近年、地方発祥でブレイクするものが増えてきています。そのなかで、継続して大きな経済効果を生んでいるもののひとつが「ゆるキャラ」です。火付け役となった熊本県営業部長兼しあわせ部長「くまモン」は、今や日本国民に知られるキャラクターになりました。
今回の取材先は「くまモン」だらけなのだそうです。ぶっちゃけ私は「くまモン」にほとんど興味はなく、「風呂デューサー」として、九州の一大温泉県である熊本県とコネができないかな、なんてビジネス丸だしな気持ちで取材に行ってきました。
熊本情報発信基地の2階は……遊び場だった!
銀座といえば、ブランド品店が並ぶハイクラスな場所というイメージ。その一方で、実は日本中の都道府県のアンテナショップが集まっている場所でもあります。いまや東京のど真ん中にいながらにして、各地の名産品を手に取れる時代なのです。
多くのアンテナショップはピカピカの内装の高級感のあるお店なのですが、今回うかがう銀座熊本館はどこか素朴な雰囲気を醸しています。場所はJR有楽町駅から徒歩5分ほどの数寄屋橋交差点付近です。
1階は熊本のお土産品などを扱う物産館です。取材時は水俣フェアを実施しており、熊本直送しらすが手ごろな価格で販売されていました。ほかにも店内では焼酎や野菜、果物などの熊本県の名産品が販売されています。
1階を見てまわるだけでも十分に熊本感を味わえますが、銀座熊本館の真骨頂は2階にあります。
2階に着くなり、大量の「くまモン」グッズが迎えてくれました。大量なんてもんじゃありません。「くまモン」しかありません。
お客さんのなかには「kumamon!」と英語で話す方もいらっしゃって、もはや「くまモン」は熊本どころか日本を飛び出し、いまや世界の「kumamon」なのかと、その成長ぶりに驚きました。
「くまモン」グッズのラインナップはすさまじく、熊本県産の杉を使用した「くまモンドミノ」まで! 「くまモン」が描かれていれば熊本土産。そう思えるのは「くまモン」の影響力あってのことなのでしょう。
「くまモン」グッズコーナーのさらに奥、12席の小さな食事処が、熊本の味を楽しめる食事処「ASOBI・Bar」です。
店内には「くまモン」のぬいぐるみが随所にディスプレイされ、若い女性、「くまモン」ファンを意識したつくりになっています。
そうは言ったものの、壁面には間接照明に照らされた熊本の焼酎がならんでいます。
これは年配の男性向けなのでは……? 「くまモン」とのギャップに少し違和感を覚えつつも、ワクワクせずにはいられませんね!
こちらが食事のメニューです。
謎すぎる「アベックラーメン」、限定につられて注文したくなる「漁師の沖めし丼」が気になります。
迷った挙句、担当者の「一番のおすすめは高菜ご飯ですよ」という一言が決定打となり、「高菜ご飯セット」を注文しました。
「高菜って、だいたいどこでもあるじゃん」と思わなくもないですが、お店の方のイチオシなので絶対ウマいはず。
すげーいいにおいがする!!!!
箸を入れてご飯を持ち上げてみると、ごま油のいいにおいがたちのぼります。
食べてみると、しっかりと味が染み渡っており、ごま油の風味と塩気がいい具合です。おかず、必要ありません。これは永久に食べ続けられるご飯ですね。
優しい………。しっかりと味が付いた高菜ご飯と対照的に、すべてを包み込むような薄味の味噌汁。
豪快で一本道を突き進む九州男児を象徴した高菜ご飯、それを優しくフォローして主役として立たせる素敵な奥さん。この「高菜ご飯セット」は、熊本の夫婦を象徴しているような気がします。
食事メニューとは別に一品のカフェメニューもあります。
写真はいちばんの売れ筋商品である熊本の郷土菓子「いきなりだんご」です。「急な来客があったときにすぐ出せるから」という由来でこの名がついたのだそう(所説あります)。あんことサツマイモの2層になっており、名前とは正反対の手の込んだだんごです。
食後の飲み物はデコポンジュース。熊本は柑橘系の果物の生産も盛んです。自然な甘みと柑橘類のほんのりとした苦みがきちんとあり、聞くまでもなくデコポン100%。
こうして「ASOBI・Bar」でのカフェタイムは、「くまモン」と熊本料理をのんびりと楽しむことができました。
メニューに酒がないじゃないか!!!
先ほどからバンバン写真に写り込んでいる焼酎。実はランチメニューになかったんです。楽しみにしていたのに……あれは飾り物なのか!? 店員さんに聞いてみると「夜はバーとして営業しています」とのこと。
ということで夜にまた来ました。
夜はすっかり大人向けの酒に合うメニューに変更されていました。どれもおいしそうですが、一番正体の見えない「ほろ酔いセット」を注文してみました。
熊本三昧の「ほろ酔いセット」
「ほろ酔いセット」の全貌がこちら。
左から馬刺し2点盛、中央にからし蓮根、右は本日の一品のポテトサラダです。
ポテトサラダだけ熊本っぽくない……なんて思いませんでしたか?
よく見るとちくわが混ざっていますね。じつは熊本の日奈久地区はちくわの一大産地なのです。
そして上に乗っているからし蓮根チップ。カリカリの食感とピリッとした辛味が味のアクセントになっています。
そしてなんともおいしそうなこの馬刺し。
こちらの赤身肉はとにかく柔らかく、いままで食べてた馬刺しは何だったのかと思いました。
こちらはタテガミという部位です。白いですね。
肉というよりは脂身っぽいですが、イメージする脂とは全然違います。ジュワッという感じでもなく、カチコチになった脂というわけでもなく……不思議な食感です。
「ほろ酔いセット」には、上記の料理と好きな焼酎一杯がセットになっています。チョイスした焼酎は「温泉焼酎」です。これは熊本県人吉市の「大和一酒造」の焼酎で、工場内に湧く温泉を原料としています。
飲んでみると、焼酎と聞いてイメージするガツンとくる風味はありませんでした。最初の一口はキリッとした口触りで、時間の経過とともにまろやかに変わり、酔いながら時間の流れを楽しめる、球磨焼酎の魅力を体験することができました。
球磨焼酎の種類は28の蔵元から選べます。
今回はほろ酔いセットをいただきましたが、ガッツリと焼酎を楽しみたい方は飲み比べセットがオススメ。3種類の焼酎を選べます。
そして熊本といえばこのからし蓮根。食わず嫌いで食べたことがありませんでしたが、この機会に食べてみることにしました。
「おっ! からし来た!」
唐辛子のように爆発的に辛さが広がるのではなく、かめばかむほどにじわじわとからしがしみわたります。まろやかなからしとシャキッとした蓮根の食感が際立っていますね。
気が付いたときには焼酎を手に持っていました。
辛いから飲むという感覚ではなく、脊椎反射で不意に焼酎を胃に流し込む。
「くあああぁぁぁーーー!!」
この一連の流れこそがからし蓮根の醍醐味なのか!
今後九州郷土料理のお店に行ったらまず間違いなく頼んでしまうと思います。ハマりました。
「ASOBI・Bar」で飲んで気付いた、その魅力
からし蓮根と焼酎の最強タッグで、すっかり酔ってしまった私。顔がほんのり赤くなったところで気持ちに変化がありました。
「くまモン」のやんわりした笑顔。隣で眺めていると、酔っぱらって心からあふれ出る世の中への不満や、将来への不安といったものがどこか薄れていくような感覚になっていくのです。
「ただ飲みすぎなだけ!」そうなのかもしれません。ただ隣には「くまモン」が静かに、笑顔でたたずんでいるのです。
「くまモン」に囲まれたファンシー空間でいただく、からし蓮根と球磨焼酎の熊本が誇る最強コンビ。この「熊本トライアングル」があれば、今夜はどこまでも酔える気がします。
お店情報
銀座熊本館 ASOBI・BAR
住所:東京都中央区銀座5-3-16
電話番号:03-3572-1261
営業時間:カフェタイム13:00~16:00 バータイム17:00~20:00
定休日:日曜日、月曜日(イベント等で臨時休業の可能性あり)
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は2016年2月時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。