こんにちは、酒場案内人の塩見なゆです。
突然ですが、皆さんは爌肉飯(コンローハン)という台湾料理をご存じですか?
爌肉飯は、醤油、八角などのスパイスで豚肉を塊のまま煮込み、ごはんにのせた料理です。爌肉飯と近しい料理に、魯肉飯(ルーローハン)がありますが、両者には明確な違いがあります。
それは豚肉のサイズです。魯肉飯は細かくカットした豚肉を使用しますが、爌肉飯は大ぶりの豚肉を使用します。台湾では、屋台などでおなじみの料理になっています。
爌肉飯と魯肉飯、類似した2つの料理にはどのような違いがあるのでしょうか?
今回は、爌肉飯を看板メニューにした台湾料理専門店、マンション台北に取材を実施し、店長の西村欣晋さんに、日本ではまだなじみのない爌肉飯について伺いました。
台湾を視察して出合った爌肉飯
塩見なゆ(以下、塩見):こんにちは! 今日はよろしくお願いします。お店に入った瞬間から八角の香りが漂っていて、まるで台湾の路地裏にある食堂に来たような気分です。
西村欣晋さん(以下、西村さん):ありがとうございます。台湾家庭料理のお店を開きたいと思って、内装は手作りしました。
塩見:内装に加えて、お店はレトロなビルに囲まれた路地にあるので、ロケーション的にも台湾を感じますね。
西村さん:こだわっている部分なので、そのように言っていただけてうれしいです。
塩見:では、爌肉飯をお店の看板メニューにしようと思ったきっかけを教えていただけますか?
西村さん:お店をオープンする上で、台湾家庭料理を看板メニューにしたいと考えていたので、実際に台北や台中のストリートフード(屋台)を中心に視察していました。
塩見:実際に視察に行かれたのですね。印象に残ったことは?
西村さん:印象的だったのはさまざまな豚肉を使った料理が多く、豚足や豚耳などの部位が当たり前に売り買いされていたことです。
塩見:確かに台湾では、日本であまり見かけない部位も普通に売られていますよね。
西村さん:そうなんですよ。なのでインパクトがあった豚足や豚耳などを名物にしようと考えたのですが、それだとややマニアックですよね。
そんな時、日本にまだなじみがなかった爌肉飯という料理に出合いました。魯肉飯にかなり近い味わいでしたが、豪快に豚の塊肉を使っていたのが印象に残りました。
塩見:豚肉を細かくカットした魯肉飯と、塊のまま提供する爌肉飯ですが、現地で食べた時はどのような違いを感じましたか?
西村さん:魯肉飯は八角などのスパイスがきいている印象でした。爌肉飯は豚皮や脂などを存分に味わえました。ただ、決して脂っぽいわけではなく、豚肉の味わいを活かしたシンプルな味付けになっていた印象です。
塩見:味わいも異なるんですね。
西村さん:そうですね。あとは、豪快に豚肉を使っているので、単純に写真映えすると思いました。日本ではまだなじみのない料理でもあったので、爌肉飯をお店の看板メニューにしようと思いました。
塩見:確かに台湾では爌肉飯を見かけますが、日本だとあまり見かけないですね。
マンション台北流、爌肉飯の作り方
塩見:では、マンション台北流の爌肉飯の作り方を教えていただけますか?
西村さん:現地では豚バラ肉や豚皮肉、スネ肉やもも肉などお店によって使う部位は色々です。うちでは豚バラ肉を使用しているので、まずは塊の豚バラ肉を1人前の大きさにカットします。この時、脂が多すぎても赤身が多すぎてもいけません。うまく豚バラ肉をトリミングしながら、赤身と脂のバランスを整えていきます。
豚バラ肉の下処理が終わったら串打ちして、水、八角、シナモンを鍋に入れて30分ほど下茹でします。
塩見:スパイスを入れた下茹では珍しいですね。これにはどのような効果があるんですか?
西村さん:スパイスを入れて下茹ですることで、豚バラ肉の臭みを取って、ほのかにスパイスを感じられるようにしています。
塩見:なるほど。ほのかにスパイスの風味や味わいを豚バラ肉に付けるために、このような工程にしているんですね。仕上がりが楽しみです!
西村さん:スパイスがほのかに感じられるように調整していますので、日本人の方にも食べやすくなっていると思います。
下茹でが終わったら、今度は味付けです。台湾の醤油と照りが出るザラメを圧力鍋に入れて再び30分ほど煮込んで、味が染み込むよう半日冷蔵庫で寝かせます。
塩見:台湾の醤油を使っているんですね。
西村さん:本場の味に近いものをお客さまに提供したいので、試行錯誤の末に調味料は選んでいますよ。
さらに、にんにくを入れて24時間ほど置いておきます。こうすることで、にんにくの香味がマイルドに全体になじむんです。
塩見:なんと、仕込みは約2日もかかるのですね!
西村さん:そうですね。さらに提供前には、継ぎ足しのタレが入った鍋に入れて煮込んでいます。
塩見:継ぎ足しのタレというワードはなんとも魅力的ですよね。
西村さん:オープンからずっと、爌肉飯や豚足などのメニューを煮込んでいるので、最後にこのタレを使うことでうま味がグッと増します。
西村さん:温かいごはんの上に、継ぎ足しのタレをたっぷりかけて、豚バラ肉をのせれば、マンション台北の爌肉飯が完成です。
塩見:本場の爌肉飯を研究して、丁寧な仕込みを経て完成した爌肉飯。どんな味わいになっているか非常に楽しみです!
エキゾチックなのにどこか懐かしい爌肉飯
それでは、マンション台北の爌肉飯(790円)をいただきます!
まずは、トロトロになった豚皮と脂が口の中いっぱいに広がっていきます。豚の臭みは一切なく、あっという間に溶けて消えてしまいます。
また、台湾の醤油とザラメがタレ全体にとろみと照りを付けていて、日本の醤油よりもコクとうま味が強い印象を受けました。また、八角やシナモンなどのスパイスは、最後にほのかに感じられる程度で、日本人が食べやすい味わいになっています。
赤身の部分もしっとりと柔らかく煮込まれていて、ホロホロとほどけていくような食感になっています。
継ぎ足しのタレが染み込んだごはんも絶品で、豚バラ肉や豚足などのうま味が溶け込んだ味わいに、食欲が止まりません!
爌肉飯を一杯食べきると、しっかりとした食べ応えがあるものの、脂やスパイスの重さはほとんどありません。全体的に角のない調和のとれた味になっていました。
台湾家庭料理をつまみに台湾ビールを
せっかくなので、マンション台北でよく注文されるメニューもご紹介していきます。
まずは、排骨酥(パイグース 590円)です。
排骨酥は豚肉のからあげ。マンション台北では、お酒のつまみとして食べやすいように一口サイズで提供しているそうです。
食べてまず感じたのは、その食感です。
タピオカ粉を使った衣は、びっくりするほどザクザクしています。もっちりとした豚もも肉が使われているので、衣との食感の違いが心地よく、どんどん食べ進めてしまいます。
五香粉とカレー粉を中心に味付けされているそうで、ほどよいスパイス感と日本人が大好きなカレー風味が掛け合わされた味わいで、台湾ビールが最高にマッチします。
続いて、自家製の腸詰め(730円)も注文。
塩漬けした豚肉をお店で挽いて、台湾の山胡椒・馬告(マーガオ)とにんにく、ブラックペッパーなどで味付けしているそうです。一つ一つお店で手作りしている腸詰めを味わうのが楽しみです。
実際に食べてみると、非常にジューシーでモチモチとした食感で素材を活かした味わいになっています。粗びきのブラックペッパーが刺激的なアクセントになりつつ、余韻にマーガオの風味も感じられ、優しいバランスの取れた味付けです。
腸詰めにはさまざまな種類がありますが、しっかりとお肉感を味わいたい方にはおすすめの一品です。
大塚で気軽に台湾旅行気分を
大塚にお店を構えるマンション台北で、爌肉飯の作り方を教えていただきました。
驚いたのは、爌肉飯の仕込みに約2日をかけていることでした。香辛料を使った下茹でで豚バラ肉の臭みを取り、継ぎ足しのタレで煮込む作業など、日本人が食べやすい爌肉飯を作る工夫にあふれていました。
爌肉飯以外の料理も台湾感と食べやすさのバランスが絶妙なので、お酒に合う台湾料理を飛行機に乗らず、東京で気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。それでは。
お店情報
マンション台北
住所:東京都豊島区南大塚2-40-11 2F
電話番号:03-6902-2081
営業時間:11:30~14:30、17:30~22:00
定休日:火曜日、水曜日