新大久保で味わう”和”の上質体験

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新大久保といえば皆さんご存じ、コリアンタウン。ここに降り立つ人は韓流のグッズを買ったり、韓国料理を食べに来ている人がほとんどです。ただ私は思うんです。コリアンタウンとはいえ、ここは日本。新大久保で和を感じる体験ができないものかと。今回はあえて、新大久保にある”和”を探してきました。

 

新大久保に佇む和の異界

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新大久保駅を降りて右手に進むと広がる韓国系のお店たち。それを目当てに歩道を歩く日本人女性が多いこと! メインストリート、大久保通りの日常風景です。
そんな大久保通りを直進すること約5分……。

 

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………!? 色とりどりな大久保通りと正反対、異様な景色が目に飛び込んできました。

 

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なんだこれは……! 鳥居……?
神社と見間違えるくらい、どこか穏やかな空気が漂います。ここが最初の和体験をする銭湯、「万年湯」です。

 

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ゲートをくぐると大久保通りの騒がしさは消え、静けさに包まれます。

のれん、照明、引き戸、そして木のしつらえ……どれをとっても和風の店構え。

 

純和風! コリアンタウンの隠し湯

新大久保とは思えない静けさのなかに佇む「万年湯」。この環境での風呂はたまらんだろうなぁ……浴室に行ってみましょう。

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どこから見ても見栄えのいい浴室! 「万年湯」は2016年8月、純和風に大改装をおこないました。

浴室全体を包む柔らかい照明、落ち着いた色合いのタイル……。ここだけ見るととても新大久保とは思えません。

 

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うあ~気持ちいい! 和風の窓からあふれる光が水面にゆらゆらと反射している……その様子を眺めていると「あー」以外に言葉が出ませんね。

こちらの主浴槽はいつまでも浸かっていられるぬるめの温度、加えて銭湯でおなじみのジェットバス、電気風呂が設置されています。さらに浴室で使っている全ての水、お湯は硬度成分を除去した軟水です。

 

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もう一つの湯船は微細気泡を発生させて毛穴の汚れまでかきだすシルクバス。温度が高めに設定されており、店主さん曰く「選ばれしものが入れる湯船」。

軟水+シルクは湯上りの肌がもっちりと仕上がり、加えての高温浴ならではの爽快感が最高!

この時間の流れかたは新大久保じゃない! 伊豆のあたりのどっかだ!

 

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さらに「万年湯」の目玉、水風呂。地下水100%の軟水に身を委ねれば、嫌なことなんて全部忘れてしまいます! 新大久保にこんな穴場があったなんて!

 

駅前のおそば屋さんで割烹旅館体験

想像以上の和体験ですっかり旅行気分。旅館で風呂にはいったあとは、お楽しみのメシですね。できるなら「割烹旅館に泊まってる感」を崩さない、上質な和食を食べたいな。

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選んだのは「万年湯」から徒歩5分、新大久保駅からは徒歩0分。絶好の立地で100年以上営業を続ける老舗そば店「近江家」。

 

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まずこの内装。割烹旅館じゃん! 素敵な店内! 2014年に改装されたばかりの店内はどこもピカピカ、かつ和の要素がさりげなくちりばめられています。扉一枚くぐれば新大久保とは信じられない。

 

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「近江家」は、風呂あがりの酒好きにはうれしい、飲めるおそば屋さん。常時利き酒師が選んだ5種類の日本酒をいただくことができます。

このラインアップ、なかなかレアものぞろいな気が……売り切れ次第メニューは入れ替わるので、まめに様子を見に来るのが楽しみですね。

 

酒のつまみクオリティーも高い!

飲めるおそば屋さんだからこそ充実していてほしい酒のつまみ。そのクオリティーが半端じゃないんです!

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まずはこちら、自家製鴨わさ(880円)。
口に入れるとほろほろした触感、ちょうどいい厚みで美味! 

鴨と合わせるのは店主が試行錯誤の結果開発した、そばつゆと赤ワインのブレンドダレ。肉とのバランスをうまくとった、味わい深いタレですね。

 

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続いて京ニシン(700円)。下ゆでの後一晩寝かせてから煮込むという手間暇をかけており、完成までは2日間を要します。

細胞一つ一つまでしっかりと味が染み込み、いくらかんでも味が出てくる! その味がまた繊細で優しい! 老舗の技、そしてかけた手間暇がしっかりと味に出ている! 絶品だなこれは。

 

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近江家の酒のつまみの代表、そば屋のやきとりタレ味(650円)。フワッと広がるこのにおい……天丼のたれをアレンジしたものなのだそう。濃いめの甘辛さが焼き鳥とあう! 口に入れるとふわっふわ! 

添えられているネギもおそば屋さん仕様で、含んでる水分量が多くて甘い! 酒のお供にも最適です。

 

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いただく日本酒は愛知島市、長珍酒造の無ろ過生詰純米酒、長珍。口に入れるとピリッとした辛味のあと、次第に甘みが出てきます。

パンチのある焼き鳥、味わい深いニシンにはベストマッチ! 鴨わさにはもっと口当たりがまろやかな日本酒と相性がいいかもしれません。こうやってゆっくりと料理を味わう時間も乙ですね。

 

締めのそばこそ本番

つまみだけで満足するべからず。「近江家」は江戸前そばのお店です。本来メインのそばを締めにいただくのもなんだかぜいたくでいいな!

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締めのそばは風呂あがりにはさっぱり、ということで辛味大根そば(870円)をチョイス。

つるっとしたのどごしを追求し、北海道産のそば粉を使用。ご主人が思い描いた理想の江戸前そばに仕上がっています。

 

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そばつゆは濃い目に仕上がっているので、三分の一程度そばを漬けていただきます。近江家のそばつゆは鰹節を塊の状態で仕入れ、お店で削り節にして出汁をとっており、味はもちろん、香り高いのもポイントです。

口に入れるとそばの香り、そして確かなかみ応え。そのあとにしっかりとしたそばつゆの味。それに加えて爽快感の強い辛味大根で締める! 

 

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肌寒い日は近江家ならではの、あさり南蛮(870円)をどうぞ。ぷりっとした大振りのあさり、その横に浮かんでいるのは……バター!? 先代店主が開発した時はバターを入れておらず、まだ幼かった現店主の「バター入れてみたら?」という意見が採用され現在の形になったそうです。いわば先代と4代目の合作なのです。あさりとの相性は言うまでもなく、意外とそばつゆとあう! コクが出てうまい!

 

常識を捨てて見つけるおいしさ

最後に確認しておきましょう。ここは日本でも有数のコリアンタウン、新大久保。

誰もがコリアンタウンと認識しているこのまちでも、日本らしさはまちのどこかで、脈々と受け継がれているのです。

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新大久保で割烹旅館体験、まちの見方が変わります。「万年湯」と「近江家」を訪れてみてください!

 

お店情報

万年湯

住所:東京新宿区大久保1-15-17
電話番号:03-3200-4734
営業時間:15:00~24:00
定休日:土曜日

 

近江家

住所:東京新宿区百人町2-4-1 サンビルディング1階
電話番号:03-3364-2341
営業時間:平日11:15~21:45(LO 21:10)
     日曜日・祝日11:15~21:15(LO 20:40)
定休日:土曜日

www.hotpepper.jp

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

過去記事も読む

コーラより緑茶があう?東京・大田区大森町の黒いご当地バーガーに挟んだ夢

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風呂デューサーを名乗って活動しています、ライターの毎川直也です。

風呂デューサーを名乗っていると、雑談のなかで風呂、温泉に関わるタレコミをいただくことがあります。今回は「お風呂屋さんのことを応援しているハンバーガー店があるらしい」という謎すぎる情報を聞きつけ行ってみると、そこで見つけたご当地バーガー、それがとにかく黒かった……!

 

レトロアメリカ in 下町の商店街

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東京都大田区、大森町をご存じでしょうか?

JR大森駅とよく間違えられる京急大森町駅から、雰囲気のいい商店街がのびるのどかな町です。ご当地バーガーはおろか、そもそもバーガー店と縁がなさそう。むしろ焼鳥屋さんで一杯やるほうが似合う町なのです。

 

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京急大森町駅から歩いて1分、こちらが2010年にオープンした「locofee」です。

その意味は「機関車に乗って旅行に出かける前に一杯のコーヒーを飲んで、これからのワクワク感に思いをはせている気持ち」を表した、LOCOMOTIVE COFFEEの略だそうです。

 

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店内はレトロアメリカな時代のステーションレストラン風。これがLOCOMOTIVE COFFEEか! 雑貨屋巡りが趣味という、ご主人のコレクションが色濃く反映されています。雰囲気は非常にいいのですが、肝心のご当地バーガー、そして「お風呂屋さんのことを応援している」雰囲気、どちらも見当たりません。

 

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「locofee」のメニューは11:30~15:00のランチ営業と18:00~22:00のテイクアウト営業に分かれています。ランチメニュー11種類に対して、テイクアウトメニューはなんと50種類! そのなかにありました、大森町のご当地バーガー、大森バーガー!!

 

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いまはまだ昼過ぎ、18:00まで我慢できそうにないのでランチをいただきます。ベーコンチーズバーガー(1,300円)! うおお……あふれだしたチーズがうまそう! ベーコンは5mmの厚切りを投入してあります。

かぶりつくと、とにかく肉のうま味がまっすぐまっすぐ伝わってくる! チーズのまろやかさ、ベーコンのジューシーさ、野菜の甘み、それらがソースと絡み合い、コクと味の厚みを生み出しています!

 

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肉のうま味の秘訣(ひけつ)は、肉の部位を吟味して、より肉の味わい、食べ応えを引き立たす配合にあります。

さらに肉の味をしっかりと感じられるように、味付けは塩胡椒のみ。とにかく肉の味を伝えることに重きを置いているのです。

 

サウナーの穴場! 大森湯のサウナ関連サービスが素晴らしい

18:00までまだまだ時間があるので、銭湯で温まりつつ、時間をつぶしましょう。

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銭湯を探してみると、ありました。こちらは「locofee」から徒歩5分の大森湯。優しい女将さんが常連さんから絶大な支持を集める、地元民憩いの場です。早速お風呂をいただきましょう。

 

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浴室の壁面が一面竹! 大森湯なのに竹林!? と思ったのもつかの間、湯船に身を投じると、なんだか気持ちよくて気にならなくなってきた。 私がはいっている主浴槽にはジェット、バイブラバスを完備、隣の真っ赤な湯船は曜日代わりの高温薬湯です。気分は森の露天風呂だこれは!

 

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別料金でサウナに入れます。約85度に設定したサウナはまろやかな熱を感じられ、じっくりと汗を出すことができます。一見シンプルなつくりのサウナ。ただ、大森湯ではサウナあがりの設備が充実しているんです。

 

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うおぉぉぉーー!! と思わず雄叫びをあげたくなるクールダウンマシン、それがこのボディーシャワー。16個のノズルから全身余すところなく水をぶっかけてくれます。飛散した冷水を鼻から吸い込むと、水風呂以上にすがすがしい! 冷水が苦手だけど体験してみたい、そんなかたでも楽しめるよう、冷水とお湯を選ぶことも可能です。

 

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さらに脱衣所横にはサウナ休憩室まで! サウナ後にボディーシャワーを浴び、飲み物を買ってここで涼む! 導線に非の打ち所がない……! 加えて脱衣場に流れる昔懐かしい歌謡曲。ぼけ~っと聞いていると、昭和のいい時代に戻った気分になってきます。時間つぶしなんて言ったけれど、すげー充実してたな。

 

挟んだのは真っ黒い特産品と、華やかな夢

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ひとっ風呂浴びて戻ってきました。日中とはガラッと雰囲気が変わった「locofee」です。2食連続ハンバーガーでも、サウナで流した汗の分、罪悪感が薄い! これならおいしく食べられそうだ。

 

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謎のご当地バーガー、大森バーガー(1,400円)の全容がこちら。まず目が行くのは挟まっている黒いやつ。その正体は……海苔! 大森地区の沿岸部はかつて、海苔の生産が盛んでした。今でも贈答用の高品質な海苔を扱うお店が営業を続けています。

確かに海苔は特産品。でも海苔ですよ。野菜の汁気でパリパリ触感が、肉の味で風味が消されてしまうのでは……。

 

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大森バーガーに使っている海苔は、青混ぜ海苔の板と粉末海苔の2種類。板海苔は海苔の食感を、粉砕海苔は水気の多い野菜に振りかけることで香りが引き立つのだそう。

かぶりついてみると、海苔の香りが確かに感じられる! なかなかに辛い! これは……わさびですね。そして森のバターことアボカドのまろやかさが全ての食材をうまく取り持っている。コーラよりお茶が飲みたい。日本の味だ!

 

将来の夢は遊園地を作ること

ご当地バーガーの謎は解決しました。ただもう一つの謎、「お風呂屋さんのことを応援している」案件がまったく解決していません。聞いてみました。

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031534j:plainあのー……こちらのお店ってお風呂屋さんを応援しているって聞いて来たんですが、本当ですか?

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031644j:plainお風呂屋さん……ですか? 好きですけど、お店として応援はしてないですね。

 

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f:id:Meshi2_Writer:20171208031534j:plain以前こんな感じのロゴを使っていませんでしたか? これは明らかにお風呂屋さんを応援してると思うんですよ。

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031644j:plain……あ、それもしかしたらスタンプのことですかね。

 

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f:id:Meshi2_Writer:20171208031534j:plain左から横読みすると、フロイコ……「風呂行こ」って読めますよね。これ見たら大概の人は「あ、店主さん風呂好きなんだな」って思いますよ!

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031644j:plainなるほど、確かにそう読めますね(笑)。確か商店街のイベントでつくったスタンプで、そのイベント以外に使った記憶はないですよ。よくそんな情報を仕入れてきましたね。

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031534j:plainちなみに、先ほど風呂屋がお好きっておっしゃってましたけど、お風呂屋さんもやってみたいと思いませんか(無理やり)。

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031644j:plainははは(笑)。実は私、お風呂屋さんではなくて、遊園地をつくることが夢なんですよ。手作りのアトラクションで家族でほっとできるような、あたたかい雰囲気のね。ハンバーガーもそこで食べてもらうために、いまこのお店をやっています。そこにお風呂屋さんがあったらいいなーって。夏場は縁側でスイカ食べながら風鈴の音を聞いたり、遊び疲れた親子が畳でごろ寝したり……遊園地には必要な施設ですね。

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031534j:plain想像しただけでほっこりします。その夢の第一歩が「locofee」なんですね。

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031644j:plain同じ志を持つかた、ぜひお店におこしいただいて、未来の遊園地について語り合いたいです。歓迎します! 銭湯の敷地は風呂デューサーさんのために空けておくので(笑)

 

残念ながら、お店として風呂屋を応援しているという情報は間違いでした。ただそれがきっかけで、店主さんの大きな夢を聞くことができました。私の就職先まで決まるとは!

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031644j:plain最後に、大森バーガーはお客さんから「想像と違う」という意見をいただくことがあり、まだまだ成長途中のバーガーです。まずは一度、その他のバーガーを召し上がっていただいて、「locofee」の色を知ったうえでの注文がオススメです。

 

f:id:Meshi2_Writer:20171208031534j:plain確かに一般的なバーガーの認識で食べるとびっくりするかも(笑)。一般的なハンバーガーに飽きちゃったバーガーファンこそ食べてもらいたい!

 

お店情報

locofee

住所:東京都大田区大森西3-25-5 大森西ダイヤモンドマンション106
電話番号:03-6423-0085
営業時間:月曜日…11:30~15:00
水曜日・木曜日・金曜日…11:30~15:00(ランチ)、18:00~21:00(テイクアウト)
土曜日…11:30~17:00(終日ランチタイム)
日曜日…11:30~17:00(テイクアウトのみ)
定休日:火曜、祝日
ウェブサイト:http://www.locofee.com/

www.hotpepper.jp

 

大森湯

住所:東京都大田区大森西3-8-17
電話番号:03-3764-7844
営業時間:15:00~23:30
定休日:第2、第4火曜日
※浴室内は許可を得て撮影しています。営業中の撮影は厳禁です。

 

※記事初出時、表記に誤りがありましたので修正しました(2018/7/4)  

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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四万温泉だけで飲める幻の酒「四万の一雫」。解禁日の祭りが超盛大と聞き行ってみた

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群馬県北西部にある名湯、四万温泉。毎年大寒の日に開催される「湯立祭(ゆだてさい)」という祭りで、一般には流通しない超激レアの日本酒「四万の一雫」が解禁され、無料で振る舞われるのだそう。その祭りが酒以外にもいろいろと採算度外視でスゴイと聞きつけ、行って確かめてきました!

 

解禁日の祭りは四万温泉最大級のイベントだった!

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四万温泉の最寄り駅はJR吾妻線、中之条駅。そこから40分、バスに揺られて到着です。
本日の最高気温は2度。家にある防寒装備を全力で着込んでやってきました。
うかがった2017年は例年と比べて積雪が多く、つい先日まで毎日40cm積もるほどの雪が降っていたのだそう。

 

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「四万の病が治る」という由来がある四万温泉は、四万川沿いに旅館が並ぶ静かな温泉地です。「つえを持って湯治に来たおじいさんが、帰るときにつえを忘れて帰っていった」そんな話も残っているほど、昔から愛され、効能高い温泉が湧いています。
写真手前にある施設は無料の共同浴場「河原の湯」。このような無料の共同浴場は四万温泉内に3カ所現存しています。

 

雪とたき火にあたりながら飲む日本酒のうまさよ

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温泉街中央部から移動し、やってきたのは四万温泉最深部にある共同浴場、「御夢想の湯」。人だかりができていますね。みんな日本酒を求めて並んでいるのでしょうか。
かき分けて進んでみると……

 

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神主さんがなにやら祈りを捧げています。これは「湯立神事の儀」。写真左手の大釜で温泉を炊き、祝詩を奏上します。炊いている温泉は「御夢想の湯」に湧く温泉。四万温泉発祥のきっかけとなった、由緒正しい湯です。

 

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続いて巫女さんが大釜で炊いた温泉に笹をつけ、振りまき始めました。まとう湯気が神々しい……! これは「温湯(おんとう)の儀」。湯笹についた湯立の湯を振りかけて、無病息災を祈る儀式です。

 

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厳かな感じでスタートしたこのイベントこそが「湯立祭」。共同浴場、「御夢想の湯」をここに移築したことを記念して、平成18年から開催されています。歴史の浅い祭りではありますが、1712年に描かれた絵馬の様子をがルーツなのだそう。300年もの昔に、実際に行われていた儀式なのです。

 

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そんなありがたい神事の合間を縫って会場を見て回ると、テントの一角にありました、牧野酒造、純米生酒「四万の一雫」。この日本酒はここで振る舞われているもの以外は、四万温泉の宿泊施設、飲食店でしか提供されません。それはすなわち、四万温泉以外でお目にかかることはないということです。

 

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四万川の水で育った「玉苗」という酒米を使い、火入れをしないことで風味を残した限定1500本生産のこの日本酒。飲んでみると甘いにおいが鼻に抜け、口の中に日本酒の風味が広がり、喉を通り過ぎるとピリッとした口触りが残る……刻一刻と味が変わっていくぞ! これが生酒……なんて繊細なんだ!
それをたき火にあたりながら飲む。すすのにおいも「四万の一雫」の味わいを引き立てているようです。

 

お金払いますから! といいたくなる大盤振る舞い

ここでしか飲めない日本酒が飲めた……それだけでも満足なのですが、湯立祭ではお金を払いたくなるくらいいろんなものが振る舞われています。

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祭りが始まってから降り始めた雪が、体温を少しずつ奪っていきます。そんな体には最高にうれしい甘酒。無料です。お米由来の甘み、日本酒の風味が体に染み渡る……5杯飲みました。

 

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そしてこちらも体が温まる「牛汁」。大根、ごぼう、人参と、うま味がよく出たあっさりスープは全く飽きがきません。一杯に一つは入っている大きな里芋、柔らかくてうまい! 3杯食べました。

 

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食べていると温泉協会青年部のみなさんが餅つきを始めました。その横で応援しているのは群馬県のゆるキャラ「ぐんまちゃん」。その隣には四万温泉を擁する中之条町のゆるキャラ「なかのん」です。おでこの雪の結晶が光るのですが、雪で濡れても大丈夫なのか心配でした。

 

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つきあがったこの餅、四万温泉の湯を使って餅米を炊き上げています。餅の外側はしっとり柔らかく、中心部には食べ応えのある餅の食感が残っており、艶やかな口触りが印象的。餅をつき終わった瞬間に行列ができる好評ぶりで、もらって食べて並びなおし、3つ食べることができました。

 

祭りで最大の白熱! 景品付き温泉まんじゅう大盤振る舞い!

湯立神事が始まってから約1時間30分、「四万の一雫」目当てだと思っていたみなさんの、真の目的を見ることになりました。

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一心不乱に空に手を伸ばす参加者のみなさん。そこに向かって舞台から何か投げています。これは「福まんじゅう投げ」。投げるまんじゅうの数はなんと500個! 祭りで一番白熱するため、事前に整理券を配り前半後半に分けておこないます。

 

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私もまんじゅうを2つゲットしました! 投げているかたに目で訴えかけると効果的です。勝ち取った2つの袋を開封してみると、こしあんと粒あん、種類の違うまんじゅうが入っていました。取れなかった人も最後に残念賞としてまんじゅうをもらえます。

 

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まんじゅうをゲットした人にはさらなるチャンスが。
500個のまんじゅうのうち180個にあたりが付いており、書かれた景品と引き換えることができるのです。その景品がすさまじく、四万温泉の無料宿泊券や、四万温泉内で使える1万円分の金券など、祭りで振る舞われる食べ物以上に大盤振る舞い!

 

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ちなみに私は四万温泉のキャラクター「摩耶姫(まやひめ)」のサイダーが当たりました。正直ハズレ感がありますが、無料でたっぷり飲み食いしてまんじゅうもらって、サイダーまでもらえたら十分でしょ!

 

素朴な食、静かな温泉こそ四万温泉の醍醐味(だいごみ)

大盤振る舞いの「湯立祭」、満喫させていただきました。ただしこの祭りは年に一回大寒の日のイベントで、普段の四万温泉は都会の喧騒(けんそう)から距離を置かせてくれる、静かな温泉地です。

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秋には山が紅葉に染まり、山の幸が大変おいしくなります。

 

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冬は今日のように、山々と温泉街が雪で白く染まります。雪景色を眺めながら露天風呂に浸かるのもよし、群馬県伝統食の鍋料理「おっきりこみ」で温まるのもよしです。

 

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温泉にのんびり浸かって、部屋で同行者と語り合いながら群馬県の地のものをいただく。
四万温泉はそういう、本質的な温泉旅行を楽しめる温泉地です。ぜひ季節ごとの味わいを、そして大寒の日(2018年は1月20日 土曜日)に「四万の一雫」を飲みに来てください!

 

温泉地情報

一般社団法人 四万温泉協会

住所:群馬県吾妻郡中之条町大字四万4379
電話番号:0279-64-2321
ウェブサイト:http://shimaonsen.com/

※この記事は2018年1月の情報です。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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鶯谷の巨大銭湯「萩の湯」はネパール人店長で、名物がイエローカレー?

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風呂上がりに食べたいものというと、さっぱりそば、酒に合う煮込みや揚げ物、キンキンに冷えたアイスと、人それぞれ、多岐にわたります。

 

「ひだまりの泉 萩の湯」は、2017年4月末に建て替えオープンした最新型の銭湯です。そこに併設されている食事処では、カレーが店長の一押しとして紹介されています。いや、汗を流した後にカレーを食べて汗かきたくないよ! そのイメージを踏まえたうえでなぜオススメするのか、話を聞きに行ってきました!

 

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やってきたのは、改札を抜けた瞬間から食の誘惑だらけ、山手線の鶯谷駅。

 

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駅前の言問通りを越えて歩くこと3分、通り沿いの巨大なビルに「萩の湯」の表記が。
こ、これが銭湯……! 2階がフロントと飲食店、3階が男湯、4階が女湯と、敷地を広々と使い尽したビル銭(ビル型銭湯)です。早速ビールを迎え入れる準備をしに、風呂へ向かいましょう。

 

都会のど真ん中でこの規模かよ……!

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こちらが内湯(男)です。デケェ!! 私は風呂デューサーを名乗り、150軒ほどの銭湯に行っていますが、確定で1番デカイです。手前には週替わりの入浴剤(この日はヨモギ)が入った高温湯、その隣に3種類のジェットと電気風呂があります。どの湯船も大の字になれる広さです。

 

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背景画の下にはモリモリの泡付きを体験できる炭酸泉があります。
炭酸泉というと評判で順番待ちしがちな湯船。「萩の湯」の場合は炭酸の湯船もでかいので、順番待ちはなさそうです。背景画は、山と桜のシンプルな日本画風。ふんわり優しい雰囲気の背景画を眺めながら、ぬるめの炭酸泉で心が穏やかになってゆく……!

 

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露天風呂もあります。これがまたでかい!!
しかも露天風呂のお湯は「光マイクロバブル湯」。0.02mm~0.03mmの細かい泡をつくりだし、その泡が汚れを洗浄、そして肌に浸透することで保湿効果があるのだとか。湯船に注ぐ日の光、それを受けて輝く湯……温泉地に来たかのようなゆったりした時間が流れています。

 

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充実した湯船に加えサウナと水風呂も装備しています。本来サウナは有料ですが、6時~9時の朝湯時間はなんと無料! 460円でこの規模と設備、これ以上の銭湯はないんじゃなかろうか!!

 

そこまでやらんでも……徹底的に店内で手作り

素晴らしい風呂に入ってビールを迎え入れる準備が整わないわけがない!
ドライヤーもそこそこに、髪半乾きで食事処へ向かいます。

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ここが「食事処 こもれび」。またデカイな! 席数は全73席。その気になれば結婚披露宴もできそうです。

 

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まず注文したビールのお供は「皮から手作り焼き餃子(420円、土日祝日のみ)」と「定番自家製モツ煮(390円)」。風呂屋さんについている食事処って、厨房では解凍、加熱するだけのことが多いですよね。そんななかでここは手作りにものすごくこだわっているんです。

 

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厨房をのぞかせてもらうと名前の通り、自家製皮に自家製あんを、職人さんの手で詰めていました。粗びき肉を使用したあんは、かむほど肉汁が出てきてうまい! 厚めの皮は自然とかむ回数を増やし、一層肉汁のうま味が感じられます。

 

モツ煮も大鍋で2日間、店内で煮込んでいます。驚かされたのは大根。煮込むとグズグズになりがちですよね。しっかりと歯ごたえを残しつつ、奥深くには大根らしい味わいが詰まっている! 酒のお供を超え、完成された食事に仕上がっています。

 

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ガッツリ食べたいかたには「ビーフカットステーキ(980円)」がオススメ。
THE 肉のこのステーキ、信じられないほど柔らかい! そして塩コショウで味を誤魔化すことなく、合わせるソースもステーキの味を活かすさっぱり味。この細やかさはもはや和食、ステーキでここまで繊細さを感じられるなんて……。

 

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その秘密は生の塊肉を直接買い付け、店内でカットすることです。さらに話をうかがうと、ビーフカットステーキは肉のさまざまな部位を、厳選した状態で提供されています。部位が違っても一律で同じレベルのおいしさに仕上げる職人の腕も、この味に大きく関わっているのだそう。

 

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銭湯の食事でこんなに質の高い食事ができるとは思わなかった! 風呂上がりのビールももちろんうまいんですが、ビールの存在を忘れるくらい引き込まれるメシもすごい! 感激しました。

 

監修した人とこだわりがすごいイエローカレー

ひとしきりビールを楽しんだところで、名物メニューのカレーをいただきましょう。

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パプリカが乗っているこのビジュアル……本格的なやつだ! イエローカレーは俗にいうバターチキンカレー。トロトロに溶けた玉ねぎと、溶けつつも味がしっかり感じられる鶏肉が入っています。

 

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店長オススメイエローカレーということで、とっても歯がきれいな店長さんに話をうかがってみました。お名前はラマさん。「萩の湯」はネパール人店長の銭湯なのです。

 

ーーなぜ日本に?

 

音楽が好きで、SONY製のウォークマンを愛用していたのが、日本に興味を持ったきっかけです。それから電化製品にも興味を持つようになり、大学生のときに日本に留学しました。

 

――なぜ銭湯で働こうと? ネパールには入浴の習慣がないと聞いたことがありますが……

 

そうです、ネパールではお湯には浸からず、常温のシャワーを浴びるのが一般的です。銭湯のことはまったく知りませんでした。銭湯で働き始めた理由はとにかく仕事を探していたからですね(笑)。そんなときにたまたま「萩の湯」の社長と出会い、姉妹店で経験を積んで、現在は「萩の湯」で店長として働いています。

 

――イエローカレーはどうですか?


おいしくできていますよ! 濃すぎず薄すぎず、バランスがいいです。スパイスの香りが強い本格的なネパールカレーにする案もあったのですが、女性や子どもでも食べてもらえるような味付けを求めて、いまのイエローカレーにたどり着きました。

 

カレーの本場、ネパール出身の店長が言う「おいしい」。日本人のそれとは重みが違う……! そしてラマさんのチャレンジ精神ですよ。そのおかげで本来存在しえないイエローカレーを、ここで食べることができる! 前置きは十分でしょう、いただきます!

 

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ココナッツの風味が口に入って喉を通り抜けるまで、ずっと濃厚に感じられる! その風味をベースにごまだれのようなコク、あと引く辛さもあり……和風、かつアジアなカレーだ! ネパール人店長の銭湯で出すものとして、これ以上象徴的な食べ物はないんじゃないか!

 

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仕込みの様子をのぞいてみましょう。玉ねぎにココナッツミルクを加えて煮込んでいきます。ちなみに一度の仕込みで使うココナッツは約10缶、4リットル! これで70人分です。

 

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12種類のスパイス、鶏肉を加え煮込むこと3時間。完成後は、真空パックができる機械で密封、衛生的に管理できる温度まで一気に冷やすブラストチラーで急速冷却します。どちらも保健所のかたが「銭湯でこの設備!?」と驚くほどの調理設備なのだそう。

 

解凍、加熱だけなんでしょ? というイメージとはかけ離れた徹底手作り。この工程ならどうしたってうまくなる!

 

こだわりを支える人と覚悟がアツイ!

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スーパー銭湯と差別化をするため、徹底的な手作りがこだわり、そう語るプロデューサーの駒崎さん(写真右)は、ここで食事を担当するために前職を辞めてきました。なんという覚悟……!

料理長を担当する平原さん(写真左)はホテルや迎賓館のシェフとして腕を振るった経歴の持ち主です。さらに厨房にはホテル、レストランで経験を積んだ手練れをスカウトしています。

この人選、設備、そして覚悟……! 付属の料理店、そのイメージで「萩の湯」を見てはいけないのです。

 

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昼間っから都内最大規模の銭湯でのんびり風呂に入って、手作りの料理を肴に酒……天国じゃなければなんなのか。閉店まで腰をあげることができそうにありません。
風呂、食ともに頂点を目指した「萩の湯」。風呂好きはもちろん、食通のかたにこそ来てほしい! 鶯谷の新名所で究極のいやしを体験してみては?

 

お店情報

ひだまりの泉 萩の湯

住所:東京都台東区根岸2-13-13
電話番号:03-3872-7669
営業時間:銭湯、萩の湯…6:00~9:00、11:00~25:00 食事処こもれび…11:30~22:00
定休日:第3火曜日

haginoyu.jp

※この記事は2017年9月の情報です。
※金額はすべて税込みです。
※浴室内は許可を得て撮影しています。営業中は撮影厳禁です。
※餃子は平日でも「平日餃子(390円)」を販売しています。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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リトルヤンゴンこと高田馬場を堪能するなら、銭湯→ミャンマー料理店がオススメ!

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普段は風呂屋の番頭さん、休日は風呂あがりに飯を楽しむ、風呂デューサーの毎川直也です。今回、風呂とメシをいただくのは、リトルヤンゴンこと高田馬場。じつはここ、ミャンマー料理のために出来上がった街なのでは、と思うほど、ミャンマーとの共通点が多いんです。今回はさらに新情報、ミャンマーの生活を感じられる銭湯があるんだって……! いったい高田馬場はどうなっちゃってるんだ!

 

多くの民族と、多くの外国人

そもそもミャンマーという国をご存知でしょうか。

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(ざっくりとした地図で恐縮です)インド、中国、タイといったアジアの大国と面し、かつ国内でもモン族、カチン族といった多くの部族が生活しています。
各国、各部族、それぞれの文化が影響しあい、ミャンマーという国が出来上がっているのです。

高田馬場はリトルヤンゴン(ヤンゴンはミャンマーの旧首都。現在はネピドー)として有名です。その名前を聞くとミャンマー人のまちというイメージですが、実際は、国籍問わず外国人が居住しているインターナショナルな街なのです。

 

民族の生活を感じられる銭湯

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国際色豊かな高田馬場、現在でも銭湯が何軒か営業を続けています。ミャンマー料理の前にやってきたのは、高田馬場駅から徒歩10分程のとってもきれいな銭湯。一見ミャンマーとは全然関係ないですね。

 

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まずは屋号を見てください。「世界湯」!

創業当時は戦後復興の時期、世界の人にも風呂に入ってもらいたい! という思いからこの屋号に決めたのだそう。
間違いなく外国感はある。でも今回はミャンマーですから。もうちょっと絞り込まないと。そんな思いは置いておいて、まず浴室に行ってみましょう。

 

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ミャンマーを感じられるもの、それがこちら! モザイクタイルの背景画。滝ですね。
これは南米が誇る世界三大瀑布「イグアスの滝」。滝つぼ周辺の森ではきっと、南米の部族が独自の生活を送っているのでしょう。冒頭にお話したとおり、ミャンマーは部族の国。この背景画にはミャンマーと同じ、部族の生活が描かれている! かもしれないのです。

 

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現地でも絶対不可能な「イグアスの滝打ち風」も可能です。私の身長は170cm。200cmくらいあればそれっぽい映像になると思います。

 

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見て思うだけでは足りないかた、サウナに入ると一層リアルなミャンマーを体験できることでしょう。
ミャンマーの平地部分は高温多湿な気候。世界湯のサウナの温度は80度前後とマイルドな熱さのため、ミャンマーに思いをはせるにはちょうどよいはず。たぶん。

 

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ちなみに女湯の背景画はスイス、マッターホルン。ミャンマーとは無関係? いや、関係あるんです。
ミャンマーは南北に長い国なので、北方の山岳地帯では雪が降る地域もあります。暖かい洗い場、湯船を平地とし、そこから北を眺めればミャンマーには実際にこのような景色があるかもしれません。

 

ウェッターチンは真っ先に食べたほうがいい

男湯では部族の暮らし、女湯ではミャンマー北部の風景に思いをはせて、サウナで高温多湿な環境を体験したところで、メシを食べに行きましょう。

 

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ミャンマーへの気持ちと空腹感を高めてから訪れたのは、「世界湯」から徒歩3分のミャンマー料理店、「ヤマニャ アジアキッチン」。
これでもかと店頭に掲載されているメニューリスト。 ミャンマー料理を知らない人でも、これなら雰囲気がつかめます。
ちなみにヤマニャとは、ミャンマー中部にある地域の名前。アメリカにTOKYOという日本料理があるのと同じですね。

 

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アジア料理店って、その国の色が濃ゆい内装ですよね。インド料理店とか、どこもインド一色じゃないですか。
そのイメージで入ってみると店内はわりとあっさりしていました。気になるのは天井のミラーボールくらいですね。

 

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メニューが読めない!

そう、ミャンマーはミャンマー語が公用語です。初めて見た!

もちろん「ヤマニャ アジアキッチン」では日本語メニューもあり、そして日本語対応してくれます、ご安心を。

 

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まず頼んだのはウェッターチン(800円)。豚の皮周辺の部位を米と一緒にバナナの皮に包み、一週間熟成させたものです。生ハムとソーセージを合わせたような見た目、そこにフライドガーリックをまぶし、ネギ、ニンニク、パクチーを添えていただきます。
例えると酸味のあるソーセージ、上品な肉の味とぷりぷりとしたコラーゲンの食感があり、とんでもなくうまいです。

 

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これはどう考えても相棒はビールしかない! モンドセレクション金賞を7回も受賞した、うまさ折り紙付きのミャンマービール(600円)とともにいただきます。ミャンマービールはアジアらしいスパイスと競合しないライトな飲み口。これ一気に全部食べられる! うますぎる!

 

どこか和風でもある、多文化融合のミャンマー料理

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続いていただくのは、ミャンマー風ココナッツカレーラーメン、オウンノコスウェ(750円)。ネーミング的に日本に寄せてつくった創作ラーメンっぽいですね。実はミャンマーでよく食べられている定番メニュー。緑の葉っぱはもちろんパクチー、そして揚げたカリカリも乗っています。

 

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終始濃厚なココナッツが楽しめるこちらのスープ。味わううちに辛味が出てきて、喉を通り越した頃にはまたココナッツの風味、甘みが追いついてきます。日本のカレーとはもちろん違いますし、インドのようにたっぷりスパイスなわけでもない。カレーというよりもスパイスの効いたココナッツスープという印象です。

 

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中央に陣取っている鶏肉、和風な味付けです。海外の日本料理店で、久しぶりに焼き鳥を食べたような気持ちになります。麺はソフト麺のような軽い食感、そしてあっさりとした味わいです。
このラーメン、ミャンマーでは朝食で食べることが多いのだそう。うまいけど朝にはきついかな……。

 

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続いて注文したのは鳥と豆と野菜のあえ物、チェッヨーぺイェトゥ(800円)。思わず「これあえ物ですか?」と確認するほど、どう見ても汁物です。
スープの底に沈む鶏肉には小骨が残っており、歯ごたえのある食感が特徴です。ミャンマーではおかずのような位置づけで、これが食卓の中央に置かれ、ご飯と一緒に食べます。

 

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口に入れてみると、け、けっこう辛い! 唐辛子をもろに口に入れてしまったようだ……あえ物なのでちゃんと混ぜないとダメですね。
カレー同様、スープそのものを大量のスパイスで味付けしているわけではないので、豆のまろやかさ、鳥のうま味が出ていておいしい! この繊細な味はこってりした和食という感覚が近いかもしれない。

 

場所がメシをおいしくする。その最上級が高田馬場

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銭湯では「外国としてのミャンマー」を想像しました。ところが、ミャンマー料理のなかには日本の味があった。そう思って手元を見ると、菖蒲の花が描かれた箸袋。なんだかミャンマーが身近な国になった気がします。

 

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高田馬場は多くの外国人(民族)が暮らし、新宿池袋という大都市(国)に囲まれている……立地条件はほぼミャンマー! そしてミャンマーを感じられる湯、ホンモノのミャンマー料理。ここまで食に向けて条件が整った街、そうそうあるものではありません。最高の組み合わせは高田馬場でミャンマー料理。確定です!

 

お店情報

ヤマニャ アジアキッチン

住所:東京新宿高田馬場3-14-16太田ビル101
電話番号:03-6908-5233
営業時間:11:30~14:30、17:00~24:00
定休日:月曜日
Facebookページはこちら

※この記事は2017年8月の情報です。
※金額はすべて税込みです。
※浴室内は許可を得て撮影しています。営業中は撮影厳禁です。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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下町の庶民文化をハシゴする……? 「老舗の湯丼」と「天丼(ハ)」とは?

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風呂デューサーとしても活動している毎川直也です。メシ通レポーターでありながら小さめの胃袋の持ち主な私ですが、「丼のハシゴ」をしたことがもちろんありません。想像するだけでうぷっとなります。

今回ご紹介するのは、そんな私と同様に小食のみなさんに是非挑戦してほしい、湯丼と天丼(ハ)のハシゴメシ。丼をハシゴしてうまくなる? 湯丼って……お粥? そして(ハ)って……?

 

いきなり盛大にネタバレ

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台東区、日本堤エリアにやってきました。
住宅街のなかにスカイツリーの穴場ビューポイントが多数点在しています。

 

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東京メトロ日比谷線の三ノ輪駅から歩いて10分、やってきたのは銭湯「湯どんぶり 栄湯」。
屋号でもろに湯丼の秘密がわかっちゃいましたね。そう、湯丼とは湯どんぶり、銭湯のことです。ただ、丼にひっかけているのは屋号だけではないんです。

 

はみ出す具材は……自分!?

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内湯には水風呂に2種のジェット、バイブラに電気と、銭湯の基本設備をしっかりと装備。このほかにも岩風呂風の薬湯もあります。実装当時これほど設備が豊富な銭湯はあまりなく、どんぶりのようにさまざま味わいが楽しめる、ということで「湯どんぶり 栄湯」に改名したのだそう。

 

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設備が具ならお湯は米、どちらが欠けても丼は成り立ちません。実は「湯どんぶり 栄湯」のお湯はすべて温泉、加えて硬度成分を取り除いた軟水になっており、柔らかい肌触りが特徴です。具材の種類が豊富、米も一級品。シャレっぽい湯丼ですが、シャレにならないハイレベルなのです。

 

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こちらは2017年5月にできた新名物、露天風呂! 結構デカイ!
そしてなんでしょう、白い! これ入浴剤ではなく、細かい泡です。これはナノファインバブルとよばれるもので、手に書いた油性ペンの文字がこするだけで消えたという逸話があるのだそう。すさまじい洗浄力です。

 

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奥に佇んでいるのは「丼(どんぶり)湯」! 丼を食べる、いや、丼になれる!
この湯船のお湯は常にあふれさせているため、ほぼ一番風呂を味わうことができます。入ってみると、ザザザザーっとぜいたくな音! 家の風呂だとあふれるお湯がもったいなくて、心から楽しめないんですよね。ここではあふれさせ放題です!

 

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露天風呂の横にはヒマラヤ岩塩サウナを完備。湿度のあるサウナなので、岩塩の塩気が室内に飛散し、その塩気を吸引すると気管支によいと言われているようです。サウナのあとは水風呂に漬かるもよし、露天風呂で涼むもよし。

これで入浴料金460円、サウナ料金200円の合計660円! 都内なので、温泉地に行くより交通費がかからない!

 

戦火を逃れた奇跡の登録有形文化財

さて、湯丼で心が満たされ、腹が減りました。ハシゴメシでこんなに2軒目を求めることってそうそうない! 精神衛生的にも大変よいハシゴメシ、続いてはこちら。

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「湯どんぶり 栄湯」から徒歩2分、2軒目は天ぷら屋さんの「土手の伊勢屋」です。
おお……なんという老舗! 創業は1889年、現在の店舗は1927年に建築したもの。この一角だけタイムスリップしたような雰囲気です。

 

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1945年、このあたりは空襲の被害を受けました。しかし「土手の伊勢屋」は風向きの関係で奇跡的に焼け残り、当時の姿のまま営業を続けている貴重な存在。いわばパワースポットなのです。2010年には登録有形文化財に指定されました。

 

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のれんをくぐってすぐ左手は揚げ場となっており、4代目が黙々とてんぷらを揚げています。その後ろ姿はまさに職人、集中力がこちらにも伝わってきます。
※取材のため特別に撮影させていただいています。

 

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ちなみにご主人の正面の引き戸を開けると外とつながっています。昔は火災の原因となるため、屋内で天ぷらをつくれませんでした。そのため屋台で、軒先に具材を並べてお客さんが注文したものを揚げていたのだそう。

香ばしい油のにおいで、通りがかりの人も思わず天丼を食べたくなる! そんな宣伝効果もありますね。

 

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ちなみに「土手の伊勢屋」ではごま油にコーン油をブレンドした油を使用。ごま油で香りとコクを、コーン油で衣に軽さを出しています。
油物を食べると胃もたれしやすい私でも、「土手の伊勢屋」の天丼はまったく胃もたれしませんでした。老若男女問わず天ぷらを満喫できます。

 

天丼の味を支える、天丼屋さんじゃない仕事

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「土手の伊勢屋」の天丼は(イ)、(ロ)、(ハ)の3種類。それぞれ乗る具材が違います。
そう、天丼(ハ)の(ハ)とは、どんぶりの種類のこと。ちなみに松竹梅といった表現をしないのは、(イ)(ロ)(ハ)のどの天丼にもそれぞれの良さがあり、ランク付けされた印象を持ってほしくないからだそうです。

 

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それではいただきましょう、これが天丼(ハ)(2,500円)! はみ出してる……! 現在のご主人の代から、見た目のインパクトを求めていまのスタイルになりました。
まず手前に野菜3種、この日は左からミョウガ、ししとう、枝豆。春にはソラマメ、夏には紅芋、秋には栗など、季節ごとに変わります。
口当たりが軽い衣、そしてタレの味が優しいため、野菜のみずみずしさが強く感じられる!

 

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野菜の下には、丼から飛び出すサイズのエビ。大きいほど大味と思いきやさっぱりとした繊細な味! 弾力のある身はかむほどに味が出てきます。
その隣にはいわゆる小鯛のカスゴ。人生で食べた白身魚のなかで一番の柔らかさでした。店主さんにうかがうと、天丼の具材として提供しているのはおそらくここだけとのこと、大変貴重な天ぷらを味わえます。

 

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魚介2種の下には一粒一粒甘みが閉じ込められた小エビのかき揚げと巨大な穴子です。
そして天ぷらを下から支えるご飯、これはお米屋さんと天丼に合う米を探し求めて見つけた宮城県のひとめぼれを使用しています。夏場きちんと米を冷蔵する農家さんから仕入れることで、1年中同じ品質を保っています。べチャっとせず、タレと絡みつつも米の味が感じられますね。

 

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そして最高にこだわっているのがこの穴子。
いままで食べてきた穴子は何だったのかと衝撃を受けるほどの柔らかさ。かむ必要もなく、舌ですりつぶせます。外パリ中フワの究極が穴子の天ぷらだったとは!
なぜそこまで柔らかくできるのか、店主さんにその秘密をうかがうと、とある場所へ案内してくれました。

 

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案内していただいたのは、大きな水槽がぽつんと置かれている小屋。水槽をのぞくとたくさんの穴子が! 伊勢屋では穴子を生きたまま保存し、当日の朝締めています。
穴子の硬さは「死後硬直」によってでるもの。当日の朝締めれば死後硬直の前に調理ができ、柔らかさを維持できるのです。とはいえ維持管理は難しく、穴子が生息する汽水域の塩分濃度、2.7%を維持しつつ、穴子にストレスを与えない水質維持等、天丼屋さん以上の仕事をおこなうことであの柔らかさが提供されています。

 

ハシゴしたのは、庶民文化だった

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「天丼は庶民の味だ。」先代からそう伝えられてきたご主人。その味、価格を守りながら、インパクトのある見た目、穴子の朝締めといった挑戦にも取り組んだ結果、営業時間中はいつも行列という大盛況となりました。

 

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そして湯どんぶり。銭湯は本来、地元の人向けのお風呂です。露天風呂、温泉認可によって、地域の外、果ては外国からのお客さんも獲得するようになりました。

老舗が古きよきものを残しながらチャレンジに取り組み、地域に人を呼んでいるのです。1日休みの日は、2つのどんぶりをはしごして、心身ともにリフレッシュしてみては?

 

お店情報

湯どんぶり 栄湯

住所:東京都台東区日本堤1-4-5
電話番号:03-3875-2885
営業時間:14:00~24:00(日曜祭日は12:00~)
定休日:水曜日

sakaeyu.com

 

土手の伊勢

住所:東京都台東区日本堤1-9-2
電話番号:03-3872-4886
営業時間:11:00~14:30
定休日:水曜日、第4週火曜日

www.dotenoiseya.jp

www.hotpepper.jp

 

※この記事は2017年7月の情報です。
※金額はすべて税込みです。
※浴室内は許可を得て撮影しています。営業中は撮影厳禁です。
※「湯どんぶり栄湯」から「土手の伊勢屋」の順番にハシゴできる日は限られています。それぞれの営業時間をご確認ください。ちなみに、逆の順番のほうがハシゴしやすいです。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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信玄餅×赤ワインの衝撃!ソムリエが選ぶ山梨グルメと山梨ワインの世界

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山梨県といえばワインの生産が盛んです。加えてほうとう、信玄餅、鳥モツ煮……おいしいメシもたくさんあります。それぞれ食べても十分うまい。ただ、ワインとうまく組み合わせたら、もっと山梨の味を感じることができるのではないでしょうか。

山梨県の食に関する知識が豊富であり、かつソムリエがいるお店……! でも、そんな都合のいいところがあるのだろうか……って、実は日本橋にあるんです!

 

東京にある山梨でお得にワインが飲める

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全国各地の物産館が集中する東京の日本橋エリア、ここに山梨県物産館「富士の国 やまなし館」はあります。

店内には代表する桔梗信玄餅を始め、1,300を超える山梨県関連商品が並びます。
特筆すべきは山梨の農産物。もも、ぶどうの時期は果物が売り上げナンバーワンなのだそう。果物って自宅まで持ち帰るの重いし、近所のスーパーでも売ってますよね。それでもよく売れるのは本当に味がいいからなのでしょう。

 

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そして「富士の国 やまなし館」の目玉はこれ、ワインです。扱う銘柄は250を超えます。幅広い価格帯、時期によっては限定品も並び、ワイン通でもうなる品ぞろえなのです。ワインに疎いかたでもご安心を。ソムリエの資格を持っているスタッフがおり、合わせる食事や好みを伝えれば的確にワインを選んでくれます。

 

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山梨の物品を買えるだけではありません。お店の一画はイートインスペースとして山梨県産ワインの飲み比べや、ワインに合うおつまみ、一部の商品を食べることができます。ちょっといただいてみましょう。

 

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評判のワイン3種飲み比べ(550円~、1グラス50ml)。この日はスパークリングワイン1種、白ワイン3種、赤ワイン3種から選べました。ボトルで買うとお高めな銘柄もリーズナブルに飲むことができるため、2人組で6種類を試飲するお客さんも多いのだそう。

東京のど真ん中で、いいものがリーズナブルに飲める! 日本橋エリアに勤める人は、ついつい寄っちゃうだろうなぁ。

 

山梨グルメに合わせる山梨県産ワインをソムリエに選んでもらう

イートインスペースで山梨県のワインをいただくだけでもいい時間と言えるでしょう。

しかし、今回はそれだけではありません。山梨ワインのさらなる深みを味わうため、山梨をよく知るソムリエに、山梨グルメに合う山梨県産ワインを選んでもらうことにしました。

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ワインを選んでいただくのはシニアソムリエの船戸さん。
シニアソムリエとは、ソムリエの資格を取得してから3年経過し、アルコールにまつわる特定の仕事に10年以上、現在進行形で従事している人にだけ受験資格が与えられ、そこからさらに試験を受けて認定される資格です。私が思うに「プロとしての経験、自覚」が受験の前提にある資格なのです。

今回は船戸さんのご協力をいただき、山梨ワインと山梨グルメが織りなす深みをのぞいてみましょう!

 

1. ワインのスパイス化

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まずは山梨を代表するB級グルメ、鳥モツ煮とワインを合わせます。もともとはそば店でそばができるまでの間に食べるもの、つまりお通しのような食べものだったのだそうです。
食べて納得、酒に合わせる濃い味ではなく、鳥モツそのものの味を前面に出した繊細な味なんです。これは意外とワインには合わせやすいかもしれない!

山梨では鳥モツ煮に山椒を合わせます。山椒=スパイスというところに注目し、スパイスの風味が特徴の甲斐ノワールをご用意しました。山椒を付けずに召し上がってください」

ワインがスパイス……? ダメだ、ワインの心得がない私には全然理解できない!

 

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食べてみると言いたいことがよくわかりました。甲斐ノワールは口に入れた瞬間から辛味が広がり、しばらくその感覚が持続するような口触りがあります。その状態で鳥モツ煮を放り込んでかむと、広がる鳥モツのうま味とともに辛味が消えていくこの感じ……これがスパイス!
素材とワイン、両方の特徴を知らないと提案できない組み合わせ……シニアソムリエの肩書はだてじゃない!

 

2. 陸上の400mリレーじゃないか……!

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続いて組み合わせるのは桃カレー
なんとも心地の良い甘さが前面に出たカレーはとっても優しい味わい! 最初に感じる果実系の甘みはかむほどに米の甘さとバトンタッチし、最後にはほんのりと辛味が口に残り、大変おいしいカレーです。

 

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カレーには固形の桃が入っています。そりゃ果物の甘さも出る!
このカレーとワイン、両方が持つ「果物の甘み」をどういかすのか、そして甘みの後に押し寄せる辛さという波をどう乗りこなすのか。

「カレーは冷たい飲み物と一緒に食べるもの。その点ワインは冷やすと渋みが出やすいため、渋みの少ないものが大前提です。そして凝縮した味わいの食べものに合う赤ワインに絞って、カレーに寄り添うフルーツの香りを持つマスカットベリーAをご用意しました。カレーとワイン、両方の果物の甘みをお楽しみください」

 

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なんだこの甘み……! これはリオ五輪で銀メダルを勝ち取った400mリレー、そこでよどみなくおこなわれていたバトンパスが口のなかで再現されているようだ! フルーツ、米、ワインと、甘みが絶妙なタイミングで引き継がれる!
それぞれの甘みが似ていること、そして口に広がる順番をしっかりと把握していないと、この味は生まれない……! 鳥肌が立つうまさでした。

 

3. 旅のお土産から目上のかたへの贈答品へ

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最後に検証するのは山梨県のお土産代表、桔梗信玄餅。ここで難しいのは黒蜜ではないでしょうか。濃い甘みはワインのコク、繊細さを飲み込んでしまうのでは……この最高難度と思える組み合わせ、船戸さん、お願いします!

「信玄餅には甘口の酒精強化ワイン、周五郎のヴァンをご用意しました。アルコール発酵の途中でブランデーを添加することによって、ぶどう果汁の甘みをワインに残すとともに、ブランデーのコクや風味が与えられます。特に信玄餅の黒蜜の風味と相性がよく、単体で召し上がるよりも風味が豊かになります」 

 

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検証する前に、情報が錯綜している「信玄餅の正しい食べ方」について聞いてみました。真ん中の餅を横によけて、できたスペースに黒蜜を入れるのが正式のようです。
味はもはや説明不要でしょう。黒蜜の濃い甘さをきなこが程よく抑えつつ、次第に餅の甘さへ移行していく。単独で十分なうまさです。

 

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ちなみに私は包み袋に全部出して混ぜる派。きなこをこぼさず、食べ残しなく食べられるうえに、そのまま捨てられるため、いろいろと楽です。
ただこれは見栄えが良くないとのことでした。TPOをわきまえて、信玄餅を楽しみましょう!
疑問を解消したところで本題に戻ります。

 

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信玄餅を口に入れ、即座にワインを注ぎ込む……あれ? 知ってる信玄餅じゃない!
黒蜜、餅、ワインが混ざりあった濃い甘さ、お高いレストランのコース料理にでてきそうなデザートに仕上がっています。桃カレー+マスカットベリーAの爽やかな甘さとは対極、こってりとした口に残る甘さ! 庶民的お土産というポジションからは完全に卒業しています!

 

まだまだ深い、山梨ワインの世界

組み合わせによって広がるワインの世界に驚きっぱなしでした。相性を突き詰めるとこんなに感じるおいしさが違うとは!

 

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とはいえ、数多ある商品のうちの3パターンを検証しただけ。 見ての通り、「富士の国 やまなし館」にはまだまだたくさんの商品があります。そしてイートインスペースには組み合わせの検証をサポートしてくれるソムリエもいます。

 

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しっかりと食べたいかたは同ビル2階のY-wine(わいわい)もオススメ。ソムリエの田崎真也さんプロデュース、山梨県産食材を使ったイタリアンが食べられるレストランです。こちらもソムリエがおり、料理に合わせたワインを選んでくれるのはもちろんのこと、ワインのテイスティングや食べ合わせについての勉強会も開催されています。

 

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仕事帰りに少しずつ、ワインの奥底を見る食の旅に出てみてはいかがでしょうか。
磨いた知識を持って山梨に足を運べば、いっそう山梨グルメ、ワインを楽しめることでしょう!

 

お店情報

富士の国 やまなし館

住所:東京都中央区日本橋2-3-4日本橋プラザビル1F
電話番号:03-3241-3776
営業時間:11:00~19:30
Webサイト:https://www.yamanashi-kankou.jp/tokyo/

※この記事は2017年7月の情報です。
※金額はすべて税込みです。
※今回試飲したワインがワイン3種飲み比べのリストに必ず入っているわけではありません。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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