テレビでは出ない本音も盛りだくさん!野性爆弾くっきーとファーストサマーウイカがサシ呑み!

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野性爆弾・くっきーとサシ呑み!

前回、こちらの記事に登場していただいたファーストサマーウイカさん。

酒場のことを知り尽くしているといっても過言ではない知識量に驚いた方も多かったのではないでしょうか。

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今回は、前回とは少し趣向を変え、ウイカさんとゲストの方によるサシ呑み企画を実現!

サシ呑みの相手としてウイカさんから「いま、一番会いたい人」としてリクエストを受けたのは、テレビを中心に大活躍中のお笑い芸人、野性爆弾・くっきーさん。

 

くっきーさんとウイカさんは、ウイカさんが所属する「BILLIE IDLE®」の音楽をくっきーさんが気に入ってCDを聴いたり、くっきーさんが参加するバンド「THE SESELAGEES 」のライブをウイカさんが観に行くなど、もとから交流があったそうです。

 

今回は、お互い関西出身ということで、上京するに至るまでの経緯や下積み時代のお話などもたっぷりと聞いていこうと思います。

 

ウイカさん自身が通っているなじみのお店でサシ呑み

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くっきーさんとウイカさんのサシ呑みのお店として選んだのは、ウイカさん自身も飲みに行くという代々木上原にある「終日one」。

 

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クラフトビールや自然派ワイン、お料理がたっぷりと味わえるお店です。

黒板に書かれた手書きのメニューも味わい深いですね。

 

箕面ビールで乾杯!

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「お疲れ様です!」

2人のルーツである大阪・箕面のビールで乾杯!

 

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▲箕面ビール(1,100円)

 

「うまぁ~!」とあっという間に飲み干していきます。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:箕面って高級街やんね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:確かに。ええとこです。

 

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▲フィッシュ&チップス(950円)

 

この日は、ウイカさんとお店のオススメ料理を出していただきました。

 

──こちらは、ウイカさんのオススメ料理なんですよね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:そうです。フィッシュ&チップス。フィッシュがキャットフィッシュ言うて、うなぎ……。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:なまずちゃうん?

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:なまずや。

 

全員:(笑)。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:うなぎなわけがない(笑)。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:バカが偉そうにしゃべんなや(笑)。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:聞いた話、そのまま言おう思ったら間違えた(笑)。

 

まるで漫才のような掛け合い。

 

BILLIE IDLE®のキャップをプレゼント

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──くっきーさん、今日ウイカさんが着ているTシャツに見覚えはありませんか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:あ! 俺のやつや。ありがとう。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:個展に行かせていただいた時に買ったんですよ。あと、今日はくっきーさんにプレゼントがありまして…….。

 

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f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:なになに?

 

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f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:ありがとう! これめっちゃえぇやん! これかぶりながら飲むわ!

 

BILLIE IDLE®のキャップをいただいてご満悦のくっきーさん。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:ぐんぐんメジャーなっていってんちゃいますの、BILLIE IDLE®。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:とんでもないです。師匠(くっきー)の背中見て追いかけてます。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:いや、全然ちゃうがな。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:最近の師匠はフィーバーしてるから。どのテレビつけても、師匠見れますもん。

 

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──もともと、お二人はどういったきっかけで知り合ったんですか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:ボンざわーるどさん、ハブサービスさんなどが出演されてた肉リンピックを観に行かせていただいた時ですね。ハブサービスさんとは共演させていただいたことがあって。それで、楽屋挨拶にお伺いしたら師匠がいはって。すごく師匠のファンだったので、勇気出して話かけたんです。そこで持って来てたBILLIE IDLE®のCDを強引に渡させてもらって(笑)。

 

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:そう、もろたもろた。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:お渡しさせていただいたら、すぐ聴いてくれはって。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:すぐ車で聴いたんですよ。子どもも一緒やって、子どもがBILLIE IDLE®さんにめっちゃハマったんです。

 

肉糞亭一門に弟子入り

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──ウイカさんのTwitterのプロフィール欄には「肉糞亭恥骨子」と書いてありますが、アレは一体……?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:肉糞亭ていう落語一門つくってるんですけど、彼女は弟子入りしたんですよ。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:そうです。弟子入りさせてくださいって言うて、襲名しましたのが「肉糞亭恥骨子」でございます。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:「肉糞亭恥骨子」。いい名前やな。

 

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──くっきーさんから見て、ウイカさんの印象はどんな感じでしたか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:きれいな人や思いましたよ。でもしゃべったら口悪いから、ろくでもねえ奴だな、と。

 

──ろくでもない奴(笑)。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:育ちめっちゃ悪い。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:悟られちゃった。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:お姉ちゃんと知り合ったら、だいたい薄く口説いたりするんですけど。この人に関しては口説いたことないですね。

 

──それはなぜですか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:口悪い・育ち悪いから。育ち悪い子は対象外です。

 

全員:(笑)

 

──ウイカさん、対象外になっちゃいましたね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:残念ですねー。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:質を求めるんでね、女子の。

 

長かった下積み時代

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──お二人とも関西出身ということですが、くっきーさんは、出身地である滋賀県守山市のPR動画にも出られていますよね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:そうですね。

 

──野性爆弾としては、大阪での下積みも時代も長いとのことですが、大阪時代によく行っていたお店とかはあるんですか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:道頓堀に「たこしげ」っていうお店があって。全大阪芸人イベントっていうのがあったら、「たこしげ」にみんな行くのよ。打ち上げっていうといつもそこでやってましたね。

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f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:今もありますか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:今もある。場所変わったけど。一回、なんたら捜査24時みたいな番組で「たこしげ」が撮られて。お店狭いからみんな入られへんから外の地べたで飲んでて、わーっと騒いでたら、そこにその番組のカメラがきちゃったんですよ。その時の様子が番組で放送されてたんですけど、先輩がモザイクかけられて映ってましたわ。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:もってはるわ(笑)。

 

ハチャメチャだった大阪ロケ

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──大阪時代、野性爆弾さんというとロケというイメージが強くて。商店街とかいろんなところに行ってロケをやられてましたよね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:『うめだから世界へ』ですね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:あれ、めちゃくちゃおもろかったなあ。

 

──ハチャメチャでしたよね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:若かったですね、あの頃は。今はもう落ちついて。宝田明さんくらい紳士的な感じなってますけど。やっぱ目指すところは宝田明さんなんでね。

 

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──野性爆弾さんは、NSCではブラックマヨネーズさん、次長課長さん、チュートリアルさんが同期ですよね。タイミング的には同期が先に売れていったという感じでしたが、その時はどんな思いでしたか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:嫉妬とかはあんまなくて。同期は友達や思ってるんで、売れてほんまよかったって思ってました。ブラマヨ、チュートがM-1で優勝した時はほんまにうれしかったです。「よっしゃー!」言うて。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:じゃあ、後輩が売れた時はどういう思いでした?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:後輩が売れた時は、アイスピックであばら刺したろか思ったわ(笑)。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:隙間ね、隙間(笑)。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:肋骨全部折ってまうどって思いましたけど。でも、先輩・同期は嫉妬なんて全然ないです。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:それめちゃくちゃわかります。やっぱりアイドルも気ついたらウジャウジャわいて出てくるじゃないですか。正直、そこでちょっと思うところとかもありますもん。

 

コンビの解散を考えたことも

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──野性爆弾さんは結成して今年で24年ですよね。 これまで解散危機もあったという話も聞きました。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:過去にはそういう話もありましたね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:ええ話ですよね、あれ。解散しよってなった時に、目、アイボンでバシャバシャになったみたいなロッシーさんに止められったていう話。この話するだけで涙出るもん。想像できて。ええ話やなあ。

 

──解散の話を切り出した時ってどんな感じだったんですか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:これまでそういう話が出たのは2回あるんですよ。最初は、ダウンタウンさんから受け継がれた二丁目劇場っていう若手の小屋があるんですけど、そこで5週勝ち抜いたらレギュラーなれるってことで、やっとこさレギュラーなったんです。二丁目劇場では、全芸人総当たりトーナメントやって、そこでべべ(最下位)なったら素人に戻されて、また一から募集、みたいなルールがあって。でも、僕は先輩らに「これでべべになったら。俺お笑い辞めます」って公言してて。それなのに、ほんまにベベなっちゃって、辞めなあかんってなった時にケンコバさんとザコシショウが止めにきてくれたっていう。それが1回目の解散危機ですね。だから、ケンコバさんとザコシショウには頭があがらねぇって感じです。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:2回目は、そこからbaseよしもとっていう劇場所属になるんですけど、イベントやってもお客さんが少ない状態で金も稼げなくて何やってんねんやろってなって。その時、宮大工になりたいって思ってたんですよ。なんかかっこいいじゃないですか、宮大工って。神社のパーツ作るってえげつなくかっこええなって思って。それで、宮大工になりたいって話を相方のロッシーにしたら目にアイボンばちゃばちゃした状態くらいの涙目で「もうちょっと頑張ろ」って言われたんで、そこから頑張ったんです。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:仏壇とか作ってはりますもんね。それの名残なんかなって思ってます。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:作ってるね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:自分で仏壇とか作りはって。宮大工になりたいって、ギャグやと思ってたけど、多分これほんまやろなって思ったんです。

 

一気に環境が変わったターニングポイント

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生ハムのジェノベーゼピザ(800円)

 

──活動の拠点を大阪から東京に移してからは一気にブレイクしたイメージがあります。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:いやいや、ちゃいますよ。東京来て10年やから。東京来てすぐは仕事ババババッて増えたんですよ。でも、コメントとかするのが無理で、お守りをハサミで切るとか言うてたらババババッて仕事減っちゃって、地獄でした(笑)。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:逆に、これターニングポイントやったなみたいな東京での仕事ってあるんですか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:マジで1番変わったのは、ダウンタウンの松本さんがやってはる『ドキュメンタル』やと思うけど。それこそめちゃイケさんとか、キャラパレードっていう番組で、お母さん・子どもたちにも知られるようになって。その中で『ドキュメンタル』に出て優勝した時に、お笑いが好きな層も一気に食いついてくれはって今があるって感じやな。

 

ファーストサマーウイカへのアドバイス

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──最近では、くっきーさんはドラマにも出演されてますよね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:おかげさまで。でも、吉本には地獄の営業っていうのがあるんですわ。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:それって、仕事の最優先順位的には、上なんですか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:ほぼ最優先やね。ドラマやってる時とかは、朝一に出なあかんから、ギッチギチで、ドラマスケジュール埋められて、現場の人はみんな「くっきーさん営業あるから巻けー!」って言うてるのよ。戸田恵梨香さんとかもおって心配してくれて。マジ申し訳ねえなって思いながら収録して、飛び出して営業。マジふざけんなって感じやわ(笑)。

 

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f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:夢みたい。ほんまに。すごい失礼な話ですけど。ずっと野爆さんが好きで、いろいろDVDとか探して見てたのに、気づいたらいろんな番組に出てる。私の体感からしたら、それがほんま一瞬の出来事だったんですよね。私もそうなりたいから、どうやったらそういう風になれるのか聞きたいです。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:売れるための?(笑)

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:そうです。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:テレビに出る時は、どんなちっちゃいのでも常にフル満タンマックス。メジャーな番組とかあるやん。それに出て3連ちゃんではねたら売れるかなって思う。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:単発やったらダメなんですね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:いや、単発でも『アメトーク!』みたいな番組やったらでパンッてはねる。俺の時で言えば、キャラパレードでパンッ。めちゃイケでパンッ。ドキュメンタルでパンッ。それで、今みたいな。そこそこメジャーな番組に出てそれではねたら多分一気にバンッて売れると思う。あとは、継続やな。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:なるほど。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:来年、私が台本考えてミュージカルやろう思うてんねん。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:マジですか!

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:それ呼ぶわ。歌もお芝居もうまいし。

 

──ウイカさんよかったですね! 他にもくっきーさんに聞いておきたいことはないですか?

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:よくファンの人から「今、1番欲しいものって何?」って聞かれるんですけど、その時「相方」って言うんですよね。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:ぎょうさんいてるわ、メンバーが相方やんか。

 

f:id:aruminagayama:20181026104018p:plainウイカ:やっぱり叶姉妹さんみたくなりたいじゃないですか。

 

f:id:aruminagayama:20181026104022p:plainくっきー:どこいってんねん(笑)。

 

最後の最後まで漫才のように息ピッタリな掛け合いをしてくれたお二人。

今後の共演も楽しみです!

 

告知

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超くっきーランドneoneo

  • 11/2(金)~11/26(日)@松本パルコ
  • 12/7(金)~12/23(日)@仙台パルコ

※詳細は公式HPでご確認くださいませ。

www.yoshimoto.co.jp

 

Amazonプライムビデオ「野性爆弾のザ・ワールド チャネリング シーズン2」

  • 配信開始日:2018年10月19日(金)
  • 出演:野性爆弾ほか
  • 話数:前10話(一斉配信)
  • 現在飛ぶ鳥を落とす勢いの超ハードコア芸人・野性爆弾の冠番組”ザ・ワールドチャネリング”。好評につきシーズン2がいよいよ配信スタート!豪華ゲストを迎えてのロケ企画を主軸に、2人の鬼才ぶりを詰め込んだミニコーナー、さらにはくっきー監督ミニドラマまでを、“破壊的”で“ワイルド”な野爆ワールド満載でお届けします。

 

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お店情報

終日one

住所:東京渋谷区上原3-44-11
電話番号:03-5738-8501
営業時間:平日9:00~24:00、土曜日9:00~24:00、日曜日9:00~22:00
定休日:無休

shujitsu.com

 

撮影:曽我美芽
曽我美芽(@mimeeeeeeee) | Twitter

 

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応募方法

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応募期間

11月6日(火)~11月9日(金)23:59 まで

指定ツイート

※キャンペーンについてその他詳細はこちらをご確認ください。

クラフトビール量り売り専門店を営む元バックパッカーの生き様【下北沢】

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演劇とサブカルチャーの街として知られる下北沢。飲食店も数多くひしめくこの地で今年3月、日本全国のクラフトビールを量り売りするお店がオープンしました。

 

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▲今年3月にオープンしたお店の外観

 

それがこの「TAP&GROWLER(タップアンドグロウラー)」。下北沢駅・北口から徒歩3分、細い路地に入ると突如として現れるパブ風の外観が目印です。さっそくお邪魔しましょう。

 

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▲国内から仕入れたクラフトビールの銘柄がずらり!

 

店内に入ると、真正面の壁にはお店で販売されているクラフトビールの銘柄がズラリ。ラインアップは常に同じではなく、タイミングを見計いながらその都度、オーナーが厳選したビールをブルワリーから仕入れているそうです。

 

量り売りを希望する場合はまず、32オンス(約0.9リットル/1,350円、キャップ代30円)または、64オンス(約1.8リットル/1,860円、キャップ30円)のボトルを購入。

 

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▲量り売り用のボトル(左が32オンス、右が64オンス)

 

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▲店内には3台のビン詰め機が設置されている

 

注文後、専用のビン詰め機にセットされたボトルにビールが注がれます。ちなみに、ボトルは水ですすいでお店に持ち込めば、次回以降も使用可能。

 

気になったビールがあれば、その場でテイスティングもできる(小グラス1杯285ミリリットル/600円〜 ※クラフトビールの銘柄によって値段は変わります)ため、常設されている角打ちスペースでさまざまなクラフトビールを飲み比べられるところも、実に魅力的です。

 

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▲小気味良い音とともに、グラスにビールが投入されて……

 

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▲クラフトビールの登場! ※日によって銘柄と値段が異なる可能性があるので、あらかじめご注意ください。写真のビールは、ディスタント・ショアーズ「Galaxy Haze」(左)とVERTEREの「Californica」(右)

 

ブルワリーを持つ夢に挑む陽気な店主

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▲店主の金井圭司さん

 

このお店を取り仕切るのは、現在37歳の金井圭司さん。まずはクラフトビール量り売り専門店を開業した理由を聞いてみました。

 

f:id:exw_mesi:20181023182734p:plain金井さん:皆さんにクラフトビールの魅力を知っていただきたいのはもちろん、将来、自分のブルワリーを作る夢を持っていて、そのためでもあります。これまで、お酒関連の仕事をしたことがないんですがそうなると、酒税法の関係でいきなりビール造りをするのは無理。そこで、実績作りのために、まずは酒屋さんから始めようと考えたのがこのお店です。

 

聞けば、金井さんは20代中頃までバックパッカーとして世界を飛び回っていたのだそう。常日頃からビールに接していたその当時の生活が影響して、ビールに魅了されてしまったと言います。

 

昨年あたりから「自分の好みに合った、クラフトビールを作りたい」と思うようになったそうですが、いざ行動に移してみたものの、酒税法という壁にぶつかります。

 

個人でブルワリーを開業するとなると、まず製造免許を取得する必要があり、そのためには年間60キロリットル以上の製造見込みがあるかどうかが問われます。

 

製造免許を受けた後1年間の製造見込数量が一定の数量に達しているかどうか(最低製造数量基準、ビールについては60キロリットル)を審査し、これらの要件を満たしていれば製造免許が付与されることになります。

引用元:【酒類製造免許関係】|国税庁

 

こうした製造力はもちろん、ビールの入手経路もある程度定まっていなければ免許を取得できないのです。目の前に大きな壁が立ちはだかりながらも、ブルワリーを所有するという夢の第一歩として、金井さんはアメリカのポートランドでよく見られるクラフトビールの量り売りに目をつけて、このお店をオープンしました。

 

──日本では珍しい業態ですよね。かなりチャレンジングだったのでは?

 

f:id:exw_mesi:20181029130849p:plain金井さん:やるからには他にはない新しいことをしたいなと。

 

──お店をオープンする上で、一番こだわったところはありますか?

 

f:id:exw_mesi:20181029130849p:plain金井さん:やっぱり、おいしいビールを飲んで欲しいっていうところですかね。例えばこの量り売り用の瓶詰め機、アメリカのポートランドで使われている機械なんだけど、これ窒素と二酸化炭素で充填(じゅうてん)できるから、酸化を防いで泡立ちを少なくすることが可能なんです。

 

──つまり、劣化しにくい状態になっていると?

 

f:id:exw_mesi:20181029130849p:plain金井さん:そうですね。出来るだけ酸素に触れさせないようにしているので、家に持ち帰って飲むまでは新鮮な状態が保たれますよ。

 

──それにしても、機材はどれも高そうなものばかりですね。

 

f:id:exw_mesi:20181023183131p:plain金井さん:機材を含めて、開業するのにざっと1,200万円かかりました。新規事業だったから銀行から融資の許可がなかなか下りなくて……。いやあ、当時は参りましたね。セッティングや洗浄の仕方、ビア樽などわからないことだらけだったけど、そこは自分で研究しました。

 

お店のオープン前から携わっていたシェアハウス経営で得た利益で、資金を調達したという金井さん。それにしても、ビール好きが高じて、半ば見切り発車的に事業を始めてしまった行動力には驚かされます。

 

親に勘当されながらも、我が道を突き進む

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▲冷蔵庫には瓶、缶類のお酒も常備してある

 

そんな金井さんの出身地は長野県の上田市。信州最古の温泉と言われる別所温泉から程近い、のどかな環境での生活は居心地が良かった反面、どこか窮屈に感じていたそうです。

 

f:id:exw_mesi:20181023184046p:plain金井さん:周りは山に囲まれて、いいところだったんですけどね。ただ、本当に何もできない場所だったんですよ。高校を卒業すると、地元の工場か農家くらいしか就職先がなくて。ここにいても世界が狭い、つまらないなとずっと思ってました。あまりにつまんなすぎて、とうとう高校を留年しちゃったくらいですからね(笑)。

 

「もっと広い世界を見てみたい」。そんな願望を抱いていた金井さんをとりこにしたのが、バックパッカーという生き方でした。

 

──バックパッカーのどのあたりに魅力を感じたんですか?

 

f:id:exw_mesi:20181023184058p:plain金井さん:世界の人たちがどう生きているのか、どんな生活しているのかとか、人それぞれの生き様を感じるあたりかな。19歳で高校を卒業してからは、ひたすらバックパッカーにのめり込みましたね。5年ほど長野と海外を行き来していたら24歳の時に親に勘当されてしまいましたけど、好きなことをしたかったからそんなことは気にしませんでした。そこからまた1年、アメリカやメキシコとかをずーっと旅して。本当に楽しかったな。その時、ユースホテルで寝泊まりしてたんですけど、「あ、こういうの自分も経営してみたいな」と思ったんです。今、シェアハウスも経営していますけど、きっかけはここにあるんですよ。

 

バックパッカー生活に別れを告げた金井さんは、帰国後、不動産を宣伝するノウハウを学ぶために、6年ほど広告代理店の営業マンとして勤務。

 

そこで経験、スキルを身につけた上で、一つの目標としていたシェアハウス経営へとこぎ着けます。ある程度生計が立つようになると、今度はビールをこよなく愛する気持ちが、金井さんの心を支配するようになるのです。

 

──このお店を始める前に、ご家族には相談されたんですか?

 

f:id:exw_mesi:20181023184154p:plain金井さん:嫁と小さい子どもが2人いるんですが、全く相談しませんでしたね。今思えば少し申し訳なかったです(笑)。

 

「下北沢」という街の懐の深さに支えられて…

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▲常設されている角打ちスペース。フード類に関しては、近隣店舗からの持ち込みも可能としている

 

──お店を開業して約8カ月たちますが、手応えはいかがでしょう?

 

f:id:exw_mesi:20181023184433p:plain金井さん:いやー、正直言うとつらい事の連続でしたね。お盆の時とかは1日200杯も注文してくれた時もあったんですが、雨が降って客足が伸びない時もあって。売上がガクッと落ちた時もあります。

 

──やっぱり、好きなことを仕事にしても、必ずしも良いことばかりではないですか?

 

f:id:exw_mesi:20181023184433p:plain金井さん:そう感じる時もたくさんありますね。好きなビールで仕事を始めたのに、こんな苦しいのかって。これから寒くなって夏に比べればビールの消費は減るわけだから、このままで冬を越せるのかなって正直、不安になる日もあったり。

 

夢に向かって突き進んではいるものの、実際は現実と向き合わざるを得ない時もあったと明かす金井さん。それでも、広告代理店の営業マン時代の知恵と経験をいかしながら、今後への収穫も掴んだようです。

 

f:id:exw_mesi:20181023184609p:plain金井さん:ブルワリーにどんどん問い合わせをして、仕入先を開拓できたのは良かったです。広告営業時代の経験がいきましたね。お歳暮用のビール販売を練ったりだとか、今後に向けていろんな施策を考えていますよ。

 

そして、お店を成り立たせる上では、近隣店舗の強力なサポートも欠かせないと、金井さんは力説します。

 

f:id:exw_mesi:20181023184619p:plain金井さん:近くのお店の方が助けてくれるんですよ。唐揚げ屋さんが唐揚げを持ってきてくれたり。うちは酒屋さんなのでフード類を作ることができない。だからすごくありがたかった。あと他のお店の人が暇な時に遊びに来てくれたり、逆に俺が遊びに行ったら歓迎してくれる。バックパッカーをやめて帰国してずっと住んできたから下北沢に開業したんですけど、本当に懐が深い街だなと改めて実感しました。開業してから苦しいことばかりあった反面、振り返ってみるとどれも楽しい時間でしたね。

 

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▲店内で同じく下北沢にお店を構える「極鶏(ごくちー)」や「EIGHT BURGER’S」のデリバリーもできる

 

ブルワリーを作る夢へと走り続ける金井さん。最後にこんなメッセージをくれました。

 

f:id:exw_mesi:20181023184721p:plain金井さん:人生は一回しかないから、好きなことをやるべきだと僕は思っています。生きている時間は無限にあるわけではないし、リスクとか考えて動かないのはもったいない。もしやりたいこと、好きなことがあるなら、ためらわないでほしいですね。ああ、でもそんなこと言いつつ、僕とこのお店もまず冬を越えなきゃいけないのですが(笑)。

 

これから肌寒くなる季節。金井さんの陽気なトークを聞きながら、クラフトビールを満喫してみてはいかがでしょう?

 

お店情報

TAP&GROWLER(タップアンドグロウラー)

住所:東京都世田谷区北沢2-33-6 飯嶋ビル1階
電話:03-6416-8767
営業時間:平日 18:00〜24:00、土曜日・日曜日・祝日 15:00〜21:00
定休日:月曜日
ウェブサイト:https://www.craftbeers.tokyo/

 

坂本龍一氏のバズ記事から掘りさげてみた「人はナゼ飲食店のBGMが気になって仕方がないのか」

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坂本龍一氏のニュースがバズった理由

元YELLOW MAGIC ORCHESTRAメンバーで、アカデミー賞作曲家としても世界的に知られる音楽家の坂本龍一氏が、ニューヨーク・マンハッタンにある行きつけの日本料理店「Kajitsu」のBGMがあまりにもひどいのに耐えきれず、みずから店主に申し出てノーギャラで選曲を引き受けた。

amass.jp

2018年7月末に配信されたこのニュース、『メシ通』の読者なら記憶している人も多いだろう。記事は爆発的な閲覧数となり、かの「はてなブックマーク」の数も1500に迫る大反響。ネットユーザーたちのあいだでも賛否両論が巻き起こり、とにもかくにもバズりまくった。

  • むしろ、ひどかった以前の選曲を知りたい。
  • 自分も「BGMを変えてくれ」とお店に言ったことがある。
  • お店の雰囲気に合ったBGMが流れていると、また訪れてみたくなる。
  • 料理、サービス、内装、そして音楽もお店の一部なのでこだわるのは当然。
  • 料理はプロが作る。選曲もプロがやるべき。

b.hatena.ne.jp

ニュースに肯定的な意見を要約すると、およそ上記のような感じ。メシが好き、音楽も好き、そんなユーザーたちにとって「外食とBGMの関係」はヒジョーに大きな関心事であり、それぞれの好みや意見がしっかりとあるのだなあと痛感。

筆者もそのひとりだ。最近はシェフやオーナーが元ミュージシャンだったり、音楽マニアだったりするお店も珍しくない。こだわりを感じるBGMのお店が増えている気がする。というか、さすが教授(坂本龍一氏のニックネーム)、愛するお店の音楽を変えさせるほど、食と音のマリアージュに敏感なのだなあと感じ入り、記事を読んだ直後にさっそく自分の意見をツイートしてしまったほど。

ところでこの件、現場のプロや研究者はどう見ているのだろうか。

飲食店をはじめさまざまな店舗への音楽配信で知られる大手企業「USEN」の番組制作担当者と、「食と音」について詳しい心理学者に、このニュースに対する感想と、飲食店とBGMの関係について聞いてみることにした。

 

ジャズは飲食店に重宝される

音楽配信企業最大手である、株式会社USEN(USEN-NEXT GROUP)コンテンツプロデュース統括部制作部で、実際にお店に配信する曲のセレクトを担当している部長の村田徹さんと、課長の小島万奈さんにご登場いただこう。

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▲USEN制作部の村田さん(左)と小島さん

 

はじめに、このニュースに関する率直な感想をうかがった。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019111418p:plain村田さん:正直ビックリしましたね。行きつけのお店とはいえ、選曲をさせてほしいと申し出るのは、坂本龍一さんならではだと思います。普通に考えるとなかなかハードルが高いかと。あと、お客さんがどんな雰囲気で食事しているお店なのか、店内のざわつき具合はどんな感じなのか、きっと静かなんだろうなとか、仕事柄いろいろ想像しました。お店に行って確かめてみたいです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019111446p:plain小島さん:実際にプレイリストを聴いてみて、とても教授らしい世界観だなあと感じました。ポストクラシカル、エレクトロニカ、アンビエントなどのジャンルを織り交ぜて、日本料理の空間を演出していますね。記事を読んだら、以前はブラジリアンポップス、マイルス・デイビス、アメリカのフォークミュージックなどが流れていたとありましたが、それぞれ単体ではとても良い音楽なので、選曲そのものがお店の空間に合っていなかったのだと思いました。

 

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話を聞いていると、さすが、おふたりとも音楽に詳しい。USEN制作部は各スタッフが特定の音楽ジャンルに特化して選曲の仕事をしているそうで、小島さんの専門はジャズだという。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019111446p:plain小島さん:ジャズって、飲食店でとても重宝されるジャンルなんです。昔、日本食のお店のBGMといえば、お琴か、歌謡曲だったと思いますが、今、たとえばおそば屋さんでジャズは普通ですよね。状況がガラっと変わったのは、2000年くらいからです。

 

確かに、ジャズには料理やお店自体を高級に見せる効果がある。

小島さんは高級日本食店向けの番組「美食空間向けジャズ」を担当しているそうで、その選曲コンセプトを聞けば、坂本龍一氏に迫りそうなディープなこだわりとマニアックさで驚いた。

music.usen.com

 

f:id:Meshi2_IB:20181019111446p:plain小島さん:すごく高級な割烹とか寿司店は味で勝負しているので音楽は必要ない。そういう意見も多いのですが、それでも冷蔵庫や空調などの雑音があるので、それを中和しながら食事の邪魔をしない、そして、ちょっとだけ彩りを空間に添えられる音楽って何だろうと考えました。実際のお寿司屋さんに場所をお借りして、音を流してみて確認したり試行錯誤を繰り返したんです。結果、たどり着いたのはモダンジャズの、それもモード時代の手前に録音されたピアノのソロ演奏でした。

 

いきなり専門的なジャズ用語が飛び出したが、簡単に言えば「モード時代以前」とは1950年代くらいまでの、比較的素朴な響きのあるジャズのジャンル。具体的なピアニストとしては、レニー・トリスターノ、バド・パウエル、ハンク・ジョーンズなどがイメージに近いそうだ。しかも、すべてピアノソロでそろえてしまうのではなく、10曲に1曲はギターのソロ演奏も混ぜることで、聴いた印象にうっすら変化をつけるという凝りよう。

音楽関係の専門家からは「鍵盤をたたくピアニストの手さばきと、寿司を握る板さんの手元の動きがシンクロするようだ」とおほめの言葉をいただいたそうで、USEN顧客の評判も上々だという。それにしてもUSENに、ここまでピンポイントの選曲をしている番組があるとは知らなかった。

 

海鮮居酒屋さんの演歌にもこだわりの選曲が

制作部の部長である村田さんは、J-POPや演歌が専門。担当されている「大漁☆演歌名曲選」という番組もオモシロい。

選曲テーマは北島三郎や鳥羽一郎などによる「漁師」「漁港」を歌った演歌だ。

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f:id:Meshi2_IB:20181019111418p:plain村田さん:この番組を作ったのは、ちょうど大間のマグロが話題になっていた時期で、お店に大漁旗があるような海鮮居酒屋さん、大衆的なお寿司屋さんなどに提案すべく選曲しました。とにかく「行くぞ~っ、大漁だ!」っていう景気のいい歌ですね。なかには、海に出た男性のことを岸で待っている女性を歌った曲もあるんですが、その系統はしんみりしてしまうので、ちょっと違うんですよ(笑)。元気のいい歌ばかりを選んでいます。

大漁☆演歌名曲選 | USEN(有線)音楽放送 番組案内 | music.usen.com

なるほど、各ジャンルにそれぞれのこだわりがある。ジャズから演歌まで、さすがUSEN、幅広い。

 

ドトールコーヒーのマニアックなBGMの秘密は……

飲食店のBGMに対するスタンスは時代的な変化があるそうで、およそ5年くらい前から、明らかに音楽にこだわるお店が増えはじめたという。

BGMがクローズアップされるようになったのはなぜだろう?

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f:id:Meshi2_IB:20181019111418p:plain村田さん:確たるエビデンスがないので印象でしか語れませんが、お店のオーナーさんの世代が変わってきたことが大きいと思います。早い人だと20代で起業するケースもありますし、若いオーナーさんほど、料理だけでなくBGMもお客さんをもてなす要素のひとつとして重視する傾向があるような気がします。

 

個人店はもちろん、チェーン店もここ数年で変わってきたという。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019111446p:plain小島さん:著作権関係をクリアにしたいのでUSENにオリジナル選曲のBGMを依頼してくださるチェーン店さんも増えました。全国に何店舗もお店があって、以前は各店で独自に選曲していたけれど、ブランドイメージを統一したいので、全店共通で流す音楽を選んでくださいとか、いろんなケースがありますね。

 

音楽好きに「おや?」と思わせるツウっぽい選曲のBGMで話題になっているチェーン店のひとつが「ドトールコーヒー」だが、実はドトールの音楽も数年前からUSENが担当している。一般の顧客向けとは別の専用回線で、ドトールだけのオリジナル選曲を各店舗同時配信しているそうだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019111446p:plain小島さん:ドトールさんの場合は、チェーン店とは違うオリジナルの選曲にしたいという要望をいただきまして、時間帯で変化するお客さんの層に合わせて選曲を変えています。朝はゆったり、フレッシュなイメージで。混んでくるお昼は元気でテンポ感もあるソフトなサンバや60年代ポップスを。午後は「頑張らない時間」をテーマにカフェらしいゆったりした曲が中心。夕方以降は、男性のお客さんを意識して、スムースジャズ、AOR、80~90年代のポップスも少し選んでいます。

 

お客さんからの選曲に関する質問も多いようで、ドトールコーヒーに問い合わせると誰でも全曲プレイリストがもらえるそうだ。

食空間における音楽の重視は個人店からチェーン店まで、最近の注目すべき傾向であり、お客さん側の意識も高まっている。そんな時代背景も重なって坂本龍一氏のニュースに注目が集まった、ということは言えるかもしれない。

 

食の心理学、ガストロフィジックス

さて、食と音楽の関係をサイエンスの見地からズバリ解説してくれたのが、立命館大学・食マネジメント学部の和田有史教授。専門は実験心理学で、味覚はもちろん、視覚、聴覚、触覚など、人間の感覚の相互関連について深い知見をお持ちだ。

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▲立命館大学の和田教授。国内でも前例のない「食マネジメント学部」という新しいジャンルを切り開いている

 

和田教授にさっそく、件のプレイリストを聴いた感想をたずねてみた。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019113513p:plain和田教授:ゆったりした音楽が多くて、和食のうま味をじわ~っと感じられそうですね。以前のひどかったという選曲にはブラジルのポップスなどが入っていたそうですが、踊りたくなったり、「カンパーイ!」ってしたくなるような陽気な音楽は、確かに静謐(せいひつ)な和食に合わないかもしれない。

 

確かに。

坂本龍一氏は、「料理は桂離宮のように美しいのに、BGMはトランプタワーのようだ」って表現していたっけ(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019113513p:plain和田教授:お店って、味だけでなく雰囲気全体を味わう部分も大きいじゃないですか。味覚だけでなく、聴覚、視覚、触覚など、人間はつねに多くの感覚から情報を受け取っています。それらの情報が一致したメッセージを持っているとき、その一致した部分が強調されて、良い体験になる(あるいは悪い体験にもなる)。チャールズ・スペンスも、そういうことを言っていますね。

 

チャールズ・スペンスとは「ガストロフィジックス」という食にまつわる心理学で知られているオックスフォード大学の研究者。和田教授のお知り合いだそうだ。

このスペンスさんが書いた『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実』という本に出てくる、「食と音」関連の実例がめちゃくちゃオモシロい。

例えば……

  • ワインショップでフランス音楽をかけると、フランスワインが売れる。
  • テンポが速い音楽をかけると、食べるスピードも、お客さんの回転も速くなる。
  • ポテチを食べているときの「パリパリ」音を増幅し、クリスピーな食感を強調する装置がある。
  • 聴きながら食べると、甘味、酸味など、特定の味覚を際立たせる曲が実際に存在する。
  • ロンドンのミシュラン三ツ星レストラン「ファット・ダック」のメニューには、イヤホンで波の音とカモメの鳴き声を聞きながら食べる、海をテーマにした料理がある。

などなど。音楽や音と、食の体験がいかに強く関連しているか、よーく理解できる。ぜひ、ご一読あれ。

「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実

「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実

  • 作者: チャールズ・スペンス,長谷川圭
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 単行本

 

そもそも「味」って、なんだろう

さらに、和田教授が教えてくれたのは、オズグッドという心理学者が提唱していたSD(セマンティック・ディファレンシャル)法という測定法で、料理と音楽が「合っている」かどうかも、心理学的にある程度は分析が可能だそうだ。

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f:id:Meshi2_IB:20181019113513p:plain和田教授:料理や音楽でもいいし、絵画や芸術、色、言葉の印象など、なんでもいいのですが、ある対象について、良い/悪い(評価性)、強い/弱い(力量性)、速い/遅い(活動性)などのいくつかの形容詞の対で何段階かに評価してもらうんです。そうすると、あらゆる対象への感情的評価が「EPA空間」と呼ばれる三次元の散布図にプロットできる。例えば、ある実験(※)の結果ですが「緑色、ベートーヴェンの『田園』、ヴィヴァルディの『四季:春』、幸福、創作、ヒバリの鳴き声」などは近い空間にプロットされている。なんとなく、わかる感じがしませんか。文化によって多少の差が出るんですが、人類でだいたい共通していると言われています。

(※)大山正, 瀧本誓, 岩澤秀紀: セマンティック・ディファレンシャル法を用いた共感覚性の研究-因子構造と因子得点の比較-. 行動計量学, 20, 55-64, 1993.

 

つまり、坂本龍一氏にとって、かつての「Kajitsu」の料理とBGMは、EPA空間において全く違う場所にプロットされていた、ということかもしれない。

なるほど~!

食の体験というものは、めちゃくちゃ階層的な構造を持っていると和田教授は言う。

 

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▲「味」の階層構造をあらわした図

 

f:id:Meshi2_IB:20181019113513p:plain和田教授:そもそも「味」って、何だと思いますか。ものを食べると、まず舌の味蕾(みらい)にある味細胞の受容体が反応して、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の五味が体験される。辛味や渋味は、狭義においては味覚ではなく、痛覚なんかと一緒の三叉(さんさ)神経で伝搬される体性感覚なんですよ。でも、一般的には当然、味のうちですよね。さらに、においが鼻から、加えて口に入れて咀嚼(そしゃく)している食べものから喉を通って二方向から入ってくる。においとの相互作用が味にとって重要なのは明らかです。そこに食感、舌触りが加わる。食べ物の見た目、お店の内装など視覚情報も味を大きく左右します。その上には、文化的な要因もある。グルメ系SNSで高得点を獲得(笑)、なんていうメディアの情報も加わって味の印象が変わる。そういう考え方をすれば、BGMも十分に味の要素のひとつだって言えますよね。

 

和田教授の心理学からのコメントと、USENの村田さんのお話をクロスさせれば、料理の味やプレゼンテーションはもちろん、音楽も、さらにはお店のコンセプト、内装、照明、客層やメディアへの情報の出し方なども含めて、多感覚にアピールする総合エンタメのようにお店を考えている意識的なオーナーが増えてきたのが、ここ数年なのかもしれない。

きっと、坂本龍一氏にとって「Kajitsu」というお店は、音楽以外のすべての要素が心地よいメッセージを発していて「EPA空間」的にも完全一致していた。そう、あとは音楽だけを修正すれば、もうパーフェクト! だからこそ、やむにやまれず「チーフ・プレイリスター」を名乗り出たのだろう。

なーんて、すべて勝手な憶測で書いております。

違っていたら教授、スミマセン。

これはもう、坂本龍一氏と、お店を直接取材してみるしかないな。

次回はニューヨークからお届けします(あくまで希望)。

BGM

BGM

  • アーティスト: YELLOW MAGIC ORCHESTRA
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックダイレクト
  • 発売日: 2003/01/22
  • メディア: CD

▲そういえばこんな名盤もあったっけ……

 

“極悪女王”ダンプ松本さん「ずっと、悪役だった」【レスラーめし】

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日々、リング上で熱い闘いを見せるプロレスラーたち。 その試合の基盤にあるのはタフな練習、そして “食事” だ。

その鍛えた身体を支えるための日々の食事はもちろん、レスラーを目指していた頃の思い出の味、若手の頃に朝早くから作ったちゃんこ、地方巡業や海外遠征での忘れられない味、仲間のレスラーたちと酌み交わした酒……。

プロレスラーの食事にはどこかロマンがある。そんな食にまつわる話をさまざまなプロレスラーにうかがう連載企画「レスラーめし」。

連載第11回目に登場していただいたのは、女子プロレス史に残るトップヒール・ダンプ松本さんです。

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80年代の全日本女子プロレスで、当時の女の子たちを熱狂させたクラッシュギャルズ。その敵役である「極悪同盟」を率い、日本中を激しくヒートさせました。

暴走族やパンクファッションをモチーフにしたメイクや衣装はどこからどう見ても“悪役”そのもの。

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▲写真提供:ダンプ松本

 

さらに竹刀や一斗缶・ヌンチャクなどを使った凶器攻撃、悪のレフェリー・阿部四郎の不当なジャッジでクラッシュギャルズをはじめとしたベビーフェイス(善玉レスラー)を次々とたたきのめし、一世を風靡(ふうび)しました。

 

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▲写真提供:ダンプ松本

 

また当時の嫌われっぷりは現在のヒールの比ではなく、クラッシュギャルズのファンからカミソリ入りの手紙が毎日のように届けられたほど。

またクラッシュギャルズとの対戦が評判になるにつれ、テレビへの出演も増え『夕やけニャンニャン』『毎度お騒がせします』など、ドラマ・バラエティー問わず主に乱入役として出演し、その知名度はまさに全国区に。

 

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▲写真提供:ダンプ松本

 

極悪同盟からはブル中野、そしてアジャ・コングといったその後の女子プロレスをさらに進化させた名レスラーを輩出。

1988年に引退後は芸能活動を続けながら、自主興行「極悪祭り」などではレスラーとしてリングに上がることも。

 

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▲写真提供:ダンプ松本

 

それにしても現在の松本さんの気さくな笑顔からは、日本中の女子プロレスファンから一身に憎まれていた姿はまったく想像がつきません。

 

「落ちこぼれ仲間」長与千種と食べたタバスコライス

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しかし、そんな極悪女王も生まれていきなりダンプ松本だったわけではありません。本名の松本香で1980年にデビューし、1984年から“ダンプ松本”となりヒールレスラーに。ダンプになる前、特に練習生時代は「落ちこぼれ」だったと言います。

その当時の食生活はかなり厳しいものでした。

 

──これまで『メシ通』では長与千種さんとブル中野さんに話を聞いてきたのですが、全日本女子プロレスでのデビュー前の練習生時代は、「とにかくメシが食べられなかった」と皆おっしゃいますね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:やっぱりそう言ってたでしょ? お米だけは事務所が出してくれるからタダなんだけど、おかずを買うお金がなくてね……。(長与)千種が言ってたと思うけど、当時のごちそうといえばタバスコライス! ごはんにタバスコかけたものをおかずに、白ごはんを食べてました。もう辛いだけなんだけど、それでごはんも食べちゃうみたいな感じで。

www.hotpepper.jp

 

──うわさの「タバスコライス」! タバスコをおかずがわりにしちゃうのもすごいですね……。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:あとは「マヨネーズかけごはん」かな。マヨネーズ1本買ってきてね、ごはんにそのままかけたり。誰かがツナ缶を買ってきたら、少しもらってマヨネーズかけるとか。あとは紅生姜とか、バターが買えないからマーガリンを買ってごはんにかけたり……。

 

──主に「ごはんにかける」メニューばかりですね(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:だって本当におかずらしいおかずが買えなかったんだもん。本当に貧しかったね……(実感を込めて)。料理っていっても、ソーセージを焼いて食ったりとか、本当にそういうレベルですよ。普通のお肉とかを食べることはなかったな……。

 

──外食なんてとんでもない、と。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:ただ、その頃、近所に50貫食べたらタダになるお寿司屋さんがあって。よく食べに行ってたら「女子プロレスラーは禁止」って張り紙されるようになったりしたことがあったね。せっかくいいお店を見つけたと思ってたのに。

 

──そのお店も悪いところに出店しましたね(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:いまみたいな食べ放題のお店ってなかったのよ。3年くらいたって、1,900円でお肉が食べ放題みたいなお店が出てくるようになったのかな。

 

──その頃のダンプさんにとっての「ぜいたくなごはん」って、なんでしたか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:たしかケンタッキー(ケンタッキーフライドチキン)が出来たくらいの頃で、マイパックが420円くらいだった気がするんだけど、それを食べるのがうれしくてうれしくて! 500円も出すのって大変なんだけど、喜んで買って食べてた記憶がある。あれは最高のごちそうだったね~。

 

──まだファストフードが新鮮な時代でもありますしね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:そうだね、本当に喜んで食べてたから、いまでも食べ方は本当きれいだよ! 骨まできれいに食べちゃうもん。今は食べ放題とかあるから、若い子って食べ方が汚いでしょ? ちょこちょこ食べて、残したりするじゃん。もったいないって思うよね。自分なんかもう「ネコも食べないぞ!」ってくらいの感じだから。

 

──ネコも手をつけないくらいきれいに食べちゃう、と(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:あと吉野家なんかも出来たばかりの頃じゃなかったかな。これまたうれしかったね~。本当に助かった!

 

──じゃあ、まともなごはんが食べられるのは巡業の時くらいですか。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:そう! 巡業に行くと、朝ごはんと夜ごはんが出てくるのがうれしくってね。

 

──もう、2食分が確保されてるだけでうれしい。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:うれしかったねえ。練習は厳しいし、毎日試合だし、先輩とも一緒にいなきゃいけないから嫌なんだけど、ごはんが食べられるってのがなによりうれしかった。でもね、遠征とかにはそんなに連れて行ってもらえなかったんだよ。落ちこぼれだから。だから、千種とふたりで寮で食べたよね、タバスコライスを(笑)。

 

──長与さんと「落ちこぼれ仲間」だったというのが信じられないです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:先輩に気に入られたら、寮にいる時もごはんとかに連れて行ってもらえるんだよ。飛鳥(ライオネス飛鳥)がジャガーさん(ジャガー横田)にごはん連れて行ってもらってるの見て「ズルイよな~」って言ってた覚えがあるね。

 

──先輩にいかにかわいがられるかで、練習生時代の食生活が決まると。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:先輩に連れて行ってもらえるからね。だから「自分が先輩になったときは全員連れて行こう」ってその時から思ってたよね。だから極悪同盟は、ごはんに行く時は全員一緒に連れて行くようにしてたんだよ。

 

自分から「ヒールになりたい」と志願した

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──では食生活が安定してきたのは、デビュー時の“松本香”から“ダンプ松本”になってから?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:ダンプになってからだね。そこまではぜんぜんダメ! ダンプになってギャラが倍になって、どんどんポジションも上がっていって好きなものを食べられるようになった。回る寿司じゃなくてもお寿司が食べれるようになったね。

 

──新人の松本香時代はデビル雅美さん率いるデビル軍団の一員ですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:先輩のお世話みたいなのはしなくてもよくなったけど、給料はそんなに変わらなかったですよ。弱いからね。その日の前半戦だと(ファイトマネーも)安いし。

 

──ダンプさんは自分から「ヒールになりたい」と志願したそうですが。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:会社からはベビーフェイスでって言われたんだけど、自分は「ヒールになりたい」って言って。実は千種はヒールになりたかったみたいだけどね。

 

──珍しいですよね。当時の女子プロレスって、皆ベビーフェイスになりたくて入門して、会社に言われて泣く泣くヒールになるってパターンがほとんどだったわけですよね。ブル中野さんもそうおっしゃってましたけど。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:自分はビューティ・ペアとかマッハさん(マッハ文朱)とか見てきてるからね、かっこよくって背が高くてかわいくて、スタイルがよくないとベビーフェイスでは人気者になれないと思ってたの。だったら実力で上に上がれるのはヒールだろうって思って、自分は最初からヒールを選びました。

 

──いち早くトップレスラーになりたい、と。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:そうすれば普通のOLとかよりもいいお金もらえるわけだから、お母さんにおいしいもの食べさせてあげたいというのもあったね。ずっと女手ひとつで育ててもらったから。

 

──親孝行するための最短距離がヒールだった、と

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:それで、まずはデビルさんを抜こうと思ったんだよね。デビルさんは一度もカミソリを送られてきたことがないって言ってたから、自分はカミソリをいっぱい送られてくるヒールになろうって思って「どういうことをやれば、皆から嫌われるかな?」って、そういうことばっかり考えてましたね。

 

──実際、カミソリとかは送られてきたのですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:そりゃもう……いっぱいきましたねえ(遠い目)。当時は、身に覚えのない人からの贈りものは自分では見ないようにしていたんです。(極悪同盟の)若手の子が、そういう郵送物とかをチェックする係なんですけど、もう封筒とかに上から切ろうが下から切ろうが指が切れるようにカミソリが仕込んであったから。だから、「ちゃんと硬いものが入ってないかどうか確かめて、ハサミで切りなさい」って言ってましたね。だいたい中を開けても「死ね」って書いてあるだけだけどね。

 

──心ないファンが当時はたくさんいたんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:あとはケーキの腐ったのとか、カレーの腐ったのを「うんこだ!」って手紙と一緒に送ってきたり……。あとケーキにゴキブリを入れて送ってきた奴もいたね。わざわざこんなのを捕まえて、よく送ってくるなって思ったけどね。本当にわたしたちのことが嫌いでしょうがなかったんだろうね(ニコニコと)。

 

「極悪のおかげだからな!」

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──怖すぎますね……。でも実際にはギャラは上がって、おいしいごはんを食べに行ける立場になったわけですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:それが、給料はたしかに上がったんだけど、ごはんにはもうぜんぜん行けなくなった! それまでは普通に近所に食べに行ったりしてたのが、「あんまり出歩いちゃいけない」ってことになって。

 

──それはヒールとして知名度が上がりすぎて?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:そう。だって、極悪同盟のみんなでごはん食べたりしてるときに、サインをくれだの、握手してくれだのが来るじゃない。普通は自分がなにも言わなくても、ブルちゃんやコンドル(コンドル斉藤)が「ダメです」って言うのよ。

 

──それこそ当時は超有名人ですからね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:それでもしつこく来る人には「うるせえ!」って言って追い払ったりして。そうすると、さすがに逃げていくんですよ。でも、それがデパートとかだと並べてる商品を倒しちゃうわ、喫茶店だと水をこぼすわで、お店の人に嫌がられたんですよ。なにかとトラブルばっかり起きちゃうから。

 

──それで外に食べに行くな、と。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:食事に行けないから、それまではお昼ごはんはそれぞれ外に食べに行ってたのが、ぜんぶお弁当になりました。選手全員分の弁当は出してもらえるようになったから「極悪のおかげだからな!」って言ってましたね(笑)。

 

──会社からすると弁当代がかかるから大変ですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:でも、何倍ももうかってるからいいんじゃない? ほんとだよ、弁当代だけじゃ許せないくらいだよ。上(経営陣)はすごいいいもん食ってんだからさあ。うちらには安い弁当を食わせて、自分たちはうな重とか食ってたりしてたよ。当時の全女のビルはもう売っちゃって駐車場になっちゃったけど、あれはクラッシュギャルズと極悪同盟が作ったもの。壁一枚くらいはうちらのもんだよ(笑)。

 

──あと、さっき食事は極悪同盟のみんなで一緒に行ってたとおっしゃってましたが。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:さすがに毎日は無理だけど、1カ月に1回は連れて行ったりしてたよ。叙々苑とかにみんなで行ったりしてたね。1回で30万円とか、平気で食べちゃったりするの。

 

──焼肉とはいえ、一度に30万円!

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:極悪同盟全員だから7人くらいかな。バカみたいに食って飲んで、高くついたねえ~。

 

──極悪同盟の上の選手だけでなく、若手も全員呼んで行ってたんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:でもね、昔だと本当に用事があったとしても「今日は無理です」って絶対に言えなかったのね。先輩の命令は絶対だからさ。だから仲間同士で聞かせてね、来られる人だけにして。こっちはひとりでも少ない方が安上がりだからさ、無理やり来て食われても、金かかるだけだからね(笑)。

 

──先を読んだ気遣いが素晴らしいですね。ちなみに極悪同盟で誰が一番飲み食いがすごかったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:すごい飲んだのはドリル仲前かな……。自分は酔っ払っちゃうから誰が飲んで食ったかとか、わからないのよ。だいたい影かほるが自分のマネージャーで、財布とかも全部管理してもらってたから、彼女が支払って次の日に「いくらでした」って言われるだけ。支払いのことしか覚えてないわよ(笑)。

 

「コマーシャルだから、我慢してくれ」

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クラッシュギャルズと極悪同盟の試合はゴールデンタイムでも放送され、一大女子プロレスブームを巻き起こします。そしてプロレス以外のテレビ番組にも極悪同盟は出演するようになります。ドラマやバラエティー、さらにはCMにまで。

 

──ヒールとしての知名度が上がるとともに、芸能の仕事も増えました。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:増えましたね。TV局だと始まる前に「よろしくお願いします」ってあいさつしに行くから、最初は怖がってた若いアイドルたちも安心してくれるんだよね。だけど番組の中で竹刀でたたいたりするのは思いっきりやってましたね。

 

──自分の世代だとドラマ『毎度おさわがせします』のイメージが強いです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:美穂ちゃん(中山美穂)とか女の子はたたかないけど、吉幾三さんとか木村一八はおもいっきりたたいてたね(笑)。

 

──あとダンプさんにまつわる「テレビとめし」でいえば、日清食品の「タコヤキラーメン」のCMは外せないですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:ああっ! あったねえ。「マジだぜ!」ってやつ。コマーシャル出たけどね、あれ◎◎◎のよ~。

 

──あははは!

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:だって考えてみてよ、たこ焼きがラーメンに入ってんだよ? 明石焼きを狙ったらしいけど、あれはおいしいじゃん。タコヤキラーメンは、すぐなくなったんじゃない?

 

──でも2年くらいは売ってたらしいですよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:そうなんだ! そんなに売れてたの? それと一緒にトキタマラーメンも出てたんだよね。タコヤキラーメンは、CM撮影で50個くらい食わされましたね。

 

──しかもCMの最後にノーメイクの素顔を出しましたよね。あれが初めてだったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:あれが初めて。もう上に言われて、嫌とも言えなくって。お金は半分半分って言われてたけど、絶対会社に多くとられてるね。

 

──ヒールとしてのプライドが強いだけに、嫌だったでしょうね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:嫌だったねえ。でも「コマーシャルだから、我慢してくれ」って言われて。

 

──ただ、それだけにインパクトはすごかったです。最後に素顔のかわいいダンプさんが登場して日本全国が「えー!」って衝撃を受けました。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:かわいかったかはわからないけど(笑)、あの頃はとにかくヒールのイメージを崩そうとみんなしてきてたよね。『夕やけニャンニャン』とかに出たら、(片岡)鶴太郎さんとかは絶対に笑わせようとしてくるからね。それしか考えてないから。こっちはもう絶対に笑っちゃいけない。

 

──その頃になると、ヒールのイメージを守るのが仕事ですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:雑誌とかでも着物を着せられて、顔はそのままサングラスしてると「プライベート用に撮ってあげるから、取ってみてよ」とか言われるんですよ。でも、そう言われて撮った写真を雑誌で使われたりするから、絶対にサングラスは取らないようにしてね、意地でも。そういうことを事務所がさせようとするんだからね!

 

──松永兄弟が(笑)。そういうイメージって普通は事務所が守る立場ですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:ねえ! それをさせようとするんだよ?「素顔出させるから」って言っておいて、金を多めに取るんだと思うよ、「サングラスを外したらプラス◎◎万円」とかさあ。それが自分には入ってこないってのがわかってるから、絶対に撮られるもんか! って思ってました。ヒールであればあるほど、そういうのを求めてくみたいでね。ひっどいよね、大人って!

 

──今だとヒールのレスラーも笑顔を見せるのは普通になりましたね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:今の子は普通に笑ってるよねー。いまは誰がヒールなのかわからない。もう「嫌われてるヒール」っていないよね。自分らは嫌われるどころか「憎まれて」ましたからね。

 

母から「家に帰ってこないで」と言われて

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そんな日本中の女子たちを熱狂させたダンプ松本さんも、1988年に全日本女子プロレスを引退。その後はもともとの明るく気遣いの出来る性格そのままのキャラクターでタレント業に転向。やっと外で普通の食事が出来るようになりました。

 

──じゃあ引退してから生活がガラッと変わったんじゃないですか。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:それまではコンビニも行けなかったから、食堂もレストランも普通に入れるようになったし、うれしかったねえ。しかも昔があまりにもひどかったから、ちょっとしたことで「ありがとう」とか「ごめんね」とか言うじゃない? そしたら「ダンプがすいませんって言った! なんていい人だろう!」って。ギャップがあるのか、余計にいい人に思われるのよ(笑)。

 

──全女時代にヒール道を志したのも、お母さんに恩返しをするためですよね。親御さんにプレゼントやごちそうなどの恩返しはできました?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:プレゼントはもう、ダンプ松本になってからはいっぱい……ね。誕生日プレゼントなにがいい? って聞いて、妹は車って言うから、軽自動車だけど買ってあげて、お母さんには最終的に25歳か27歳だかのときに家を買ってあげたんだよ。「普通、家が欲しいとか言うかね」って思ってたけど(笑)。

 

──ごはんには連れて行ってあげました?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:ごはんはね、ダンプ松本の時は連れて行けてないんだよね。「もう家に帰ってこないで」って言われてたから。

 

──それはやっぱり、ヒールレスラーということで?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:「ダンプ松本の実家」ってバレると大変だから。熊谷に住んでた時は、実家に石を投げられて「出てこい!」って言われたりとかして。プレゼントした家は、そこから離れた街に家を建てたんだけど、その頃はもう「家に帰ってこないで」って。

 

──プレゼントしてもらったのに! でもファンの反応もひどいですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:まあ、仕方ないよね。それに、ファンも自宅だったら大丈夫だと思って「サインもらえませんか」って色紙を持ってくるのよ。でも「ダンプは実家にいるときは優しい」って思われるのもいやだから、「家まで来るなー!」って色紙を玄関から投げなくちゃいけないんだよね。それをお母さんが拾わなきゃいけないわけよ。

 

──それはダンプさんもお母さんもつらいですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:「お母さんかわいそう……!」って思ってましたね。でも、そこでサインを書いちゃうと「ダンプはリングを降りると優しい、家に行くとサインしてくれるぞ」ってうわさが広まっちゃうから。ヒールなんだから、それよりも「実家にサインもらいに行ったけど、色紙を投げられたよ、バカ野郎!」って言われる方がいいでしょ? 悪いうわさの方がすぐ広まるから。だからダンプ時代は母をどこにも連れて行けなかったです。

 

──当時の状況では仕方なかったかもしれませんね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:1回だけ沖縄に旅行に連れて行ってあげたけど、そのときも嫌な思いをしたみたいだから、ごはんに連れて行ったりとか、一緒にいろいろ出かけられたのはプロレスをやめてからだよね。それまでは「お母さんって呼ぶな」って感じよ。お互いのためにも。

 

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──そしてもうひとり、ダンプ松本になってから話せなくなった相手が「落ちこぼれ仲間」の長与千種さんでした。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:新人の時は落ちこぼれ同士で仲も良くて、まわりから「(レスラーを)やめろやめろ」って言われてたけど、頑張ろうねって励ましあって。それで千種が先にクラッシュギャルズになったのかな? 頑張ってるなって思っている時に、クラッシュギャルズの敵役として極悪同盟が出来ることが決まって。「千種も頑張ってるから、自分も頑張んなきゃいけない」って言ったときから一切、千種とは会話をしなかった。それが24歳くらいかな。

 

──それから約4年間、引退するまで長与さんとひたすらリング上で戦い続けたわけですよね。引退後は食事する機会とか、ありました?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:引退した後、大森(大森ゆかり)と千種と自分でイベントに出たことがあって、その時から話するようになって。あとは千種と飛鳥と3人で遊んだこともあるかな。でもあそこの2人(クラッシュギャルズ)は仲が悪いんで(笑)。1回遊んだきりで、2人で食事したとかはないんだけどね。

 

──引退後、あらためて話してみて打ち解けましたか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:引退した後、2人で話してみてわかったのが、お互いが憎み合ってけんかするようなことを会社が裏で吹き込んでたわけ。「千種がお前の悪口言ってたぞ」「ダンプが、クラッシュギャルズのダンスは下手だって言ってた」とか。それで「え! そんな悪口を言われる筋合いはないじゃん」ってこっちは怒る。そんな感じで焚きつけて、リングにあげてけんかマッチをさせてたのよ。すっごいよね。

 

──それを客前でやらせるのがすごいですね……。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:引退して会って話をしたら、お互いに「えー! そんなこと言ってないよー!」ってビックリして。「だまされてたね、うちら」って。会社にだまされてたから、試合も盛り上がったんだろうけどね。当時は殺したいくらい大嫌いになってたからね、お互いに。

 

──どちらもだまされていたのがあったから、あの時期の試合の熱量が出せたという……それも、かつての親友同士で。

 

f:id:Meshi2_IB:20181012173047p:plainダンプ:いま「極悪祭り」っていう興行をやっているけど、千種の団体・マーベラスと会場を一緒に借りてやったりしてるんだよね。30年かけてお互いの話がわかるようになった気がするな。いろいろ違いがあっても、プロレスに対する気持ちとか、尊敬出来る相手だなって。今やっと戦友から親友になった感じがしますよ。

 

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ダンプ松本さんが現役時代に見せていたヒールとしてのプロフェッショナリズム、そして決して表に出さなかった優しい人柄は、女子プロ界に長らく影響を与え続けたといえるでしょう。

まさに「優しき極悪女王」……なんて言ったら竹刀でたたかれてしまいそうですが!

 

撮影:平山訓生

 

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パソコン通信時代からB級グルメを探り続けてきたライター・芝田真督さんと変わりゆく神戸の町を飲み歩く

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神戸市内の飲食店を取材していて頻繁に目にする名前がある。芝田真督(しばたまこと)という名前である。

 

たとえばあるとき「良い雰囲気の居酒屋さんだなー!」と感動して店内を見渡すと、『神戸立ち呑み八十八カ所巡礼』と題された書籍が置かれているのが目に入り、付せんのついたページを見ると、そのお店のことが魅力的に紹介されている。

またある時、神戸市内の銭湯に入ってくつろいでいると休憩スペースに『神戸ぶらり下町グルメ』という本が置かれており、エリアごとに神戸の庶民的な飲食店が紹介されていて、これから行くお店を探すのに役立つ。どちらも著者は芝田真督という方だ。

 

そんなことが重なって以来、神戸の庶民的なグルメ情報を深く知る人としてその名を記憶していたのだが、先日、その芝田さんと直接お会いしてお話しをする機会に恵まれた。今年で御年71歳になられる芝田さんは、初対面の私に神戸の酒場事情について丁寧に解説してくださった。そしてそのお話の中には、いまだ自分が知らない神戸の奥深い魅力がゴロゴロとあふれているように感じられた。

 

「ぜひ今度、芝田さんのお気に入りのお店を一緒に飲み歩かせてください!」と、そんな強引なお願いに気さくに応じてもらうことができ、今回、芝田さんに神戸のグルメ事情や、これまでの経歴、変わりつつある町の現状についてなどなど、いろいろとお話をうかがいながらおすすめのお店をハシゴする、というぜいたくな取材をさせていただけることになった。インターネット黎明(れいめい)期から大衆グルメ情報を発信し続けてきたという芝田さんのお話は、どこをどう切っても貴重なものばかりだった。

 

旅のはじまりは「喫茶 思いつき」から

取材当日、待ち合わせ場所は「喫茶 思いつき」と決まった。

ここが今日のスタート地点だ。JR神戸駅から南へ15分ほど歩いた、兵庫港近くのエリアに店舗を構える小さな喫茶店である。

 

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「思いつき」とはしかし、なんと軽やかでかわいげのある店名だろうか。

 

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ドアを開けると、先に到着していた芝田さんとお店の方が出迎えてくれた。こちらが芝田真督さん。

 

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入った瞬間から心が落ち着く穏やかな雰囲気の空間。

 

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普段は4姉妹で切り盛りされているお店なのだが、当日は一番上のお姉さんの体調が芳しくなく、3姉妹で営業されていた。

 

全国の純喫茶ファンが訪れる

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名物のフルーツジュース(500円)をいただきつつ、ゆっくりとお話を聞く。

 

── 芝田さんが初めてこちらの「喫茶 思いつき」に来られたのはいつ頃のことでしたか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:2000年頃ですね。この辺りにあった「まめだ」という大衆食堂を探して散歩していたんです。そのお店が古い新聞記事に紹介されているのを見つけて探しに来たんですが、すでにお店はなくなっていました。その時にここを見つけて入ったんです。それが初めてですね。

 

近くにある兵庫港で働く人々がよく利用したという「喫茶 思いつき」。私が飲んでいるフルーツジュースも、夏場に港湾で働く方々の「氷を細かく砕いて入れて欲しい」とリクエストに応じてできあがったものだという。フルーツもたっぷり入っているそうで、ジュースと言うよりシェイクと言った方がしっくりきそうな濃厚さだ。

 

── この辺りには港湾の方々が食事するようなお店がたくさんあったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:そうです。今はほとんどなくなってしまいましたが、一膳めし屋さん、いわゆる大衆食堂みたいなものは他にもあったと思います。酒屋さんがやっている角打ちもたくさんあったようで、よく見て歩くと看板に名残りが見つかったりしますよ。

 

周辺には町工場も多く、「喫茶 思いつき」があった場所ももともとは鉄工所だったのだという。4姉妹のお父さんが鉄工所を辞めることを決め、空き家になった場所を改装してお母さんと4姉妹の長女の二人で始めたのが昭和30年。63年前のことである。

「女性だけでもできるから、喫茶店がいいんじゃないかって。思いつきで始めたので『思いつき』っていう名前になったんです」とのこと。

 

開店当初の写真を見せてもらった。

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看板に書かれた小さな文字を見ると「コーヒー20円」「ケーキ15円」とある。

 

「お店始めたときは母なんかコーヒーを飲んだことがなかったんですよ(笑)。この頃は菓子パンなんかも売っていました。シベリヤゆうケーキ、分かります? 両脇がカステラで、真ん中がグリーンの羊羹。そんなのがあってねぇ」

 

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開店当初はお母さんと長女の朗子さんとの二人がお店に立っていたが、徐々に姉妹のみなさんが加わっていった。

ちなみに私が初めてこのお店を訪れた時は、ドアを開けると4姉妹が笑顔で「いらっしゃーい」と迎えてくださり、夢でも見ているかのように感じた。

お話しをしているだけで楽しくいつまでも腰を落ち着けていたくなるようなお店。

 

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港湾で働く人々の数はその頃に比べてかなり減ってしまったそうだが、今では「喫茶 思いつき」は純喫茶ファンの間では有名なお店となり、県外からもお客さんが足を運ぶという。

ファッション誌の撮影に使われたり、テレビの撮影が来たりすることもあるそう。

 

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当日お会いできた3姉妹のみなさまのお写真を撮らせていただき、次の目的地へ向かうことにした。

 

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お店情報

喫茶 思いつき

住所:兵庫県神戸市兵庫区西出町1丁目2-18
電話番号:078-671-4652
営業時間:7:30~15:00
定休日:土曜日・日曜日・祝日

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歩を進めるごとに土地の歴史が

「喫茶 思いつき」のすぐ裏手は港で、今も大きなドックが船の整備などに使用されている。

 

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道を歩き出すと芝田さんが指をさす。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:ほら、あの看板を見ると「めし」とありますでしょう。あそこもおそらく食堂だったんです。

 

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「喫茶 思いつき」から次の目的地である「中畑商店」までは徒歩数分の距離だが、ちらほらと古い建物が目に入る。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:このあたりはかなり古い建物が残っています。あとこっちには「船食」の会社がありますね。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:船食というのは、港に来た船に食料や日用品なんかを積む仕事です。最近はそういう会社はあまり見なくなったんですが、ここは今でも営業されています。

 

芝田さんと歩いていると、まるでツアーのガイドさんのように町の中のさまざまな場所に残された歴史について解説してもらえるので楽しい。

 

昭和43年創業の「中畑商店」

そうこうするうちに第二の目的地である「中畑商店」に到着。

 

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1968年(昭和43年)創業のホルモン屋さんで、店主が目の前で串に刺さったホルモンを焼いてくれる。

 

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メニューの中で一番安い「ホルモン」は一串50円。

 

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牛の肺を意味する「バサ」と呼ばれる部位だ。これを特製のニンニクの効いたピリ辛ダレにつけていただく。

 

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芝田さんもご満悦である。

 

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まだ神戸の下町グルメ本がなかった

お店の外に作られた席で生ビールを飲みつつ、改めて芝田さんの経歴について話を聞いた。

 

── 芝田さんが居酒屋さんや大衆食堂などを食べ歩くようになったのはいつからなんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:30代に大阪でサラリーマンをしていた頃、自分で使えるお金にも少しは余裕がありましたんで、仕事帰りに食べたり飲んだりするのが楽しくなったんです。梅田であれば新梅田食堂街だとか、天満や京橋の辺りによく出没してましたね。その頃は大衆食堂と酒場と喫茶店と3セットでまわるのが好きだったですねぇ。

 

── その頃はご自分の食べ歩きを記録したりはしていないんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:していないですね。やはり記録するようになったのはデジタルカメラが出て、いちいち現像に出さんでも写真を撮れるようになってからですね。確か1995年頃でしたか、カシオが30万画素のデジタルカメラを7万円ぐらいで売り出したんです。それでようやく手軽に記録できるようになりました。それまでは現像した写真をスキャンするしかないわけですからね。

 

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── ということは、食べ歩きを始められてから、それを記録するようになるまでは結構間があいているんですね。1995年というと芝田さんが48歳の頃ですか……。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:あまり年の話はしたくないんですがね(笑)。その頃はもう勤めも辞めていたんですが、職場ではソフトウエア開発をしていたり、早くからコンピューターを扱う仕事をしていたんです。コンピューターを扱うのも得意だったので、1996年に自分のドメインでサイトを開設したんだったかな。まだ「パソコン通信」があった時代ですね。サイトを開設したのはいいんだけど、コンテンツが特にない(笑)。 それで、何か載せなくてはという時に、食べ歩きの記録をコンテンツにするのが一番楽だなと思いましてね。

 

── まず先にオンラインで自分のサイトを立ち上げたいという気持ちがあって、食べ歩きはその後だったんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:そうですね。好きでずっと食べ歩いてはいたのでね。

 

── その頃、反響というのはあったんでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:パソコン通信の仲間内だけですけどね。冊子を作ってそこに記事を書いたりもしてましたね。その頃はものすごく低い解像度の画像しかアップロードできなかったですよ。時間もかかってね。ISDNとか、あんなののまだ前で。

 

── そうやってあくまで趣味として食べ歩きコンテンツを作っていて、そこからそれが書籍になるのにはどういった経緯があったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:仕事でコンピューターを扱っていて、一時期は大学で非常勤講師をして、コンピューターについて学生さんに教えておったりしたんです。そんなこともあって、コンピューター関係の技術書みたいな本を何冊か作ったことがあってね。その経験もあったので、今度は何か他のことを本にしたいなと思って、食の方でやってみたらどうかと。最初は自費出版で出したんです。

 

── それはいつ頃のことですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:2005年かな。だいぶ、時間はたっていますよね。それから新聞社の方に持ち込みをしましてね、それで出たのが『神戸ぶらり下町グルメ』(神戸新聞総合出版センター)でした。初版は確か2006年だったかと思います。これはね、なかなか好評でした(笑)。当時神戸を対象にしたもので、そういう本がなかったんですよ。高級店を紹介するような本はあったんですが、庶民が気軽に行けるようなお店を集めた本というのはほとんどなかったんですね。

神戸ぶらり下町グルメ

神戸ぶらり下町グルメ

  • 作者: 芝田真督
  • 出版社/メーカー: 神戸新聞総合出版センター
  • 発売日: 2009/11/01
  • メディア: 単行本

 

ガイド本でもあり、記録でもあり

── 取材エリアを神戸に絞ったというのは理由があったんでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:いや、自然とそうなった。その頃は神戸に住んでいて、普段自分が歩ける範囲で、それほど交通費もかけずに行ける場所というと神戸に限定されました。でもかえってそれがよかったかもしれないですね。大阪でもなく、神戸というのがね。

 

── ちょうど誰もやってないところに芝田さんが目をつけていたんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:『神戸ぶらり下町グルメ』の評判が良かったので、翌年には2冊目を作りまして、次の年には『神戸立ち呑み八十八カ所巡礼』(神戸新聞総合印刷)を出したんです。これは角打ちをメインにした本です。角打ちをテーマにした本もほとんどなかったんです。雑誌でちょっとした特集が組まれるぐらいはあっても、一冊まるまる角打ちを網羅するような本はなかった。だからこれも売れるかなと思ったんですが、酒飲みは本を買わないですね(笑)。1,500円あったら飲みに行くでしょう。

神戸立ち呑み八十八カ所巡礼

神戸立ち呑み八十八カ所巡礼

  • 作者: 芝田真督
  • 出版社/メーカー: 神戸新聞総合印刷
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本

 

── ははは。いや、でもページをめくりながら、「このお店に行ってみたいな」と想像を膨らませたりするのは楽しいですよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:そうですね。10年前ですから、載せたお店も3分の1ぐらいはやめているかもしれない。でも、記録に残すことも大事だと思って、神戸にこういうお店があったんだよ、と、そういうことを記録しておきたい気持ちがありました。

 

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── ガイドブックであると同時に記録でもあるわけですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:はい。2011年になって『神戸おとなの美男美女食堂』という本を出して、これはね、中身はいいのに売れなかった(笑)。 2012年になって『神戸懐かしの純喫茶』を出したんですが、これはそこそこですかね。純喫茶を探すのが難しくてね。電話帳で調べて片っ端から行ってみて、取材許可を取って。誰でも知っているような有名なお店は載せないで、あまり知られていないお店を探していたので、「どうしてあのお店が載ってないんだ」とか怒られたこともあるんですけどね。でもググっても出てこないようなお店の方が、やっぱり燃えますよ(笑)。

神戸おとなの美男美女食堂

神戸おとなの美男美女食堂

  • 作者: 芝田真督
  • 出版社/メーカー: 神戸新聞総合出版センター
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: 新書

 

── 芝田さんのお店の紹介文には、データ的な側面だけじゃなくて、この時お店の人とこんな話をした、とかその時だけの情報も多く盛り込まれていて、臨場感があります。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:何回も行けばそのお店が分かるということもないと思うんです。来てるお客さんも違うし、お店の方も変わっているかもしれない。その時、どんな風な印象を受けたかということも、それはそれで大事なんじゃないかと思います。

 

── この「中畑商店」に来られた時のことは覚えていますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:稲荷市場(「中畑商店」があるエリアにかつて存在していたマーケット)のことが新聞記事に出ていて、それを見て来ました。2004年だったかな。最初に来た時はまだ市場のアーケードがあって、お店も30軒ぐらいはありました。まんじゅう屋さんもあったし、総菜を売っているお店もあった。中畑商店さんはそれから何度も来ていますし、本が出たときに即売会をやらせてもらったり、お世話になっています。ここも前はアーケードがあったから少し薄暗くて、それがよかったんですよ。今は明る過ぎて、昼から飲むのには罪悪感があります(笑)。

 

かつて「稲荷市場」があったエリアは、今では「中畑商店」を含めた数店が営業を続けるのみになり、通りの先では大きなマンションが建設中である。

 

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それを遠くに眺めつつホルモン串をほおばるというのも、これはこれで今しかできない不思議な楽しみのような気がする。

 

お店情報

中畑商店

住所:兵庫県神戸市兵庫区東出町3-21-2
電話:078-681-9598
営業時間:9:30~19:00
定休日:木曜日、第三水曜日

www.hotpepper.jp

 

神戸の酒場ならではの魅力とは

かつての「稲荷市場」入口あたりで記念撮影をして再び歩き出す。

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近くにあった「喫茶ベニス」はつい先日、51年続いた歴史に幕を下ろした。

 

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芝田さんはそのベニスの最後営業日にお店を訪れ、そこで撮影した写真を冊子にしている。

 

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販売用ものではなく、あくまで記録としてこうしたミニ写真集を何冊も作っているのだとか。

 

次の目的地である和田岬エリアまでの道を歩きつつ、ご自身が考える「神戸の酒場ならではの魅力」について聞いてみた。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:神戸らしさね、あるようなないような気もしますけど、やはり港町だからカラッとしているのか、あまり酒場で愚痴を聞かないですね。あとは、角打ちなんかでも、おつまみにハイカラなものが多いですよ。ホワイトアスパラの缶詰ですとか、蒸し豚がおいしかったりね。喫茶店が普及したのも神戸はかなり早かったはずです。それもやはり港町だからかもしれないですね。コーヒーが海外から早い段階で入ってきたんでしょう。

 

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神戸市中央卸売市場に差し掛かると、「この辺りも大きく変わったんですよ。市場の食堂街があったんですが、今はイオンモールになっています」と芝田さんが教えてくれた。

 

国宝級の立ち角打ち「木下商店」

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30分ほど歩いて和田岬周辺の到着。

芝田さんが「国宝」と表現する角打ち「木下酒店」へ。

 

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黒く光り輝くカウンターの手触りのなめらかさよ。どれだけの人がこの上でお酒を飲んできたんだろうか。 

 

── 素晴らしい雰囲気ですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:良いでしょう。大正10年(1921年)からやっているんですよ。ほら、上を見てください。これガス灯なんです。

 

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店主によると「私が子どもの頃は電気事情がよくなくて、よく停電したんですよ。そういう時に使ってましたね。暗いですよ(笑)」とのこと。昭和のはじめから使っていないというが、ガスは今も通っているそうだ。

 

── 和田岬はどういう町なんでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:三菱重工の造船所があってね。いわゆる企業城下町ですね。川崎重工の工場もあります。これ、和田岬線の時刻表。この辺の角打ちには必ず貼ってありますね。和田岬駅と兵庫駅を結ぶ一駅だけの区間なんです。ほとんど社員さんを運ぶためだけのものですから、朝と夜しか行き来しない。

 

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このお店に来るお客さんも9割ぐらいは三菱重工の関係者だそうで、終業後、17時半頃から一気に混み合うそうだ。

カウンターだけでは足りなくなるので、その時間になるとお店の外にも席が出される。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:ここはね、おつまみを頼むとロウ紙に置いてもらえるんですよ。洗わなくて良い。合理的ですよね。

 

そう芝田さんが教えてくれたので「ピリ辛ウィンナー」(60円)を注文してみると、確かに紙の上だ。

 

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おつまみは日替わりのものが毎日5~6品ほどそろう。

「おでんはそろそろですか?」と芝田さんが店主に聞くと、「おでんはもう少し先やね。冷奴から湯豆腐になって、その後がおでん。なんせうちはエアコンもないからね、もう少し涼しいならんとね。夏の暑い日は耐えられんから、お客さん少ないわ」とのこと。

和田岬でも古いお店は徐々に消えつつあり、この「木下酒店」も三代目の今の大将の代で終わりにするつもりだとか。

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:昔は雨が降ると、この辺の人らの仕事が午前中で休みになっとった。それでも日給の何割かはもらえたんよ。せやからみんなその金でパチンコ行く(笑)。パチンコ屋さんが開くまでの間、ここによく飲みに来とったよ。今は雨でもちゃんと夕方までいないとあかんみたいね。時代が変わったわ。

 

お店情報

木下酒店

住所:兵庫県神戸市兵庫区上庄通2-2-13
電話番号:078-671-1269
営業時間:月曜日~金曜日 15:00~20:00 土曜日 15:00~18:00
定休日:日曜日

www.hotpepper.jp

 

古いお店は行けるうちに行ってほしい

当初はここで取材終了の予定だったが、「もう一軒だけ」と、以前『メシ通』でも紹介されたクレープのおいしい「淡路屋」へ。

 

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駄菓子屋さんの店頭で焼かれるクレープが名物で、近くの学校に通う子どもたちがひっきりなしに訪れる。

店内で食事することもできるので、ここで最後に一息つくことにした。

 

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芝田さんが「ぜひ食べてみてください」とおすすめしてくれた「神戸たこ焼き」(5個 180円)をおつまみに瓶ビールを飲む。

 

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ソースのかかったたこ焼きが明石焼きのようにだし汁に浸っているというもので、大阪兵庫のハイブリッドのような食べ物だ。ソースとだし汁って合うのかなと思ったが、これが妙にうまい。

 

── 芝田さんは古いお店がどんどんなくなっていくのをずっと見てこられたと思うんですが、それについてはどういう思いがありますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:やはり古いお店がなくなっていくのは寂しいですよ。神戸がどこにでもある地方都市の一つになっていくなという気はします。でも、しょうがないんですよ。どうしたって消えていくんですからね。行政の人が考えることは、私たちが望むようなものとは大抵違いますから、自分の思うような町になんかなっていかないです。諦めの境地(笑)。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181019142244p:plain芝田さん:ですから、これはノスタルジーでもなんでもなく、古いお店には、行けるうちに行って、見ておいて欲しいですよ。神戸でも大阪でも、きっとこれからどんどん古い物がなくなっていくでしょう。どうか、行けるうちに行ってください。それだけです。

 

食べ歩き、飲み歩きの大先輩として関西圏の食文化を眺め続けてきた芝田さんの言葉は、どれも胸にズシンと重く響いた。

ほろ酔いの我々の隣のテーブルでは小学生女子が二人向かい合い、カップ麺にお湯を入れてもらって、それができあがるのを待っている。

 

時間の流れは止めることができないし、その時々の人たちが望む町並みだってどんどん変化していくのだろうから、「ずっとこうであってくれ」と言うのはわがままなのだろう。

だからできる限り、今、自分が居心地いいと思える場所を探して、少しでも長くその空間を味わって記憶しておけるように、私たちはきっとこれからも歩き回るのだ。

 

お店情報

淡路屋

住所:兵庫県神戸市兵庫区笠松7-3-6
電話番号:078-671-1939
営業時間:7:00~19:00
定休日:日曜日
ブログ:http://awajiya.ko-co.jp/

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「借金がある。だから、離婚してくれ」借金地獄から年商4億8千万円のプリン専門店へ。ある夫婦に起こった奇跡のストーリー

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「まほろば大仏プリン」という奈良のご当地プリンを知っていますか?

 

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▲なめらかな口どけが特徴の「まほろば大仏プリン(小)」各378円

 

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▲500mlのジャンボサイズ「まほろば大仏プリン(大)」各864円は、昔懐かしい食感と味わいが魅力

 

発売以来、数々のテレビや雑誌で取り上げられ、近鉄奈良駅など奈良観光の拠点となる場所に次々と出店。2015年、メルヘンチックすぎる本店をオープンしたと同時に、そのかわいらしさから「写真映えする」と大きな話題に。

 

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▲本店、プリンの森・カフェは、まるでおとぎの国のような佇まい

 

近鉄奈良駅からバス、または車でないとアクセスできない場所ながら県外からも多くの人が訪れ、連日行列ができるお店となっています。

 

とても順風満帆に思えるまほろば大仏プリンですが、実はその誕生初期には思いもよらない苦労がありました。

株式会社大仏プリンの社長・髙岸洋之さんは「本当に奇跡的でした」と当時を振り返って語ります。

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1996年11月、髙岸さんは近鉄奈良駅からほど近い閑静な住宅街の雑居ビルの1室に、かねてからの念願だったパスタ店「シーズン」をオープンします。

この当時、まさかプリン専業になるとは想像もつかなかったのではないでしょうか。

 

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▲シーズンができた頃(髙岸さん提供)

 

相当な額の借金を、妻には内緒にして作ってしまいました

ーーシーズンの営業は順調だったのですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:ランチタイムは県庁の職員さんが利用してくださってにぎわっていたんですが、夜はゴーストタウン化してしまう場所だったのでなかなか厳しかったですね。ただ、お店のキャパは50人ほどとそこそこの席数があったので、20~30人規模のパーティーや歓送迎会などにはよくご利用いただいていました。年末年始や3月末、4月頭はとても繁盛していたんです。

 

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▲シーズン時代のメニュー(髙岸さん提供)

 

ーーこの場所でずっとやっていけそうだな、という実感もあったんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:ええ、10年弱ぐらいはそれでなんとかやってこれていたんです。けれど、ある日突然ランチのお客様がビタっといなくなった。県庁の体制が変わって、お昼の時間を厳密に区切らなければならなくなったんです。県庁からシーズンまでは徒歩10分ぐらいでしたから、行き帰りで20分ほどかかる。だったらそこまで行くのはよそう、となりますよね。

 

ーーじゃあ、シーズンだけじゃなくて、そのあたり一体が厳しい状況になったのでしょうね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:そうなんです。夜は期待できない土地柄ですし、命綱であったランチの売り上げがどのお店もガタッと落ちて。お店をたたんで違う職に就く方も出てきました。やはりシーズンも維持するのが難しい状況になったんですが、私としてはできる限り続けたかった。なぜかというと、スタッフとして手伝ってくれた女性が今の妻であり、いわばお店が2人の出会いの場だったからです。そんな思い出の場所を残したいと、正直悪あがきをしてしまいまして……。

 

ーーちょっと無理をされたんですか。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:ちょっとというか……相当ですね。うちのお店は、普段はしょぼん、という状態でも忘年会や歓送迎会の時期にはまとまった売り上げがあるので、年末まで頑張ればなんとかなるという計算があったんです。もちろんそんな状況で銀行からの借り入れはできませんから、ぶっちゃけた話になるんですが、消費者金融でなんとかお金を引っ張ってきて……。とはいえ1社から借りるのも限度がありますから、2社3社と手を出し、いわゆる多重債務者になってしまったんです。

 

ーー額としては、数社合わせて数百万、ぐらいですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:その次の桁の一歩手間ぐらいまでいってました。最後は利息だけ払っていたような状態で。

 

ーーああ……。奥様はそんな状況だと知っていらっしゃったんですか。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:いえ、妻には内緒にしていたんです。だんだん額が大きくなっていく中で、余計に言えなくなってしまって。夜中にハッと目が覚めてお金のやりくりどうしよう……と思い悩んだりしていました。それで、もうどうしようもなくなった時「実は君にはずっと内緒にしてて、神に誓って遊んでたわけでもないけれど、ここ何年間かお店がそんな状況で、こんなに借金がある。だから、離婚してくれ」と告白したんです。妻はあぜんとしていました。

 

ーー奥様にしたら予想もできないことだったでしょうね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:その後2人でいろいろと話しまして。妻は思うことはいろいろとあったでしょうけれど、結果的に「なんとかしよう、2人で立て直そう」と言ってくれて心底ありがたかった。ただ、こうなってしまったからには看板の火を消すのは大前提だと。でもそうなる前にあと1年、もう一度精いっぱい頑張ってみよう。頑張って頑張ってそれでもダメなら、大みそかにお店を閉めようと話し合いました。閉めるにあたって自分たちの中で「頑張ったけどダメだったね」と納得できるような理由が欲しかったんです。それが2006年のお正月。そんな中で生まれたのが、プリンだったんです。

 

プリンで有名に、なんて夢物語でしかない

ーープリンはどういう経緯で生まれたんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:妻が子どもの頃にお母さんに作ってもらっていた、懐かしい味わいのプリンを再現したんです。最初はデザートメニューのひとつとして提供し、お客様からも好評でした。当時は全国でプリンブームが起こっていましたので、妻がそれに目をつけて「このプリンを持ち帰れるようにして、ご当地プリンとして売り出そう。そしたら雑誌にも取り上げてもらえるかも」と言い出したんです。ですが、私は最初その提案を小馬鹿にしていまして(笑)。

 

ーーええっ! そうなんですか!

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:恥ずかしながら(笑)。外食産業にずっといた身としては、そんな夢物語かなうわけがないと思っていたんですね。「そんな風に有名になるお店があるのはもちろん知ってるけど、星の数ほどある中でほんの一握り。少なくとも僕の周りにはいない。絶対にうまくいくわけがない!」と言い合いになり、最後には「僕はプリン作りは手伝わない」とすねてしまいました。いわば、私のこれまでやってきたことを全否定されたようにも感じたのだと思います。

 

ーーこの1年がむしゃらに頑張ろうと話し合い、奥様はプリンを推したいとおっしゃった。一方で岸さんは何に力を入れたのでしょう。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:いわゆる従来通りの、ドリンク一杯サービスにしようとか、ワンコインランチをやってみようだとかですね。大きなパフェを作って学生さんの喫茶利用を促そうとか、プリンでパフェを作ってみる試みもしました。がむしゃらに頑張ろうというわりには、革新的なアイデアなんて出ないわけです。状況はあまり芳しくなかったですね。

 

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▲模索する中で生まれたパーティーメニュー・イタリアン鍋(髙岸さん提供)

 

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▲プリンを使ったパフェ(髙岸さん提供)

 

ーーそれでも奥様はプリン作りをやめなかった。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:はい。最初は手伝わないと言っていたんですが、妻が「どうしたらたくさん作れるかな?」とか「味はどうかな?」と逐一質問し、私を引きずりこもうと工作するんです。そんなこんなでだんだんと手伝うようになり、最終的に妻が第3子を妊娠したのをきっかけにがっつりプリン製造に、今となっては引きずり込んでいただきました(笑)。

 

ーーお2人でプリン作り始めてからは売れるようになったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:いえ、それでも全然だめ。2月、3月、4月、5月……それ以降も、ちっとも売れませんでした。いよいよ秋になって約束の大みそかはすぐそこ、2人とも「これはもうダメかな……」と覚悟を決めた頃です。私の友人が、地元でおいしいと評判だけど、世間的にはあまり知られてない銘品を紹介するというテレビ番組の企画を教えてくれまして。私たちも背に腹は変えられないですから、じゃあぜひにと友人の推薦で応募させていただきました。すると運良くその番組で取り上げていただくことになりまして。テレビで取り上げていただくことがその後どんな影響を及ぼすかわからないまま、放送翌日を迎えました。

 

ーー反響はどうでした?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:妻と2人でお店を開けてしばらくすると「プリンの注文お願いします」という電話がかかってきたんです。わーすごいねえ、なんて話していたそばから、また着信! もう次から次へと鳴り止まず、その日は電話の対応に明け暮れて通常営業ができませんでした。信じれない状況になったんです!

 

ーーすごい! 気に希望が見えたんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:今までやってきて初めて、これなら看板の火を消さなくてもいいかもしれない、と思えましたね。正直徹夜で作らなければ終わらないような状況だったのですが、初めて光が見えたので2人とも笑顔でプリン作りをしていたように思います。

 

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▲まほろば大仏プリン(小)大和茶の6個セット。放送翌日から飛ぶように売れた(髙岸さん提供)

 

ーー上のお子さん2人の子育てとともに奥様は第3子を妊娠中。家庭も仕事も過渡期で、大変だったのでは?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:はい、子どもたちには本当に申し訳ないと思いながら、当時5歳の長男に2歳の次男の面倒を任せっきりにしていました。でも、彼らはふたりっきりでもぐずらず、おとなしく遊んでいてくれて。2人は忙しく働く両親を支えてくれた最初の大切な協力者ですし、彼らなくして今の状況はなかったとも思います。妊娠中の妻に関しては、徹夜続きを案じたお義母さんから「さすがにこのままだと娘の体がもたない」と忠告されまして。「作業がもっと効率化するなら」と、とてもいいオーブンを買っていただいたんですね。オーブン導入後にはそれまでかかっていた時間が大幅に短縮できてプリン作りもスムーズになり、ある程度休むこともできて本当にありがたかったです。

 

ーーただ、やはりテレビで出た評判は一過性のような気もします。その後、どうつながっていったのでしょう?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:テレビの企画を教えてくれた友人が、奈良県観光連盟さんが主催するアワード「奈良県観光みやげもの大賞」にエントリーしてみないかと話を持ってきてくれたんです。それはもうぜひに、ということで奈良産の大和茶を使ったプリンと、奈良は日本酒発祥の地でもありますから、奈良の地酒「春鹿」を使ったプリンを提案させてもらいました。ただ、その賞って奈良県が1年間全力でバックアップする土産物を決める、とっても名誉あるものなので、名だたる老舗店がたくさんエントリーしていまして。ラインアップを聞いた瞬間「こんな有名なお店と勝負するなんて、ムリムリ!」と半ば諦め状態。すっかりそんなモードになっていた時、観光連盟さんから電話で、まさかまさかの「グランプリになりました」というお知らせがあって。その瞬間、妻が大粒の涙で泣き出したのをよく覚えています。

 

ーー夢みたいな出来事ですねえ! グランプリの決め手はなんだったんでしょう。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:プリンという切り口が斬新だったそうです(笑)。「まさかプリンでくるとは思わなかった、とても新鮮だ!」と驚いていただいたようで。その表彰式と記者会見を2007年4月12日するということだったんですが、まず「記者会見ってーーー!」と驚きますよねぇ。なんなんだこの状況は、なんて妻と2人で目を白黒させて。

 

ーー記者会見なんて、ドラマの中の世界ですものね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:そうなんです! だからぜひ2人で出席しようねと話していたのですが、その前日になんと妻が産気づきまして。無事早朝に生まれたのを見届けて私1人で県庁に駆けつけ、記者会見に集まってくださった複数の新聞社さんのフラッシュを浴びながら質疑応答をさせていただきました。その時、妻が夢物語で言っていたようなことが、今実際に自分の身に降りかかってる!? 「そんな奇跡的なことなんて起こらないぞ!」なんて否定してたことが、今実際に起こってるぞ!? って、ものすごく変な感覚になりましたね〜。その後、ありがたいことに「奈良県観光みやげもの大賞」は3年連続で受賞させていただきました。

 

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奈良の一大事業「平城遷都(へいじょうせんと)1300年祭」での出店の様子(髙岸さん提供)

 

プリンで稼いだ分は、プリンに全部つっこもう!

ーーグランプリを取ったことで出店依頼も増え、現在につながっていったんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:そうですね。しばらくはパスタ店をやりながらプリン販売も行っていたのですが、プリンの問い合わせがかなり増えたので、もう専業にしようかと、現在の形になりました。

 

ーー材料にしろ何にしろどこかで妥協するとうまくいかなくなる、という例はたくさんあると思います。そういった意味で、大切にされている部分はありますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:プリン液のレシピは頑固なまでに守り続けています。パスタ店のデザートとして作っていた頃から一切変えていませんし、生クリームにしても相当クオリティーの高いものをどさどさ使っています。正直もっともうけようと思ったら、原材料をワンランク下げたりだとかいくらでも選択肢はあると思うんです。でも、私たちは生活を成り立たせてもらったプリンに感謝の思いしかなくて、変なケチり方をしたらプリンに怒られるとも思っている。私たちにとっては、どんなことがあっても誕生当時の味は守り通すべきだと考えています。

 

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ーーそんなプリンへの思いは、本店の佇まいにも表れていますよね。プリンの中に迷い込んだようなイメージでデザインされているとか。

 

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▲緑豊かな奈良の風景とも実にマッチする本店「プリンの森・カフェ」

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:プリンに対しての感謝の気持ちをお店の形としても表したいという思いで、このデザインにしたんです。プリンの内側にいるような造りになっていて、上を見上げるとカラメルが垂れているんですよ。

 

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▲カラメルが垂れる天井 ※店内は通常撮影禁止

 

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▲窓枠や屋根の形、壁など、プリンをイメージしてすべて曲線で仕立てられている ※店内は通常撮影禁止

 

ーー正直、建築費用も相当では?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:とにかく、プリンで稼いだ分はプリンにつっこもうよ、という気持ちで借金大魔王やってます(笑)。

 

ーーお店の前に置いているプリンカーも面白いアイデアですよね。

 

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▲フォルクスワーゲン「ビートル」にプリン塗装をオン

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:ある日街中を走っていた時に、私の車の前に真っ黄色のフォルクスワーゲンが停まったんです。なんとなくプリンぽい形と色だなぁと思って眺めていた時、あの車の天井からカラメルが垂れてたらもっとプリンぽくなる! と思いついて。妻に相談すると「それはいいね!」と賛同してくれ、すぐ実行に移しました。じつは、レーシングカーのペイントなんかも手がけられている”匠”と呼ばれる方につないでいただき仕上げていただいたんです。それはもう、なかなかの費用だったんですが(笑)、出来上がってお店の前に置いた瞬間から「キャーキャー!」と喜んでいただいて、本当にやって良かったと思っています。

 

ーーそういう風に、とっておきのアイデアに気前よくお金を使っていくことも多くの人に支持される秘訣(ひけつ)なのかもしれませんよね。ちなみに今、年商とかって……?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:今は4億8千万円です。

 

ーーはああ、3ケタの借金を経て……いやはやすごい。業績はずっと上がり続けているんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181025100236p:plain髙岸さん:はい、右肩上がりですね。でも今の体制ではこれ以上やるとスタッフのみんなに負担がかかりすぎるので、これが今の精一杯なのかなぁという気もしています。今後は効率化を念頭に置いて、仕事の流れを改善させたいと思っています。ありがたいことに出店依頼も続々といただいているので、きちんと応えられる体制にしたいなと!

 

みんなに愛されるまほろば大仏プリン

2006年から2018年のたった十数年で、人生がガラリと変わったという髙岸さん。プリンの味わいや、かわいらしい本店がヒットしているのと同時に、どんな質問にもひとつひとつ丁寧に答えてくださる髙岸さんの、ふくふくとしたお人柄もまた愛される大きな要因なのではと感じます。

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▲高岸さんと奥様の有紀さん。公私ともに良きパートナー(髙岸さん提供)

 

奇跡的な出来事を経験しながらも、ずるしない、ケチらない、感謝する、を繰り返し一歩一歩積み重ねてきたお2人。苦労した時代を共に乗り越えてきたからこその絆が、しっかりと2人をつないでいます。

 

おいしくてやさしくて懐かしくて、少しホロリとするまほろば大仏プリン。ぜひ一度味わってみてはいかがですか。

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お店情報

まほろば大仏プリン 本店 プリンの森・カフェ

住所:奈良奈良奈良阪町1073
電話番号:0742-23-7515
営業時間:11:30〜17:30
定休日:不定休
ウェブサイト:http://www.daibutsu-purin.com/

 

【ニッポンの秘境探訪】私が「離島ひとり旅」に夢中になってしまった理由

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▲©️大畠順子

ニッポンの「離島」がおもしろい

島国である日本は、多くの離島に囲まれています。その数、おおよそ6800。そのうち人が住んでいる島は約400島ほどになると言われています。

たったひとりで日本の離島を旅することをはじめ、その魅力の虜になってしまった女性がいます。

 

大畠順子(おおはた・じゅんこ)さん

1983年生まれ。群馬県出身。離島女子ひとり旅の先駆者で、普段はラジオ局に勤務する普通の会社員。2011年より日本の離島ひとり旅をスタート。さまざまな離島旅を実践し、旅先で得た経験をブログや書籍などで発信している。

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大畠さんは、この夏にこれまで訪れてきた30の離島への旅の経験をまとめた『離島ひとり旅』(辰巳出版・刊)も刊行。

離島をひとりで旅することの醍醐味(だいごみ)、インパクトがありすぎて忘れられない思い出の食べものなど、ユニークな旅のエピソードを聞いてみました。

 

離島ひとり旅

離島ひとり旅

  • 作者: 大畠順子
  • 出版社/メーカー: 辰巳出版
  • 発売日: 2018/07/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

──『離島ひとり旅』、とても面白い本でした。離島の旅はいつから始めたのですか? 旅行は海外にも行きますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:離島の旅は7年前から始めました。国内ばかり行っていて、海外は韓国とハワイしか行ったことがないんです。パスポート以外に何か申請するものあったっけ? とか、なんで空港でこの列に並んでいるのとか、まったくわかっていなくて、海外に行ったら空港から出られる気がしないです (笑) 。

  

──海外には興味がないんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:そんなことは全然なくて、『地球の歩き方』はけっこう持ってるんですよ。でも、ひとり旅が好きで、勝手にひとり旅のハードルを上げてるんだと思います。海外でタクシーにひとりで乗ったら、絶対どこかに連れて行かれちゃうんだろうと考えてしまったり……。いわゆる王道の観光地には、そんなに興味があるタイプではなくて、みんなが本当によく行くようなところよりも、ちょっと変わったところに行きたいんですよ。

 

──お友達とか、誰かと一緒に旅行に行くことはあまりないんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:ほとんどないですね。まったくないわけじゃないんですけど、旅先で人に「ご飯食べる?」って聞くことがもう仕事みたい、接待みたいになってしまうんですよね。性格なんでしょうけど、ホスト側になってしまうというか……。名物があったらお店を予約したり、おいしいものがあったら「どっち食べる?」と聞いたり、車を借りたら、「どこへ行きたい?」と聞いて運転している自分がいて、まるで接待してるみたいな感じになっちゃうんです。でも、ひとりだったら、別にお腹が減っていなければ食べなくたっていいじゃないですか。誰かがいると「12時から2時までの間に、この人にご飯を食べさせないと」と勝手に考えちゃうタイプなんです。

 

──すごく人に気を使ってしまうんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:知らないうちにそうなってしまうんです。

 

──以前、『ぼっちの歩き方』の朝井麻由美さんに取材した時、「本当においしいものは、ひとりで食べたい」というような話になりました。旅もやっぱりひとりのほうが、味わい深いものになるのでしょうか?

 

www.hotpepper.jp

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:世の中的な流れでいうと、「人と食べるご飯はおいしいよね」「家族でご飯を食べよう」って、あるじゃないですか。でも、本当に焼肉が好きな人って、「肉は誰にも邪魔されず1枚ずつ焼きたい」って言うんですよね。その気持ちは私にもわかります。

 

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──前書きにも書かれていましたが、ひとりで行くと自由もあるし、島の人の人間味をすごく感じられると。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:本当にそうですね。2、3人でグループでタッグを組んで旅をしてる人に対して、島の人はたぶん話しかけてこないと思うんです。壊してはいけない世界観があるから。でも、ひとりでいると助けてもらう機会が多いですね。もちろん、助けを当てにしているわけではないのですが、スキがあるんでしょうね。それに、都会とは違った、島の方たちの地域的なものも後押しして。例えば、キャリーバッグをガラガラ引きながら歩いていると、「車に乗りなよ」って声かけてもらえる。その感じもすごく好きです。

 

──この本を読んでいると、本当に離島に行きたくなりますよね。もちろん自然がきれいというのもありますが、人との交流が素敵です。大畠さんの、人とのふれあいのエピソードがすごく面白いです。土地にまつわる歴史とか、ドラマや映画の話もいいですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:調べるのがすごく好きで、いろんなことを調べて、けっこう頭でっかちになって行くようにしてるんですけど、それでも旅先で必ず全然知らなかった情報が入ってくるのが、離島の情報の少なさだと思うんです。いわゆる観光地に比べると異世界、異文化であることが世間に出回っていない。旅を始める前の人生でいろんな島の情報に絶対触れてるはずなんですけど、それまではまったく気にとまらなかった。他の観光地に比べて情報の少ないところが、逆に面白みかもしれません。

 

日本に「人が住んでいる島」は418島

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鹿児島県トカラ列島の宝島 ©️大畠順子

 

──行く島はどのように選んでいるんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:最初、旅を始めた7年くらい前、当時人が住んでいる島は424島くらいだったと記憶していますが、今は418島になりました。数年先にはもっと減っているかもしれません。人が住んでいない、名前もついていない島、岩とかも入れると6800もの数になるんですけど、いわゆる生活圏の存在する島でも418島もあるとなると、どこから行っていいかわからないじゃないですか。

 

──確かに。それこそ“ダーツの旅”のように偶然に任せるとか……?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:なので、まずは一番南に行ってみる。次は一番西に、北に行ってみる。また、「絶海の孤島」にひかれたり、映画で見たあの風景を見たいとか、「絶景の一枚」を撮ることができる島だったり……。あとは会社員をしているとそんなに4日も5日も休みが頻繁に取れないので、1泊2泊でいける島があったから、とりあえず行ってみようとか。418島もあると、逆にいくらでもカスタマイズできるところは見つかるという感じです。

 

──島の情報はどうやって調べているんですか? インターネットですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:日本離島センターが出している『シマダス』という本のように、全島の情報だけが載っている本で調べたり、日本の島の大御所の方、写真家の加藤庸二さんと、島の歴史本を書いている齋藤潤さん、この2人の島図鑑みたいな本は持っています。でも、それだけだと情報的には少ないので、そこからインターネットで調べますね。島に行き始めると、実際に行った島で会った人が、「あっちの島が……」と情報をくれて知ったこともけっこうあります。一番南に行く人って、やっぱり一番北にも行くんですよね(笑)。

 

──そういう口コミは参考になりますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:なります、なります! 本当に行かないとわからないところもあるんです。最南端の有人島といわれている「波照間島」のニシハマビーチって、すごくきれいで、今まで行った海だけのベスト3があるとしたら絶対入れたいくらい、エメラルドブルーとも違う、すごい色の海があるんです。でも、波照間島には「サンゴの浜」という、サンゴで埋め尽くされた小さなビーチがあって、その浜は草むらの先にあるから、よっぽど勘のいい人か、仲良くなった島の人に教えてもらわないと行けない。観光サイトには載っていないので。

 

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▲波照間島のサンゴの浜 ©️大畠順子

 

──それは、あえて載せていないのですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:どうですかね? 行った人の個人ブログを見るか、もしくは島の人に聞かなければわからなかった。他には、現地で仲良くなった島に住んでる若い人に、「島の暮らしって大変ですよね?」と聞くと、「いや、アマゾンで買い物してるから」というんです(笑)。けっこうみんなアマゾンで買ってるんだなーって。行って聞いてみないとわからないことはけっこうありますね。

 

──そのアマゾンの話と、船が欠航して何日も帰れないとか、物資が届かないみたいな話とのギャップが、また面白いなと思います。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:そうですね。帰れなくなってしまうことは本当にありますね。東京都にある青ヶ島だと、ストレートに帰れた人に会ったことがないです。閉じ込められたのが「何日?」「私は2日でした」っていう会話になる。船の欠航率は5割、時期によっては7割で、9席しかないヘリコプターは毎日飛んでるんですけど、なにかしらが起きて飛ばない日に限って、帰れなかった人が出てくる。つい最近も、1週間以上も島から出られなかった人がいて、その人のツイッターが面白かった。船が待ち遠しくて、待ちわびる人の気持ちになって短歌を詠みはじめたりしていて(笑)。本当に不運で、羽田—八丈島間の飛行機まで止まって、ヘリの機体不良を直す手段がなくなり、船も出ないから島を出られなくて、島の人が気を使って宴をしてくれたみたいです。

 

──それは島の人の温かみを感じるエピソードですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:島って娯楽が少ないから、青ヶ島には2軒しかない居酒屋さんの1軒にカラオケがあるんです。期間限定で赴任してくる学校の先生が、他に遊ぶものがないから、カラオケがめっちゃうまい(笑)。今の最新のカラオケじゃなくて、スナックに入ってるような古い昭和のカラオケで最新曲が入ってないから、ある一定世代のヒット曲がめっちゃうまいんですよ。それを毎日歌ってるのがよくわかる。あと、島では頻繁にバレーボール大会をやっている。たぶんそれも娯楽がないから、島の若人たちが青年部とか女子部みたいなのを作って、よくバレーボール大会をやってるんですよ。面白いです。

 

「不便」だと、おおらかになる

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東京伊豆諸島の青ヶ島 ©️大畠順子

 

──都会ではあまり考えられないというか……不思議な感じがしますね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:本当にそうなんですよ。船が4日、5日、1週間来なくても、もともと島に住んでいる人はへっちゃらですよね。庭で鶏を飼い、ジャガイモが取れて、「全然別に」みたいな感じで生きてる。すごいなと思いますよ。

 

──離島のキーワードとして、まず「不便」がありますよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:都会と比べたら不便ですね。携帯が直せない。落としちゃって、島によっては携帯ショップに行くために乗る船は何日か後ということも。アクシデントに絶対に対応できないこともあるんです。

 

──そうなると、自然とおおらかになりますよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:おおらかになります。しょうがないなって。今って便利すぎますよね。例えば、私が京都に出張に来て、一眼レフの電池を忘れてしまった場合、アマゾンで買って、下手したら当日ホテルに届くじゃないですか。でも、たぶん離島だったら4日後とか。もう仕方ないですよね。都市だったらセブンイレブンで売ってたりするものが、島では当たり前に買えない。ドライヤーも、民宿にないかもしれないし、あってもそよ風みたいなドライヤーの可能性があるから、文句を言わないために絶対持って行きますもんね。なくて当たり前と思って行く。

 

──準備万端になりますね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:なります。例えば、ゴミ袋は必ず持って行きます。穴を開けてキャリーケースにかぶせるだけで、ずぶ濡れの中歩いてても荷物だけは守れる。南の島ってスコールがけっこうあるんですけど、雨が降っていても、吹きっさらしのなか移動しなければいけなかったりするので、ゴミ袋は必ず持ってますね。

 

──他に何か必ず持って行くものってありますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:キャリーケースのポケットにタコ足コンセントは入ってますね。フェリーの中や民宿で、たった2個とかしかないコンセントを分け与えないといけないときにあると便利です。

 

──本のなかにも書かれていますが、失敗を重ねて上達してきたようなところもありますよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:基本、失敗を繰り返して学習しますね。失敗はだいぶ重ねてます。最初の頃は大失敗しました。まず、酔い止めを持っていなくて、船を降りたときに気持ちが悪くてなにもできない。本当に船がこんなに酔うって知らなくて、40分、待合室で寝てたこともあります。いちど船の中で吐いてしまったことがあって、それ以来、酔い止めはいっぱい持って行くようにしています(笑)。

 

──そういう失敗があったからこそ、もう一度同じ島へ行って、今度こそもっと楽しもうと思いますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:粟島と、石垣島とか、経由しないといけないターミナルの島以外は、1回しか行っていないです。粟島はサイクリングが好きなので、サイクリングするためにアウトドア感覚で通ってるんですけど、それ以外の島は一期一会で、2回行った島はないです。もう一度行きたい島はたくさんありますが、何せ数が418島もあると、限られた休日と、行きたい島とで、リピートするまでに至らなくて。民宿の方が東京に出てきたときに、連絡をくれて会ったことは何回かあります。

 

飲食店なんてひとつもない「日本最秘境」の島

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鹿児島県奄美群島の請島で近海へ釣りに行った時に釣った魚 ©️大畠順子

 

──民宿の人が東京に来て再会するって、すごいことじゃないですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:本当にうれしいです。自分があれだけ苦労して行ったところの人が、東京に来てくれたっていうのはうれしいですよね。

 

──そういうことって誰でもができることではない気がします。大畠さんは、初対面の人とも仲良くなりやすいですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:わりと仲良くなって帰って来ますね。もともと私はよくしゃべるタイプだからというのもあるかも知れません。それと、女子がひとりで行ってるということもあって、ご飯の時間に民宿の方が話に付き合ってくれることも多くて、いろんな話をするうちに自然と親しくなっています。例えば、「日本最秘境」といわれるトカラ列島の「宝島」は、1回行くと3日は出られないんですよ。船が来ないので。人口も100人くらいしかいなくて、飲食店も1軒もなくて、泊まった民宿で朝昼晩食べるんです。

 

──そうなると、宿の人と過ごす時間も自然と長くなりますね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:朝出かけて行って、昼ごはんの時間に戻ると、ご飯を作って待っててくれるので、民宿の人がお父さんとお母さんみたいな感じ。電動自転車を借りてるから、坂も上れるんですけど、「坂がきついから、自転車をトラックに積んで山頂まで行って下ろしてあげるよ」と言ってくれる。ありがたく電動自転車を運んでもらって、帰りは自分で好きな時間に下ってくる。

 

──親戚のおじさんみたいに親切なんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:それから、民宿の人が案内してくれたことによって、洞窟の奥の方まで行けたということもありました。ひとりだったら心細くて、奥までは行かなかったかもしれません。宝島の話は本に書きましたけど、帰り際に民宿のご主人から「おじさんがこの世の中で一番好きなお菓子をあげよう」って、言い方がまた素敵だなと思うんですけど、ボンタンアメみたいな飴を2箱もいただいて。世の中で一番好きなものを2箱ももらってすみませんって思ってしまって、食べることができずに同じものを空港で買って食べてみました。

 

──いいですね。大畠さんの旅には、この時代になかなか貴重な要素がいっぱい詰まっている気がします。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:そうですね。本当に。島の人たちって、わりとそういう感じなんですよね。都会にいたら、たぶん、そこまでの関係にはならないかもしれない。おもてなしの素晴らしい一流の宿のサービスは質が高くてタイミングも絶妙ですが、それと比べるとずいぶん適当とはいえ、親戚のおじちゃんの家に行った感じというか、そのくらいの距離感が心地いい。ズケズケ入ってくるんですけど、嫌な感じがしないんですよね。

 

──お話を聞いていると、本当に私も離島の旅に行きたくなって、どこから行こうか迷います。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:ぜひ! 「これがしたい」とか「この風景が見たい」から入ってもいいと思いますし。(新刊で)初級・中級・上級って分けてよかったなと思っています。知っていると得だということと、ここにこんなすごいことがあったよという面白みが伝わればいいと思いました。この本が旅の入り口になれば、私と同じことをしなくてもいいし、その人なりの楽しみ方を見つけてほしいと思います。

 

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──いま大畠さんは会社員として働いていて、それほど長期のお休みが取れるわけではないですよね。あちこちの離島に行っていて、帰りが間に合わなかったことはないのですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:結果オーライで助かったということはあります。1回の旅でちょっと島渡りをする癖がついて、青ヶ島に行った後に御蔵島に行こうと思って、御蔵島のヘリコプターを押さえていたんですね。一番閉じ込められる可能性の高い青ヶ島の後ろに旅が付いていたことによって、たとえ青ヶ島に4日いることになっても、御蔵島の2泊をキャンセルすれば間に合う。御蔵の方に「すみません。ヘリが飛ばなくて」と連絡すると、「もうしょうがないから」ってキャンセルとも言わない。かなりフランクですね。延泊するのはもちろんお金かかりますけど、受け入れるほうも「しょうがないね」といいう感じです。結果、仕事への影響は免れました。

 

──間に合わなかったことはないんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:そうですね。船が出なかったことはありますけど、往路だったから助かったとか。鹿児島の川内駅で、延々と駅前で待ったことがありました。高速船とフェリーの2つ港があって、どっちが出るかわからないんです。最初の便で行こうと思ってたので、朝、駅に着いたのが7時くらいなんですけど、結局、船が出たのは夕方6時くらい。その間、駅前のイタリアントマトで過ごしたということはあります。でも、島にいられる時間が10時間減ったくらいで済みました。これまで大失敗はなかったです。本当にラッキーです。

 

──離島への旅には本を持って行くと書いてありましたが、どんな本を持って行くんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:本はたくさん持って行きます。ハードカバーを持って行くのもへっちゃらで、重たいのでキャリーケースを引いてます。読書が好きで、世の中のすべてのものの中で一番面白いのが小説と思っているので、小説を持って行きます。旅に出ると一気に読めるのがうれしいですね。旅が終わった時に、3冊4冊読み終わっているとすがすがしさがあります。そのすがすがしさのおかげで、船やバスを長時間待つのもイライラしない。沖縄本島や奄美大島、石垣島クラスになると、雨が降っててもショッピングモールとか、行くところがあると思うんですけど、離島でスコールにあうと、本当にやること何もなくなってしまい、1日民宿に缶詰っていうときも、本があるとはるかに有意義な時間が過ごせます。あと、飲食店がない島では夜に出歩くところがないので、楽しく本を読んでいます。民宿の部屋にテレビのないこともあるので静かですし。本当にいい時間を過ごしてますね。

 

めちゃくちゃ量が多くて食べきれないご飯の量

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鹿児島の名物「きびなご」 ©️大畠順子

 

──離島の旅で、特においしかった食べ物はなんですか? 

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:基本は海のもので、島の人が釣ってきた魚を食べることが多いです。島の人もそれをおもてなしと思っているんでしょうし、私たちもそれを喜んで食べます。高級料理とは違うんですけど、うれしいですよね。刺身も焼き魚も煮魚もありますね。

 

──やっぱり土地によって魚の種類も違うんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:鹿児島の島だったらキビナゴだらけ。3食キビナゴを食べ続けることもあれば、大東島へ行った時は、普通の人がマグロ漁船じゃなくてボートで釣ってきたマグロを食べました。まわりが深い海に囲まれて海流があって、よく船が欠航になる島は、魚がよく釣れるんです。瀬戸内だとタコとか。でも、グルメという意味で一番おいしかったのは北の利尻島・礼文島でした。料理というか、もう素材自体がおいしい。

 

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▲礼文島のウニいくら丼 ©️大畠順子

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:ミョウバンの入っていないウニとか。時期にもよりますけど、エゾバフンウニとか、キタムラサキウニのような、そんなに気軽に食べられないものが、当たり前のように採れたてで食べられる。東京の高級店と比べてもここまでの味はないと思います。

 

──他に印象に残っているものはありますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:印象深いご飯はたくさんありますね……。天候不良の欠航で延泊を余儀なくされた島で、もちろんもう1泊を予定していなかったから宿に食事の用意がなかったのか、出してもらったレトルトのハンバーグもかなり印象的でした。また、離島の旅を始めて最初の頃に行った伊豆諸島のとある島で、民宿のおばちゃんが、閑散期ということもあり、ひとりしかいないお客さんのためにご飯を作るのが面倒で、「夕飯食べに行こう」って外食に誘われたのも、すごく印象的で、いい思い出です。

 

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▲たましろの夕食 ©️大畠順子

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:宝島で3泊して、朝から晩まで、全部その宿で作ってくれたご飯を食べたこともすごく印象的でした。日本有人島最南端の島・波照間島の民宿「たましろ」は、日本の宿のなかで一番汚いんじゃないかという宿で、「そこに泊まるなんて漢(おとこ)だね」と言われるんですが、その民宿のご飯はめちゃくちゃ量が多くて、誰も食べ切ることができない……でも延々と作り続けるという。それもパンチが効いてました。炭水化物オン炭水化物オン炭水化物……。

 

──かなりインパクトありますね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:ご飯が食べ放題なのに、うどんも大盛り。メインがわからない。なかなか印象的でした。でも人が作ったっていうと、やっぱり飲食店のない島の民宿のご飯は、非常に思い入れ深いものになります。ゲテモノ系でいえば、粟島の2,000円もするラーメン。

 

2,000円のラーメン

──ゲテモノですか!? すごく豪華なラーメンに見えますが。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:東京だったら、これだけで2,000円取れる量のアワビがどっさりラーメンにのっているわけです。絶対、別皿で食べたら、この倍はお金取れるのに! 2,000円の意味はわかったけど、刺身で食べたほうがうまいよ、と思いました。どうしてこれをラーメンにしようと思ったんだろうか、取材をしたいです。

 

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▲2,000円の「粟島ラーメン」 ©️大畠順子

 

──見た目がきれいなご飯もありますよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:フォトジェニックなご飯なら、「ヨロン島ビレッジ」です。離島でこんなにおしゃれなご飯が食べられるとは思わなかったので。「インスタ系女子は与論島に行け!」と思いますね。予想どおりのかき氷のカフェがあって、きれいなビーチがあって、おしゃれご飯が出てくるって感じのところです。すべてが満たされて帰ってくると思います。

 

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▲ヨロン島ビレッジの朝食 ©️大畠順子

 

──逆に苦手だったり、食べられなかったものはありましたか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:好き嫌いもそんなにないので、なかったです。あえて食べなかったのは、南大東島の「インガンダルマ」。人間の体に入れてはいけない脂が乗ってるから4切れ以上食べてはいけないって言われている魚で、食べすぎると下から出てきちゃうらしいんですよ。お腹が痛くなってもしょうがないし、なんとなく食べない方がいいだろうと思って、それはさすがに食べなかったです。なかなか来られないところだったし。

 

──旅先での体調管理も大事ですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:本当にそうです。最初の頃の船酔いはありましたけど、それ以外に風邪をひいたとか、お腹が痛くなって病院に行ったとか、体調を崩したことは今のところ1回もないです。もともと健康で、そんなに無理もしてないというのもあるかもしれません。明け方まで飲むというのもやらないし。体力はけっこうあるほうで、島に行く以外で山に登ったり走ったりするのも、サイクリングもへっちゃらなので慣れっこですね。

 

──次に行きたいところはどこですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:本を書き終わった時点では、海外の島に、と思っていたんです。生きているうちに1回行きたいと思っている島は、大西洋のアフリカ大陸と南アメリカの間にあるトリスタンダクーニャという島。地球上のすべての大陸から一番遠い島と言われていて、ケープタウンから片道6日間船に乗らなくてはいけなくて、2カ月に1回しか船が出ない。

 

──片道6日間の船が、2カ月に1回ですか!

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:でも、そこは仕事を辞めないと行けないなと思っています。現実的な話をすると、ミクロネシア諸島に日本人が運営しているジープ島という小さい島があるんです。3分で一周できる小さい島で、ヤシの木とコテージがあるだけ。そこへ夏休みに行こうと思っていたら、今度の連休で山口県の周防大島に行くことになったので、その隣の人口12人くらいのか笠佐島とあわせて行ってきます。2軒しかない民宿の予約も完了しました。

 

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──民宿の予約はネットでできるんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181008093015p:plain大畠さん:絶対に電話です! ウェブサイトがない民宿も多くて。メールの返信がこないこともありますし、ネットを使えない人が民宿をやっている可能性のほうが高いです。もしネット予約が可能な民宿があるとすれば、移住した若い人が経営しているゲストハウス的なところですね。でも、怖いので本当に電話をしたほうがいいと思います。本にも書きましたが、「5月と9月を聞き間違えられた問題」があった民宿は、電話の横のカレンダーに「オオハタ」って書いてあるような管理の仕方なんです。なので絶対に電話して確認することをオススメします。

 

──ありがとうございました。さっそく、次の連休にはどこかの島の民宿に電話して、ひとり旅に出かけたいと思います!

 

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