10分でできるぜいたくブランチ! 北嶋佳奈の「レンジベシャメルソースのクロックマダム」

f:id:kanagohan:20170120120706j:plain

あのベシャメルソースはレンジで作れる!

こんにちは! 管理栄養士の北嶋佳奈です。

寒い日が続いていますね。せっかくの休日、いつもより少しだけゆっくり起きたら、あたたかいコーヒーを飲みながらちょっと豪華なブランチタイム!

 

ハムとベシャメルソースにたっぷりのチーズをサンドして焼いたものがクロックムッシュ。今回は、そこに目玉焼きをのせてさらにぜいたくにしたオープンサンド風クロックマダムの簡単をご紹介します。ベシャメルソースってなに? 作るの面倒じゃないの? なんて思っているあなた、ベシャメルソースはレンジで作れます!

 

北嶋佳奈の「レンジベシャメルソースのクロックマダム」

【材料】(2人分)

  • 食パン(4または6枚切り) 2枚
  • ハムまたはベーコン 2枚
  • 卵 2個
  • とろけるチーズ たっぷり
  • ブラックペッパー、刻みパセリ 適量
  • (A)
  • バター 20g
  • 薄力粉 大さじ3
  • 牛乳または豆乳 1と1/2カップ
  • ナツメグ あれば少々
  • 塩、コショウ 少々

 

作り方

f:id:kanagohan:20170120120715j:plain

1. まずは(A)でベシャメルソース作りから。バターと薄力粉を大きめの耐熱容器に入れ、ラップをせずレンジ(600w)で30秒加熱する。牛乳少しずつ加えながら混ぜて3分。再度混ぜて3分。ゆるいようであればさらに1~2分加熱し、程よい固さになったらナツメグ、塩コショウで味を整える。

 

f:id:kanagohan:20170120120719j:plain

2. ベシャメルソースを作っている間に、目玉焼きを作る。

 

f:id:kanagohan:20170120120724j:plain

3. 食パンにベシャメルソースを塗り、ベーコンを半分に切ってのせ、チーズをのせてトーストし、目玉焼きをのせる。ブラックペッパー、きざみパセリを散らす。

 

手軽に作れて豪華な一品! ブランチにぴったり。

f:id:kanagohan:20170120120727j:plain

ここはカロリーのことを忘れて、ベシャメルソースもチーズもたっぷり乗せてくださいね~! そうでないと美味しくはできませんっ(笑)。このベシャメルソースはシンプルなホワイトソースなので、固さも自由自在。使い道もグラタンやシチュー、クリームコロッケなどなど。多めに作って密封袋に入れて冷凍もできますよ。

 

【SNS映えさせるワンポイント】

写真に撮る時はぜひ目玉焼きを割って、黄身のとろ~り感をよりで思いっきり見せましょう! ナイフとフォークも添えてあげてくださいね。ぜひ試してみてください! ではでは~。

 

食パンに焼きサバ? 「まるい食パン専門店 つるやパン」が生み出す新時代のB級パン【滋賀】

f:id:Meshi2_Writer:20161225195147j:plain

丸い食パンしかないお店

 

「B級パンと呼ばれることに抵抗はありません。部活帰りの腹ぺこの学生たちが立ち寄って食べるような気取らないパンをつくっていきたいから。大人になって懐かしく思い出すのは、そんなB級パンだと思うんです」(まるい食パン専門店『つるやパン』パン職人 西村洋平さん)

 

パン職人、西村洋平さん(31歳)はそう言います。

 

こんにちは。
パンに目がないメシ通レポーターの放送作家、吉村智樹です。
いつも「どこかにおいしいパンを焼くお店はないか~?」と、鼻をふがふがさせながら街をさまよっています。

 

2016年4月1日、滋賀県にとても珍しいパン屋さんがオープンしました。

それが「まるい食パン専門店 つるやパン」

その名の通り「丸い食パン」だけを焼くお店です。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225195247j:plain

▲琵琶湖の東端に広がる長浜市朝日町。いにしえの城下町の風情が残る街なみ

 

場所は長浜市の朝日町。 

かつては羽柴秀吉が築いた長浜城の城下町として栄え、現在も由緒あるお屋敷が数多く残っている、たおやかな雰囲気を漂わせた街です。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225195305j:plain

▲「まるい食パン専門店 つるやパン」外観

 

そんな落ち着いた街なみに、一軒のパン屋さんが。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225195414j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161225195330j:plain

▲丸い食パンがそのまんま看板になっている。インパクト絶大だ

 

丸い(円筒状の)食パンそのものを掲げたビジュアル系な看板は強いインパクトを放ち、素通りを許しません。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225195505j:plain

▲あちこち「丸」が目を引く店内

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225195518j:plain

▲「MARUISHOKUPAN」(マルイショクパン)

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225195536j:plain

▲店にあるのパンは「丸い食パン」(ラウンドパン)だけ

 

f:id:Meshi2_Writer:20170108225041j:plain

▲陳列棚まで丸い食パンを模したカタチをしている

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225214844j:plain

▲わざわざ地元滋賀県の杉の木を使ったオーダーメイドだ

 

店内は文字通り、置いてあるのはなんと「丸い食パン」のみ

バケットもクロワッサンもベーグルもなし。

誰もが食パンと聞けば思い浮かべるであろう、あのスクエアなパンもない。

ひたすら“まるい食パン”だけがころんころんと並んでいるのです。

 

円筒状なのでこちらでは食パンを「一斤」ではなく「一本」と呼びます(1本 340円、1/2本 180円、1/4本 100円)。

そしてその丸い食パンは、普段はおよそ30本、多い日で70本も売れるほどなのです。

  

理にかなった波打つ焼き型

f:id:Meshi2_Writer:20161225195608j:plain

▲「まるい食パン専門店 つるやパン」店長の童顔パン職人、西村洋平さん

 

柔和な表情で、高校生だと言われたらきっと信じてしまうお若いお顔立ちの店長、西村洋平さんに、さっそくキッチンでの作業を見学させていただきました。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225195942j:plain

▲生地を切り分け

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225200021j:plain

▲波を打った焼き型に生地を並べる

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225200002j:plain

▲事前に発酵させた生地をミックスするので膨らむのが早い

 

仕込みは“中種(なかだね)製法”。朝イチで小麦粉、水、パン酵母をこねて約2~3時間発酵させたもの(中種)を残りの材料とミキシングし、生地を作ります。

 

「こうするとすでに熟成が進んでいるので、風味が豊かになり、かつソフトで柔らかな仕上がりになるんです」

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225200114j:plain

▲焼きあがると、キッチンに甘くやさしい香りが立ち込める

 

お話をうかがううち、丸い食パン(専門用語で言うラウンドパン)が続々と焼きあがっていきます。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225214650j:plain

湯気とともに、甘くやさしい香りがキッチンにたちこめます。

小学生の頃、給食室のパンケースラック周辺を包んでいた、あの懐かしい香りです。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225201212j:plain

丸いだけではなく、表面が波を打っているのも特徴

 

締め付け用工具のボルトが並んでいるようで、面白いフォルム。

いまからでっかいロボットでも作るかのような。

 

「焼き型が波打っている方が表面積が広いので熱が通りやすいんです。それにお客さんからは『波の部分があるおかげで好きな厚みで切る目安になる』と評判がいいんですよ」

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225200213j:plain

▲専門的にズバリ「ウエーブ」という名の焼き型

 

確かに食パンの耳が波打つことで、焼きの利点だけではなく、ナイフを入れるときのスケールにもなって便利ですね。

 

生地の中に具材がたっぷり!

そして、単に丸い食パンというだけではなく、大納言小豆や求肥(ぎゅうひ)がたっぷり入った「まるい食パン大福」(1本 550円、1/2本 280円 1/4本 150円)や、小麦全粒粉や黒糖で仕込んだ「まるい食パングラハム」(1本 380円、1/2本 200円、1/4本 110円)なども。

さらに枝豆やベーコン、チーズがふんだんに練りこまれた「つまみ」(1本 550円、1/2本 280円、1/4本 150円)など、生地や風味のバリエーションが豊富なのにも意表を突かれました。

f:id:Meshi2_Writer:20161225200252j:plain

▲大粒の大納言小豆や甘い求肥(ぎゅうひ)をたっぷりねじ込む

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225200302j:plain

▲求肥が熱で溶け、ねばねばとおもしろい食感に

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225200315j:plain

▲こちらは枝豆、ベーコン、チーズ、ブラックペッパーがぎっしり

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225200325j:plain

▲食パン自体をお酒のおつまみにできるという、その名もストレートな「つまみ」

 

「食パンをお茶うけにするって、あんまりないでしょう。食パンそのものをおやつにしたりお酒のおつまみにできたら面白いだろうなって考えたんです。なので生地自体の塩味は抑え、加える食材の味をいかすようにしています」

 

この食パンをおつまみにしてパーティなど開いたら、それまでもめていた案件も丸く収まりそうです。

  

そもそもナゼ食パンを丸型に?

ここで根本的な疑問が。

なぜ食パンを丸くする必要があるのでしょう。四角いままで問題ないのでは?

 

「丸い食パンは四角い食パンに比べ体積が小さいため、よく火が通るんです。短時間で均等に効率よくふっくら焼けるうえ、生地に部分的なストレスがかからず“焼きすぎ”も“焼きムラ”もない。さらに丸い方が耳が薄くなり、パリッと仕上がるんです」

 

ええ! いいこと尽くしじゃないですか。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225200344j:plain

▲生地は綿のように柔らかく、ほの甘く、耳は薄くてしなやか

 

では一枚、いただきます。

 

おお、なんて、やわらかい(涙)。

シルキーできめが細かく、自然な甘み感じられます。

 

そして耳の食べごたえが楽しい。

とても薄く、だからって簡単にちぎれず伸びもする、剛柔あわせもった新食感です。食パンが丸いと、こんなにおいしくなるんですね。

  

丸い食パンが普及しない理由

そうしていただいているうちに、ここでさらなる疑問が。

なぜおいしく仕上がる丸い食パンが一般にはさほど普及していないのでしょうか?

 

「丸い食パンはデリケートで、取り扱いがむちゃくちゃ難しいんです。焼きたての食パンにたとえ一カ所だけでも圧力がかかると、たちまち形が崩れ円筒ではなくなる。普通の食パンは焼きあがった時点で型から取り出せるけれど、丸い食パンは型から抜かず最低30分は冷やさないと台に置くことすらできないんです。それに陳列が難しい。陳列するとスペースのレスが生じるため、たくさん並べられない。ほかのパンと一緒に焼けるような簡単なものではないんです。『そもそも丸い食パンなんて、どんな袋に入れて売るつもりや?』って知人からも反対されました。なので丸い食パンに全神経を集中するため、それしか扱わない専門店にしました。専用の袋を特注したとき、『こいつ、本気やな』って周囲も認めてくれましたね」

 

丸くてやわらかく、やさしい味わいの食パンの裏には、そ、そ、そんなに硬質で強固な思いがあったのですか。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225211804j:plain

▲丸い食パンを入れる袋を特注した。それは、それだけを売るという覚悟の表れだった

  

サンドウィッチも当然丸い

さらにこの「つるやパン」でクローズアップすべき点は、サンドウイッチや総菜パン、菓子パン、ラスクなどなど、ストイックなまでに「丸い食パンひとつで、どこまでやれるか」に挑む果てしないスピリッツ。

丸い食パンしか扱っていないのに調理法は多岐にわたり、毎日来ても、いやそれどころか1日に2度来ても違う味や食感を体験できるのです。

 

サンドウイッチは午前11時からは注文したその場で調理してもらえるシステムで、とてもフレッシュ。

f:id:Meshi2_Writer:20161225204508j:plain

▲注文してから作るサンドウイッチ。なかには見慣れぬメニューも……

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204617j:plain

▲丸い食パンに、特製焼きそばソースを垂らす

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204630j:plain

▲その上から焼きそばをトッピング

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204642j:plain

▲紅ショウガを乗せて。できたてだからパンがじめっとしていない

 

ソース焼きそばのサンドイッチ(180円)を目の前で作ってくれるお店なんて、そうそうありません。

具材の組み合わせも自由で、味の変化も楽しめます。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204556j:plain

▲トッピングの組み合わせも多種多彩。 「ハム+ハム」なんて食いしん坊っぽくてイイ!

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225212411j:plain

▲サンドイッチだけではなく丸い食パンを使った総菜パンも充実。キャベツサラダをはさみ、ジューシーでパリッとはじけるウインナーを乗せた「ホットドッグ」(200円)

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225212422j:plain

▲丸い食パンをくりぬき、3種類のきのこを使ったグラタンを閉じ込めた「きのこグラタン」(190円)

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225214744j:plain

▲角切りベーコンがごろっごろ。ソースが濃厚な「ピザトースト」(200円)が焼きあがる

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225212453j:plain

▲丸い食パンを使ったラスクもさまざまな種類が。こちらはうずまきがかわいい「ブルーベリー」(90円)。ラスクはラスク用に特別な食パンを焼く

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204712j:plain

そしてこれら丸いメニューの数々はイートインスペースでいただくことが可能。しかも“テーブルまで丸い”という丸尽くし。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225214723j:plain

▲ブロック塀まで丸い食パン仕様!

 

「スープ(140円)も自家製です。朝7時からやっている“朝ベイク”は購入後にこちらでトーストして温めて食べることもできます」

 

モーニングに丸い食パンをトーストでいただけるなんて。

その日一日が、円滑に進みそうです。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225212352j:plain

▲購入してからトーストしてくれる「朝ベイク」サービス。アツアツをお店でいただける

  

焼サバはパンに合うのか?

そしてサンドイッチにはさむ具材が、これまた猛烈にユニーク。

まず目を疑うのが「焼サバ」(250円)。

食パンに塩焼きのサバ……ですか。

どうしても、ごはんのおかずというイメージが拭えないのですが。

 

「決して奇をてらっているわけではありません。はじめはツナサンドにしようと思っていたんです。ところがツナだとパンが湿ってしまって、うまくいかない。そこで、ここ長浜市の名物“鯖そうめん”をヒントにしました。滋賀県はかつて若狭湾で採れたサバを行商人が徒歩で運ぶ“鯖街道”が通っていたので、サバとはゆかりが深いんです。そして食パンに大葉とガリを敷き、塩焼きしたサバを乗せ、和風のサンドウイッチにしてみました。サバの身がジューシーだと好評なんです」

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204742j:plain

▲「焼サバ」のサンドウイッチとはいったい……

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204758j:plain

▲大葉を敷いて

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204808j:plain

▲ガリを乗せて、さっぱりと

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204817j:plain

▲自家製タルタルソースを蛇行させ

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204832j:plain

▲塩焼きしたサバをドーン!

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204844j:plain

▲焼サバのサンドイッチの完成

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204854j:plain

▲焼サバは実はすごい好評で、熱狂的ファンがいる。このように大量注文が入ることも

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225205022j:plain

▲焼サバのサンドイッチは手作り(日替わり)スープとの相性抜群

 

焼きサバをどかんと乗せる大胆なアイデアは、いきなりそうなったわけではなく、身をフレークにしてみたり、ピザソースを合わせたり、サバカレーにしてみたりと、試行錯誤の繰り返しから生まれたものなのだそう。

  

新しいB級パン「みたらし」

いや、でも、ですよ。「焼きサバ」は滋賀県の歴史に通じているゆえになんとか理解できます。

しかしながら、しょっぱいハムに“みたらし団子のたれ”を塗った「みたらし」(150円)は、さすがに無理めなマリアージュでは?

f:id:Meshi2_Writer:20161225204924j:plain

▲正直、抵抗感がぬぐえない「みたらし」

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204934j:plain

▲自家製マヨネーズをたっぷり

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225204946j:plain

▲そこに赤耳ハムを乗せ

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225205003j:plain

▲ハムの上にみたらし団子のたれをどろーん! や、やめたほうが……

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225205037j:plain

▲ああ、塗ってしまった……

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225205047j:plain

▲しょっぱいハムと甘いたれがマッチング。見た目にUFOのような「みたらし」完成

 

こんなふうに見たことも聞いたこともない攻めた珍ドイッチがいくつも!

丸い食パンの専門店なのに、これはトガりすぎなのでは。

 

「“みたらし”も食べてもらえば理由がわかります。照り焼き風味のサンドイッチを考案しようと思って、いろんなソースを試すうちに、みたらし団子のたれに行きついたんです」

 

そうなんですか……(消極的に)では「みたらし」を(うつむき加減に)いただきます。

 

んん!

こ、これは、うまひ!


甘じょっぱいたれと、いい意味でチープで気取らない味の赤耳ハムが、マヨネーズという万能なアレンジャーを介し、見事なデュオをみせてくれています。

そして、なぜしょう、間違いなく初めて食べたのに、郷愁を誘うのです。

 

「異素材どうしの味の組み合わせなので、あえてパンそのものにはあまりコクが出ないようにしています。コクを出しすぎると「つるやパン」らしくないなあ、と。なので基本は本店で生み出された素朴な味わいを受け継いでいます」

 

本店……。

 

創業65年目にして2号店誕生

f:id:Meshi2_Writer:20170108224742j:plain

ここでもう一度、つるやパンの看板をプレイバックしてみましょう。

オープンしたのは2016年のはずなのに、看板には「SINCE 1951」と書かれています。

 

つまりこの「まるい食パン専門店 つるやパン」は、なんと創業65年目にして誕生した、まさかの2号店だったのです。

初めて食べたのにどこか懐かしい味がするのは、パンの製法が65年に渡って培われたものだからかもしれません。

 

長浜に根付いた「本店」

f:id:Meshi2_Writer:20161225210018j:plain

▲創業65周年を迎えた「つるやパン」本店

 

昭和26年(1951年)に創業した「つるやパン」は同じ滋賀県湖北の木之本という街にあります。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210043j:plain

▲目印はコッペパンを持ったピンク色のたぬき

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210103j:plain

▲「つるやパン」本店は多くの商人、旅人、武将らが頻繁に利用した旧街道「北国街道」の途上にある

 

江戸時代に畿内から越後国までを結んだ「北国街道」沿いに軒を構え、いまなお歴史浪漫あふれる景観に溶けこんでいます。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210116j:plain

▲長浜は北国街道の宿場町で、また湖上交通の要衝の地として栄えた。往時の名残をいまなおいたるところに目にする

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210128j:plain

▲江戸時代、参勤交代にも使われた北国街道。長浜の歴史浪漫を感じさせる景色がそこかしこに

 

創業者は西村秀敏さん。

「まるい食パン専門店 つるやパン」店長のパン職人、西村洋平さんの祖父です。

 

「おじいさんは戦後、学校給食が日本に入ってくるとき『これからはパンの需要が増えるはずや』とひらめき、工場を建て、職人を雇ってお店を始めたそうです。学校給食用の製パン業者としてスタートしたため、うちは食パンとコッペパンを自家製する技術があったんです」

 

創業時の食パンづくりは学校給食がメインだったのですか。食べてノスタルジアを感じたのは、それもひとつの要因だったのかも。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210209j:plain

▲学校給食が起業のきっかけだった「つるやパン」。そのため古くからコッペパンを焼く技術と設備があった。ゆえに看板もコッペパン

 

ここで気になるのは「つるや」という屋号。これはいったどこから?

 

「もうすっごい適当なんです。おじいさんが『近所に“かめや”と“はとや”と“うさぎや”があるから、じゃあうちは“つるや”で』と。そんなふうに街中、動物の名前の屋号ばっかりだったそうです」

 

豪快にシンプルな理由で、おじいさんの鶴の一声で幕を開けた「つるやパン」の歴史。

しかしそのキャッチーな店名は地元に根付き、永く人々に愛されています。

  

愛すべきレトロなB級パン

本店の店頭に並ぶのは、創業当時から現在もある、コッペパンでバタークリームと赤いゼリーをはさんだ「スマイルサンド」(135円)、三代に渡って大好評の「チョコたぬきぱん」(165円)。

さらに40年目を迎える、パンでカステラをはさんだ「カステラサンド」(145円)、魚肉ソーセージが一本つっこんで揚げた「ランチパン」(150円)などなど、レトロでしみじみとおいしい、愛おしいB級パンばかり。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210414j:plain

▲創業時のバタークリームの独自製法をいまに受け継ぐ「スマイルサンド」

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210424j:plain

▲一見チープな印象の「チョコたぬきぱん」だが、中のクリームだけではなくパン生地自体にチョコを練りこんだ意外とゴージャスな逸品

 

たくあんをはさんだサラダパン

滋賀のローカルパンとして、地元の人々の暮らしにそっと寄り添ってきた、つるやパン。

そんなつるやパンが8年前、突如としてスポットライトを浴びることとなります。そのきっかけが、いまや日本のB級ローカルパンの最高峰との呼び声が高い「サラダパン」(145円)。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210523j:plain

▲サラダの概念を問いただしたくなる「サラダパン」

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225210945j:plain

▲「つるやパンといえば『サラダパン』」という印象をいだく人も多い

 

つるやパンの「サラダパン」に、なぜそんなに注目が集まるのか。

それは創業1年目からの現役パン職人である祖母の智恵子さん(88歳)が、サラダとうたいながら、生野菜ではなく“千切りしたたくあんのマヨネーズ和え”をコッペパンではさんだ商品を開発したから。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225211010j:plain

▲「サラダパン」の中は“千切りたくあんのマヨネーズ和え”がぎっしり

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225211603j:plain

▲「サラダパン」を発明した西村さんの祖母、智恵子さん。手にしているのは、西川貴教さんが主催した滋賀県下最大の音楽イベント「イナズマロック フェス 2016」ver.のレアなパッケージの「サラダパン」

 

突然来たサラダパンブーム

この”たくあん meets. パン”という異業種交流にもほどがある「サラダパン」が地元の夕刊紙に取り上げられ、さらにそれを読んだ全国ネットのテレビ番組『カミングアウトバラエティ!! 秘密のケンミンSHOW』『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系列)がたて続けに放映し、その影響で一躍日本中から注文が殺到することとなったのです。

 

「サラダパンは昭和32年に販売を始めたもので、ずっと昔からうちにあったんです。それがテレビで取り上げられて以降、1日 3,000本を売り上げるまでの大ヒット商品になりました。でもおばあちゃんは決して珍しいものを作って目立とうなんて発想はなかった。そもそもは惣菜パンのひとつとして、刻みキャベツなど野菜と手づくりマヨネーズを和えたコールスローパンを考案したんです。ところが製造後すぐにキャベツの水分がパンに移ってしまうため、キャベツをたくあんに変えたんです。それが独特の食感で人気が出て、うちの定番商品となっていました」

 

コッペパンにたくあんをはさんだ「サラダパン」は、しゃきしゃきして本当においしい。

決してゲテモノではありません。

そしてキャベツだとパンが湿ってしまうから、「じゃあ、たくあんで」という智恵子さんの切り替えの早さ、柔軟性と斬新さに驚かされます。

 

「そうなんです。そして『キャベツのかわりに、たくあん』っていうエピソードは広く知られてはいるのですが、ひとつだけ、伝わっていないことがあるんです。それは、もとより『コッペパンにサラダをはさむ』『マヨネーズをはさむ』というアイデア自体、おばあちゃんには先見性があったということ。サラダをはさんだパンなんて、滋賀にはほかになかったと思うんですよね」

 

そうですね。

たくあんにばかり目が行きがちですが、言われてみれば、目からうろこ。

調べてみると日本で三角形に切ったサンドイッチのテイクアウト販売が始まったのは昭和36年からなのだそう(東京の茗荷谷駅近くにあったフレンパンが開始したという説がある)。

 

その4年前にすでにコッペパンにコールスローサラダをはさもうとしていたのですから、滋賀どころか全国でも珍しい挑戦だったはず。

智恵子さんは日本の惣菜パンの先駆者のひとりなのです。

ここをもっと評価すべきですよね。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225211626j:plain

▲智恵子さんは88歳にして現役のパン職人

 

長浜に帰ってきた西村さん

こうして全国から脚光を浴びることとなった「サラダパン」は、従来の一軒の小さなパン工場では「これ以上もう製造できない」という状況にまできてしまいました。

そして同業他社や他業種の有象無象なアドバイザーたちから「専用のラインを持て」「工場を増設してもっと生産能力を上げろ」の声がしきりに高まるのです。

 

その頃、孫である西村さんは東京にいました。

西村さんは祖父母や両親がパンを焼く姿を見て職人に憧れ、自らも辻製菓専門学校で製パンを学び、東京のパンの名店で働いていたのです。

 

「つるやパンを自分が継ぐという考えは、当時はなかったです。親族経営でうまくまわっていたし、正直言って自分は継がずにもっと大きな店を持ちたいと考えていました」

 

そんなおり、東京にいる西村さんのもとへ、いとこの専務から「戻ってこないか? 一緒に何か新しいことを考えよう」と声がかかったのです。

いつか滋賀県へ帰りたいと考えていた西村さんは、この誘いを受けて帰郷し、「つるやパン」の従業員となりました。

 

「サラダパン」で原点回帰

その頃の「つるやパン」は降って沸いた「サラダパンブーム」に翻弄(ほんろう)され、方向性を再確認しようという時期でもあったのです。

 

「利益のみを考えれば、サラダパンを増産して全国のコンビニに置けるようにすればよかった。でも一族全員、その考えはなかったですね。もともと滋賀県の子どもたちのために食パンやコッペパンを焼いていた会社です。新しい機械を導入し、人を雇ってライン化するって、そんなパン屋さんじゃなかっただろうって。地元の方々に『これ少し変わってるけど、これがおもいで想い出の味だよね』って笑いながら食べてもらえる。そういうお店だったよねって、皆で意見が一致したんです」

 

そんなふうに「今後『つるやパン』をどうするか」というテーマの親族会議が開かれ、西村さんをはじめ、全員が出した答は「原点回帰」でした。

「街なかで、子どもからお年寄りまで楽しめる地元密着型のパン屋さんに立ち返ろう」。

一族でそう確認しあったのです。

智恵子さんが発明した、たくあんをはさんだ「サラダパン」は、メジャーなステージより、たくあんがよく似合う一家の団らんを選んだのでした。

 

パン屋さんが消えるのは寂しい

されど、じゃあ「原点回帰」って、なに?

なにをどうすることが「原点回帰」になるの?

過疎化が進んでいる現実が横たわる長浜市で、ただ単純に「これまで通り」というわけにはいかない。

 

いとこの専務から「新しいことをやらないか?」と誘われ東京から滋賀へと戻ってきた西村さんは、創業65周年を目前に、あと10年、あと20年と「つるやパン」を継続させ、かつ進歩させるためになにかいい方法がないか、そのヒントを求め、長浜の街を歩きました。

 

久しぶりにめぐった長浜の街は、ずいぶん変わっていました。

往時はにぎわっていた通りは閑散とし、なかでも同業の内藤製パンの工房兼店舗が廃墟化している姿にはショックをおぼえたのだそう。

 

「ここも地元に愛されていたお店でした。店主さんがお亡くなりになり、その後しばらくは奥様がやっていらしたんですが、跡取りがおらず閉店したようです。建物はつぶして更地にするということでした。それを聞いて『街からパン屋さんがなくなるのは、さびしいものだな』と感じたんです」

 

朽ちたまま放置されていた空き店舗を前にし、パン屋さんという存在が街のコミュニケーションための重要なスペースになっていることを改めて感じいった西村さんは、ここでひらめきます。

 

「『自分がこの建物に住み込んで2号店を開こう』と思ったんです。ここでパンを焼いて、調理して、お客さんはそれをすぐに食べられて、具材の組み合わせを変える指示を出したり、職人としゃべることもできる。そういうお店がやりたい。ビジネスマンや主婦のみなさんが気軽に訪れて、部活帰りの学生が立ち寄って、おもしろがってもらい、記憶に残る「おもいでパン」のお店。それこそ地元密着で、原点回帰じゃないのかって考えたんです。そして焼くとすれば、やっぱり甘みがあって、ふわっとしている本店の味。うちが突然ハード系とか始めたら、それはおかしいですよね

 

そうして西村さんはこの廃墟化したパン工房をリノベーションし、本店でもすでに焼いていた丸い食パンだけに特化した、前代未聞の専門店を開くこととあいなったのです。

 

f:id:Meshi2_Writer:20170108225209j:plain

▲閉店したままの状態だった内藤商店

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225215135j:plain

▲木造パン工房の廃屋を改築し「街のパン屋さん」を復活させた

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225211725j:plain

▲すっかりきれいになった新天地で製造と接客にいそしむ西村さん。ずっと職人一筋だったので、お客さんとの触れ合いはとても新鮮だという

 

f:id:Meshi2_Writer:20170108225434j:plain

▲「つるやパン」2号店に生まれ変わった建物。「おもいで」に残るよう、遊び心が随所に

 

「長浜の味」になりたい

 

「この2号店ができてまだ1年経っていません。だから、これが”原点回帰”なのか、正解だったのか、それはまだわかりません。すぐに答は出ないと思います。ただ、この場所は北國街道で本店とつながっているんです。これは偶然なんだけど必然のような気がします。長浜の人たちに愛される”長浜の味”になりたい。その願いが、この道でつながっているのかな。よく『この丸いパンで大阪にお店を出したら、めっちゃ売れるんじゃない?』と言われるし、実際そうなのかもしれないけれど、それをつるやパンがやるというのは、あまりにもドラマやストーリーがないと思うんです」

 

地元に密着し、長浜の味と呼ばれるパン屋さんになりたい。

65年目にして同じ長浜市内に2号店を出した西村さん。

思えば「焼サバ」や「みたらし」のサンドイッチも、智恵子おばあさんがたくあんで作った「サラダパン」のように、作る人食べる人のことを考えた末に、大胆に飛躍したもの。「つるや流」ともいえるパン作りのスタイルは脈々と受け継がれ、長浜の食文化となっているように思いました。

 

「新しい商品を生み出してゆく半面、初代サラダパンにはさんでいたコールスローや、たまごサラダのレシピは、およそ60年前におばあちゃんがあみだしたものを再現しています。60年の歴史を丸い食パンにはさんでいます。ぜひ食べにいらしてください」

 

その思い、その味、まさに「マル」でした。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225211956j:plain

▲祖母の智恵子さんが「本当は『サラダパン』にはさみたかったサラダ」のレシピを忠実に再現

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225212023j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161225212010j:plain

▲「サラダのサンドイッチ」(170円)。60年以上前の「たくあん」以前のコールスローサラダがこのお店で食べられる。お客さんの目の前で調理するというシステムを構築したからこそ、この元祖「サラダパン」が再び日の目を見ることとなった 

 

f:id:Meshi2_Writer:20161225211925j:plain

▲「丸いパンって不思議です。シンプルな形だけに、いろんなことができそうな気がするんです」と西村さん。いま「きつねうどんを表現した丸いサンドイッチができないか」と考えているところなのだそう

  

お店情報

まるい食パン専門店 つるやパン

住所:滋賀県長浜市朝日町15-31
電話番号:0749-62-5926
営業時間:7:00~17:00
定休日:水曜日

 

つるやパン 本店

住所:滋賀県長浜市木之本町木之本1105
電話番号:0749-82-3162
営業時間:月曜日〜土曜日 8:00〜19:00、日曜日・祝日 9:00〜17:00
定休日:無休(臨時休業あり)
ウェブサイト:http://www.tsuruyapan.jp/

※この記事は2016年12月の情報です。
※金額はすべて税込みです。

 

書いた人:吉村智樹

吉村智樹

よしむらともき。関西ローカル番組を構成する放送作家。京都在住。街歩きをライフワークとし、『VOWやねん!』ほか関西版VOW三部作(宝島社)、『ジワジワ来る関西』(扶桑社)、『街がいさがし』(オークラ出版)、『ビックリ仰天! 食べ歩きの旅』(鹿砦社)など路上観察系の書籍を数多く上梓している。

過去記事も読む

【まとめ買い】噂の「パンストック」 「めんたいフランス」と一緒に買いたいパン【福岡】

f:id:mesitsu_lb:20161202164834j:plain

パン好きな方で知らない人はいないのではないでしょうか。福岡県の箱崎にある「パンストック(pain stock)」。各メディアでも取り上げられ、なんと全国各地からお客さんが訪れます。

 

福岡の「めんたいフランス」といえばすぐに「パンストック」の名前があがりますが、他のパンも「冷凍しても美味しい!」と大好評。訪れるお客さんの中には、両手いっぱいに袋を提げて帰られる姿もよく目にします。

 

今日は、そんな「まとめ買い」にオススメのパンをご紹介したいと思います。

 

f:id:mesitsu_lb:20161202164837j:plain

ヨーロッパのような、石造りのオシャレな外観。

 

「パンストック」にたどり着いてすぐ気付くのが、高温で焼き上げられる、甘くていい香り。パン屋さんというよりも、焼き菓子屋さんに近い香りです。 

f:id:mesitsu_lb:20161202164841j:plain

店内はハード系のパンから、食パン、スイーツ系のパンまでがずらりと並びます。一つひとつに丁寧な説明がされていて、ゆっくりパン選びを楽しめます。

 

f:id:mesitsu_lb:20161202164844j:plain

試食して、納得したものを買って欲しいと、試食のボリュームもしっかりあります。これはうれしいですね。

 

f:id:mesitsu_lb:20161202164846j:plain

▲めんたいフランス 330円


言わずと知れたNo.1商品。焼き上がりと同時になくなっていきます。常連さんは、焼き上がりに合わせていらっしゃるようですよ。この日は、外国からの観光客の方も買いに来られてました!

 

さて、そんな「めんたいフランス」ですが、外がサクッ、中がふんわり、モッチリ。めんたいと自家製マヨネーズ、バターがたっぷり使われています。端から端までたっぷり。めんたいも少しピリッとしていてうまい。決して小さくはないのですが、あっという間に完食してしまいますよ。

 

まとめ買いにオススメのパン6選!

f:id:mesitsu_lb:20161202164848j:plain

さて本題です。

まずは、「『めんたいフランス』以外のベスト3」です。

 

No.3「キビック」 150円

f:id:mesitsu_lb:20161202164856j:plain

モチモチしたクリームパンですが、シュークリームのようでもあります。

星を持つレストランで活躍される料理人の方も「初めて食べた!」と絶賛されたとのこと。「キビック」のような、スイーツ系のパンは、いろいろな味を楽しめるよう手のひらサイズで作られているのもうれしいですね。

 

No.2「メロンパン・パリゴウ」 150円

f:id:mesitsu_lb:20161202164853j:plain

外側が通常のメロンパンより固め。時間がたってもサクッとした食感を味わえる、うれしいメロンパン。クッキー生地が癖になります。

 

No.1「カカオショコラ」250円

f:id:mesitsu_lb:20161202164850j:plain

あまりの好評で、他のお店でもよく似たパンを見かけるようになりました。

チョコチップを練りこんだパン生地でショコラの味が濃いのが特徴です。ダークチョコ、ミルクチョコの2種類が使用されているので、味のアクセントもあり、ガトーショコラと、パンの中間のようなぜいたくさです。

 

そしてお次は、「お店のオススメベスト3」です!

 

オススメNo.3「パンストック」(ホール)520円/(ハ―フ)260円

f:id:mesitsu_lb:20161202164903j:plain

f:id:mesitsu_lb:20161202164906j:plain

お店の名前でもあるパンです。表面はしっかり歯ごたえがありますが、見た目と違って中にはシュー生地のような気泡がたくさんあり、モチモチした食感を味わえます。

素材をいかした自然の味だから、保存用にもオススメです。

 

オススメNo.2「パン・ド・ミ・ドイツ」350円

f:id:mesitsu_lb:20161202164901j:plain

ヨーグルトを使うことで、しっとりした生地に仕上がります。

そして、ハチミツがはいっているので、グルテンを適度に切ってくれてモッチリ仕上がるのだそうです。そのまま食べてもふんわり甘くて、心地良い気分になれる食パンです。

 

オススメNo.1「クルミとレーズンのルヴァン」(大)350円/(小)220円

f:id:mesitsu_lb:20161202164858j:plain

ハード系のパンで、外側はしっかりとした歯ごたえがあり、内側がモッチリ。

クルミを使うことで、クルミの油分が生地全体に行きわたって、しっとり感がでるのだとか。また、レーズンとクルミも惜しみなく使っているから、ぜいたく感が半端ありません!世界で活躍されている料理人の方も感動されたそうです。

 

オーナーの平山さんにインタビュー

「パンストック」のパンは調理系を除いては、ほとんどが2週間冷凍しても美味しく食べられるということで、その理由をオーナーの平山さんに教えてもらいました。

f:id:mesitsu_lb:20161202164908j:plain

「冷凍しても美味しく食べられるのは、ゆっくり作っているからです。」と平山さん。

発酵させる時間を長くしているので、時間をかけて作られている分、劣化するのもゆっくりなのだそう。

 

特に時間がたってもパサパサにならないよう、生地の水分量を多くしているところにも
ポイントが。粉と水の結合時間を長くすることでモチモチした食感が生まれるそうです。

 

うまさの秘密についても尋ねたところ、1番大切にしているのは、「身体に良いものを」ということ。美味しさを追求するあまりに、本来の食べ物とかけ離れすぎてしまわないように心がけているそうです。

 

お店に着いたときの甘いお菓子屋さんのような香りも、バターや砂糖など、添加物ではなく自然のものだけで作り上げられているから。例えばマヨネーズも、京都から酢を取り寄せて作る自家製……素材をいかしたパンづくりをされています。

 

素材の味をいかしながら、なるべく人工物を使わずに仕上げていくと、「パンストック」のパンの味になるのだとか。今では、「パンストック」で修業された方も独立されて、素敵なお店が増えてきました。メニューも他のお店でも見かけるようになりましたが、まねされてももっといいものを作ろうと、同じものでも少しずつマイナーチェンジをして進化しているのだそうです。


また、いろんな人とコラボレーションをしながら、グルテンに代わる特殊加工された米で作るパンの研究なども同時に行われています。これからのテーマは「Japan」なのだとか。また、新しくみんなを喜ばせてくれるものがお店に並ぶ予感。楽しみです。

 

哲学的で遊び心も忘れない……オーナーの平山さんの生き方がパンにつながっています。パン好きじゃなくても一度はぜひ訪れて欲しいパン屋さんです。

 

f:id:mesitsu_lb:20161202164911j:plain

調理系のパンもありますよ。

 

f:id:mesitsu_lb:20161202164913j:plain

パンの種類によって、ちょっぴり小ぶりのパンも。

 

f:id:mesitsu_lb:20161202164916j:plain

フランス菓子のカヌレや、ドイツのシュトレンなども本格的です。

 

f:id:mesitsu_lb:20161202164918j:plain

本当に居心地の良い、素敵なお店なのです。

 

f:id:mesitsu_lb:20161202164839j:plain

お店情報

パンストック (pain stock)

住所:福岡福岡市東区箱崎6-7-6
電話番号:092-631-5007
営業時間:10:00~19:00
休日:月曜日・第1、第3火曜日
Facebook:パンストック

www.hotpepper.jp

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:安藤エリカ

安藤エリカ

福岡県出身。1984年生まれ。地元情報誌の制作や編集を経て、ライターに。飲食店に行くことの楽しみは、美味しい料理と雰囲気。お酒も大好きです。

過去記事も読む

「なつかしのドックパン」思い出グルメ堂~あの頃の味に会いに行く! 其の1【タベアルキスト】

f:id:tabearukist:20161204183232j:plain

あけましておめでとうございます! メシ通レポーターのタベアルキストTokuharaです。

2017年。我々タベアルキストから、さっそく新企画をお届けします。

 

思い出グルメ堂〜あの頃の味に会いに行く! とは ──

国内の飲食店を中心に、年間のべ1万軒を食べ歩くタベアルキストたちの食のルーツ。学生時分の胃袋を満たしてくれた「思い出のグルメ」を掘り起こし、皆さんにご紹介するノスタルジックな新企画です。

 

今回のテーマは、学生時代…… いや、幼少の頃から何度もかぶりついた「昔ながらのパン」! 

f:id:tabearukist:20161204183612j:plain

「なつかしのドックパン」を求めて

浅草から電車で約‪1時‬間半。 ‬‬今回の舞台は、筆者の地元「栃木県鹿沼市」。

県央に位置する人口約10万人弱のこの街は、 「鹿沼そば」や「さつきポーク」、「とちおとめ」など、食の特産物も豊富です。 

f:id:tabearukist:20161204182911j:plain

▲東武新鹿沼駅前は、空も広く、非常にのどかな光景が広がっております。

私のパンのルーツ「ナトリパン」

東武新鹿沼駅から北西に5分ほど車を走らせると、 今回の目的地「ナトリパン」が見えてきます。創業は、1953年!鹿沼っ子なら一度はここのパンを手に取っているだろう、 地元でも評判のパン屋さんです。近年は、県外からのお客さんも来られるとか……。

f:id:tabearukist:20161204182933j:plain

実家には大抵こちらのパンが置いてあり、 筆者の中の「パン」のルーツは、ここにあると言っても過言ではありません。

 

f:id:tabearukist:20161204182955j:plain

店内は、学生時代とはガラリと変わり、かなり明るい雰囲気に。ただ、創業時から変わっていないのは、この「ガラスショーケース」。

何十年もお店の真ん中に座し、お客さんを迎えてきた、言わばお店の重鎮!

 

f:id:tabearukist:20161204183029j:plain

この「ガラスショーケース」の中には、 昔からのいわゆる定番商品から、最近考案されたメニューまで、 常時34種類のパンが綺麗に並べられています。

 

f:id:tabearukist:20161204183042j:plain

改めて見ると……その価格設定に驚き!

現社長(二代目)の娘で、接客担当のリエさん曰く、ずばり「まごごろ価格!」とのこと。

 

f:id:tabearukist:20161204183056j:plain

味はもちろん、この買い求めやすい価格も手伝って、毎日通うファンもおられるのだそう。

 

f:id:tabearukist:20161204183203j:plain

すぐ目の前には中学校があり、学生時代にフラ〜ッと立ち寄った思い出のある大人たちも多いのではと。

 

これがナトリのドックパン!

お店の看板にも書かれている「ドックパン」は、こちらのまさに看板商品。 そして、私が人生で一番頬張っているであろうパンでもあります。

f:id:tabearukist:20161204183232j:plain

その見た目どおり、外側はこんがり。そして、中はふっくら。口当たりも良く、焼き立てではなく、冷めても美味しくいただけるのがポイント!

このドックパンの真ん中を包丁で割き、そこにいろんな具材を挟みます。

 

ちなみに……。

この“素”のドックパンだけを買っていくお客さんもいらっしゃいます(実家にもよくありました!)。自宅でジャムなどを塗って、サッと頬張れるのも良いですね。

 

f:id:tabearukist:20161205215351j:plain

▲ウィンナードック(160円)

 

昔から変わらない定番商品の1つ。 ウィンナーにシャキシャキの千切りキャベツ、そして、自家製マヨネーズ。

そう、この自家製マヨネーズがいい脇役! タップリ塗ってもしつこくなく、 適度な油分と、ほのかな酸味が、パンも含めた具材のうま味を引き立てます。

(学生時代には、一度に何個食べたことか……)

 

f:id:tabearukist:20161204183324j:plain

▲サラダドック(160円)

 

こちらも昔から変わらない味。老若男女に愛される一品!

ポテトサラダは自家製。 ここにも自家製マヨネーズが使われており、 シャキシャキとした野菜の食感と、マヨネーズの酸味の調和が絶妙。「シンプル故に飽きない」とは、まさにこういう事。

 

惣菜系は「ドック」だけにあらず!

惣菜系と言えば、揚げ物も外せません! 揚げ物って、無性に食べたくなる時ってありますよね。 幼い頃から変わらず。

f:id:tabearukist:20161204183412j:plain

ポークロースカツ、チキンカツ、海老カツ……。「ナトリパン」では、常時6種類のバーガー系の揚げ物惣菜パンが揃っています。

 

中でも、一番の推しパンはこちら!

f:id:tabearukist:20161204183434j:plain

▲コロッケサンド(220円)

 

 「主役は自分だ!」と言わんばかりの大ぶりなコロッケ。 そのアツアツな主役を、専用のパンに挟んで。衣はサクッと。 ポテトの甘味が広がるコロッケが、いい仕事をしています。

 

ちなみに……。

ここに、先程のポテトサラダを挟み、タップリの中濃ソースを垂らすのが裏メニュー(非売品)。アツアツのコロッケと、ひんやりポテトサラダの絶妙なコントラストが、たまらない逸品です。

 

そして、これも外せない……!

f:id:tabearukist:20161204183519j:plain

▲あんドーナツ(140円)

 

実は、個人的に一番オススメしたいメニュー。 揚げ立て時の、ふっくらモチッとした生地が秀逸。甘いこしあんとの調和が絶妙です。

 

f:id:tabearukist:20161204183546j:plain

大人になっても、ついついかぶりついてしまいます……。 口の中に広がる甘さを楽しみながら、 なんとも言えない懐かしさに包まれました。

 

子どもも安心して食べられる、昔ながらのパン作り

いまや親子四代でお世話になっているご家庭も、 きっと有るのではないでしょうか。

時代に合わせて、材料の分量なども少しずつ変え、いまに至っているそう。ただ、「あの頃の味のままだなぁ……」と思えてしまうのが、 なんとも不思議なところです。

f:id:tabearukist:20161204182832j:plain

「パンは、挟む具材も含めて、作り置きはしない」

「使う機械は最小限」

きっと、もっと効率的で、オートマチックな製法はあるはずなのに、 昔ながらの製法でパンを作り続けています。 

 

f:id:tabearukist:20161204183700j:plain

「今後もそれは決して変えない!」とは、 子どもにも安心してパンを食べさせたいという、“三代目”淳さんの熱き思い。

パン作りの道に入って、約8年。「社長(二代目)のパンには、まだ及ばない。でも絶対この味を守りたい」 という言葉がとても印象的でした。

 

f:id:tabearukist:20161204183730j:plain

今日も早朝から、 ‬‬朝9時‬のオープンに向けて、せっせと美味しいパンを作ってくれている事でしょう。

「これからもずっと、この味を食べさせてください」 

 

f:id:tabearukist:20161204183754j:plain

思い出のグルメ ──。

みなさんにもきっとあるのではないでしょうか。「久々に、アレ食べたいなぁ……」なんて気持ちに、 少しでもなって頂けたら幸いです。

 

お店情報

ナトリパン

住所:‪栃木県鹿沼市日吉町879 - 18‬ ‬‬
TEL:‪0289 - 62 - 6969‬‬
営業時間:‪9:00‬ 〜 パンがなくなり次第終了 ‬‬
定休日:日曜日(その他、臨時休業あり)

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。
※取材日:2016/10/8、2016/11/26、2016/12/3

 

書いた人:Yamato Tokuhara

Yamato Tokuhara

特に、和食をリスペクトするタベアルキスト。幼少期より魚に囲まれ育った影響か、魚介料理には人一倍うるさい。ノンジャンルで年間350軒以上を食べ歩きながら、言葉の壁を超える“食”の素晴らしさを、海の向こうまで伝えることが、いまの生きがい。

過去記事も読む

サンドイッチ専門店メルヘン。そのこだわりを探る

f:id:uralatokyo:20161130001859j:plain

これから乗る列車で何を食べようかと考えるのは、旅の楽しみのひとつですよね。

ターミナル駅にはたくさんの種類の駅弁があって目移りしてしまうなか、旅のおともに欠かせないと根強いファンが多い「サンドイッチハウス メルヘン」。
もちろん、ゆきちゃめゴンもそのひとりです。

今回はメルヘン東京駅エキュート店にお邪魔して、その秘密を探ってきました。

 

サンドイッチハウス メルヘンのこだわり

1983年創業のメルヘンは、昭和な雰囲気のかわいいクマのマークでおなじみ。

都内をはじめ関東圏を中心に26店舗展開していると聞いて、どこかの工場で作って持ってきているのだろうなと思っていました。

しかし……なんと! サンドイットはすべて各店舗の店内厨房で手作りしてるのだそうです。

f:id:uralatokyo:20161124182331j:plain

f:id:uralatokyo:20161124182418j:plain

▲ひとつひとつ丁寧に手作り中。マヨネーズもサンドイッチ用に独自のレシピで開発したものを使用しています

 

f:id:uralatokyo:20161124182520j:plain

▲生クリームもその場でホイップしているから新鮮。だからメルヘンの生クリームは重たくないんですね

 

野菜もオゾン水で洗って使用するため、いわゆる一般的なカット野菜のような殺菌はしておらず、手作りの良さがいきています。

 

パンだけは別の工場で焼いて各店舗に搬入しているのですが、なるべくシンプルに、サンドイッチの具の味を引き立たせるように開発したというこだわりのパンなのだそうです。

 

そして、できたサンドイッチは約30秒後には、店頭へ。

f:id:uralatokyo:20161124182554j:plain

 

メルヘンのサンドイッチ、開発秘話

ショーケースには、他では見たことがない変わったサンドイッチがけっこうあります。

f:id:uralatokyo:20161124184421j:plain

例えば、マンゴー生クリームとか、ラムレーズン生クリームとか……

 

f:id:uralatokyo:20161124184925j:plain

チーズかぼちゃの包み揚げ、なんていうのもある。

 

こういったメニューは誰がどうやって開発しているのかうかがってみたところ、月に1回店長が本社に集結し、その場で新メニューを提案・作成。食べながら話し合って決めているとのこと。この会議がまた大変風通しのよい会議で、みなさん言いたい放題でたいへん盛り上がるのだそうです。
その会議、メルヘンファンとしては、柱の陰からこっそりのぞいてみたい気もします。

 

f:id:uralatokyo:20161124182836j:plain

常時40〜50種といわれるショーケースのラインアップは季節や店舗によって異なり、例えば春にはブルーベリークリームにいちごをはさんだベリーベリー生クリームサンドがあったり、秋ならモンブラン、栗、りんご、柿など、美味しくて新鮮な旬の素材を使ったサンドイッチが並びます。

また、例えば三越日本橋店では今半とコラボしたすき焼きサンドを予定していたり、今回うかがった東京駅エキュート店では、年末や連休などの特別な時期の夕方以降だけビンチョウマグロのトロで作ったスペシャルバージョンのツナサンド(669円)が並ぶこともあるのですが、取材当日はお目にかかれず残念でした。

幻のスペシャルツナサンド、もし東京駅で見かけたら絶対ゲットしたいものです。ちょっと高いけれど、旅のおともにビールといただいたら絶対美味しいはず。


とにかくラインアップは常に変わっていて、特別なタイミングでしか買えないサンドもあるのでメルヘンのショーケース、チェックは欠かせないですよ!

よく、メルヘンのサンドイッチは300種ぐらいと言われていますが、過去にボツになったものを含めれば、1,000種ぐらいは存在したのではないかとのことで、そのチャレンジ精神に脱帽です。

 

好評のサンドイッチをいただきます

ここからは、東京駅エキュート店でのベストNo.3をご紹介します。

 

第1位 厚切り三元豚カツ入り4食パック(756円)

f:id:uralatokyo:20161124192326j:plain

カツサンド、甘夏いちご生クリームサンド、タマゴサンド、ロースハムサンドといった確実においしく、かつバランス的にも最高なコンビネーション。どれも食べたいですもんね。これが1位というのは納得です。

 

第2位 あまおういちごジャム生クリーム(432円)

f:id:uralatokyo:20161124193308j:plain

甘すぎず、くどくないので生クリームが苦手でもメルヘンのものは大丈夫という話もよく聞きます。他でお弁当を買っておやつとしてスイーツ系サンドを買う、というチョイスもありですね。

 

第3位 エビカツとタマゴのペアサンド(¥388)

f:id:uralatokyo:20161124193834j:plain

たしかにこれはどっちも食べたいですね。
エビカツももちろん美味しかったのですが、感動したのはタマゴサンドです。

 

f:id:uralatokyo:20161124193917j:plain

一般的にはほとんどマヨネーズ味? というタマゴサンドが多いなか、マヨネーズ感はほとんど感じさせず卵そのものの味がいきていて、全くクドくないんです。ちなみに卵はヨード卵光を使用しているそうです。ぜいたくですね〜。

 

他にも、おすすめサンドがたくさん

ベスト3だけでなく、個人的におすすめのものがいくつかありましたのでご紹介します。

 

まず、

ローストビーフサンド(432円)

f:id:uralatokyo:20161124194610j:plain

本当にクオリティーが高くて、ビールよりむしろワインが合うかも、というレベルでした。

 

三元豚厚切りヒレカツサンド(496円)

f:id:uralatokyo:20161124195936j:plain

某豚カツ専門店にも全くひけをとりません。こちらはさらに肉を厚めにしていて食べ応え満点ですので豚カツに集中したい方にはこちらがおすすめです。

 

甘味系もいってみましょう。

 

フルーツスペシャル(388円)

f:id:uralatokyo:20161124195314j:plain

いちご好きの方はいちごサンドでもいいのですが、いろいろ入っているこちらのバージョン、実はメルヘン全店舗では一番好評なんだそうです。いちごだけでなく、黄桃とキウイも食べられるなんてぜいたくでうれしいですね。

 

おぐら生クリーム(324円)

f:id:uralatokyo:20161124200256j:plain

生クリームとの組み合わせが絶妙です。量もちょうどいい感じなんです。

 

旅だけでなく、ふだんにも楽しめるメルヘン

メルヘンは駅ナカなどだけでなく都内の百貨店や路面店など、いろんな形態の店舗があります。

毎日食べても飽きのこない日本人の味覚にあわせたレシピで作られたサンドイッチは、旅だけでなくもちろん、普段の生活のなかでも楽しめます。

 

行くたびに新しいサンドイッチに出合えるめくるめくメルヘンワールド、お店の近くを通ったらぜひチェックしてみてください。

 

f:id:uralatokyo:20161124201457j:plain

 

お店情報

サンドイッチハウス メルヘン エキュート東京

住所:東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東日本東京駅構内1Fサウスコート エキュート東京
電話番号:03-3211-8929
販売時間:8:00~22:00(日曜日・祝日 8:00~21:00) 
定休日:無休
ウェブサイト:エキュート東京店
ウェブサイト:サンドイッチハウス メルヘン

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:ゆきちゃめゴン

ゆきちゃめゴン

食べることばかり考えています。弱いのにお酒も好きです。ふだんはエディトリアル系を中心にDTPデザイナー。東京の下北沢?渋谷あたりで生きています。万年ダイエッターでしたが、最近痩せることをあきらめました。Small Happy Thingsというサイトにも参加中。

過去記事も読む

真珠の粉入り! 1本 6,500円の超高級食パンに迫る【兵庫・姫路】

f:id:uralatokyo:20160801000731j:plain

美味しさを追求したらこうなった

世の中に高級と呼ばれるものは数多くあれど、食パンでここまで高級と名の付くほど値段がするものは、おそらくこれだけではないでしょうか。

 

兵庫姫路市にある「レトワブール(Les 3 boules)」の「高級XO食パン」はなんと、1本 6,500円!

毎週木曜日のみの販売で、1日に10本しか販売しない限定のパンです。1本の量は2斤分になりますが、一般的なパン屋さんの食パンが300~500円程度と考えるとかなり高価。「6,500円もする高級食パンを食べてみたい」という衝動にかられて、予約して姫路まで足を運びました。

 

場所は、JR姫路駅からさらに山陽電気鉄道本線に乗って2駅の亀山駅。周囲は田園風景が広がるのどかな場所です。駅から歩いて5分ほどのところに、今回目指す「レトワブール」を発見しました。こんなところと言っては失礼ですが、それぐらい都会とはほど遠い風景の中にお店はあります。

 

f:id:uralatokyo:20160801000730j:plain

オーナーによると「美味しいパンを追求したらこうなった」という「高級XO食パン」。2,000円~3,000円ぐらいの食パンは時々見かけますが、さらに上をいく食パンを作ろうと思ったそうです。

 

試行錯誤の末できあがったこだわりの食パンを、食通たちに食べてもらったところ「これは売らなきゃダメだ!」との言葉を得て、販売に至ったというのが経緯だとか。

 

f:id:Meshi2_IB:20161209173557j:plain

箱も袋も、「高級XO食パン」用の特別仕様のものです。この特別感がまさに高級感!

 

パン1本に真珠が3グラム入っている!

「最高級の食パンを作りたい」との思いから、すべての素材にこだわり、仕込みは焼く前までに3日間かけるほどの気の入れよう。高級食パンの生地のベースになる小麦粉は、国産小麦も含めて何種類もの小麦粉の中から厳選した上、たどり着いたのはフランス産の小麦粉。他の素材との相性が良く、味が一番美味しいと感じて、この食パンにふさわしいと判断したのだとか。

バターは、デンマークで100年以上の歴史を誇る、ルアーパックの発酵バター。卵は、契約農家の奥丹波地卵。なかでも生後180日までに育った若鶏の生んだ希少な地養卵を使っています。ほかにも蒜山ジャージー牛乳プレミアム、ゲランドの塩、本和香糖など、使用する食材はすべて一流のもの。

 

さらに、秘密はそれだけではありません!

「高級XO食パン」は、1本に3グラムの真珠の粉が含まれているんです。真珠を入れようと思ったのは、美容のためにクレオパトラや楊貴妃をはじめ、セレブが愛用していると聞いたから。1回の食事で0.3gの真珠の粉を食べればいいということを知り、5枚切り2斤分で3gを入れることに決めたそうです。

 

オーナーは「真珠の粉は女性にウケる思いました。でも、食べてわかる風味ではないです」と仰っていますが、真珠の粉が含まれているというだけで肌にいいような感じがしてしまいます。6,500円という値段設定から、さぞかし真珠の粉は高価なのでは? と思い、3gでどれぐらいの金額なのかをお聞きしたのですが、「企業秘密で!」とのお答えでした。

 

その高級感が気に入って、何度もリピートされるお客さんも多いそうです。また、糖度も普通の食パンよりも4割程度少なくしているため、健康を気遣う人にうれしい配慮がされています。

 

オーナー曰く、「味と値段については賛否両論です」と、価値を感じる人と、そうではない人の意見があるとのこと。それでも、毎週のようにリピートするファンもいるというから、価値は十分あるのでしょう。

 

カットするのが大変なフワフワ感が見事!

作りたての高級食パンをすぐにでも食べたい気分でしたが、店内にはイートインスペースがないため、食べたい気持ちを抑えて、家に持ち帰りました。

 

自宅では、「当日はそのまま食べるのが美味しい!」の声をそのまま実践。カットした瞬間からほんのりと甘い香りがして、食欲がそそられます。すでに焼き上がりから時間が経って冷めてはいますが、フワフワ感はそのまま残っており、トースターで焼かなくても美味しさは充分感じられます。フワフワすぎて、カットするのがちょっと大変でした。

 

翌日はトーストしてバターを塗って食べるのがオススメと教えてもらいましたが、待ちきれず、買った日にさっそくトースターで焼いてみました。サクッとした食感で、甘さが口の中に広がります。真珠の味はわからないけれど、やはり「美味しい!」と感じます。6,500円の価値があるかどうかは、食べて確かめるしかありませんね。

 

f:id:Meshi2_IB:20161209173150j:plain

▲真珠の味はわからなかったけど、焼いてもフワフワ! ガンガン食べちゃいます

 

保存料を使用しておらず日持ちがしないため、食べきれない場合はカットして冷凍庫で保存しましょう。次に食べるときには、冷凍庫から出して、そのままオーブントースターに入れると、焼き上がったときと同じ状態のパンの味を楽しむことができます。

 

繰り返しますが、値段は1本(2斤分)で6,500円。1斤を5枚切りとした場合、1枚が650円の計算です。家で食べるパンにしたら、超高級に思えますが、喫茶店でトーストを食べた場合、コーヒーと合わせて500円ぐらいはかかります。オーナーのパン作りへのこだわりと値段のバランスを考えると、それほどぜいたくなものではないかも知れません。

 

「高級XO食パン」はネットでお取り寄せもできるため、興味がある方は食べてみるべしですね。

個人的には、「一度ご賞味あれ!」です。

 

プリンもシフォンケーキも絶品

さて、このレトワブールのパン屋さん。美味しいのは、「高級XO食パン」だけではありません。

カロリー控えめの希少糖を使った極シフォンケーキ(1ホール 480円)もフワッフワ!

f:id:uralatokyo:20160905005905j:plain

▲希少糖を使ったシフォンケーキ


お客さんからの問い合わせが多いブリオッシュは、食パン10本に毎回2キロのバターを使うため、バターが高騰している今は販売停止中とのこと。オーナーは残念がっていましたが、販売が再開される日も近そうです。

手頃な値段のパンも美味しいので、ぜひ食べてもらいたいですね!

 

f:id:uralatokyo:20160801000732j:plain

▲売り切れ続出のパン

 

いずれにしても「パンを焼くには、温度が一番大事」と言い切り、「こだわって作っていたのが、普通になってしまった」というオーナーは、パン作りに関しては、信念を貫いています。

パン職人の意気込みを感じさせてもらいました。

 

お店情報

レトワブール(Les 3 boules)

住所:兵庫姫路市亀山2-161-1-103
電話番号:079-233-3935
営業時間:9:00~19:00
定休日:日曜日・第2月曜日
ウェブサイト:http://www.les3boules.jp/

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:Jeana

Jeana

三重県生まれ。ライター。編集プロダクションを経てフリーに転身。webを中心に活動中。食べることには目がなく大食漢。プリン、モンブランを見つけると食べずにはいられないが、一方でオーガニック、グルテンフリーにも興味々。

過去記事も読む

名物は駅弁ならぬ“駅パン”! 駅長自らパンを焼く「駅舎工房モン・ファボリ」【兵庫・北条鉄道】

f:id:Meshi2_Writer:20161201164221j:plain

美人駅長がパンを焼く駅がある

 

私、以前は鉄道もパンも知らない普通の主婦だったんです。そんな私がまさか駅長に、そしてパン職人になるなんて、思ってもみなかったですね。

 

北条鉄道「法華口」(ほっけぐち)駅のボランティア駅長、北垣美也子さんは、そう言いました。

 

こんにちは。

パンに目がないメシ通レポーターの放送作家、吉村智樹です。
いつも「どこかにおいしいパンを焼くお店はないか~?」と、鼻をふがふがさせながら街をさまよっています。

 

そんな僕がおすすめしたい、一軒のおいしいパン屋さんがあります。

そしてそのパン屋さんは、駅からとても近い場所にある、いや「駅そのもの」なのです。

今日はみなさんを、グランド・パン食う・レイルロードな旅へとご案内いたしましょう。

 

創立100年を超える木造駅舎

僕が乗車したのは、兵庫県加西市ののどかな野里を走る単線のローカル鉄道「北条鉄道」。 

f:id:Meshi2_Writer:20161204165609j:plain

▲一両の車両が田園風景をゆっくりと走る、第三セクター方式の北条鉄道。全国で初めて旅客用の車両に廃油燃料が使用された


加西市は清酒の原料となる酒米「山田錦」の産地として知られる田園地帯。

わずか一両の愛らしいディーゼルカーが田んぼのあぜ道に沿ってとろとろと走る。

その姿は郷愁を誘い、見知らぬ土地なのにふるさとへの帰途についているかのような懐かしい気持ちになります。 

休日のぼんやりワンデイトリップにうってつけの路線でしょう。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201165929j:plain

▲酒米「山田錦」の産地として知られ、車窓から見える風景は一面に田んぼだ

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175434j:plain

▲北条鉄道は「枕木応援団」という制度を取り入れている。1口 4,500円で名前とメッセージ入りのプレートを作成し、3年間、枕木に取り付けられる

 

目指すは「法華口」駅。 

f:id:Meshi2_Writer:20161201165946j:plain

▲2012年11月にボランティア駅長が着任するまで無人駅だった法華口駅

 

「法華口」駅は大正4年建設という歴史ある木造駅舎。

今年で創設101年になり、平成26年に「国登録有形文化財」に認定されました。

文字が右から記されたレトロな駅名標もいまだに現存しており、貴重かつ味わい深い風景が随所に。 

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170018j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201170003j:plain

▲駅名が右から表記されていた形跡がうっすら残っている

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170158j:plain

▲北条鉄道は兵庫県小野市の粟生(あお)駅から加西市の北条町駅までの8駅13.6kmを22分で結ぶローカルミニ鉄道


平成25年には、大工さんから高さ7メートルもの地元にゆかりのある「三重塔」の模型が寄贈されました。 

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170142j:plain

▲駅のそばに建ち、素通りを許さないインパクトを放つ三十塔。これはここ「法華口」駅近くにある西国二十六番札所「法華山一乗寺」にある国宝三重塔を模した、言わば木製のフィギュア

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170229j:plain

▲まるで遠くにあるかに見える三重

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170117j:plain

▲「法華と言う駅に降りたら塔に逢う こころ晴れるや澄み渡る空」という歌碑も添えられた

 

その光景はなんとも幻妖で、さらに非日常な旅情をかきたてます。

 

りりしい姿が鉄道ファンを魅了

車両が「法華口」駅のプラットホームへ進み入ると、今回の主役である同市在住の駅長・北垣美也子さん(40歳)が、すでにスタンバイ。 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170314j:plain

▲車両が駅へ入ると、すでに女性駅長、北垣美也子さんが敬礼して待っていた

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201180003j:plain

北垣さんは出勤日にはこうして、発着の際にホームに立ち、上り下りを問わず「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」と乗降客を出迎え、見送ってくれるのです。

 

車両が見えなくなるまで笑顔で手を振る立ち姿のりりしさは鉄道ファンのあいだに口コミで広がり、その姿をひと目拝もうと、全国各地から多くのファンが訪れるようになりました。 

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170431j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201170351j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201170416j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201170445j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201170457j:plain

▲車両が見えなくなるまで手を振り続ける北垣駅長

 

それにつけても、駅長さん自ら乗客を見送る駅って、日本中を探してもめったにないと思うのですが、なぜそうするようになったのですか?

 

飛行場で飛行機を誘導している人の姿を見て、これを鉄道にも取り入れてみたらいいんじゃないかな、と思って始めました。最初はすごく恥ずかしかったんですが、お客さんが手を振り返してくださったり、停車するごとに運転手さんが声をかけてくれたり、これまではなかった新たな交流のきっかけになっていて、いまは始めてよかったなと思っています。(北垣美也子駅長)

 

なんと、プラットホームでの優美なふるまいのルーツが航空機誘導員の手信号にあったとは驚きです。 

f:id:Meshi2_Writer:20161201180234j:plain

▲停車時間に運転士と駅長が笑顔を交わす。北条鉄道には女性運転士が3名おり、このつかの間が女子どうしのコミュニケーションタイムとなる

 

駅舎がそのまんまパン工房!

そして驚くべきはもうひとつ、この「法華口」駅が“パン工房と一体化”しているユニークな駅であること。 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170556j:plain

▲駅の入り口は、パン屋さん「駅舎工房モン・ファボリ」の入り口でもある

  

そう、駅長の北垣さんは駅舎内でパンを焼く職人でもあるのです。 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170805j:plain

▲駅長とパン職人のふたつの顔を持つ北垣さん

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170821j:plain

▲これが駅舎内の光景だとはにわかに信じがたい 

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170855j:plain

▲午前10時オープンへ向け、続々とパンが焼きあがる

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170951j:plain

▲駅長であり、パン職人であり、売り子でもある北垣さん

 

f:id:Meshi2_Writer:20161203110155j:plain

▲駅舎内におよそ20種類のできたてパンが並ぶ。乗降客は調理の様子も見ることができる

  

f:id:Meshi2_Writer:20161201170919j:plain

▲オープンと同時にパンを求めるお客さんが駅に押し寄せる。もちろん乗車せずとも購入可能

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201170937j:plain

▲かつて券売窓口だったところからもパンが手渡される

 

さらに注目すべきは、ここで焼かれるパンは小麦粉ではなく米粉でつくられていること。

駅と合体したパン工房米粉パンの専門店で、それを焼いているのは女性の駅長さんというレアケースの怒涛の目白押しで、もうどの事柄から攻めてよいやら迷ってしまいます。

 

新鮮な地元食材がぎっしり

平成24年11月にオープンした「駅舎工房 Mon Favori モン・ファボリ」(フランス語で“私のお気に入り”の意味)。

ここ加西市産の米粉と地域食材をふんだんに使った、こだわりのパン工房。

 

駅舎そのものがパン工房という、言わば究極のオープンキッチン。

そして風情のある木造の待合室はそのままカフェ風のイートインスペースになるという、珍しいだけではなく、かなり合理的なつくり。

待合室には、パンを焼くいい香りが漂っています。 

f:id:Meshi2_Writer:20161201171023j:plain

▲待合室はそのままカフェ的なイートインスペースに

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201171101j:plain

▲陽当たり良好な待合室

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201171140j:plain

▲イートインスペース(待合室)にはプラレールが走行

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201171229j:plain

▲北垣さんはこのプラレールを眺めている時間がほっとするのだそう

 

駅舎の窓口にはおよそ20種類のパンが並び、その多くに地元で採れたフレッシュな食材がふんだんに使われています。

沿線の景勝地に見立てた抹茶生地のくるみパン「笠松山」(170円)などレギュラーメニューもさることながら、お楽しみは北垣さんが旬の食材をアレンジした「本日の気まぐれ駅長サンド(380円~)&週末のスープ(300円~)。 

 

※ 以下紹介するパンは一期一会。常時あるわけではありません。内容も値段もその日によって異なります。

f:id:Meshi2_Writer:20161201174058j:plain

▲抹茶生地のくるみパン「笠松山」(170円)。北条鉄道の沿線に「加西アルプス」と呼ばれる連峰があり、笠松山はその一端。岩肌のごつごつ感をくるみで表現した

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174235j:plain

▲平飼い卵「さとらん」を使ったタルタルソースを添えるフライサンド。揚げ物は白身魚や牡蠣など、その日の旬を。レモン汁を効かせ、さっぱりと

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174251j:plain

▲地元産の旬のフルーツをたっぷりのせた「さとらん・でせーる」(280円)。使うフルーツはその日によって異なる

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174422j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201174435j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201174457j:plain

▲無農薬で丹精込めて育てられたニンジンであんをつくり、オレンジスライスをトッピングした「それいゆ」(250円)。ニンジンは生産者さんが一輪車に乗って運んできたのだそう

 

パン好きにはたまらない品揃え

「駅舎工房モン・ファボリ」のパンはまだまだバリエーションに富んでいます。

f:id:Meshi2_Writer:20161201174711j:plain

▲駅舎内で調理される具だくさんな「本日の気まぐれ駅長サンド」

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175024j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201174304j:plain

▲入手できた新鮮食材が豊富だと「本日の気まぐれ駅長サンド」の種類も比例して増える傾向にある

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174554j:plain

▲パンから総菜が豪快にはみ出る「気まぐれ駅長サンド」の数々。使うパンも具材によって変化をつける

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174615j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201174111j:plain

▲ほくほくゴマチーズコロッケ×オーロラソース

 

北条鉄道サイダーゆずの味(200円)を添えて駅の待合室でいただいた。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174152j:plain

▲和牛すき焼き×甘~いトマト! ×玉ねぎソテー

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174202j:plain

▲さとらんオムレツ×ベーコン

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174212j:plain

▲富久錦のゆず胡椒を使った酒蒸しささみのマヨネーズ和え

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174331j:plain

▲ササミとわさび菜のマヨネーズ和え

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174517j:plain

▲クルミオレンジパン×ビーフパストラミ×ベビーリーフ

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174530j:plain

▲ジェノベーゼソースを敷いた季節のピザ「田井さんのタケノコ」(170円)

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174634j:plain

▲さとらん卵サラダ×ハム

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201174756j:plain

 ▲国産豚の生姜焼き×茄子のソテー

 

栄養満点で温かい野菜スープも

こちらで出しているのはパンばかりではありません。

f:id:Meshi2_Writer:20161203103357j:plain

▲野菜スープも駅舎内で手作り

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175134j:plain

▲たっぷり使った野菜の甘みと、ベーコンと魚介のスープがぜいたくに香るポタージュ。米粉パンでつくった自家製クルトンがアクセント

 

野菜やフルーツが満員電車のようにわんさか詰まっており、がぶりとかじりつきたくなります。

 

私の性格なのか、これでもか! っていうくらい、こぼれるほど食材を入れちゃうんです。仕入れはトマトやイチゴなど、出勤前に生産者さんの畑に立ち寄って、もらってきています。朝採りをすぐ使うので新鮮ですよ。スープや「焼きカレー」というパンに使うカレーもこの駅舎内で手作りしています。カレーには大根や白菜も。ほか、ニンジン、たまねぎ、どれもできるかぎり加西産を。週末のみのスープにもお野菜をたっぷり使います。駅舎にはストーブを置いていますが、それでも冬は寒いので温まっていってほしいですね。

 

いやもう、この駅に来るだけで、栄養という名の切符を手に入れたかのよう。

その他、市内の酒蔵「ふく蔵」が純米酒だけで仕込んでいる梅酒の完熟梅をコッペパン(名付けて“ほっけパン”)の具材にしたり、播磨農業高校の生徒が実習で栽培して加工したブドウジャムなど、この地の物産が一堂に会しています。

f:id:Meshi2_Writer:20161201174123j:plain

▲梅酒に使った実を自家製豆乳クリームで和えた「ほっけぱん ふく蔵さんの完熟うめジャム」(150円)と加西市特産「ゆかりの舞」(紫黒米)を圧力釜で炊いて生地に練りこんだ「山下さんちのゆかりの舞」(100円)

 

地元の方とのふれあいの中でパン作りをしたいと思っているんです。ただ、はじめからそうだったわけではないんです。オープン当時はまだ馴れなくて、丸いパンを5種類ほどお出しするのが精一杯でした。でも営業を続けるうち、お客さんが「僕はイチゴを栽培しているんやけど使ってみない?」って声をかけてくださるなど、助けてもらえるようになってきたんです。

 

おお、北垣さんが焼く米粉のパンが、生産者とお客さんとの連結の役目を果たしているのですね。

 

原料は絶滅していた幻の酒米

そうして実際にいただくと「米粉のパンって、こんなにおいしいんだ!」と驚かされます。原料がお米なので、焼くとお餅さながらに生地に伸びがあり、それでいておかきのような香ばしさと、さくっとほぐれる食感も。

小麦粉のパンとは様子がずいぶん違いますね。

 

日本酒の原料となる山田錦の祖先である希少な「野条穂(のうじょうほ)」を使っています。半世紀前に絶滅していた幻の酒米で、加西市の野条町が発祥の地なんです。「野条穂」のうまみを活かすために、パンにはあえてバターなど乳製品は使っていません。引き算から生まれたパンなんです。

 

「野条穂」とは、茎が長いため倒れやすく、栽培が難しいゆえに長く絶えていた品種なのだとか。

お酒にすると個性的でおいしいお酒ができるそうですが、とはいえパンに合うんですか?

 

「野条穂」はパンにとても向いていると思います。焼くと表面がパリッとし、澄んだ香りがして、なかがふっかふかになるんです。あと、ほかの食材を引き立てますね。ごはんにちょっとしたおかずを乗せると、ごはんもおかずもどっちもいっそうおいしくなるでしょう? あの感じが「野条穂」にはあるんです。とはいえ誰もパンにしたことがないお米ですから製粉の段階からかなり試行錯誤しましたね。

 

いやはや、駅舎内で女性の駅長さんが米粉のパンを焼いているだけでもきわめて稀有なことなのに、使っている米粉がこれまた伝説の品種だなんて、なんというホットステーション。 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175322j:plain

▲北垣さんは 山田錦の祖先「野条穂」の製粉段階から試験し、工房に設置すべき最適なマシンをセレクトした

 

では、北垣さんはなぜ米粉のパンを焼くようになったのですか?

 

あれは13年前だったかな。子どもができてずっと家におりましたので、なんとなく「パンかお菓子でも焼いてみようかな」という気分になったんです。そのとき、たまたま米粉の存在を知りました。国産の米粉なんてない時代で、原料は外国産でした。米粉のレシピが書いてある本や参考にするネット記事などもなく、仕方なく小麦粉と同じように作ったら、これがもう、すんごいまずくて(笑)。だからでしょうね。逆に燃えたんです。「参考になるものがないなら自分で見つけだしたい」という気持ちがむくむくと湧いてきて。私はひとり暮らしをしていた時から、たとえば肉じゃがに凝りだしたら一週間ずっと肉じゃがを作り続けたり、そういうしつこさがあるんです。そうして、思い込んだら、いてもたってもいられなくなったんです。

 

修業しようにも先人も参考書もない米粉の製パン。

はじめの失敗以来、北垣さんは夜を徹して米粉のパンを焼きまくりました。

数少ないレシピ本の著者に電話で問い合わせたり、米粉のパンを売っていると聞けば滋賀県まで訪ねたり(関西の読者なら、これがどれほど遠距離か、わかってもらえるのでは)、米粉にとりつかれた日々の明け暮れに。

 

いくらやっても、おもしろいほど、うまくできない。子どもも食べてくれないような失敗作をずいぶん作ってしまいました。でもある日、膨らまないねちねちした変なパンができてしまい、それを食べたとき「あれ? おいしいぞ」と感じたんです。生地にうま味がある。そのとき、わかったんです。私はこれまで米粉を小麦粉の代用品のように扱い、小麦粉のパンのようなできあがりを成功だと信じていた。それは違ったんです。そういう発想を全部捨てたら、次第に米粉ならではのパンが焼けるようになっていきました。

 

そうして北垣さんは独自のレシピを開発しながら自宅で米粉パンの教室を開いて普及に努めるようになり、その噂が広まり、公民館や公的機関などから講師として招かれるまでになったのです。

 

仕事になってからは、さらにたいへんでした。生徒さんから質問されても「知らない」「できない」では済まされない。「米粉でカヌレは作れないんですか?」と聞かれたら涼しい顔をして「ああ、じゃあ来月はそれをしましょか」って答えるんです。でも、そこからが格闘(笑)。キッチンの壁に蜜ろうをぶちまけながら毎晩徹夜でカヌレを焼いて、なんとか講習の日までに仕上げたり。でも毎月毎月あおられるプレッシャーがあったからこそ、レパートリーが増え、自分では考えられないメニューができてきたんです。あのがむしゃらな日々が私にとっての修業でした。

 

無名の無人駅がパン工房に

こうして原野を切り開くように敷いた米粉道の鉄路は、やがてある出来事とともにふんわりと結実し、出発進行とあいなります。

それは「無人駅をパン工房にする」というプロジェクト。

 

市の社会福祉法人「ゆたか会」が、「野条穂」を使って米粉のパンを焼き、地域を盛り上げる計画を立案。

米粉パンのレシピを考案し続けた北垣さんはそこに招かれ、知的障害者の生活支援委員として働き、このパン工房を任されることになったのです。

 

それまでの法華口駅はぼろぼろで、クモの巣が張った、荒れた無人駅でした。実質、かろうじて屋根がある自転車置き場だった時期も。だから、ここがパン工房に変身するなんてすぐには信じられなかったし、夢のようでした。そしてまさか自分が一軒のパン工房を受け持つことになるとは、初めて米粉パンを焼いて失敗した日には想像もできなかったですね。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175402j:plain

▲かつての法華口は駅舎内に自転車を置き、そのまま乗車するような構造だった

 

10年以上かけてじんわりと発酵していた米粉パンへの思いは自分でも驚くほどにふっくらと焼きあがり、こうして「モン・ファボリ」というひとつのかたちに成型したのです。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175548j:plain

▲「驚きました。あのおんぼろの駅舎がパン工房に変身するとは」と回想する北垣さん

 

そして北垣さんは、さらなる奇跡のターミナルへと引き込まれてゆくことに。それが「駅長募集」。

 

パン工房の工事中に、北条鉄道が利用者確保の一環としてボランティア駅長の募集を始めていて、せっかく駅舎をパン工房にするのだからお役に立ちたいと思い、平成24年の9月、開店2カ月前に着任しました。それこそ本当に、自分が駅長になる日が来るとは思ってもみませんでしたよ。

 

はからずも始まったパン工房の店長と駅長の二重の暮らし。

なおかつそれは育児や家事との複々線同時走行。

パン工房に勤めはじめて一年目に離婚も経験。

仕事を終えたあと、すぐに保育園へ直行。

深夜に洗濯をしてから、そこから大量受注に対応するため早朝から工房へ来てパンを焼くことも。

「子どもに寂しい思いをさせているのではないか」という思いは常にあるのだそう。

ラッシュアワーが常に続くような日々に正直「かなりしんどい」と感じるといいます。

 

もうひとつ、2年前かな、プラットホームで手を振る動作ばかりクローズアップされた時期があり、なんかこう……あまりにも、その姿がひとり歩きして、つらかったですね。いかにも「いい人」って感じで、その型にはめられてしまうのがいやでした。なので一回目の駅長任期更新の際、ちょっとした反抗心から、金髪にしました(笑)

 

悩みの日々のなかで行ったパンキッシュな行いが、それもまた素敵だといっそう多くの人々の注目を集めてしまうことに。

 

食べられる列車「豊穣鉄道」

とはいえ確かに北垣さんが手を振るたたずまいのみに目が行くのは、あまりにもったいない。

商品のネーミングや日替わりメニューのバリエーションからも見て取れるように、北垣さんのパン作りには冴えたアイデアがたくさんあります。

 

とりわけそれが感じられるのが、車両に見立てた、100%地元の米粉を使ったエンタメな食パン「豊穣鉄道(ほうじょうてつどう)」(予約制1,490円)。 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175635j:plain

▲「北条」と「豊穣」をかけ、車両になぞらえた食パン

 

食パンにコンロで炙った10種類の焼き印を表面に押しあて、車両を再現します。

f:id:Meshi2_Writer:20161201175653j:plain

▲コンロで焼く10種類の焼き印。この焼き印も北垣さんがデザインした

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175716j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201175725j:plain

▲ドアが焼きこまれた

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175739j:plain

f:id:Meshi2_Writer:20161201175749j:plain

▲先頭には運転士さんが姿を表す

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175802j:plain

▲「豊穣鉄道」のおおよそができあがり

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175816j:plain

▲よく見ると運転士がちゃんと指さし確認をしている

 

北条鉄道の路線図や枕木がプリントされた豪華なパッケージデザイン、ケースの開発から自ら行い、レールを貼りつける作業まで自分でやるという手が込んだ逸品。

ヘッドマークはそのままバッジとして使えるなど細部まで趣向が凝らされています。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175836j:plain

▲パッケージにレールを貼りつける作業も北垣さん自ら。手が込んでいる!

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201190820j:plain

▲薄くプリントされた枕木(枕木応援団のプレートまで!)や、山なみの稜線まで表現されたすぐれもののパッケージ

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175845j:plain

▲パッキングの先頭にはヘッドマークまで。食後はバッジとして使える

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175855j:plain

イベント列車感が満載な楽しい一本。

このように駅舎のなかで日々、新商品の試作が重ねられています。

 

私はここは研究所だと考えているんです。駅とパン屋さんがひとつになっていて、それが珍しいってだけで終わっちゃだめなんです。「地域と一体になった仕事ってなんなのか」、それを考えて、研究するためにここがあるんだろうなって。この地域には農産物をはじめ、地元の人も気付かない宝がまだまだたくさんある。米粉というツールを使いながら、いろんな人と出会って、ここを拠点にそんな魅力をもっと発信していきたい。さまざまな人が集まる駅にパン屋さんがあるって、きっとそういうことですよね。

 

地元生産者の想いを稀代の駅長が包んで焼きこんだ、「モン・ファボリ」の米粉のパン。
駅弁ならぬ“駅パン”の時代が到来する予感をいだかせ、わくわくします。

 

今日もまた、駅とパン屋さんが合体した不思議な場所で、北垣さんは働いています。

妖精のような、ちょっと不思議な存在として。

その出会いは、日常からかけ離れた、ファンタジックな経験でした。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161201175928j:plain

これからも、焼きたての香りに誘われ、パンを求めてローカル鉄道の旅がしてみたい。

焼き立てパンから立ち上るゆらめく湯気の向こうに、不思議なドラマがあるのかも。

そんなことを考えながら、法華口駅を後にしました。

手を振る北垣さんに見送られながら。

 

f:id:Meshi2_Writer:20161203085935j:plain

 

お店情報

駅舎工房モン・ファボリ

住所:兵庫県加西市東笠原町240-5 法華口駅構内
TEL:0790-20-7368
営業時間:10:00~16:00
定休日:月曜日(祝日の際は翌火曜日)、金曜日
※臨時休業あり、要確認。
Facebook:https://www.facebook.com/ekisyakoubou/

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:吉村智樹

吉村智樹

よしむらともき。関西ローカル番組を構成する放送作家。京都在住。街歩きをライフワークとし、『VOWやねん!』ほか関西版VOW三部作(宝島社)、『ジワジワ来る関西』(扶桑社)、『街がいさがし』(オークラ出版)、『ビックリ仰天! 食べ歩きの旅』(鹿砦社)など路上観察系の書籍を数多く上梓している。

過去記事も読む

トップに戻る