冬の魚はアンコウ、冬の温泉は化石海水! 茨城県大洗町「潮騒の湯」で旬を両方いただきます!

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野菜をバランスよく食べることができ、味のバリエーションが豊富な鍋。冬を代表する料理です。

 

一方で冬の魚は脂がのり、素材のポテンシャルが最も発揮される時期。私が思うに、その組み合わせの最高峰はアンコウ鍋ではないでしょうか。アンコウの産地である茨城県の湾岸地域、大洗にある温泉で温まってからアンコウ鍋が食べられると聞き、行ってきました!

 

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東京から常磐道、北関東自動車道と乗り継いで茨城県大洗町にやってきました。
ここは大洗サンビーチ。12月でも多くのサーファーで賑わっています。

 

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後ろを振り向くと、空の青に映える黄色い看板が目印、「潮騒の湯」があります。
本日はここでアンコウ鍋と温泉をいただきます。

 

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入り口に回ってみました。「潮騒の湯は太古の海からの贈りもの」……すごく貴重な温泉っぽい!

 

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その源泉が、駐車場の一角にありました。ここで湧き出した源泉を湯船に送っています。
このビジュアル、温泉とともに私の中で親近感も湧いてきました。

 

温まる化石海水と涼しい潮風が快感すぎる

「駐車場温泉」のイメージが強くついてしまった「潮騒の湯」。
とはいえ、海のロケーション、化石海水の温泉と、風呂の条件は極めていいはず。 

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うわー、めっちゃいい!!

涼しい海風で常に湯けむりが舞い踊り、湯船との温度差が気持ちいい! 露天風呂は「潮騒の湯」自慢の化石海水の温泉で満たされています。肌をぬぐうと摩擦が増したような感覚がありますね。

 

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化石海水とは、大昔の海水が地殻変動で岩盤に閉じ込められ、時間をかけて地層の成分が染み込んだ温泉のことを指します。

塩気が濃いのが特徴で、湯上り後も肌に塩の成分が残り、ぽかぽかとよく温まります。
なめてみるとしょっぱく、髭剃りあとがヒリヒリする! 強い塩気のおかげで殺菌効果も高いです。

 

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温泉の力をさらに引き出す設備があります。この「高濃度炭酸泉」です。
湯に溶け込ませてある炭酸の成分で身体の血流が促進され、末端までよく温まります。

 

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身体が温まったら露天風呂で潮風に吹かれて体を冷ます。冷ましているときの景色がこれですよ。


涼んでいると 「苫小牧港を出て大洗港に入港する客船、サンフラワー号がやってまいりました」と館内放送が。タイミングが合えば、大型客船が港へ進んでいく様子を見ることができます。

 

腹……減ってきましたね。

 

海沿いならではの豊富な魚料理

メシを迎え入れる準備が、ほぼ完璧と言っていいほど仕上がりました。
アンコウはもちろんのこと、どんな海の幸がそろっているのでしょうか。食べに行きましょう!

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確認ですが、ここは「潮騒の湯」。お風呂屋さんです。私の目測だと、男湯女湯の面積を合わせた広さを食事処が超えちゃってる気がします。食事に相当な自信があると見た!

 

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そういえば、風呂場でオススメの魚がアナウンスされていました。その現物が食事処の一角に並んでいます。カサゴにカレイ、ブリカマ……風呂場で想像を膨らませてから現物を見ると一層うまそうに見える。これも温泉の効果に違いありません。

 

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アンコウ鍋の前に、お風呂屋さんにはまずない「金目鯛の兜煮」(540円)を食べてみました。見た目がスゴイですが、甘みもスゴイ!
骨の隙間から肉を探すのが楽しいんです。面倒くさくないんです。うまいから!

 

アンコウ鍋と茨城産コシヒカリの相性が最高!

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こちらがアンコウ鍋定食(2,376円)です。アンコウ鍋のふた、半開き! 具材の豊富さを感じますね。
鍋というと2人前から、という縛りがあったりますが、「潮騒の湯」では1人前から用意があります。

 

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煮込んでいる間に刺身をいただきます。この日の刺身は左からヒラメ、イナダ、サーモン。
刺身と一括りにしてしまいがちですが、それぞれ違った味わいと歯ごたえを楽しませてくれます。
特に冬場が旬のヒラメ、プリッとした歯ごたえに、かむととろけるうま味……これが旬なのか!

 

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固形燃料がいい具合に燃えてきたところで、ふたを脱がせてみましょう。こちらが「潮騒の湯」のアンコウ鍋です。アンコウ鍋は醤油の味付けが一般的ですが、こちらは味噌仕立て。たっぷりの野菜とあん肝のうま味がよくスープに出ています。フワフワしたアンコウの身、味噌のこってりとした味付けによく合いますね。

 

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「海のフォアグラ」こと、あん肝も入っています。なるほど、食感は確かにフォアグラ! 磯のうま味が詰め込まれています。ここまでのうま味が生まれるのは、深海というエサの少ない環境を生き抜くため少しずつ栄養を蓄えた結果なのだそう。アンコウの節制をごっそりいただく。なんだか申し訳ない……でもうまい!

 

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鍋の中でやけに主張していた黒っぽいもの、アンコウのヒレです。小骨に気をつけ食べていると、肉の部分がプルプル!
実はアンコウはコラーゲンがたっぷりの魚。肌の調子を整えるのにも効果的と言われています。

 

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とっておいたご飯で最後のお楽しみ、アンコウ鍋の煮汁とご飯でいただきます。
まず思ったのは、そもそも米がうまい! 店員さんに聞くと、茨城産のコシヒカリだそうです。
白米と合わせるとスープのコク、磯のうま味がよく感じられますね。

 

ビジュアル注意! アンコウのエラは結構奇抜

初めてアンコウを食べ、興味が湧いてきた私。アンコウ本来の味も確かめたい! 他のアンコウメニューを注文してみました。

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そこで見つけたのはアンコウの友酢(918円)。甘みのある味噌とともにいただきます。
皿にのっているパセリ、レモン、菊、つま、さくらのやつ以外は全てアンコウ!
こうしてみると捨てるところのないエコ食材と実感しますね。

 

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アンコウの身に加え、左の白い三角形が牛モツのような食感の胃袋。中央の黒い三角形がプリプリコラーゲンが大量に詰まった皮。丸いのが日本酒の大親友、肝。そして一番ビジュアルがえげつない右端のエラを食べることができます。

 

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かじってみました。食感、味ともに足の細いタコですね。かじったところが一部ヒョロっと細くなっているのは、ヒョロヒョロの上に一層皮のようなものが被っているためです。箸でつまんでいる部分は軟骨のようになっていて、ここも食べられます。ぜひ挑戦してみてください!

 

アンコウの旬は冬、化石海水の旬も冬

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深海という過酷な環境で蓄えた肝の濃厚なうま味に加え、エラ、皮には肌の水分を保ってくれるコラーゲンと、アンコウ鍋はまさに冬が最適。
食べて体を温めると、冬を乗り越える力を授かったような気がします。

 

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そして「潮騒の湯」に湧く温泉は地下深くの岩盤に閉じ込められた化石海水。塩分濃度の高いこの温泉は、湯上り後も全身ポカポカと温まります。そう、冬に最適なんです。

食べ物と温泉の旬がかみ合っているところは大変貴重。寒さが堪えるこの季節、冬のアンコウと「潮騒の湯」で芯まで温まってください!

 

お店情報

大洗・日帰り天然温泉 太古の化石海水
潮騒の湯

住所:茨城県東茨城郡大洗町大貫256-25
電話番号:029-267-4031
営業時間:お風呂…10:00~23:00(最終受付 22:20)
     レストラン…10:00~21:30(LO 20:30)レストランのみの利用も可能

※この記事は2017年1月の情報です。
※金額はすべて税込みです。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

過去記事も読む

本当に釣ってんの? 店主が魚を釣るところから実際にお店で食べるまで密着取材!

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物流技術の向上で、私たちはいつでも新鮮な魚を食べられるようになりました。

その鮮度を超える味を求めるとしたら、それは店主自身が釣り上げた「ストーリーのある魚」を食べることではないでしょうか。

釣り好き店主の「仕入れ」に同行し、どのようにして釣った魚が口に入るのか、調査してきました!

 

4時30分、港に集合

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やってきたのは神奈川県横須賀市。ここ長井港はたくさんの釣り船屋さんが営業しており、相模湾へと出船していきます。今回の集合時間は早朝4時30分! まだ太陽が昇っていません。というのも、魚の朝ご飯に合わせた時間設定なのです。

 

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今回私が乗船するのは「長助丸」。船長さんと釣り人2人に同行します。

狙いはカツオ、マグロです。相模湾といえば神奈川県、ド関東です。マグロなんて本当に釣れるのだろうか……。

 

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出船と同時に太陽が顔を出しました。普通に生活しているとあまり見る機会のない日の出。海上から眺めると結構感動ものです。


陸から離れると、釣れるんじゃないかという期待感と、船酔いになってもすぐには陸に戻れない不安感の両方が高まってきました。

 

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このかたが浅草で居酒屋「呑み喰い処 浅草なつの」を経営している夏野さん。ヒゲが整ったイケメンです。

これから釣り上げるであろう魚が、このかたのお店にメニューとして並びます。

 

釣れないと記事にならない! 気になる釣果は……?

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今回エサに使うのはこの「オキアミ」というエビ。写真のような穴ぼこが開いた入れ物「カゴ」に詰めて、海へ沈めます。魚のいる水深まで沈めたら、竿をしゃくります。するとカゴからオキアミが飛び出し、エサを求めて魚が集まってきます。

ハリには色、形をオキアミに似せた疑餌が付いており、それをエサと勘違いした魚が食いつき、釣れるというわけです。

 

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群れが常に海中にあるわけではありません。ソナーで探している間竿を船体に固定し、群れに当たるまで待ちます。

潮風を感じながらただただ海を眺める。退屈っちゃ退屈ですが、これもまたぜいたくな時間だと思いませんか。

 

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景色は最高、気持ちいい潮風。そんな余裕を楽しめたのもつかの間、船酔いでダウンしてしまいました。今回の釣りはエサをまく量が大切なので、群れに当たると釣り人2人は容赦なく、私に釣り竿を持たせました。

そんな時間を朝から過ごすこと8時間。釣果はこんな感じでした。

 

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マグロ12匹、カツオ1匹、オキサワラ1匹、シイラ2匹を釣り上げることに成功!

釣れたのは8時間のうちの一瞬の出来事で、私も釣りまくってカメラを持てず、ウハウハな写真を撮れていません。船長さん曰く「奇跡の大爆釣」。この釣り方でここまで釣れることは稀らしいです。

 

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大漁でうれしい! のですが、釣れるほどつらいのがこの作業。車への積みこみです。
今回の釣果はざっくり計算すると20kg。その重さを台車に乗せて、細い堤防を渡っていきます。

こうして魚を持ち帰り、あとはさばいて食べるだけです!

 

釣った魚を食べに、浅草ホッピー通りへ

2日後、夏野さんのお店にうかがいました。
2日という時間は一般的な流通からしたら相当に早いです。しかも冷凍されていない生マグロですよ、早く食いたい!!

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お店があるのは昼間から飲める、浅草の名所「ホッピー通り」です。

どこのお店にもホッピーが置いてあるという理由で、いつの間にかそう呼ばれるようになったのだそう。本当は「公園本通り」という名前です。

 

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こちらが「浅草なつの」。ホッピー横丁のなかでは抜群にオシャレな雰囲気です。
いったいどのような売られかたをしているのか、そして値段が気になる……!

 

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軒先のメニュー表を見ると……ありました! 2日間の大特価、生めじまぐろ!

釣り上げたマグロが800円で売られている……俺も売りたい! みたいな気持ちになってきますね。

 

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「マイケル! よく来たね!」

夏野さんとは船で会ったのが初対面だったのですが、船上で時間を共にするうちにあだ名をつけてもらう仲になりました。顔が赤いのはお店の酒を飲んでいるからではありません、日焼けです。

 

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早速板長にさばいてもらいました。釣った魚がプロの料理人の手でよどみなくさばかれていきます。

この様子を見て、娘を嫁にやるっていうのはこんな気持ちなのかなぁって思いました。

 

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できるまでの間に、「ホッピー通り」といえばの煮込みを注文してみました。
ホッピー横丁にはどこのお店にも煮込みがあり、酒が進む濃いめの味付けが特徴です。
その一方で「浅草なつの」は甘みのある優しい味わい。酒以上にご飯が進む味付けですね。

 

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食べていて驚くのが柔らかさ。このように器を振るとふわふわ感が伝わるはずです。
約1日かけて煮込み、その間に出る灰汁や無駄な脂の除去を手作業で繰り返しています。

「味の決め手は牛テール。あとは企業秘密です」と夏野さん。どうやったらここまでふわふわになるのだろうか……?

 

お待ちかねの「釣った魚三点盛」

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煮込みを食べているうちに完成! 釣った魚盛り合わせ! お供はもちろんホッピー。
ざっくりと計算してもらうと約2,500円とのこと。いわゆる「時価」ってやつですね。

 

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それぞれの魚の種類は写真の通りです。

今日で釣ってから2日目、どれも魚というよりもちもちとした肉っぽい味で、マグロらしさ、カツオらしい味わいは薄く、あっさりとした味です。
魚らしい味は「熟成」の結果出てくるものなのだそう。鮮度と熟成……その塩梅が魚の味を決めているんですね。

 

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オキサワラは特にもちもちしており、かむと歯に吸い付いてきます。この食感はまさに魚界のマシュマロという表現が相応しい!

醤油に漬けると脂がフワッと広がり、まったりとした味わい。これはうまい!

 

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最後に「浅草なつの」でいつでも提供している、おいしい魚をご紹介します。金華サバです。

ほんのりと酸味がきき、脂ののったサバは日本酒と相性抜群。煮込みでホッピーを楽しんでから、サバと日本酒で〆る。なんだか浅草っぽい飲みかたですよね。お越しの際はぜひご注文を!


「店主が釣りました」は超貴重

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鮮度が高いと魚は肉になります。このレベルは飲食店ではなかなかお目にかかれません。

そして当然ながら、店主が釣りに行って、しかも釣れた時しか店頭に並びません。お目にかかる機会そのものが貴重なのです。
飲み屋さんを探していて「店主が釣ってきた」という表記を見たら、きっとあなたの知らない魚の味を体験できますよ!

 

お店情報

呑み喰い処 浅草なつの

住所:東京都台東区浅草2-5-12第三夏野ビル1階
電話番号:03-6795-1472
営業時間:平日11:00〜15:00、17:00〜20:00 土曜日・日曜日・祝日12:00〜20:30
定休日:木曜日(祝日の場合は営業)

※この記事は2016年9月の情報です。
※金額はすべて税込みです。

 

※記事初出時、一部内容に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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メシから甘味まで13種類!? 栃木・塩原温泉のご当地グルメ「とて焼」を食べ歩く

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栃木の名湯、塩原温泉のご当地グルメ「とて焼」。

とて……? 「土手焼き」の間違いでは……? 調べてみると、がっつり食べられるメシから甘いデザートまで幅広い味があり、塩原温泉の飲食店など13店舗でそれぞれ違ったものを食べられるのだそう。

全然想像できないですね。なので、実際に行って食べてみました。

 

静かな温泉地の新ご当地グルメ

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塩原温泉は昔から療養目的の滞在で多くのお客さんを集めた温泉地。その中心を流れる箒川(ほうきがわ)沿いは秋になると紅葉の名所として有名な、栃木県の一大観光スポットです。

 

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歴史を感じさせる中心街は、都会の騒がしさとは縁のない、のんびりと落ち着いた環境です。昔ながらの飲食店や旅館が営業を続けており、散歩がてら食べ歩きなんていいですよね。
それを実現させたのが「とて焼」なのだそう。

 

とっても手の込んだ「とて焼」

最初のお店は「昼頃塩原温泉に到着、お昼食べ損ねたなぁー」というかたにオススメの「とて焼」です。 

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こちらは「多助そば 湯上屋」。老舗のそば屋さんです。

「こんにちは! 『とて焼』ください!」

「『とて焼』!? うちはそば一筋なんだよ!」

そんなやりとりを想像するほどに老舗そば屋さんの雰囲気があります。

 

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そんな心配は裏切られ、優しいご主人が対応してくださいました。これが「とて焼」です。

クレープのように具材を巻いてありますね。湯上屋の「とて焼」の名は「そば舞カレーとて」。この写真では全容がわからないので、巻く前の様子を見せてもらいました。

 

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天ぷらにした舞茸どーーん!

その下に特製ソースで味をつけたそば、アクセントにカレー粉をまぶしてあります。注文を受けてから揚げる舞茸のジューシーサクサクがたまらん! そばはゆでたあとにあえて水で締めないことで、特製ソースと絡みやすく仕上げてあります。


計算し尽くされた「とて焼」!?

「散歩してたら小腹が空いてきたな……」そんなかたはこちらへ。 

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塩原温泉で温泉まんじゅうをつくって65年。こちらも老舗の「今井屋製菓」です。

「こんにちは! 『とて焼』ください!」

「『とて焼』!? うちは温泉まんじゅう一筋なんだよ!」

そんな流れが脳裏をよぎります。

 

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そんな心配をよそに、とっても人の良さそうなご主人がつくってくれたのは「黒ミツきな粉とて」。

黒蜜の寒天、キャラメルホイップ、いった大豆をトッピング。最後に伝統のこだわり温泉まんじゅうを高々とかかげた逸品です。

 

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開いてみると、計算してつくられているとわかります。巻くことで具材が層になるのです。

まずは温泉まんじゅう、次に「とて焼」とキャラメルホイップ、いった大豆の食感を楽しみながら食べ進めると、甘味を抑えたこしあん、黒蜜寒天が出現し、最後に粗挽ききな粉でしっとりと食べ終える。
物語を読んでいるような、起承転結が盛り込まれた「とて焼」なのです。

 

入浴後の栄養チャージができる「とて焼」セット!?

「足が疲れた! ちょっとお茶したい」
ありますよ、おすすめの「とて焼」!

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こちらは「果物屋カフェ 藤屋」。写真上部の屋号、いい味出していますね……!

大正元年創業の超老舗で、食料品を取りそろえる、塩原温泉ではスーパーのような存在でした。6年前にカフェにリニューアルしています。

 

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元青果取扱店こだわりの、季節のフルーツが「とて焼」に盛り込まれています。
この日の具材はキウイ、巨峰、オレンジ、イチゴ、クッキーがトッピングされ、カスタード、レアチーズムース、ぶどうのムースが包まれていました。

 

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藤屋では「とて焼」とセットでドリンクを注文すると100円引きということで、りんご、梨、オレンジ、小松菜をすりおろした 「グリーンスムージー」を注文。湯めぐりで水分を失った人にはもちろん、乾いた都会の生活で失われた栄養補給に最適です。

甘みの強い果物と甘さ控えめのクリームの組み合わせに品を感じる「とて焼」、スムージーで口をリセットすれば、自然が生んだうま味を何度も楽しむことができます。

 

寿司屋さんも「とて焼」やっちゃうの!?

「晩ご飯ナシの素泊まりプランだから夕飯どうしようかな……」というかたにはコチラの「とて焼」にぜひ挑戦していただきたい!

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「幸楽寿司」です。そりゃあもう、完全なる寿司屋さんです。

「こんにちは! 『とて焼』ください」

「『とて焼』!? うちは寿司一筋なんだよ!」

ないとわかっていても想像してしまう老舗感がありますね。

 

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すごく丁寧な接客、言葉遣いが印象的な大将がこしらえたのがこちら。

やっちゃったよ!! 寿司屋さんだからってストレートすぎるよ!!

 

思わず心の中で叫んでしまう「とて焼」ですね。

これは……手巻き寿司にさらにとて生地を巻いている! 具材は漬けマグロ、かんぴょう、出汁巻き卵、きゅうり、たっぷりのいくらです。

 

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持ってみると、重たい……具材の量がスゴイぞ! 恐る恐る食べてみると、うまぁーい!

具材がかみ切れるようにマグロは漬けにしてあり、甘しょっぱい味付け。それに合わせて「とて焼」の生地も卵焼きのような味に変更してあり、見事に和風に仕上がっています。

 

今回食べられなかった「とて焼」紹介!

今回紹介した4つの他にも「とて焼」はあります。ご紹介しましょう。

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(左)栄太楼
和菓子屋さんのマスカルポーネ、白玉、粒あん、フルーツ、コーンフレークを盛った「きまぐれなとて」

 

(中)パン屋さんとカフェ メロン亭
天然酵母を使ったパン&カフェの「芋栗なんきんとて」。食べ歩きに向いたパンもオススメ!

 

(右)亀屋本舗
かわいい!! こしあん、いちごあん、生クリームの「和スイーツとて」

 

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(左)割烹旅館 湯の花荘
地鶏つくねときんぴらに、特製ダレとマヨネーズを和えた「きんぴら地鶏とて」

 

(中)お食事処 銚子
豚肉とスクランブルエッグを、塩原名物高原大根で包んだ「角煮とて」

 

(右)若松堂
生地がココア味! こだわりの粒あんと栗を包んだ「和風とて」

 

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(左)美由堂
包んでいるのは那須塩原産のホウレンソウを使ったようかん!? 「ホウレンソウとて」2016年12月からは生クリーム、こしあん、コーヒーゼリーにかりんとうまんじゅうの皮をトッピングした「和コーヒーとて」に変わります。

 

(右)塩原もの語り館
野菜ソフトクリーム「べジソフトとて(写真中央)」。冬季は香りのあるバニラアイスに、しっとりと焼きあげたとて生地を巻いた「チョコレートとて(写真右)」に変わります。

 

掲載している「とて焼」は時期によって内容が変わったり、販売していない日も稀にあります。お気に入りがあったらお早めに、事前に電話確認してから行くのが確実です。

 

「とて焼」誕生のきっかけは震災だった

「とて焼」の考案者は、今井屋製菓の塩田さん。話を聞いてみました。

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ーーなぜ「とて焼」をつくろうと考えたのですか? 

 

きっかけは東日本大震災です。まちからお客さんがいなくなり、このままではいけないという危機感をみんなが持っていました。そこで、歩きながら食べられる、食事にもなり得る、地元の人も食べたくなる、この3つをコンセプトに2011年10月にスタートしました。

 

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 ーーそもそも「とて焼」の“とて”ってなんですか?

 

塩原温泉には、「とて馬車」という観光客を乗せる馬車があります。昔はラッパのような形のクラクションが付いていて、それが「トテトテー」という音を出すんです。ちょうど新ご当地グルメを考えている時に「とて馬車」が通って、これだと(笑)

 

馬車は現役なのですが、ラッパ型のクラクションはないのだそう。

 

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こちらが「トテトテー」と鳴るクラクション。その当時は誰も、塩原温泉を代表するグルメになるなんて想像もしていなかったことでしょう。

 

東日本大震災後の大きな危機感と、ひょんなきっかけで生まれた「とて焼」13種。6種の泉質をもつ塩原温泉で、湯めぐりと合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

お店情報

塩原温泉郷

ウェブサイト:http://www.siobara.or.jp/toteyaki.htm

 

多助そば湯上屋

住所:栃木県那須塩原市塩原771-2
電話番号:0287-32-2127
営業時間:11:00〜15:00
定休日:不定休

www.hotpepper.jp

 

今井屋製菓

住所:栃木県那須塩原市塩原786-8
電話番号:0287-32-2301
営業時間:6:30〜17:00
定休日:月一回不定休
ウェブサイト:http://www.imaiyaseika.com/

 

くだものやカフェ 藤屋

住所:栃木県那須塩原市塩原689
電話番号:0287-32-2314
営業時間:9:00〜18:00、日曜日・祝日は6:00〜18:00
定休日:不定休
ウェブサイト:https://shiobara-chaya-fujiya.jimdo.com/

www.hotpepper.jp

 

幸楽寿司

住所:栃木県那須塩原市塩原725-1
電話番号:0287-32-2061
営業時間:11:00〜15:00、17:00〜22:00
定休日:月曜日

www.hotpepper.jp

 

※この記事は2016年12月の情報です。
※金額はすべて税込みです。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

過去記事も読む

世界一まずいあめ、フィンランドの「サルミアッキ」を日本食に混ぜてみた

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みなさんは「サルミアッキ」を食べたことがありますか?

「サルミアッキ」はフィンランドのお菓子。リコリスというヨーロッパではメジャーなお菓子に、塩化アンモニウムを加えたものです。実はこの「サルミアッキ」、世界一まずいあめということで有名なんです。

 

先日、フィンランドに行った際、サルミアッキ系食品をいくつか購入してきました。試しに写真下のサルミアッキ味アイスを開封してみましょう。

 

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ものすごい黒いアイスが出てきました。

味はほんのりとした甘さのなかに強めのしょっぱさ、そしてなにより、嫌な薬のような味がずーーーっと口の中に残り続けます。日本人の口にはちょっと合わない味だなという印象です。

 

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サルミアッキ味の飲料もありました。ほかにも完全にウケ狙いだろと突っ込みたくなるサルミアッキ味のテキーラなど、様々なサルミアッキ食品がフィンランドにはありました。

 

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そんな記事のネタとしてはおおいに興味を引く「サルミアッキ」。現地フィンランドのスーパーで面白いものがないか探したところ、なんとサルミアッキパウダーを見つけました。これさえあれば、自分でサルミアッキ味のメシをつくることができるのです。

 

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開封してみるとなんとも怪しい粉……空港のX線検査に引っかかってもおかしくない雰囲気です。この粉末であれば、さまざまな料理に応用は可能でしょう……ということで、やってみました!

 

「サルミアッキ」を和食に組み込む

せっかく海を越えて日本にやってきた「サルミアッキ」。
日本食に合わせてあげましょう。

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こんな感じのTHE日本食を用意してみました。

実はもう、全てのメニューに「サルミアッキ」を混ぜ込んであります。

 

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ほうれん草のおひたしに

 

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天ぷらの塩の代わりに

 

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日本の国民食、味噌と「サルミアッキ」が出会い……サルミソアッキの誕生!!

 

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一癖ある納豆にもいってみました。

 

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喉が乾いたら、サルミアッキ茶。

この5品をいただきます!

 

においがきついんだ!

見た目はまんま日本食、中身はどのように変化したのでしょうか? 食べてみましょう。

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一番きつかったのは天ぷら。口に近づけると「サルミアッキ」のニオイがダイレクトに鼻にたたき込まれ、口に入れたくなくなります。

 

あとはサルミアッキ茶もキツイ! 湯飲みを口に運ぶと水面に滞留していたニオイが一気に鼻に入ってきます。甘みも薄れ、嫌な味だけ全面に出てきます。

 

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その一方でほうれん草のおひたしに至っては、青臭さが「サルミアッキ」のクセを打ち滅ぼし、甘みがあって大変おいしかったです。納豆、サルミソアッキ汁もいい具合に甘みが出つつそれぞれの食材が「サルミアッキ」の後味を緩和して、それなりに美味しく仕上がっていました。

 

サルミアッキ味のようかんをつくる

「世界一まずいあめが、和食と合わせたらそれなりにうまくなりました」

そんなオチでいいのだろうか……。
そもそも「サルミアッキ」は「お菓子」なのです。ここは和菓子に合わせるべきなのかもしれません。

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思いついたのは「ようかん」。横に置いてある黒いのはサルミアッキ味のグミです。
並べると、色合い的にもようかんこそ「サルミアッキ」と合わせるにふさわしいのではないでしょうか。

 

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まずはこちらのサルミアッキグミを溶かします。
あらためて見ると、完全に石ですね。

 

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調べたところ、クッキングペーパーにグミをならべて電子レンジにかけると液体になるのだそう。200Wで2分間を3セット繰り返すと……

 

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………そうですね、第一印象はヘ◯ロですかね。電子レンジの扉を開けると、待ってましたと言わんばかりに「サルミアッキ」の嫌なにおいが吹き出してきました。

 

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溶けた「サルミアッキ」をすくってあんこに投入します。

ここが一番大変で、「サルミアッキ」は冷えるとすごいスピードでカッチカチになっていくため、箸にこびりつくとなかなか取れません。グミなのにこんな硬くなるのか……? この時気が付きました、これ、チューイングキャンディーですね。

 

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寒天をいれて冷やせば完成です。

 

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硬さが足りず、スプーンでえぐり出すことに。無事にサルミアッキ味のおはぎようかんができました!

 

まあまあイケますね

出来立てのサルミアッキようかん、味はどうなっているのでしょうか。 

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「サルミアッキ」のにおいはだいぶ和らいでいますね。加熱の過程で抜けたのでしょうか。
おそるおそるかじってみると……

 

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うーん……絶対食えないレベルじゃない。あんこのまろやかさがファーストインパクトをおさえてくれています。かむほどに染み出る「サルミアッキ」の味……これはうまいとは言えんな……でもこういうお菓子と思えばアリですね。

「サルミアッキ」を日本食と掛け合わせると、きつい味が和らいで、頑張ればイケる味になると今回の検証でわかりました。

 

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「サルミアッキ」はチューイングキャンディー以外にものどあめ、グミ、チョコレートなど、さまざまな姿かたちで販売されています。北欧フィンランドを訪れたら、一度チャレンジしてみては? 責任は持ちませんが、お土産にもオススメです!

 

※この記事は2016年12月の情報です。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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【現地取材】サウナ発祥の地、北欧フィンランドでサウナあがりに食べるべきなのは?

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先日、フィンランドに行ってきました。理由は「サウナに入りに」です。
実は「sauna(サウナ)」はフィンランド語であり、フィンランドの文化なんです。
体験してみると、日本にある「風呂あがりの一杯」の発想と同じように、「サウナあがりの○○」が存在していました。

 

フィンランドグルメとは?

そもそもフィンランドの名物料理が謎ですよね。
最初に代表的なものを紹介しましょう。

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やってきたのは「Ravintola KAMONE」。日本で売っているフィンランドのガイドブックにはほぼ100%掲載されているお店です。というのも、映画の舞台となったお店で、日本語メニュー完備、日本語ができる店員さんもいます。

 

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まず紹介するのはこちら、魚料理です。フィンランドはバルト海に面しており、サーモンやニシンがよく食べられています。脂がのっていて、素材のよさを感じられました。ちなみに乗っかっているつぶつぶは木の実です。

 

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そしてミートボールにかかっているのは甘みのあるベリーのソース。肉と甘いベリー……、日本人には馴染みのない組み合わせですが、なかなかうまい! 付け合わせのマッシュルームはしっかりした歯ごたえ、キノコらしい味わいがあってこちらもうまいです。

国土の約7割が森林のフィンランド、「森の幸」こそがお国のメシなんですね。

 

日本でいう秘湯的なサウナに行ってみた

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ここはフィンランドの首都、ヘルシンキからバスで約40分、Kuusijärvi(クーシヤルヴィ)というところにあるサウナ施設です。
森のなかにあり、日本でいうところの山の温泉地のイメージですね。

 

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この建物が脱衣場兼サウナ。昔ながらのスタイルであるスモークサウナが現存する数少ない施設です。スモークサウナは燃料がまきです。入っているとまきを燃やしたすすが出て、顔がちょっと黒くなったりします。

 

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「サウナあがりの○○」の前に、フィンランドに来たからには体験しておかなければならないことがあります。サウナ後のクールダウン、湖へのダイブです。

 

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やってみました。あらためて動画で見ると、かっこわる!!!
フィンランドのベテランサウナーたちは、水しぶきを上げることなく湖に吸い込まれていきました。

 

サウナあがりにビールは、世界共通だった!

サウナ→湖→サウナ→湖を満足するまで繰り返し「サウナあがりの○○」をいただきに、食堂にやってきました。

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食堂にはガッツリとお腹を満たせるハンバーガー、サンドイッチから、サクッとつまめるお菓子が揃っていました。デザートにマフィンやスムージーなど、選択肢に幅があります。

 

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そのなかから見つけました、フィンランドのビールです。この自然あふれる環境に相応しい、熊の絵柄が書かれた「KARHU(カルフ)」をチョイス。

 

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すごくパンチがありそうな熊のイメージとは裏腹に、軽い口当たりでグビグビ飲める!
日本の風呂あがりの一杯と同じように、たっぷり汗をかいた後のビールはうまい!
サウナの後にビールを飲むだけで、なんだかフィンランドに親近感がわいてきました。

 

日本でいう銭湯的なところに行ってみた

「サウナあがりの○○」はビールだけではありません。
それを求めて首都ヘルシンキの公衆サウナに行ってみました。

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こちらは「SAUNA ARLA(サウナオーラ)」。ヘルシンキ駅前からトラム(路線バス)に乗りHelsinginkatuで下車、徒歩1分ほどで到着です。日本の銭湯というとお寺っぽい建築ですよね。フィンランドは牢獄風の外観のようです(多分ここだけ)。

 

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突然うかがった私に店主さんは快く対応してくれました。ここが銭湯でいう番台、ここから先は女性は1階、男性は2階に分かれます。ちなみに扉のところに置いてあるトマト、常連さんらしき人がさりげなく食べていたのでテイクフリーなようです。

 

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店主さんがサウナ内の絵葉書をくれました。
こちらはサウナの手前にあるシャワールーム。シャワーやサウナが混雑している時、たくさんある椅子に腰掛けて待ちます。

奥の頑丈そうな扉がサウナです。サウナ内部のつくりは日本のものと大差はありません。フィンランドでは自分で温度調整できるのが特徴で、熱源であるアツアツの石に水をかけて温度をあげます。

 

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サウナ後は中庭に出て涼みます。ビールを飲んでいる人もいれば、雨のなか新聞を読んでいる猛者もいました。実はここでの涼みの時間こそがフィンランドサウナの真髄。サウナユーザー同士でのコミュニケーションの場になっているのです。

 

ちょっと意外なフィンランド式「サウナあがりの○○」!!

「SAUNA ARLA」にあったのは、自由に飲んでいい水と自由に食べていいのかよくわからないトマト。でもこれが「サウナあがりの○○」ではないはず。ヘルシンキの市街を散策してみると、あることに気が付きました。

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日本のカフェには通常ないものが写真中央にでーんとあるのにお気づきでしょうか。

 

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街のカフェでもアイスクリームの品揃えが専門店並みなのです。ここ「ROBERT'S COFFEE(ロバーツコーヒー)」では全16種類。日本では考えられない品揃え!
「なんで右端の真っ黒なやつにしないんだ!」とメシ通編集部に怒られることは覚悟しつつ、比較しやすいバニラ味を注文してみます。

 

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分量は日本のレギュラーサイズの1.5倍以上あるように感じました。そして甘い! 途中でお茶がほしくなりました。他の味はバナナやシトロンシャーベットなど馴染みのある味が多い一方、すごい色をしたものはフィンランド語表記で解読ができませんでした。

 

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ヘルシンキ市街にはヨーロッパらしい町並みが残っています。こちらはヘルシンキ大聖堂。このような史跡等でアイスを食べるのもフィンランドっぽくていいですね。

 

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ただし、カップルの邪魔をしないように気をつけましょう。


日本の風呂あがりの定番と一緒じゃん! いえ違うんです!

風呂あがりにアイスを食べる、日本でも同じじゃん! そうですね、同じです。
ただし、フィンランドと日本では気候が全然違います。

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この写真は8月19日のヘルシンキ駅前。真夏のこの時期、平均最高気温は20℃、朝晩はジャケットが必要です。冬場は連日氷点下の日々が続きます。
そんな環境にもかかわらずフィンランド国民のアイスクリームの消費量はヨーロッパでは1位、全世界で見ても3位に入るというデータがあるのだそう。

 

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フィンランド人のアイスクリーム愛を強く感じたのは、往復の飛行機で機内食を食べた後、デザートにアイスクリームが配られたこと。
街にもアイスクリーム屋さんが日本のコンビニに近い感覚で営業しており、いつでも手に取れる環境でした。

 

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※日本のサウナです

普通に考えて、寒いところでアイスクリーム食べたくないですよね。それでも愛されているのは、どう考えても長い間サウナという熱源がフィンランドにあったからに違いありません。

日本にもフィンランドのアイスクリームのように、文化が育んだ食べ物がありますね。風呂あがりの牛乳、コタツのミカン、土用の丑の日……いろいろ思い浮かべるとあるものです。

異国での体験を通して、自国の食をあらためて見つめなおす。海外ではそんな「調味料」をゲットできるのです。海外旅行ではぜひ独自の食を楽しんではいかがでしょうか。

 

お店情報

Ravintola KAMOME

住所:Pursimiehenkatu 12 00150 Helsinki
電話番号:+358 (0)9 657 422
営業時間:月曜日~金曜日11:00~14:30、17:00~22:00(金曜日は22:30まで) 土曜日17:00~22:30
定休日:日曜日

www.kamome.fi

 

ROBERT'S COFFEE

住所:Aleksanterinkatu 52 00100 Helsinki
電話番号:050 305 4754
営業時間:平日9:00~21:00、土曜日9:00~19:00、日曜日11:00~18:00(stockmanの営業時間による)

 

Kuusijärvi Sauna

住所:Kuusijärventie 3  01260 Vantaa
電話番号:+358 10 322 7090
営業時間:レストラン9:00~21:00、電気サウナ9:00~20:00、スモークサウナ15:00~20:00

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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千葉県いすみ市の山奥「ポッポの丘」に、極上「たまごかけご飯」が食べられる食堂車を発見!

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朝食の定番といえば「たまごかけご飯」ですね。時間がない朝、かきこめる手軽さにお世話になった人も多いことでしょう。

近年は専用の醤油が登場したり、コンビニでは「たまごかけご飯」味のおにぎりが出たりと、一工夫するのが流行りのようです。

そんなトレンドの「たまごかけご飯」、面白いところがないか探してみると、養鶏場が経営するたまごかけご飯のお店「カフェT.K.G」が千葉県のいすみ市にあると聞き、「え? カフェでたまごかけご飯!?」 という皆さんの疑問を解決しに行ってきました。

 

山中に丸の内線!? 珍景「ポッポの丘」

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千葉県いすみ市といえば、経営不振から一気に回復した鉄道会社、いすみ鉄道で有名なところです。

そんないすみ市の田んぼ道を進んでいると不意に出てくるこの看板。目的の「カフェT.K.G」は近いようです。

ただその下の2つの看板「プラレール売り場」「ポッポの丘」。プラレールとの組み合わせでのポッポですから、「汽車ポッポ」ということなのでしょう。少し心がざわついてきました。

 

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到着です。一目見て誰もが思ったことでしょう。ここは操車場か!? すごい数の電車が止まっています。

確認しておくと、ここは養鶏場が運営している「ポッポの丘」というところです。近くには線路はおろか、駅もありません。この丘まで力技で運んできているのです。

 

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敷地内を歩いてみましょう。

こちらの赤い車両、乗れるようになっていますね、ちょっと入ってみます。

 

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電車電車電車電車……ここは電車の写真を展示している電車ですね。
あとは卓上にプラレール、子供向けの遊具が設置してあります。 

 

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不意に扉の上部に目をやると、見慣れた駅が並んでいます。そう、ビジネスマン御用達、丸の内線です。

私はこの車両を外から見ても丸の内線で使われていた車両と判断できませんでしたが、実際に使っていた方が見たらたまらない気持ちになることでしょう。

このように敷地内にある電車は中で展示、物販をおこなっています。

 

「カフェT.K.G」、店内はまんま食堂車!?

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「ポッポの丘」の一角に建っているこの小さな建物が目的の「カフェT.K.G」です。

カフェというと屋内外に椅子やテーブルが並び、のんびり過ごしているような光景をイメージしますが、それらしいスペースは見当たりません。

 

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「カフェT.K.G」、名前から推察するに主役が「たまごかけご飯」というのは間違いありません。サイドメニューにはそれを彩るおかずがあると思いきや、メニューを見るとどれもガッツリとしています。
そしてなにより、カルビ丼、牛丼と、たまごを産まない動物の肉を食べることもできるのです。

 

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カフェのすぐ横にある黄色い車両、壁面には「カフェT.K.G」の文字と窓ガラスにはアイスクリームのポスターが貼られています。

この車両でご飯を食べることができそうです。 

 

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めちゃくちゃいい雰囲気! 電車の椅子を使わないのは左右の窓からの景色を、人で遮ることなく見てほしいからでしょう。

日差しが強い時のために設置したカーテンが食堂車の雰囲気を演出する一方で、つり革のくたびれた感じが多くの人を運んだ歴史を物語っています。

なんでしょう、この落ち着いた感じ。すごく貴重な経験をしているような気持ちです。

食べる場所こそ最高の調味料

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こちらが看板メニューの「たまごかけご飯」。メインを飾るご飯とたまごの脇に味噌汁、パックのおかず、「たまごかけご飯」専用の醤油がセットになっています。

たまごはもちろん養鶏場直送、お米も地元いすみ産です。そういえば、この食堂車はいすみ鉄道の車両。空間までも地のものです。

 

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たまごを表現するとき、よく「ずっしりしている、身が詰まっている」なんてことがよく言われますね。重いという感触はありませんでした。割るときに心なしか殻が頑丈な印象を受けました。

 

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生たまご専用の醤油をかけます。色が薄いので分量を見極めながら入れましょう。

 

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思う存分にかき混ぜてからご飯に注ぎます。

混ぜるほど、注ぐほどに気持ちが高まっていく……「たまごかけご飯」の魅力ではないでしょうか。

 

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高まった気持ちとともにかきこみます。かきこみながら窓の外に目をやると大自然、窓からはいい風が入ってきます。

「たまごかけご飯」はあっさりとした優しい味でした。その味わいを壊さない薄口の醤油がいい仕事をしています。朝ご飯にしてはご飯多めかなと思いましたが、このあっさりのおかげでさらっと食べることができました。

 

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味噌汁の具材はたまごとわかめ。「たまごかけご飯」と同様、養鶏場直送のたまごを使用しています。

 

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パックに入っていたおかずは「いわしの角煮」。

「たまごかけご飯」のあっさりに対して、ものすごいパンチのある濃い味でした。この角煮のためにご飯を別皿に取っておいてもいいかもしれません。うまい!

 

コーヒーとの食べ合わせは?

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みなさんも気になっていたと思います、ここは「カフェT.K.G」。カフェなのです。コーヒーもウリに決まっています。

「たまごかけご飯」とコーヒーの相性を調べ「いけるぞ!」と思ったからこの名前にしているはずですよね。食べ合わせてみました。

 

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「おお! 悪くない!!」

コーヒーが「たまごかけご飯」の風味を消し去っていきます。口の中をリセットしてくれている感覚ですね。かといって次に口に運ばれる「たまごかけご飯」の味わいを邪魔しないので、繊細なたまごの味を毎回楽しめます。

「たまごかけご飯」とコーヒー……やっぱり合わないじゃん! という予想を覆し、案外あり、いやオススメできる食べ合わせです。

 

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「カフェT.K.G」では食器を戻すのはセルフサービス。軒先の棚に食器を戻します。

ほぼ屋外です。これが都会だったらカラス達に荒らされてしまいそうですが、この環境ではそんな心配は無用なのです。

 

たまごが生んだ珍景、たまごを食べて守っていく

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「たまごかけご飯」を電車で食べる。幸せな時間であり、ちょっと変わった体験でもありました。

「カフェT.K.G」の魅力は新鮮なたまごだけではなく、電車内という特殊な環境が一層「たまごかけご飯」をおいしくしていることにあります。

その時間を提供してくれた電車は、現役を退いているとはいえ、存在している限りどんどん傷んでいきます。たまごの売り上げがあってこそ、この景色を維持することができるのです。

 

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自慢の「庭先たまご」は、ひとつ60円(税抜)。その売り上げがこの珍景、いや、絶景を維持しています。

いすみの地で、いすみを支えた「いすみ鉄道」の車内で、いすみで育った鶏の「たまごかけご飯」を食べてみてください。

絶対に忘れられない「たまごかけご飯」になりますよ!

 

お店情報

ポッポの丘 カフェT.K.G

住所:千葉県いすみ市作田1298
電話番号:0470-62-6751
営業時間:金曜日・土曜日・日曜日・月曜日・祝日のみ10:00~16:00

www.popponooka.com

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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築90年の古民家カフェ「蓮月」で、昼はがっつり豚を食う! 夜はしっぽり酒を飲む!

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大田区池上に、昭和2年から営業しているそば店をリノベーションしたカフェ「蓮月」があります。いわゆる「古民家カフェ」です。古民家カフェというと、静かなしっとりした雰囲気が特徴のお店が多いですよね。

ここ蓮月はカフェとは思えないガッツリとしたどんぶりメシをいただいたり、酒に合う多彩なおつまみに舌鼓を打てるお店なのです。

 

寺の街、池上の老舗そば店をリノベ

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大田区池上は、池上本門寺を中心に多くの寺社仏閣が集中している寺の街。

写真中央の突き当たりの門は池上本門寺。力道山のお墓や、日蓮上人入滅の地として有名です。

 

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その池上本門寺から1〜2分歩くと、木造に瓦屋根の一際目立つ建物が見えてきます。こちらが昭和2年に竣工されたそば店「蓮月庵」をリノベーションしたカフェ「蓮月」。

第1回大田区景観まちづくり賞を受賞しています。

 

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店内は屋根のついた帳場が現役で活用されており、写真左手から中央の一段上がったステージはもともと座敷席でした。

テーブルや椅子、写真右奥のちょっとした座敷など、そば店時代に活躍していた多くの設備をそのまま活用しています。

 

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入口付近の壁にはそば店時代のメニューが掲げてあります。価格は全て「銭」表記。時代を感じますね。 

 

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ステージから奥はもともと店主の居住スペースでした。

カフェになってからは壁を取っ払い、庭を見渡せるソファ席を設置しています。

 

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元居住部分にもそば店の名残が見て取れます。写真中央にある黒い箱はそば店時代に使われていた金庫です。この金庫と毎日向き合い、店主が一喜一憂していた日々があったと思うと感慨深い……。

 

カフェの照りっ照り豚丼……!?

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こちらが飲食メニューです。数種類のトーストやコーヒーと、のんびりカフェタイムを楽しめるメニューが揃っています。

そのなかでも目を引くのが「ごはん」。カフェメニューとは裏腹に、ガッツリと腹に溜まりそうな「厚切り照り豚丼」が気になりますね。

 

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注文してみました。なんともうまそうな照り返しだ……!

小松菜と白髪ねぎが添えられ、ご飯と豚肉の間には大田区の大森エリアの名産、海苔が敷かれています。

ちなみに豚肉、海苔、小松菜ともに近所で買ってきたもの。地産地消ならぬ地買地消。これも地域と関わる一つのかたちだと店長さんは語っていました。

 

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かぶりついてみると染みだすうま味脂。そしてなにより筋っぽさがまったくない!

塩漬けにして下味をつけた豚を照り焼きにしており、ガンガンご飯を食べられます。これはうまい!

 

もっとのんびりしたいかた、2階へどうぞ

「蓮月」は、2階で飲食をすることもできます。

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この急な階段、昭和世代は懐かしさを感じる角度じゃないでしょうか? 小さいころに祖母の家の階段から転げ落ちていたのを思い出します。

 

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こちらが2階の広間です。

カフェ風の1階とは打って変わって、シンプルな和風でなんとも落ち着きます。

そして鼻に入ってくる畳のにおい。お腹いっぱいだし、もう横になりたいですね。

 

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横になっていいそうです。漫画を読んでも、パソコンで仕事をしてもいいそうです。

店長さん曰く「スーパー銭湯の休憩スペースのように、気持ちの良い時間を過ごしてもらいたい」とのことでした。今回私が持ち込んだのは、有名温泉漫画『テルマエ・ロマエ』。因果なものです。

 

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眠くなったら寝てもいいそうです。手足を投げ出さない、混雑時は遠慮するなど、他のお客さんのことを考えて利用しましょう。

この居心地の良さ。まさに風呂あがりですね。ちなみに2階はレンタルスペースとして貸し出しており、多目的に利用できます。

 

夜の「蓮月」、メシも雰囲気も見事に尽きる

2階でのんびりと過ごし、日暮れを待ちました。

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というのも「蓮月」は夜のメニューを用意しているらしいのです。それを目当てに来たのですが、まず外観が放つ風格が渋すぎる!

もはやカフェでもそば店でもない……なんだろう、圧倒されてわからない!

 

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店内はジャズが流れ、バーのような空気感に変わっています。昼間とはまた違った居心地のよさがなんとも心地いいですね。

 

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オススメのビールはCOEDO。写真中央のBeniaka(680円)をいただきました。コクの深い味わいで、古民家の深い歴史とともに味わうのにふさわしいビールでした。

全部飲みたい人には5種飲み比べセット(3,000円)がオススメ。ビール以外にもフルーツカクテルや日本酒、ワインも取り揃えています。

 

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食事もお酒が進むものをそろえています。写真上から時計回りに……。

  • お麩の唐揚げ 甘酢ソース和え(580円)
    外はサクッと中はフワッととはよく言いますが、中身はお麩なのでマジでフワフワです。甘辛のソースでビールが進む!
  • おふくろのもつ煮(480円)
    煮込んだニンジン、大根、ゴボウがホロホロ! 塩気控えめであっさりした美味しさ。
  • うま塩漬け焼き豚(980円)
    ビジュアルがすでにうまい! 胡椒のきいた豚は最高のつまみでした。添えてあるわさび、柚子胡椒も本格的。
  • ポポテテトトフライ(480円)
    注文時にスタッフとの会話が生まれたら……ということで命名。ジャガイモが甘く、一回食べたら病みつきになる!

 

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酒が進むメニューに囲まれ、歴史を感じる雰囲気に抱かれ酒を飲む……昼の様子から比べると、見事に飲み屋さんへの変身を遂げています。

その一方で私の後ろの席では家族連れが食事を楽しみ、カウンターではパソコンを開いて仕事をする人と、ファミレス、カフェの顔も垣間見ることができました。

 

歴史に敬意を払い、自由に先を見据える

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そば店、「蓮月庵」を引き継ぎカフェにリノベーションした店長の輪島さんです。引き継ぐきっかけは何とも奇妙な縁がありました。

ある日、輪島さんが仕事をしていると転倒して足に犬のフンがついてしまいました。その1時間後、歩いていると鳥のフンが直撃。「これはなにか起こるぞ」、そう思った翌日、知人から「蓮月庵」を今後どうするかという会議に出ないかと声をかけられたのです。自分が「蓮月庵」を引き継いだら面白いことになるだろう……。

こうして現在の「蓮月」が誕生しました。
縁というか、ウンというか、そんなきっかけなのです。

 

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「古民家カフェ」というと、どこかお堅い印象も受けますが、店長さんはこんな感じです。自由です。

お昼にいただいた「厚切り照り豚丼」、じつはお店のスタッフさんが考えたメニューです。そして日本酒好きなスタッフさんが日本酒を、ワイン好きなスタッフさんがワインをチョイスするなど、スタッフさんの考えがたくさん反映されています。

その一方で店名は先代の名前を継いで「蓮月」とし、もともとあったものを大切に使っています。「先代への想いを汲み、敬意を払って営業を続けたい」とおっしゃっていました。

 

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「蓮月庵」ができた約90年前には、ボーっと過ごす自由な時間が当たり前のようにあったのかもしれません。現代社会では意識しないと、そんな時間は過ごせないものです。

「蓮月」ではそんな自由な、ほっとできる時間があります。無目的に訪れてはいかがでしょうか。あなたが座った席の隣で、私が原稿を書いているかもしれません。

 

お店情報

蓮月

住所:東京都大田区池上2-20-11
電話番号:03-6410-5469
営業時間:10:00~22:00(LO 21:30)
定休日:不定休
Webサイト:http://rengetsu.net/

www.hotpepper.jp

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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