のひとりでもあります。

 

ふたり目の男性は、日本酒伝道師のジョン・ゴントナーさん。

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雑誌の日本酒特集などでもおなじみですね。国内外で日本酒の真価を伝えるべく活動を続ける、来日28年目のジャーナリスト。アメリカ・オハイオに生まれ、英語教師として1988年に来日、翌年たまたま飲んだ日本酒に魅了されます。それは運命的な出合いでした。作品中、彼はこう語っています。

 

時間があれば飲み屋さんに足を運んで、知らない銘柄を飲んでみたんです。酒屋さんにも通っては質問をくりかえし、常連になって。「このお酒の味わいと似てるのはどれ?」なんてね。日本語は当時まだまだ下手だったけど、みんな親切にしてくれましたよ。(ゴントナー氏)

 

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そしてあるお店ですっかり馴染みとなったゴントナーさん、春のお花見に誘われます。

 

そのとき『ジャパンタイムズ』で働くアメリカ人と出会いました。日本酒をすすめられたけれど、あまりいいものではなかった。断ったんですよ。そしたら彼が「日本酒は嫌いかい?」と聞いてきたので、「大好きだよ。だからこそ、それは飲まない」って返事をしたら、「どれだって一緒だろう、日本酒なんて」と言われ、反論しました。そこから日本酒談義になって、彼が「面白い。それを書いてくれないか」となったんです。(ゴントナー氏)

 

そこが、日本酒伝道師としての彼の起点となりました。現在は日本酒の魅力を教えるセミナーを国内外で開催したり、日本酒輸出のアドバイザーとしても活躍されています。

 

3人目は、外国人として初の杜氏となった、フィリップ・ハーパーさん。

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イギリス・コーンウォールに生まれ、オックスフォード大学を卒業。彼もゴントナーさんと同じく、英語教師として来日しました。同僚と飲むうち日本酒に興味を抱きはじめ、教師を2年勤めた後「日本酒に関わる仕事をしたい」と決意、奈良県の酒造メーカー「梅の宿」の蔵人(杜氏の下で働く人)となります。

 

現在「梅の宿」の会長である吉田暁氏は「最初(働きたいと聞いたときは)冗談で言っているのかと思った。けれど、3度ぐらい(働きたいという意思を告げに)来たんですね」と述懐。そして入社を許され、ひたすら酒造りに邁進。その働きぶりを見て吉田会長は「世界にも、大和魂をもった男性はいるんだな」と思ったそうです。

 

小西監督インタビュー「情熱と人柄は言葉を超える」

日本に来て、引き寄せられるように日本酒にたずさわり、働き続けるふたりの外国人。そして蔵元の息子として生まれ、積極的に海外に日本酒の魅力を発信しつづけるひとりの日本人。その映像化の狙いを、監督にうかがいました。

 

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監督の小西未来さんは、南カリフォルニア大学映像学科で学び、現在もアメリカ在住。映画ジャーナリストとしても活動され、ハリウッド外国人記者クラブにも籍をおかれています。本作では脚本、編集も担当されました。

 

──この映画を製作したいと思われたきっかけはなんだったのですか?

 

私は日本酒についてまったく知らなかったんです。ロス、ニューヨーク、ロンドンなど、各地で現地の人と和食を食べる機会がありますが、その際に「日本酒のセレクトはお願いするね」と言われてしまう。本醸造と大吟醸の違いも知らなかったんです。このままじゃまずいな、と。
あるとき、ビバリーヒルズでユダヤ人を対象とした利き酒会に呼んでいただく機会がありました。そのとき「南部美人」の久慈さんに出会ったんです。正直、久慈さんの英語力はそれほど高くないんですよ。でもコミュニケーション能力が高くてどんどん自分のファンを増やしていく。それ以来、久慈さんで日本酒のドキュメンタリーをつくれないか、と考えるようになったんです。

 

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──そこにゴントナーさんや、ハーパーさんが加わったのはどうしてなのですか?

 

久慈さんだけの映画にすると、どうしても「南部美人」のコマーシャル的に解釈されてしまうおそれがありますよね。日本酒を題材とする以上、多角的にとらえたかった。異なる立場にいる複数のプロに出演してもらいたい……と考えたとき「日本酒業界に関わる外国人」が浮かんだんです。久慈さんは海外で、言語や文化の壁を乗り越えて日本酒の魅力を発信している人ですし。

 

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──ゴントナーさんやハーパーさんも、母国語や生まれ育った文化は違えど、日本で日本酒にたずさわって生きている人ですもんね。運命的な出会いをしてしまった異邦人。 

 

3人ともアウトサイダーなんです。そこが僕には響きました。僕も海外に暮らして20年が経ちますが、いまだに日常的な不自由を感じます。ハーパーさんやゴントナーさんが体験した苦労を想像しただけで、気絶しそうになりますよ。でも彼らは伝統的な世界で日本人から認められるという成果をあげている。久慈さんにしても、世界20数カ国に「南部美人」を売り込んでいる。情熱と人柄は、言葉を超えるんだと彼らを見ていて思います。

 

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──ドキュメンタリーなのだけれど、いつしかドラマ映画を見ているような気になりました。初の外国人杜氏、アメリカ人で日本酒伝道師、海外で日本酒の良さに気づいてもらおうと奮闘する蔵元……みな開拓者ですね。その生きざまが交差する編集がすばらしかったです。

 

ありがとうございます。単なる3つの短編の寄せ集めにはしたくなかったんです。3人の人生は日本酒を軸にしていても基本的に交わることがありませんが、同時進行で描くことで大きなうねりのようなものを作り出そうとしたんです。スティーブン・ソダーバーグ監督の『トラフィック』の構成が参考になりました。私はノンフィクション専門の作家というわけではなく、フィクション製作もしたいと思っていますが、現在のところは『カンパイ! 世界が恋する日本酒』の続編をつくりたいと思っています。

 

──ありがとうございました。次回作、心待ちにしています!

 

 

最後にひとつ。

「南部美人」も東日本大震災で被災した蔵元のひとつです。震災直後、自粛ムードが広がり「お酒を飲んで楽しむ」ということが後ろめたく感じられた人も多かったと思います。そのとき、久慈さんが動画サイトからこんな発信をされたのをご存知でしょうか。

 

 

「ああ、あの人か!」と思われる方も多いでしょう。

この映画では、久慈さんの友人である福島・浪江町の鈴木酒造店、鈴木大介杜氏も重要な人物として描かれています。「磐城寿」で知られる鈴木酒造店は波により、全壊。山形県長井市に拠点を移され、酒造りをふたたび始められました。その鈴木さんが、浪江町にあった蔵元跡を訪れるシーンは、この映画のクライマックスのひとつとなっています。

震災と日本酒、ということも描かれた映画です。

 

多くの日本酒好き、そして日本酒に興味のある方におすすめしたい『カンパイ! 世界が恋する日本酒』は、7月9日からの公開。本作を見たら帰りに日本酒が飲みたくなること間違いなし。帰りはぜひぜひ“寄り道”の余裕をもってご覧ください。

 

作品情報

『カンパイ! 世界が恋する日本酒』

監督:小西未来 
エグゼクティブ・プロデューサー:駒井尚文、スージュン  
プロデューサー:柳本千晶 
出演:フィリップ・ハーパー、ジョン・ゴントナー、久慈浩介

2015年/日・米/日本語・英語/95/カラー   配給:シンカ

© 2015 WAGAMAMA MEDIA LLC.
2016年7月9日~、シアター・イメージフォーラム他全国順次公開

ウェブサイト:http://kampaimovie.com/

 

書いた人:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

過去記事も読む

【舌対音感】第7回:掟ポルシェ「俺が愛したローカルフードたち」

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「旅をしない音楽家は不幸だ」という言葉を残したのはモーツァルトだが、では、旅する音楽家の中でもっとも幸せなのは? それはやはり、その土地土地ならではの旨いものを味わい尽くしている音楽家ではないだろうか。そこで! ライブやツアーで各地を巡るミュージシャンたちに、オススメのローカルフードや、自分の足で見つけた美味しい店をうかがっていく連載企画。

第7回は、ニューウェイヴ・バンド「ロマンポルシェ。」のボーカル&説教担当であり、DJ、文筆業、司会など多岐にわたる活躍をみせる掟ポルシェさんが登場。食と音楽に共通する、強烈すぎるこだわりとは?

 

話す人:掟ポルシェ

掟ポルシェ

1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド「ロマンポルシェ。」のVo.&説教担当としてデビュー。これまで『盗んだバイクで天城越え』他、8枚のCDをリリース。音楽活動の他に男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』等多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社刊)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン5刊)がある。その他、俳優、声優、DJなど、活動は多岐に渡るが、中でも独自の視点からのアイドル評論には定評があり、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。

 

舌の天敵は“甘い味付け”

──掟さんは現在、東京福岡を行き来する生活を送られているそうですね。

嫁の実家がある関係で、基本は福岡で暮らしていて、月の半分ぐらいは東京の仕事場に来ている感じですね。福岡の自宅がある町は、博多の市街地から離れた工場しかないようなところなので、外食しようにもまともなお店があまりなくてね。だけど福岡でもスープカレーで美味しいお店を1軒見つけたんですよ。周船寺にあるニセコっていうお店なんだけど、「玉ねぎと豚ナンコツのプルプルカレー」っていうのが最高で。豚の軟骨を薄切りにしたものが入っていて、酸味がきいてて旨いんです。

そこは、福岡の郊外にある糸島市っていう、いま話題のおしゃれな田舎町で作られた〈糸島野菜〉と、お店の由来にもなってる北海道ニセコ町産の野菜を使っていて。ランチに出てくるサラダが、進化した現代的な農法の糸島野菜を使っていてこれが悔しいぐらい旨い(笑)。レモンの酸味がかかっただけみたいなシンプルなサラダだけど、質のいい野菜を厳選して使ってるから野菜本来の味だけで食えちゃうんですよね。

 

──インディーズ系の音楽やサブカル方面、アイドルファンの間では「掟さんは相当グルメ」っていう噂をよく耳にします。

自分は酸味が入ってる料理が好きなんだけど、逆に甘塩っぱい食べ物とか、甘い味付けの料理が苦手でね。九州って醤油が甘い文化圏じゃないですか。刺身醤油となるとさらに甘いでしょ。それがどうにも馴染めない。素材は最高なのに、甘い醤油をつけて食べさせるのは勘弁してほしいって思っちゃう。

だから昔は、魚が美味しい店に行く時にはバッグの中に“マイ醤油”を忍ばせて行くように心がけていたんだけど、最近はついつい忘れてしまって。一口食べてから「あ、ここ甘い醤油の地域だった!」って気付くんですよ……。

 

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──甘い味付けがとことん苦手なのはよく分かりました(笑)。

 それでいて郷土愛が強い地域って、自分たちの故郷に古くからある食べ物が一番おいしいと思ってるでしょ? 以前、ある地方で新鮮な鯖の刺身が出てきて「わーっ、美味しそう!」って思ったら「お召し上がりになる前に、これをかけさせていただきます」って甘い酢味噌をダーッてかけられて、愕然としたことがありました。焼肉店に行っても、わざと甘いタレにしているようなお店ってあるじゃないですか。甘いもん文化圏って知らない間にジワジワ広がってるんですよね。

 

「共感文化」に共感できない

──たしかにグルメ番組のレポートなんかでも、美味しさを表現する時に「甘い」ってことを強調しがちだったりします。

 今って「甘い」がやたら褒め言葉になってきてるじゃないですか。たしかに「うまい」の語源は「あまい」から来たらしいんですけど、大昔にその言葉が生まれた時代から味覚が変わってないのか! っていうね。

 

──そろそろ太古からの味覚は卒業しようよ、と。

腹が立ったついでに言わせてもらえば、最近のグルメブームが、気の置けないお店ブームになってるのが嫌で。気の置けないお店ということが、ことさら重要視されがち。店が汚い方が落ち着く、みたいな価値観が優先されるのは鼻につきますね。それにフランス料理なんかより洋食とか揚げ物とか食ってるほうが好感持てるね、みたいな感じも気にくわない。洋食なんて、明治時代に「オエライさんの料理番」みたいな人がトンカツ食って感動したみたいな時代から根本はなんにも変わってない。昔からあるその味は、もう知ってるわ! みたいな。

 

──確かに「安くてうまい」は万人にウケやすいですもんね。

そういう記事が多いってことは、読者にも共感を呼ぶってことじゃないですか。その共感を呼んでいること自体がイライラしますね。たとえていうなら、音楽聞いたり音楽について話していても、みんながみんなビートルズ好きだって言ってるようなもんで。「ビートルズは聞いたことねえし、好きでもねえわ!」っていう。俺は、できるだけ複雑で変わったものが好きなんですよ。変拍子とか不協和音とかバシバシ入ってるけど、斬新で格好イイ! みたいな。食についてもそういう感覚はありますね。

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ラヲタは「迷ったら2杯」

──そんな掟さんが、地方のグルメで好んで食べるのは、どんなものなんでしょう?

名古屋に行くとウキウキしますね。いつも何を食べるか迷うくらい。名古屋って味噌かつとか海老フライとか名物がいろいろ有名だけど、それ以外を食べると旨いんです。で、何気に東京で話題になっているものとか意識していたりするから、流行の味が反映されやすい。基本的にきらびやかなものが好きで、ミーハー的な部分もあって、外者に対してエエカッコしたい! という街なんでしょうね。

 

──具体的なお気に入り店を教えていただければ。

名古屋ではとりあえず〈味仙(みせん)〉に行く。味仙は世間的に「台湾ラーメンのお店」って思われてますけど、それ以外の料理も美味しくて。特に「味仙ラーメン」っていう、アサリの炒め物が乗っているラーメンがすごく美味しい。で、台湾ラーメンもアサリのラーメンもどっちも食べたいじゃないですか? でも、両方食べたらお腹いっぱいになっちゃうから困るわけです。それをTwitterとかに書いてると、ラーメン大好きな田中貴さん(「舌対音感」第3回ゲスト)が「ラヲタの間には『迷ったら2杯』という言葉があります」ってリプライをくれて。しょうがないから2杯食べましたけど (笑)。

まあ、味仙の台湾ラーメンはちょっと小ぶりだし、ミニサイズもあるからね。で、それでもお腹が空いたところに、コブクロだったりとか、台湾料理のできるだけ下世話なものを次から次へと入れていく感じで。自分の場合、音楽も味覚も刺激がないとダメなんですよ。そういう意味では、味仙の台湾ラーメンは 「食べたことがない味」っていう点で刺激的でしたね。

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──未体験の感覚に出合うことが、食の上でも重要になってくる。

想像がつかないと食べてみたくなるんですね。俺、もともとはラーメン嫌いだったんだけど、2009年くらいに新宿〈ラーメン凪〉に行ったとき、煮干しのやり過ぎ感に衝撃を受けて以来、すっかりハマってしまって。

その後、凪では深夜0時から月替わりの限定ラーメンみたいなのを始めるんだけど、その時に食べたサバ節のラーメンとか、正月限定の鯛ラーメンも最高に旨かった。やっぱりあのお店は、開発者のバンタムさんがとにかく変わった味の旨いものを作りたいっていう気持ちが強いんですよね。

 

ふるさとの味、おふくろの味はもういい

──掟さんは北海道出身ということですが、たとえば北海道の名物なんかはいかがですか?

北海道の名物はだいたい嫌いなんです。じゃがいもとかウニとか、子どもの頃に食べ過ぎたからもういいんですよ。

──ウハハハハ。

北海道に限らず、名物という名物はあまり食べないですね。「名物にうまいもんなし」ってよく言われるのは、味がアップデートされてないから。だけど全国食べ歩いていると、嫌いなはずだった北海道の名物が、よその土地に行くことであらためてよく見えることもあるんですよね。

 

──具体的にそう実感できたお店などはありますか?

『申し訳ないと』っていうDJイベントで地方によく行っていた頃は、その土地土地で1万円ぐらいで食える美味しい寿司店を探して、食べ歩いていたんです。中でも印象に残っているのが、仙台〈江なみ〉っていう寿司店で6月から8月までの限定で出している殻付きのウニ。それも寿司店でよく使われるバフンウニじゃなくて、ムラサキウニなんですけど、殻の中にギッシリと身がきれいに詰まった状態で出てくる。これが最初は驚きで。俺も地元の北海道でウニを採ってそのまま食べたりしたこともあるけど、見たこともないほど殻にぎっしり身が詰まってる。

聞けば、江なみの御主人だけが行きつけの魚河岸でウニの中身を見てから買うことを許されているそうなんです。パッと見はそのまんまの料理なんだけど、ちゃんと不要物は取り除かれて、きちんと手が加わったものなんですよね。たとえるなら、普通の寿司店 で出されているバフンウニがシュガーコーティングされたドーナツのようなベタベタした甘さだとすると、江なみのムラサキウニはほんのりとした甘さで、上品な味。バフンウニ至上主義がひっくり返されるくらいの衝撃がありましたね。

 

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──それはめちゃめちゃ食べてみたいですね……。

あと、同じように自分の価値感がひっくり返されたような衝撃といえば、大阪・西心斎橋にある〈和洋遊膳 中村〉という割烹で食べた肉じゃが。普段、肉じゃがは俺一人じゃ絶対頼まないものだし、子どもの頃からじゃがいもの煮崩れしてドロっとなる感じが嫌でたまらなかったんですよ。だけどそのお店で食べたものは、おそらく他の具材とは別に調理したメークインに、牛肉を煮たものをかけてあるような感じで。あれが人生で食った肉じゃがの中で、ダントツで旨かったですね。

 

──甘い味付け嫌いな掟さんをうならせる肉じゃが。気になりますね。

うーん、それもやっぱり意外性なんでしょうね。ドロドロして甘い感じがなくて、さっぱりと食えてしまったという。いわゆる一般的な煮込みすぎた肉じゃがを食って 「母の味だね」とか「故郷の味だね」みたいなのが、俺は大嫌いなんで。どうせ金出して外食するなら、母の味より他人の味が食べたい。

 

うちの母親なんて戦前生まれなもんで、砂糖が高級だった時代の感覚が抜けないから、味付けが全部甘くなっちゃう(笑)。本来だったらそれに慣れるはずなんだけど、何故か慣れなかったんですよね。学生時代は金もないので自炊ばっかりしてました。だから上達したっていうのもあるかもしれない。料理とセックスと楽器の練習は似たようなところがあると思います。しばらくやらないとどんどん下手になる(笑)。

才能の問題ももちろんあるけど、毎日やっていれば、それなりに上手くなるもんじゃないかなと。家の料理は昔から全部自分が作ってるんですよ。自分好みの味にうまいこと作る能力はあるつもりなんですけど、うちの子供は甘じょっぱい味付けのものがやっぱり好きみたいで……。味覚って隔世遺伝するんですかね(笑)。

 

撮影:沼田学
撮影協力:麺匠竹虎新宿

 

書いた人:宮内健

宮内健

1971年東京都生まれ。ライター/エディター。『バッド・ニュース』『CDジャーナル』の編集部を経て、フリーランスに。以降『bounce』編集長、東京スカパラダイスオーケストラと制作した『JUSTA MAGAZINE』編集を歴任し、2009年にフリーマガジン『ramblin'』を創刊。現在は「TAP the POP」などの編集・執筆活動と並行してイベントのオーガナイズ、FM番組構成/出演など、様々な形で音楽とその周辺にあるカルチャーの楽しさを伝えている。

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