「昔より今のM-1のほうがいいに決まってる」スピードワゴン・小沢が馴染みの和食屋で語る大会愛【M-1メシ】

f:id:TEPPEI3:20201217190044j:plain

漫才頂上決戦「M-1グランプリ」。

2001年の開始以来、この賞レースに人生を左右された芸人は数知れない。チャンピオンという肩書を手にして売れっ子にのしあがっていく者、2位に甘んじながらもその後大きく開花する者、ファイナリストとなるもやがて解散の道を選ぶ者……悲喜が交錯する決勝のとき、その場に立つ芸人はいったい何を食べ、何を考えているのだろうか。

不安と緊張、そして終わったときにはとてつもない解放感が訪れるであろう数日間に食べたものの記憶は、M-1というドラマチックすぎる出来事と分かちがたく結びついているはずだ。

 

・・・

 

短期集中連載でお届けする本企画、第三弾はスピードワゴン・小沢一敬さん。

twitter.com

 

スピードワゴンは2002年、敗者復活戦を勝ち上がった。野外ステージで「出たくない!」と半泣きで抵抗する小沢さんの姿は現在でも語り草になっている。

そして乗り込んだ決勝では、50点という衝撃の点数をつけられた(100点満点中)。この点数は、現在までM-1史上最低点タイ記録を保持し続けている。翌2003年も決勝にコマを進めるも、6位に終わった。

 

それから時が経ち、近年の小沢さんは、芸人界の中でも屈指の漫才マニアとして知られるように。若手芸人をよく知る先輩として、各種番組などに呼ばれている。

そんな小沢さんにとってM-1とはどんなものなのか。18年前の決勝では、何を食べ、どんな酒を飲んだのか聞いてみたい——とインタビューを始めたところ、出てきたのは予想外の言葉だった。

 

「もうわからない、昔のことは。本当に覚えてないんだ」

f:id:misakisaitoh:20201216114425j:plain

▲訪れたのは、こぢんまりとしたビストロのような雰囲気ながら、土鍋ごはんや鮮魚が魅力の「IMA(居間)」

 

──今日はM-1にまつわる「食」の思い出を聞きたいんです。決勝前後で何を食べたとかどこで飲んだとか、覚えていることはありますか?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢さん(以下、小沢):僕ね、食事に興味がないんですよ。誰かとごはんを食べに行くことは多いけど、自分で「これが食べたい」って選んだことはない。
本音を言えばチェーン店でも、もっと言えば食パンでもなんでもいい。だから若い頃の食べ物の思い出というのはあんまりないかもしれないね。

 

──『M-1完全読本2001-2010』(ヨシモトブックス)のインタビューだと、2002年の敗者復活戦前夜はオールナイトでクラブで飲んでいた、と語られていました。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:クラブっていうかライブハウスだね。下北沢のCLUB QueかSHELTERのどっちかだと思うんだけど、朝まで遊んでたって感じかなぁ。

 

f:id:misakisaitoh:20201216114516j:plain

 

──「明日は敗者復活戦だから慎重に過ごそう」とは思わなかった?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:あぁ、全然。もともと決勝にいけるとは思ってもいなかったし。2001年にM-1が始まったとき、変な話、「勝つ人は決まってるんだろうな」って勝手に思ってたの。だから出なかったし、2002年も出たくなかったんだけど(井戸田)潤が「出たい」って言うから。
でもどうせ、大会が「何千組集まりました」って宣伝するための一組にカウントされるだけだろうなと思ってた。まぁ拗ねてたんだろうね。だからどっちでもよかった。
というか、俺、基本的に何に関してもどっちでもいいの

 

──勝ち上がってのぞんだ決勝では、立川談志さんから「俺、下ネタ嫌いなんだよ」と言われ、50点というM-1史に残る点数がつけられました。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:俺はすごい良かったなって今も思ってるよ。ずっとその話を振ってもらえるから。過去に50点が出たのは俺らとチュートリアルとおぎやはぎだけだからね。仕事でもなんでも、失敗したり傷つく瞬間はあるけど「半年後、1年後にはめちゃくちゃいいネタになるな」っていつも思ってるの。だから“どっちでもいい”んだよね。

 

──決勝の後は誰かと飲みに行ったりしましたか?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:打ち上げはあったような気がするけど、あんまり覚えてないなぁ。もうわからない、昔のことは。本当に覚えてないんだよ。

 

──今回は渋谷区・広尾の和食料理屋「IMA(居間)」にお邪魔していますが、M-1の後に来たということでもないんですね。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:M-1の思い出のあるお店なんて一個もないよ。ここは芸人たちと10人くらいで来たことがあるお店ってことで挙げたのかな。番組の打ち上げで来たりもしたね。
料理がめちゃくちゃうまいんだ。俺は自分でおいしいお店を探すことってないから、誰かにつれてきてもらったんだと思う。

 

f:id:misakisaitoh:20201216114536j:plain

▲ 小沢さん曰く「ここのは熱くておいしいんだよ」というポテトサラダ(920円)。たっぷりと入ったアボカドが、柔らかなポテトと溶け合う絶品

 

──徹底して食に興味がないんですね。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:「並んでまでご飯食べるな」って教えの家で育ったんだよね。そういうのもあって、ご飯に対してとやかく言いたくない。
だから俺、食レポがまったくできないんだ。「うまい」以外言いたくないから。昔、松本(人志)さんに「オザが一番おごり甲斐ないわ、絶対味わかってないやろ」って言われたことあるもん。

 

若手ライブでザ・クロマニヨンズみたいに在りたい 

──M-1に限らず、これまででいちばんお酒がおいしかった日、楽しかった日というのはありますか?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:基本、お酒って楽しいよ?

f:id:misakisaitoh:20201216114939j:plain
 

──はい(笑)。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:なんだろうなぁ。申し訳ないけど、どんどん忘れるようにしてるんだよね。昔はそういうことを覚えておきたいと思っていたけど、今はもう忘れていきたいというか。ごめんなさいね。

 

──いえ。なぜ忘れていきたいんですか?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:うーん、だって、そんなこと覚えてるメモリーがもったいないなと思って。

 

──それはもしかして、若手のネタをたくさん観ていることとつながる部分があるんでしょうか? もっと“今”のお笑いを観たい、知りたい、というような。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:いやぁ、そんな深い意味はないよ。でも同世代や先輩のネタも観るけど、若い子のネタ観るほうが好きかもしれないね。
今年は1回も出れてないけど、去年まではK-PROライブ(お笑いライブ制作会社K-PROが開催するライブ。若手が出演する興行を多数打っている)とかバティオス新宿区歌舞伎町にあるライブハウス。東京のお笑いライブの会場としてお馴染み/※当時の正式名称)とかも出てたから、観る機会が多かったんだよ。
自分たちの漫才ライブ(スピードワゴンが開く定例ライブ「東京センターマイク〜スピードワゴンと数組の漫才師〜」のこと)をやってて、ゲストを呼ぶこともあるし。そうだね……音楽は好き?

 

──はい。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:俺、ザ・クロマニヨンズってバンドがすごく好きで。野外フェスとか、大晦日にやってた「ROCK'N'ROLL BAND-STAND」ってイベント(中心メンバーの甲本ヒロトと真島昌利がTHE BLUE HEARTS時代に出演)とか、いろんなバンドが大勢集まるライブをずっと観てきてるの。
そういうところで、若いバンドはガーッてなってるのに対して歳を重ねたバンドはまったりした感じになりがちなんだけど、ザ・クロマニヨンズはまったくそうじゃない。いちばん若いんじゃないかな、ってくらいのライブをずっとやってるのね。

 

──たしかに、以前フェスで観たときにそれは感じました。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:俺らがそうだってわけじゃなくて、そういうふうに、若いやつらがやってるところにいってもやれるような人になりたい。そう思ってライブに出てる。
そこでいろんな若い友達──友達っていうとあっちは困るかもしれないけど、後輩の芸人さんを知っていって「今の若い子はこういう考え方なんだな」「俺らが若手の頃はこういうネタはつくらなかったなぁ」とかいろいろ思う。面白いよね。

 

f:id:misakisaitoh:20201216115155j:plain

▲撮影の合間、取材陣に「人がお笑いの話してるの好きなんだ、もっと聞かせて」とねだる小沢さん

 

──先輩・後輩というより、“仲間”に近い感じなんでしょうか。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:仲間なんて言えないけど……理想は友達になりたいんだ。俺は好きなやつと友達になりたい。いい友達を持つと、その友達にとって恥ずかしくない存在でいようとするから頑張れるのよ。だからいい友達がたくさん欲しいなって思ってるよ。
……M-1の話するのって、こんなトーンじゃないよね(笑)。ごめんね。寒いからね、今日。

 

「昔のM-1が良かった」なんて絶対思わない

──いえ、大丈夫です。毎年M-1の決勝はどう過ごしながら観てますか?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:うちに同期や後輩が10人くらい集まって、ごはん食べながらああでもないこうでもないって言いながら観てるかな。みんなM-1の決勝に行ったことあるようなメンバーだね。

 

──「ああでもないこうでもない」というのはどんな話を?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:「寿司食べた? まだ余ってるから食べな」「ピザもう1枚頼む?」とか(笑)。ネタに関しては何も言わないね。

 

f:id:misakisaitoh:20201216115329j:plain

 

──和気あいあいとした雰囲気なんですね。小沢さんは、2015年の復活以降のM-1という大会をどう見ていますか?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:すべての若き芸人さんのファンだ、とまで言っちゃうと嘘になるけど、ほとんどの若き芸人さんのファンなんだよね。だから、楽しいよ。毎年M-1の予選が始まると毎日楽しい。「GYAO!」とかでネタ動画観るのも好きだしね。
でも本音を言うと、「俺が9組選びたい」って思うね。俺の好きな9組のM-1が見れたらいいな、っていつも思ってるけど、まぁどうやらそういう世界線ではないらしい。いつかライブでもいいから、そういうことをやってみたいなって思うときはあるよね。

 

──スピードワゴンさんが出場していた頃と今の大会とでは、違っている部分もあるのかなと思います。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:そうだね、それは違うよね。言い方がすごい難しいんだけど……昔の決勝は審査員さんとか会場の雰囲気が、どちらかというとピリッとしてた。
一組終わるごとに、温まりかけた空気にジュッて水かけてリセットしてるって思ってた。だから中川家がトップバッターで優勝したみたいに、出番が前半でも勝つ組がいたんだと思う。
今は審査員がみんな現役のプロだから場を絶対に冷やさなくて、ひとつの番組として後半に行くにつれて良い空気になっていくよね。これは変な意味に取らないでほしいんだけど、漫才もバラエティも現役バリバリでやってる人たちって、つまり笑える時間が好きな人たちで、そういう審査員の「絶対に空気を良くしよう」っていう愛と優しさで成り立ってるんだよ。
俺が言いたいのは、今のほうがいいに決まってるってこと。「昔は良かった」なんて絶対思わない。

 

──若手芸人さんを取材していると「今のM-1はバラエティ色が強くて、子供の頃に憧れた大会とはちょっと違う気がする」というような声を聞くこともあります。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:言ってる意味はわかるけど、「じゃあ怪我するの怖くないの?」って言いたいよ。何人か大怪我してるんだからね、あの場で

 

f:id:misakisaitoh:20201216115446j:plain

 

テクニックなんか関係ない、面白ければいい

──初期M-1と今とで、最も大きく変わったのは結成年数の上限だと思います。以前は10年以内だったのが、再開後は15年以内に変更され、「漫才が“上手”な人が勝ち上がりやすくなった」という話も再開当初は耳にしました。この点はどう思いますか?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:それ、よく言うよね。俺はそれはあんまり言いたくないかな。たとえば俺らが上京してきた頃、おぎやはぎとかアンジャッシュ、アンタッチャブル、ドランクドラゴンとかバナナマンとか、俺らのちょっと先輩たちがみんなLa.mama渋谷区道玄坂にある老舗ライブハウス。渡辺正行氏が主催する「ラ・ママ新人コント大会」は若手の登竜門として有名)のオーディションにネタ見せ来てたのね。
200組くらい来て、受かるのが10組弱。今俺が名前をあげた先輩たち、オーディションで落ちたことなんかたぶん1回もなかったよ。もっと上の先輩も受けに来てた中で。
だから俺、年数重ねたら面白くなるなんてありえないと思ってる。年数とかテクニックなんか関係ないじゃん、っていつも思うね。実際、M-1ってテクニックじゃ上がれないのよ。面白いネタやれば上がれるんだよ。だから10年でも15年でも俺は関係ないと思うけどね。

 

f:id:misakisaitoh:20201216115554j:plain

 

──ちなみに、若手の方とライブで一緒になって「アドバイスください」とか言われることはありますか?

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:ないね。「どうせこの人、なんも言わねぇな」ってわかってるからじゃない?(笑) 好きにやったら? って思う。

 

“解説者”じゃなく“現役プレーヤー”のままでいたい

──一貫してますね。ここ数年、M-1の翌日に『スピードワゴンの月曜The NIGHT』(AbemaTV)にファイナリスト数組を招く企画をやってるじゃないですか。あの番組で小沢さんが「あのネタここが良かったね」「俺もああいうのやりたい」みたいに、すごくフラットに称賛しているところがいいなと思うんです。先輩・後輩というのではなくて、対等なプレーヤー同士として話している感じがして。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:へぇ〜、ラッキー。

 

f:id:misakisaitoh:20201216115817j:plain

▲好きな食べ物は「カレー、お好み焼き、ハンバーガーとスパゲティ。オムライスも好きかなぁ。あとチョコレートとアイスクリーム。子供なんだよね(笑)」とのこと

 

──でも一方で、それこそこのインタビューもそうですが、漫才やM-1、若手について語ってほしいとメディアから求められる場面も多いですよね。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:そうね……基本はあんまりこういう話はしたくないの。いつも本当に申し訳ない、って思ってる。
ブラマヨのよっさん(吉田敬)とか徳井(義実)君がこういうこと言ったら、M-1チャンピオンだから若い子は嬉しいと思う。俺らみたいなのに何か言われても嬉しくないだろうなって思いながらやってるよ。だから俺は、ネタのあそこがどうだとかアドバイスは言わない。言う立場じゃないから。

それに、「俺が笑いを分析します」みたいなのはみっともなくて嫌なんだ。お世話になった人とか友達とかに誘われたら断らないようにしてるけど……じゃあなんで今日ここに来たかっていうと、内容を昨日聞いたの(笑)。あ、ヤダってことじゃないよ! そうじゃなくて。ごめんね、今の言い方よくないね。

野球が好きなんだけど、野球の解説者って現役じゃない人でしょ。俺、解説者になっちゃったら終わりだなって思ってる。「ここはこういう入りだからこうなっていて〜〜だからこのコンビはすごい」みたいな、解説はしたくないの。
いちプレーヤーの目線というか、ファン目線というか、「こんなのつくれるんだ、すごいね」というのを言いたい。若手の頃、舞台の袖でほかのコンビのネタを見て、「すげぇ面白いネタやるじゃん」「今日のネタヤバくない?」みたいに言ってた、あのままでいたいんだ

……なんか今、俺一瞬ワーッてなったね。

 

f:id:misakisaitoh:20201216115901j:plain

 

──いえ、今日来てもらえてよかったな、と思いました(笑)。だからこそ、自分たちも漫才をずっとやり続けているんですね。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:でも今年は全然ネタつくってないしライブもやれてないから、やってるなんて言えないよ。恥ずかしい。合わす顔がない。
同期がいいメンバーなの。チュートとか次長課長とかブラマヨとか、野性爆弾とかタカトシとか。俺よく言うんだけど、芸能界って「(週刊少年)ジャンプ」だと思ってて。『ワンピース』とか『NARUTO』みたいに定期的に表紙を飾る人たちがいて、それが例えばダウンタウンやさんまさん、嵐だったりするわけね。
俺の同期たちも、表紙をバーンとやったりするじゃん。一方で俺らは、連載の後ろのほうの読者投稿ページで細々とやってる。だからこそ友達に対して「俺ら、今も漫才やってるんだ」って言いたいんじゃないかなって思うときはあるね。

 

──ザ・クロマニヨンズの話もありましたが、続けていることのかっこよさがあると思います。

 

f:id:exw_mesi:20201209024353p:plain小沢:「その年齢でまだ新ネタやってるんだ、えらいね」って言われたくてやってる部分もあるのかな。だから真逆だね、かっこわるいかも。褒められたくてやってんだ。

 

f:id:misakisaitoh:20201216120020j:plain

撮影:二瓶彩

 

プロフィール

スピードワゴン・小沢一敬(おざわ・かずひろ)
1973年生まれ、愛知県出身。1998年、スピードワゴンを結成。音楽をはじめ、カルチャーへの造詣の深さでも知られる。『前略、大とくさん』(中京テレビ)、『スピードワゴンの月曜The NIGHT』(AbemaTV)などレギュラー出演中。

 

お店情報

IMA(居間)

住所:東京渋谷区広尾5-25-4
電話:03-5791-1268
営業時間:月〜土:17:00〜22:00 ※2020年12月現在、短縮営業中。通常はAM2時まで。
定休日:日曜日・年末年始(12月31日〜1月3日)

www.salt-inc.co.jp

 

冷凍里芋で「里芋のポテトサラダ」。ポテサラというと普通はジャガイモですが、里芋のねっとり食感も美味しいんです【ツジメシの付箋レシピ】

f:id:tsujimeshi:20191023143150j:plain

こんにちは。プロダクトデザイナーときどき料理人、ツジメシこと辻村哲也です。

今回は、里芋を使ったポテトサラダを2種類ご紹介します。どちらも人の集まるところで出して評判だったレシピです。

ポテトサラダというと普通はジャガイモですが、里芋のねっとり食感も美味しいです。味と食感のアクセントに、別の食材を組み合わせるのがポイント。今回は、いぶりがっこ(燻製たくあん)の香りと食感を合わせるものと、焼いた塩サバの塩気と旨味、刻んだレンコンを合わせるものの2種類を作ってみます。

今回のレシピメモはこちら。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143213j:plain

 

ツジメシの「里芋といぶりがっこのポテトサラダ」

【材料】2~3人分

  • 冷凍里芋 200g
  • いぶりがっこ(たくあんでもOK、粗いみじん切り) 約大さじ1
  • 紫玉ねぎ(普通の玉ねぎでもOK、小さく切る) 約大さじ2
  • マヨネーズ 大さじ1
  • 豆乳 大さじ3
  • しょうゆ 2~3滴
  • 塩 適量

 

作り方

f:id:tsujimeshi:20191023143225j:plain

1. いぶりがっこは写真くらいに粗いみじん切りに、紫玉ねぎは2mm厚さにスライスしてから長さを1~2cmに切る。

普通の玉ねぎを使う場合は、辛みをとるのに軽く塩もみしてから水洗いして水気を切っておく。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143229j:plain

2. 冷凍里芋は耐熱容器に入れてラップをして、電子レンジ500wで約4分〜4分30秒、竹串がすっと通るまで加熱する。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143719j:plain

3. ボウルに里芋を入れ、フォークで粗くくずし、マヨネーズ、豆乳を混ぜ合わせる。粗熱が取れたら紫玉ねぎとしょうゆを入れて軽く混ぜ、味を見て塩で調整する。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143332j:plain

このいぶりがっこ入りのほうは、日本酒を飲む集まりのためのつまみに考えたものです。あっさりしつつも香りと食感にアクセントがあるので、お酒によく合います。いぶりがっこがなければ普通のたくあんでもできるので、家飲みのおともにぜひ作ってみてください。

 

ワインもいける「里芋と塩サバのポテトサラダ」

f:id:tsujimeshi:20191023143350j:plain

次は塩サバ入りです。レシピメモはこんな感じです。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143206j:plain

 

【材料】2~3人分

  • 冷凍里芋 200g
  • レンコン(粗いみじん切り) 大さじ2~3
  • 塩サバ(甘塩) 半身のさらに半分(70g)
  • オリーブオイル 小さじ1
  • にんにく 1かけ
  • ローズマリー(あれば生、ドライでも) 1枝
  • マヨネーズ 大さじ2
  • 塩 適量
  • 粗びき黒こしょう 適量

 

作り方

 

1. 洗いみじん切りにしたレンコンは、耐熱容器に入れてラップし電子レンジ500wで1分30秒加熱しておく。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143229j:plain

2. 冷凍里芋は耐熱容器に入れラップをして電子レンジ500wで約4分〜4分30秒、竹串がすっと通るまで加熱する。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143316j:plain

3. フライパンにオリーブオイルと包丁の背などででたたき潰したにんにく、ローズマリーを入れて中火で熱し、にんにくの香りが立ったら塩サバを入れて両面焼く。にんにくとローズマリーは焦げそうになったらサバの上にのせる。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143838j:plain

4. サバが焼けたらボウルに移し、皮と骨を取り除く。一緒に焼いたにんにくは粗みじんに切って加える。そこに1のレンコン、2の里芋、マヨネーズ、粗びき黒こしょうを入れて、里芋をフォークで粗くくずしながら全体を混ぜ合わせる。味を見て塩で調整する。

 

f:id:tsujimeshi:20191023143347j:plain

5. ローズマリーの葉を散らし、粗びき黒こしょうをかける。

 

塩サバの入りのこちらは、サバの塩味が効いたしっかり味で、ビールでも白ワインでも、焼酎もいけますよ。

里芋は、今回は手軽に作れるよう皮がむいてある冷凍のものを利用しました。冷凍ものではないほうがやはり味はしっかりしているので、生の里芋でもぜひ作ってみてください。

生の里芋は洗って皮をむいたら、加熱は電子レンジで大丈夫です。様子を見ながら竹串がスッと通るまで加熱して、あとは冷凍里芋と同様に使います。

 

【ポテトサラダが好き】ロシア発祥説から絶対行くべき厳選14店まで、約5000皿を食べ歩いたポテサラ男爵に聞いてみた

f:id:Meshi2_IB:20190527191753j:plain

ポテトサラダ、略して“ポテサラ”。

しっかり潰したジャガイモに、キュウリとニンジン、玉ネギ、ハムを加え、たっぷりのマヨネーズで和え、そして中濃ソースをかけていただく。これが子どもの頃、母が作ってくれたポテサラだった。

しかし大人になった今、居酒屋さんなどでポテサラを注文すると、ジャガイモの潰し具合、入っている具材、マヨネーズの量など、店によってまったく異なることに気が付いた。もしかしてポテサラって、奥が深いのでは……?

そんな疑問から生まれたのが今回の企画。ポテサラを研究しはじめて30年、食べたポテサラは5,000食以上。そんなポテサラの専門家(!)である“ポテサラ男爵”こと石橋清一さんに、ポテサラの世界について教えてもらった。 

話す人:ポテサラ男爵さん

ポテサラ男爵さん

本名:石橋清一さん。福島県生まれ。中学時代は調理クラブに加入。粉吹き芋を作った時に、たまたま顧問の先生が持ってきていたマヨネーズで和えたところ、なにか目覚めるものがあった。大学時代は居酒屋でアルバイトをし、ポテサラを仕込む担当に。以来、数々の飲食店で約5000皿のポテサラを食べ歩き、現在に至る。ちなみに実家のポテサラは、完全マッシュしたジャガイモに、具材はニンジン、玉ネギ、キュウリ、魚肉ソーセージという組み合わせ。

ブログ「ポテサラ、あるいはKOREA DAYS」

 

東は男爵×あらつぶし、西はメークイン×しっとり

──今日はよろしくお願いします。まさかポテサラ専門家の方が存在するとは思いませんでした……!

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plainポテサラ男爵さん(以下、男爵)子どもの頃からポテサラは好きでしたが、社会人になり飲む機会が増えてから、ポテサラの食べ歩きをするようになりました。とはいえ約30年前のことですから、今のようにインターネットが発達していません。だから口コミやタウン誌を読み漁るなどして、常に美味しいお店を探していました。今は、主にInstagramなどのSNSで情報収集していますよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528095529j:plain

 

──ポテサラは好物ではありますが、食べ歩くという発想がなかったです。食べ歩きをすると、ポテサラの地域性などわかるものなのでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:そうですね。自分が食べ歩いた感覚では、東日本や九州は男爵いもを使い、若干ジャガイモ感を残す「あらつぶし派」なのに対し、関西はメークインを使い、マッシュした「しっとり派」が多いですね。ただ入っている具材や味付けは、お店の業態やメインの料理に左右されます。

 

──なるほど、ポテサラにも地域性があるんですね。もしかしてトレンドなどもあったり?

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:ありますよ。最近は「進化系ポテサラ」と呼ばれるポテサラが出てきました(下記リンク参照)。ジャガイモではなく、さつまいもや里芋だったり。また具材は、燻製したベーコンやサバ、サーモン、チーズ、いぶりがっこなど香りや食感のアクセントになるものが流行っています。ゆで卵やフライドオニオンのトッピングも定番化してきましたが、ポテサラに入れ出したのも、ここ数年の話です。

www.hotpepper.jp

 

──あ! いぶりがっこのポテサラ、ついこのあいだ居酒屋で食べました。まさか流行だったとは。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:あとは、2種類のポテサラを合い盛りしたり、タワーやケーキ型のように成型したり(下記リンク参照)。そういった盛り付け方も流行っていますね。こうやってポテサラに脚光が当たり始めたのは、2011年に月刊誌「dancyu」が丸ごと一冊ポテサラ特集を組んだところからです。当時は2冊買って1冊は保存用、1冊はガイド兼勉強用として毎日カバンに入れて持ち歩いていました(笑)。

www.hotpepper.jp

 

──さ、さすがです。

 

ロシア発祥説が有力!? 

──そもそもポテサラって、どこの国の料理なのでしょうか。まさか日本が発祥?

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:ジャガイモ料理が多いドイツ発祥の説もありますが、有力なのはロシアですね。ロシアに「オリヴィエサラダ」というサラダがあり、マッシュしたジャガイモに鶏肉や卵、ピクルスなどが入っています。またロシアのスーパーには、ポテサラのようなサラダが充実していて、味的にもかなり近いことが分かっています。

tabi-labo.com

 

──意外な国名が出てきて驚きました。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:日本には明治時代の文献に、ビーツを使ったポテサラの記述が残っています。ただ根付いたのは戦後。キユーピーマヨネーズが家庭の調味料として定番化したあたりからです。

 

──マヨネーズが家庭で普及したことにより、ポテサラもよく食べられるようになったと。マヨネーズといえば、マカロニサラダもポテサラと似ていると思うのですが、マカロニサラダについてはどう思いますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:正直、マカロニサラダはサラダなのかな? と思ってしまいますね。マカロニはパスタの一種ですから。その意味では、ポテサラはジャガイモという野菜がメインですから、サラダであることはゆるぎないですよ。それに添え物としてだけでなく、主役にもなれるので、言ってみれば主役にも脇役にもなれるユーティリティープレイヤーなんじゃないかと。

 

──な、なるほど……。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:ただ最近はポテトサラダと合わせて「ポテマカ」を出すお店もかなり増えました。両方食べたいというニーズの反映でしょうね。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528091648j:plain

東京・代々木八幡「ウエトミ」で提供されているポテマカ(380円)

 

www.hotpepper.jp  

男爵厳選! これが今食べるべき14店のポテサラだ

──ポテサラ男爵のポテサラ愛に驚きながらも、お話を伺っていたら、無性にポテサラが食べたくなってきました。男爵のオススメ店を教えてください。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:はい。お店情報を聞かれるかと思いリストアップしてきました。今回は東京都内にしぼってご紹介できたらと思います。

 

池袋「やきとん木々家(はやしや)」

自家製ポテトサラダはマヨネーズをふんだんに使ったクリーミーなテクスチャーながら、黒コショウを効かせたスパイシーな味わい。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:まさに酒呑みのために作っているポテサラですね。ビールだけでなく、日本酒とも相性◎です。

www.hotpepper.jp

 

池袋ほか「大衆酒場ちばチャン」

ポテトサラダがなんと激安の一皿100円。安いのに美味しくてコスパ最高!

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:1人1個注文して「マイポテサラ」を心ゆくまでつまみましょう。

www.hotpepper.jp

※上記リンクは吉祥店のものです

 

渋谷「ヘイメル ミヤマス」

炙りポテトサラダはしっとりしたジャガイモに、刻んだ玉ネギとチーズを混ぜあわせ、表面をバーナーで炙った複雑な味わい。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:まさに、大人のポテサラですね。ワインとの相性が素晴らしい。

www.hemel-miyamasu.jp

 

④参宮橋「Bar Shanks(バーシャンクス)」

燻製したポテトチップスが入ったポテサラで、丸型に成形されている。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:スモーキーなポテトサラダはもちろん、こちらはハンバーガーもおすすめです。

www.hotpepper.jp

 

⑤荒木町「酒場のんき」

ポテサラは、ジャガイモをマッシュさせたしっとり系。マスカルポーネとスモークサーモンが入っており、呑兵衛にとってマストアイテムのひとつ。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:非の打ち所がないオツマミが揃っていて、必ずお腹をペコペコにして行く酒場のひとつ。ポテサラはチーズの香りが素晴らしく、ホッピーと合わせて食べるのが最高です。

www.hotpepper.jp

 

⑥新橋「駿(しゅん)」

こちらのハムカツポテトサラダサンドは、ハムカツの中身がポテトサラダという個性派メニュー。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:オーダーを受けてからポテサラを成形して揚げるので、サクっとしていて、ポテトもきれいに噛み切れるほど歯ごたえがあります。

potesalamylife.blog.fc2.com

 

新宿三丁目「鼎(かなえ)」

新宿の名店のひとつに数えられる、老舗居酒屋店のポテトサラダ。アイス型に成形されており、魚肉ソーセージが入っている。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:品切れすることも多いので、ポテサラを食べたければ18時までに入店することを推奨します!

www.hotpepper.jp

 

⑧新橋「もつ焼きカミヤ」

ポテサラ(カレー味)。カレーの味がしっかり染みついたポテトサラダで、中濃ソースをかけていただく。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:お店に箸がないので、注文して食べた串焼きの串を使って食べるんですが、それがなんともユニーク。もつ焼き屋さんらしい、パンチの効いた味わいですね。

www.hotpepper.jp

 

⑨自由が丘「Potato Cream (ポテトクリーム)」

ポテトサラダ専門店で、常時5種類のポテトサラダを用意。ミートソースやジェノベーゼを使うなど個性派揃いで、見た目はまるでスイーツのよう。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:全国でも珍しいポテサラ専門店です。イートインコーナーもあり、セットメニューだとバケットも付いてくるので、しっかり食事もできますよ。

www.hotpepper.jp

 

⑩中目黒「なかめのてっぺん本店」

海鮮炉端焼きをメインとする居酒屋店のポテサラは、鯖燻製と半熟玉子入り。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:燻製した魚の具が入ったポテサラはトレンドのひとつですが、ここのはとにかく日本酒や焼酎好きにおすすめしたい一品ですね。

www.hotpepper.jp

 

⑪板橋区大山「やきとんひなた」

大山の名物商店街ハッピーロードの入口近くにある、常に満席状態のやきとん店。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:オーソドックスなポテサラですが、私の場合は同時に「鶏レバーペースト バケット付き」を注文し、その鶏レバーパテとマーマレードジャムをのせて食べるんですが、これがまた絶品なんですよ。

www.hotpepper.jp

 

⑫銀座「ジャポネ」

東京・銀座にあるスパゲッティ専門店・こちらのサイドメニューとして、ポテサラが提供されている。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:甘みがあっておいしく、100円で気軽に頼めるので必ず注文したいメニューですね。

www.hotpepper.jp

 

⑬錦糸町「醸造科 oryzae(オリゼー)」

発酵食材をふんだんに使ったメニューが個性的。こちらの「酒盗のポテトサラダ 酒盗餡掛け」は、東京農業大学出身の店主が作る酒盗が入ったポテサラ。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:ほぼ酒盗ですね、こちらのポテサラは。木べらで崩しながら、ぬる燗でチビチビつまむのがたまりません。

www.hotpepper.jp

 

⑭亀戸「エチゴヤ」

なんとも珍しいポテトサラダ入りとんかつに出会える洋食店。

 

f:id:Meshi2_IB:20190528084404p:plain男爵:とんかつの中身はしっかり味がついたポテトサラダなんです。むろん、ご飯と一緒に食べても美味しいですよ。

www.hotpepper.jp

 

 

以上、圧巻のセレクションをお届けした。ポテサラのバリエーションの多さを知り、ポテサラ男爵のいう「ユーティリティープレイヤー」にも、妙に納得だ。

そしてポテサラ男爵にお会いしてから、居酒屋に行くたびにポテサラを注文するようになってしまった。たしかに燻製のベーコンやチーズ入りのポテサラ、タワー型に成形されたポテサラをよく見かける。そして食べてみると、どれもなかなかウマい。

 

……新しい世界の扉、開けちゃったかも。

 

待ちに待った新じゃがの季節なので、今すぐ食べたいポテサラレシピ3選

f:id:homare-temujin:20180221154056j:plain

こんにちは、有機野菜農家のホマレ姉さんです。

いよいよ待ちに待った新じゃがの季節となりましたが、皆さんもいろいろなじゃがいも料理を楽しみにしてるのではないでしょうか?

そこで、今日のレシピはみんなが大好きなポテトサラダです。

それぞれのご家庭には、きっと定番のポテサラがあると思いますが、今回は少し変わったポテサラレシピを3つご紹介!

でもその前に、ポテサラを作る上で一番大事なじゃがいものゆで方のポイントをまず押さえておきましょうね。

 

じゃがいもをゆでるときのコツ

f:id:homare-temujin:20160627160638j:plain

まずは、ポテサラに使用するじゃがいもの選び方ですが、ホクホクした食感のものが向いています。

品種で言えば男爵北あかりと言ったじゃがいもが一般的で、スーパーなどでも買えるのでオススメです。

 

f:id:homare-temujin:20180221123224j:plain

▲ホクホク系の品種を選ぶとよい

  1. 鍋に洗ったじゃがいもと水を入れ、強火にかける。

 

f:id:homare-temujin:20180221124513j:plain

▲強火にするのは湯が沸騰するまで

  1. 湯が沸いたら緩やかな沸騰が続く程度に火を弱める。

 

f:id:homare-temujin:20180221132638j:plain

▲熱いのでやけどに気をつけて!

  1. じゃがいもの中央に芯が残らず、竹串がスッと通るくらいになったらザルに上げ、熱いうちに皮をむく。

 

ポイント

  • 時間がない場合は、じゃがいもを皮ごと半分に切ってからゆでてもよいです。
  • 2.で沸騰が強すぎると外側だけが早くゆで上がり、皮が破れたり、芯が残ったりしますので、適切な火加減でゆっくりゆでるようにしましょう。
  • 皮をむくときに、じゃがいもの芽の部分も必ず取り除くようにします。

 

では、ポテサラレシピの本題といきましょうか!

 

これぞ和風のポテサラレシピ

f:id:homare-temujin:20180221140924j:plain

まずご紹介するのは和風ポテサラのレシピです。

何が和風なのか? って……それはなんと和の心、かつお節が入るポテサラなんです!

かつお節はご存じのようにうま味の塊のようなものですからおいしくなるのは容易にイメージできるのではないでしょうか?

日本人なら老若男女を問わず、きっと気に入ってくれる味だと思いますよ。

 

材料(4人分)

  • じゃがいも   220g(2個くらい)
  • 玉ねぎ   1/8個
  • マヨネーズ   大さじ2
  • 醤油   小さじ2
  • かつお節   5g

 

作り方

f:id:homare-temujin:20180221133315j:plain

▲空気にさらすことで辛味が飛ぶ

  1. 玉ねぎを薄切りにしてバットに広げ、空気に半日くらいさらしておく(時間が無いときは軽くレンジ加熱し、バットに広げて冷ます)。

 

f:id:homare-temujin:20180221133359j:plain

▲じゃがいものつぶし具合は好みで

  1. じゃがいもを皮ごとゆで、皮をむいてボウルの中でつぶす。

 

f:id:homare-temujin:20180221133731j:plain

▲かつお節 5gは、およそ一握りくらいの量

  1. 2.1.とマヨネーズ、かつお節、醤油を入れる。

 

f:id:homare-temujin:20180221135518j:plain

▲千切りキャベツなどを添えて栄養のバランスを考えよう!

  1. よく混ぜ合わせて器に盛り、千切りキャベツを添えてできあがり。

 

ちょっと大人のフルーツポテサラ

f:id:homare-temujin:20180221151853j:plain

きゅうりやにんじんなどの野菜と一緒にりんごを加えるポテサラを作るご家庭は、けっこうあると思います。

このポテサラにもりんごが入りますが、粒マスタードをピリッと効かせ、ちょっと大人向けの味つけになってるんです。

お酒のアテにもピッタリなんですけど、小さなお子さんがいる家庭では粒マスタードの量を少し控えめにしてみてくださいね。

 

材料(4人分)

  • じゃがいも   220g(2個くらい)
  • 玉ねぎ   1/8個
  • りんご   1/4個
  • 粒マスタード   小さじ1
  • マヨネーズ   大さじ2
  • レモン果汁   大さじ1弱
  • オリーブオイル   大さじ1弱
  • 塩   小さじ1/4
  • コショウ   少々

 

作り方

f:id:homare-temujin:20180221145039j:plain

▲りんごは流水でよく洗ってから切る

  1. 玉ねぎを薄切りにしてバットに広げて空気に半日くらいさらす(時間の無いときは軽くレンジ加熱し、バットに広げて冷ます)。りんごはよく洗って芯を取り除き、皮つきのまま食べやすい大きさの銀杏切りにする。

 

f:id:homare-temujin:20180221145746j:plain

▲つぶし具合は好みでよい

  1. じゃがいもを皮ごとゆで、皮をむいてボウルの中でつぶす。

 

f:id:homare-temujin:20180221150105j:plain

▲じゃがいもが熱いうちに下味をつける

  1. レモン果汁、オリーブオイル、塩、コショウを入れて混ぜ合わせる。

 

f:id:homare-temujin:20180221150235j:plain

 ▲りんごの赤が入ることで彩りもキレイに

  1. 3.1.の玉ねぎとりんごを入れる。

 

f:id:homare-temujin:20180221150731j:plain

▲マスタードの量は好みで増減してください

  1. マヨネーズとマスタードを加え、更に混ぜ合わせたら器に盛ってできあがり。

 

プチぜいたくしたいときにピッタリなポテサラ

f:id:homare-temujin:20180221144453j:plain

アボカドスモークサーモンが入った、ちょっとぜいたくなポテサラです。

とっても濃厚な味わいですが、一緒に入れるヨーグルトがしつこくなくまとめ上げてくれています。

見た目もとってもオシャレなので、パーティーなどでお客様がいらっしゃる時に作ってみてはいかがですか?

 

材料(4人分)

  • じゃがいも   220g(2個くらい)
  • スモークサーモン   80g
  • アボカド   1個
  • マヨネーズ   大さじ2
  • プレーンヨーグルト   大さじ2
  • 塩・コショウ   適量

 

作り方

f:id:homare-temujin:20180221142035j:plain

▲おいしいアボカドを選ぶのもポイント

  1. 皮ごとゆでたじゃがいもは、皮をむき1.5cm角に切り、皮をむいて種を取り除いたアボカドも同様に切る。サーモンは食べやすい大きさに切っておく。

 

f:id:homare-temujin:20180221142704j:plain

▲材料が全部入るように大きめのボウルを用意

  1. ボウルの中でマヨネーズ、ヨーグルト、塩、コショウを混ぜ合わせる。

 

f:id:homare-temujin:20180221142755j:plain

▲加える順番は決まりなし!

  1. 2.1.を加える。

 

f:id:homare-temujin:20180221142853j:plain

▲木べらやシリコンへらで混ぜるとよい

  1. よく混ぜ合わせたら器に盛る。

 

アボカドの選び方はホマレ姉さんの前回記事を参考にしてくださいね。

www.hotpepper.jp

 

§

 

3種類のポテサラレシピはいかがでしたでしょうか?

今回のレシピではすべてじゃがいもの皮をむきましたが、これから出回る新じゃがの場合は、わざと皮を残してみるのもまた風味が違って面白くなると思います。

ポテサラは、組み合わせ次第で無限に楽しめる料理なので、いろいろと試してみると面白いですね。

もし新しいポテサラを発見したら、是非ホマレ姉さんにも教えてくださいね!

 

ホマレ姉さんのレシピ本、好評発売中です!

ぜひお近くの書店等でお買い求めください。

Cool Veg 農家が提案する これからの野菜レシピ

Cool Veg 農家が提案する これからの野菜レシピ

  • 作者: ホマレ姉さん
  • 出版社/メーカー: 雷鳥社
  • 発売日: 2017/09/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

【馬場さんと食べたあの夕飯】“絶対王者”元プロレスラー小橋建太さんが語る【レスラーめし】

f:id:mesitsu:20180518112819j:plain

日々、リング上で熱い闘いを見せるプロレスラーたち。

その試合の基盤にあるのはタフな練習、そして “食事” だ。

その鍛えた身体を支えるための日々の食事はもちろん、レスラーを目指していた頃の思い出の味、若手の頃に朝早くから作ったちゃんこ、地方巡業や海外遠征での忘れられない味、仲間のレスラーたちと酌み交わした酒……。

プロレスラーの食事にはどこかロマンがある。

そんな食にまつわる話をさまざまなプロレスラーにうかがう連載企画「レスラーめし」。

 

その第一回に登場していただくのは小橋建太さん

全日本プロレス~プロレスリング・ノアに在籍し、周りがレスリングや相撲のエリート出身の選手の中で、その絶え間ない練習と熱い試合で心身を鍛え上げてトップの一角を担い続けました。

新時代を切り開く闘いを繰り広げた全日本時代、“絶対王者” と呼ばれたノア時代と、数々の名勝負を残しましたが、特にタッグを組んでも闘っても故・三沢光晴さんとの縁は深いものがありました。

また2006年には腎臓がんが見つかり、復帰困難と言われるも奇跡のカムバックを果たし、プロレスファンならずともかつてない感動を巻き起こしました。

2013年に現役引退後はプロデュース興行「Fortune Dream」を開催しつつ、がんやさまざまなけがを乗り越えた経験を元に、 “夢の実現” “命の大切さ” などの小橋さんらしい熱い思いとまっすぐなメッセージを、ファンに届け続けています。

 

学生時代、苦しい中で工夫してくれた母の手料理

f:id:Meshi2_IB:20170919124643j:plain

小橋さんの現役時代、レスラーとしてファンに強いイメージを与えたものというと、なんといってもその豪腕をはじめとした “筋肉” 。

さぞ食べて鍛えて生まれたであろうことは間違いありませんが、現役時代は食への関心は強い方だったのでしょうか?

 

小橋:いやあ、ぼくはグルメじゃないですよ(笑)。自分からいろんなお店を探して食べに行くってよりも、適当なところに入って、気に入ったら通うって方が多いですね。いまは子どももいるんで、そうなると行けるところも限られてくるんで、あんまり家族で外では食べなくなってたりしますね。周りにご迷惑かけるんで。

 

── では小橋さんの子どもの頃の話からうかがいたいんですが、ご出身は京都の福知山市ですよね。

 

小橋:そうですね。子どもの頃はそんなに裕福な家じゃなかったんです。父親と母親が物心ついた時には別居してて。それで母親と一緒に住んでいたんですけど、実家の方が米を作ってたんですよ。だからしっかり大きくなるように送ってくれたから、米だけは食べてましたね。

 

── 決してぜいたくではないけれども、お腹はお米でしっかりいっぱいに。

 

小橋:とにかくお腹がいっぱいになればいいっていうか、シャレたところに行くってのはなかったですね、子どものころから。京都だからってわけじゃないですけど、漬物だけでもご飯はおいしいですから。

 

── なるほど、京都といえば京漬物。

 

小橋:母も料理は好きなんで、工夫していろいろやってくれてましたね。なんでも創作で作ってくれるんですよ。その中でも……そうですね、クリームシチューとか、卵料理とか。クリームシチューは白くて市販のやつで、じゃがいもとたまねぎ、にんじんが入った普通のやつですけど、頑張って工夫してくれたんでしょうね。今も頭に残ってます。

 

── お母さんの手づくりシチューが一番の思い出なんですね。

 

小橋:でもそんな気軽にあれが食べたい、これが食べたいと選り好みが出来る環境ではなかったし、言えなかったですよ。母親が自分を食べさせるために、一生懸命頑張ってくれるんで、それを見ていると何も言えなかったですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20170919124712j:plain

── 小橋さんが子どもの頃はお父さんがいらっしゃらなかったということで、お母さんが昼に仕事に行って、帰ってきてからご飯作る、という感じですか?

 

小橋:そうです。ただ、母は夜ご飯作ってまたその晩、皿洗いに行っていたんですよ。福知山の田舎に当時数軒しかなかったファミレスがあったんです。そこで夜中働いて帰ってきて、また朝起きて朝飯作って仕事して、の繰り返しですね。

 

── お母さんすごいですね。子どもを育てるために夜中の仕事まで。

 

小橋:本当ですね。そういう姿を見ていると、あれ食べないとかこれ食べないとか言えないっていうか、残したりすると母親にものすごく申し訳ない。そういう思いはありました。お米とかを無駄にして食べちゃだめだ、ひとつぶひとつぶ食べようと。お皿をなめるじゃないですけど(笑)。

 

── そのお母さんの働いてたファミレスに行きたいって思いはなかったですか?

 

小橋:いやあ、行きたいってのはなかったですね。当時としてはまだファミレスって新しいものってのがあったんですよ、なんせ福知山ですから(笑)。それにお金がかかるから、ってイメージあったので、心配させちゃ悪いと常に思っていましたね。だからファミレスの他でも、外のお店で食べたとかの思い出もぜんぜんないです。別にそのことに対して不満もないですけどね。

 

── その当時、小橋さんはスポーツに励んでたそうですね。

 

小橋:はい。少年野球をやって、中学高校で柔道をやっていました。けっこうのめりこんでやっていたので、「遊びに行きたい」とか言うこともなかったですし、あんまり親に迷惑をかけることはなかったと思います。ただ、ご飯は食べましたね(笑)。食費はかかったと思います。

 

── 柔道部の高校生とか、丼めしでご飯食べてそうなイメージです。

 

小橋:練習でエネルギーを使うので、何杯も食べていたと思います。母親もおかずをいっぱい作ってくれてね。大変だったと思います。高校とか、朝は自主トレもあって本当腹減ってたんで、ふたつくらい弁当持って行ってたんですよ。

 

── 弁当ふたつも!

 

小橋:ひとつはもうほとんどお米だけで、梅干しひとつの日の丸弁当だったんですけどね。本当米だけでも食べられるのはありがたいことだなって思いますね。その頃はわからなかったんですけど。

 

── 今はお子さんもいらっしゃるから、当時の母親のことをまた違った目で見られるんじゃないですか。

 

小橋:そうですね、その頃はわからないんですよね。「食べることが出来るのは当たり前」って思っていたから。ですけど、自分が働くようになって、それが当たり前じゃなかったんだなーって思いますね。本当、余計に親への感謝の思いが強くなりました。

 

新弟子時代の思い出の味はポン酢で食べる豚の水炊き

f:id:Meshi2_IB:20170919124651j:plain

柔道に打ち込んだ高校時代を経て、京セラに就職した小橋さん。

しかしプロレスへの思いを断ち切れず、プロレスラーへの道を再び歩むことになります。

もちろん第一志望は大好きなジャイアント馬場さん率いる全日本プロレス。

しかし当時は今と比べて団体も少なく、入団するのも相当な苦労があったそうです。

 

── 小橋さんは一度社会人を経験して、それから憧れの全日本プロレスに入団ですね。でも入団決定まではかなり大変だったらしいですね。

 

小橋:プロレスラーになるという夢をかなえるために、やっぱり身体を作らなきゃいけない、ってことで、まず会社を辞めて2カ月か3カ月体を鍛える期間を作ったんです。その間お金は入らなくなるから、その間暮らすためのお金も貯金して。やっぱり「プロレスラーは大きくないと」っていうのが頭の中にあったんで、とにかく体を大きくしたかったんです。

 

── 今だったらジムやプロテインといった筋肉をつけるためにより良い施設や栄養を取る方法もありますけど、当時の小橋さんのトレーニングは?

 

小橋:もう運動してとにかく食べて睡眠をとって、でしたね。ランニングでは夕日に向かって走ってましたね、必ず(笑)。

 

── その頃から後の異名「熱き青春の握りこぶし」らしさがありますね(笑)。ご飯はやっぱり引き続き米を?

 

小橋:そうですね。特に体を鍛えるために何を食べる、という考えは当時はなかったです。プロテインなんかも当時もあったんだろうけど、まだ一般的には使っていなかったんじゃないかな。タンパク質が筋肉を作るから多く取って、とかそういう知識はわからなかったですね。それで105キロくらいまで大きくして、馬場さんが好きだったんで全日本プロレスに書類送ったんですけど、書類審査の時点でダメだったんです。

 

── そこまで鍛えて!

 

小橋:その頃は、全日本プロレスの方はスカウトで実績ある人間がほしかったんです。アマレスとか相撲とか。僕らみたいな実績のない入団希望の選手は、募集はしてもたぶん馬場さんのところまで話が通っていない。もう事務所の人が落としてるんですね。実績か、誰か紹介してくれる人がいないと。でもそこで諦めたらダメだって思って、今度は120キロまで増量して(笑)。それでなんとか通りました。今思うと体重はあんまり関係なかったんですけどね。練習がハードだったんで入団して、1カ月で90キロくらいまで落ちました(笑)。

 

── ちなみに会社を出て、どこに住んで体を鍛えていたんですか?

 

小橋:京セラの頃は寮だったんですけど、それから体を鍛えるために、その時母親が滋賀県にひとり暮らしをしていたので、そこに住ませてもらいました。でもちゃんと家賃も払って、食費も出して。

 

── そこは一人前になったからしっかりお金も払って。

 

小橋:そうですね、そこはこだわりを持っていましたね。母親が暮らしてる、いわば実家ですけど、息子だからといって居候して甘えちゃいかん! と思っていました。ただ、今当時の写真を見ると、ちょっとぽちゃっとしてて急激に太らせた感じはありましたね(笑)。

 

── でもそれで無事に全日本プロレスに合格したんですよね。

 

小橋:今思うと体格は関係なかったと思うんです。ただずっと後になって、自分が選ぶ立場になった時に「プロレスラーは実績じゃないんだ、本人のやる気があればいくらでも出来るんだ!」ってことを思っていたので、本人にやる気があればちゃんと見るようにしようということは、一番大事に思うようになりました。スカウトされても、そいつにやる気がなかったらどうしようもない。ぜんぜんダメですよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20170919124717j:plain

── それで全日本プロレスに入団された小橋さんですけど、まずはいわゆる新弟子生活ですか。

 

小橋:そうです。とにかく雑用がすごかった! 一番最初に起きて、合同練習の30分前には先輩たちを待っていないといけない。朝起きて道場を掃除して、次は買い出しに行くんです。それで練習後のちゃんこを作って、道場掃除をして、そこまで済ませて先輩たちを待たなきゃいけないんですね。

 

── 朝からそんな慌ただしいんですね。ご飯ももちろん小橋さんたちが作られるわけですよね。

 

小橋:そうです。同期の菊地さん(菊地毅)とか北原さん(北原光騎)とかと一緒に作っていましたね。もう野菜とか切ってバッと入れるだけの鍋ですけど。

 

── まさにプロレスラーのちゃんこ鍋。それまで小橋さんは自分で料理を作るってことは……?

 

小橋:いやあ、作らないです(笑)。今でもやらないですね。これまで料理に目覚めたことはなかったですね。

 

── じゃあ、ちゃんこ番はあんまり積極的じゃなかった?

 

小橋:そうですねえ、野菜切ったりはもちろんしてましたけど、味つけとかはぼくに任せると「何入れても大丈夫だろ」って感じになっちゃうんで(笑)。でも味つけにうるさい先輩もいて……。

 

── ちなみに味にうるさい先輩って?

 

小橋:いやあ、それは……。

 

── 誰かは言えないですか(笑)。では同期で料理が得意だった人は?

 

小橋:菊地さんが上手かったですね。ぼくはもう菊地さんが作ってる隣で「上手いですね~」って言ってる係(笑)。でも本当味つけとか上手かったんですよ。ぼくはいまだに不得意です。

 

── 菊地選手というのはちょっと意外です。

 

小橋:菊地さんは部屋を模様替えをしたりとか、細かいことが好きだったんですよ。「寝るところだけあればいい」というぼくとは正反対(笑)。

 

── ちなみに全日本プロレスのちゃんこって、どんな鍋を作ってたんですか。

 

小橋:スープがカレーとかキムチとか醤油ベース、あと卵とか何種類かあって、それを鶏とか豚とか肉を変える感じですね。ぼくが一番好きだったのは、もうシンプルに豚の水炊きみたいなのをポン酢で食べるのでしたね。なぜか豚の方が好きなんです。鶏もおいしいんですけど、今もおいしいってのが残っているのは豚なんですよね。

 

── 小橋さんは田上さん(田上明)と同期ですよね。元・力士の人ってちゃんこ鍋とか作るの上手いってイメージがあるんですが。

 

小橋:田上さんは……作るのは別にって感じでしたけどね。でも、自分で調理器具とか持ってきてましたね。肉をミンチにしてつみれにするみたいな機械。だから実は料理好きだったのかもしれない。練習は嫌いでしたけどね、練習嫌いの料理好き(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20170919124724j:plain

 

デビューの日、馬場さんに連れて行ってもらったレストラン

入団して間もなくして、憧れの馬場さんの付き人を担当することになった小橋さん。

ということは全国でおいしいものが食べられたんじゃ、と誰しも思うはず。

しかし、小橋さんにとって馬場さんの付き人時代は、また別の食の思い出がありました。

 

── それで新弟子時代、小橋さんはジャイアント馬場さんの付き人をされるんですよね。

 

小橋:そうです。

 

── だったら全国の支援者とのお付き合いも多いだろうし、さぞおいしいご飯が食べられたんじゃないかと思うんですけど……。

 

小橋:自分がデビューする前、馬場さんの付き人になったんですよ。それで普通だったら、おっしゃる通りで地方に行ったら試合の後、食事に連れて行ったりするんですけど、馬場さんはぼくをまったく連れて行ってくれなかったんですよ。

 

── え!? そうなんですか?

 

小橋:それどころか口も利いてくれなかった。

 

── えええ!? それは……なぜなんでしょう?

 

小橋:もともとぼくが付き人になった理由が、前に馬場さんの付き人になった方がいたんですけど、その人がちゃんと馬場さんの身の回りの世話をしないと。それで周りの人が「小橋、お前やれ!」って言って勝手に決めたんですよ。

 

── そんな決められ方もあるんですね。

 

小橋:でも馬場さんは前の付き人のことをすごいかわいがっていて、それなのにむりやり変えられたから、馬場さんも怒りをぶつけるところがないんで、ぼくにぶつけてくるんです。しばらく口も利いてくれなかったです。

 

── 馬場さんが好きで全日本プロレス入ったのに。

 

小橋:そうなんですよ。馬場さんが好きで入ったし、いちばん近くにいるのに口利いてくれたと思ったら「帰れ!」って言われて。

 

── 正直がっかりしなかったですか?

 

小橋:がっかりというよりも、「合宿所に入った以上は、辞めろと言われてもここからしがみついてでも残ってやる」って思いしかなかったです。だからがっかりという感じはなかったですね。「明日は口利いてもらおう」とか「次はご飯連れて行ってくれるだろう」とか。でもデビューまでぜんぜんしゃべってくれなかったですね。

 

── ということは、デビューでついにしゃべってくれたんですね、馬場さんが!

 

小橋:付き人になって3カ月か4カ月くらいしてデビューしたんです。その当時、大きいホテルの上にはだいたいレストランがあったんですけど、その時に初めて馬場さんに「ホテルの上で待ってるからな」って言われて。はじめてですよ。それで食事一緒に食べました。その時、馬場さんが言われた言葉が「よう頑張ったな」って。

 

── ついに!

 

小橋:これまでの溜まったものがスーッと消えましたね。

 

── このひとことを聞くために頑張ってきたんだと思えたんでしょうね。そのレストランで何を食べたか覚えてないですか。

 

小橋:いやあ、覚えてないです。初めて連れてこられたってのもあって。あと、それからはもう地方に行ったときはもう、馬場さんについていくようになりました。

 

f:id:Meshi2_IB:20170919124731j:plain

── やっと付き人らしい仕事が。

 

小橋:でも馬場さんって一緒に動く人が多いんですよ。奥さんとかマネージャーの方、あとスタッフの方もいらっしゃいますし。それでみんなで食べに行ったりすると、みんな少食だから「小橋! お前食べろ!」「食べて練習して寝ないとダメだ!」ってぼくにいろいろくれるんですよ。それで「はい! ありがとうございます!」って言ってぼくも調子のって食べるんですけど、あれはキツかったですね(笑)。

 

── おいしいものを楽しむ余裕もない。

 

小橋:そうでしたね。だから「当時、何おいしかったですか」って聞かれても、「あの一品がおいしかった」とかそういう記憶がないんですよ(笑)。あの頃は「食べるのも練習だ」ってよく言われてたんですけど、意味がわかりましたね。食べられることはありがたいことなんですけど。そういう意味ではいろんな経験させてもらいました。

 

── 付き人といってものんびりおいしいもの食べられるわけじゃないんですね……。

 

小橋:それで馬場さんがまたいろんなことをしてくるんですよ。馬場さんが「ステーキ食べよう」って言ってステーキ屋さんに入ったんですけど、「小橋どれにする?」って聞かれたら遠慮するじゃないですか。けっこうな値段もしますし。「じゃあ200グラムのこれで」とか言ったら「馬鹿野郎、そんなのじゃダメだ」ってお店の人に1ポンドのステーキを注文して、さらにいろいろ注文するわけですよ。

 

── 馬場さん自身も「食べろ食べろ」って感じなんですね。

 

小橋:しゃぶしゃぶに連れて行ってもらった時も、けっこう何回か肉をおかわりしたんですけど、会計する時に「この野郎、10万円も食いやがって!」って笑いながら言われたこともありましたね。

 

── 若いレスラーがガツガツ食べるところ見るのがうれしかったんでしょうね。

 

馬場さんも思わず「バカだなー」

小橋:あと、馬場さんから「バカだなー」って言われた思い出があって。金沢で輪島さん(輪島大士)の合宿をやったことがあるんですけど、馬場さんの付き人として自分も行ったんです。それで合宿練習が終わってお寿司屋さんに行くことになって、先輩たちは酒を飲みながら寿司食べてるし、相撲出身でエリートの田上さんとかは一緒になって寿司を食べてるわけです。入ってきたのはぼくより後なんですけど。だから田上さんが食べられるなら、ぼくも食べていいのかなって思ってたら、ぼくの注文の順番になって馬場さんに「お前は頼まんでいい!」って言われたんですよ。

 

── えー!

 

小橋:「お前はあの出前用のおひつでメシ食ってろ」って言われたんですよ。そしたら本当におひつに白ご飯、あとまかないの煮付けみたいなのがのってるだけ。それを「お前はこれ食え、寿司は食べんでいい!」って言われて。

 

── それは悔しいですね。先輩だけならまだしも、田上さんまで寿司を食べてるのに自分は食べれない。

 

小橋:でもそれがもう本当に悔しくって、全部食べました。それ見て馬場さんが「お前、本当に全部食ったのか!」って。びっくりされましたね、「バカだなー」って。

 

── アハハ、馬場さんなりのかわいがり方だったんですかね。

 

小橋:いやー、後から見たら笑える話ですけど、その当時は笑えないですよ。悔しくてしょうがなかった。でもその悔しさがそのあと自分を作っていってくれたんだと思う。その悔しさがなかったら、もしそこで輪島さんたちと寿司を食べていたら、その悔しさはなかったでしょう。それをバネにして頑張れたんだと思います。

 

f:id:Meshi2_IB:20170919124738j:plain

小橋:あと、もう一度馬場さんから「バカだなー」って言われたことがあって(笑)。

 

── 馬場さんもけっこういたずら好きですね(笑)。

 

小橋:地方に行けば行くほど、ホテルにレストランとかないから、試合後に食べる所を探さなきゃいけないんです。それである街で食事をしてお腹いっぱいになって、さあ帰ろうって時に馬場さんが急にポケット触りだして、2,000円をぼくに渡したんです。その目の前にラーメン屋さんがあったんですけど、そこ指さして「この2,000円分、ぜんぶ食べてこい、おつり残すな」って言ってくるんですよ。もうお腹いっぱいなのに。

 

── そんな無茶ぶりするんですね、馬場さんって(笑)。

 

小橋:「もう食べられません!」って言ったんですけど、お金もったいないじゃないですか。それに「馬鹿野郎、あんなんでお腹いっぱいとか一流の選手になれないぞ」って言われて、その「一流の選手になれない」って言葉がぼくに火つけたんですね(笑)。

 

── 小橋さんもあえてその誘いに乗りますね!

 

小橋:その2,000円を持ってラーメン屋さんに行って、とにかく一番高いラーメン……たぶんチャーシューメンかなんかを頼んで、あとは差額でジュースをずらっと並べて(笑)。食べたふりをすればいいんだけど、それはいやだったんですね。嘘をつきたくなかった。とにかく食べて流し込んで、おつりはほんとに何十円かって感じで。馬場さんに「ごちそうさまでした!」ってレシートと端数のおつりを渡したら「お前本当に食べたのか!」って笑ってましたね。その時も「バカだなー」って言われました(笑)。懐かしいなあ。

 

三沢さんとのお酒の思い出、そして腎臓がんとの闘いを支えた一皿

f:id:Meshi2_IB:20170919124657j:plain

エリートの中で囲まれてデビューした小橋さんですが、その持ち前の練習熱心さで頭角を現していきます。

特に故・三沢光晴さんとは「超世代軍」として選手が離脱した全日本プロレスの評判を取り戻すとともに、アジアタッグ選手権に世界タッグ王者といったタッグチームとして、そして好敵手として何度もぶつかり合う関係に。

 

── 付き人時代から選手としてデビューした小橋さんは、試合での活躍も増えていく中で三沢さんと一緒に動く期間が長くなっていったと思います。タッグや同じユニットの期間も多かったですし。

 

小橋:そうですね。三沢さんはお酒も長いというか、朝までコースですよね(笑)。お酒強要するタイプじゃないんですけど、「一緒に飲みましょうよ~」って。

 

── そもそも小橋さんってお酒は飲まれるんですか?

 

小橋:自分からはあんまり飲まないですけど、お酒の席になると楽しくなっちゃうんです。酔っ払ったら……キケンですよ(笑)。

 

── どういう方向で危険なんですか。

 

小橋:でも気づいたらベッドでひっくり返ってた、とかそういうタイプですね。記憶失っちゃうこともあったんですけど、三沢さんからは「小橋ぃ~、おまえすぐ酔っ払ったらさぁ、『一緒に行きましょうよ~』って言うんだよなあ」ってよく言われてましたね(笑)。やっぱり三沢さんは酒豪っていうか、勢いで飲むタイプじゃないんですけど、ちょいちょい口にしてずーっと飲んでる。

 

── 三沢さんも小橋さん同様グルメってタイプではなかったんですかね。

 

小橋:そうですね、そんなこだわりもって食べるって感じではなかったですね。味にこだわりを持ってるのは、川田さん(川田利明さん)とか。

 

── なるほど、今お店をやってるくらいですもんね。

 

小橋:人に飲ませるのも(川田さん)……(笑)。

 

── そうなんですね。

 

小橋:やっぱり、天龍さん(天龍源一郎)の流れを組むんですよね(笑)。一気飲みとか、合図したらもう飲まなきゃいけない。ぼくらが10杯一気してる間に、天龍さんは1杯一気する感じですよ(笑)。そんな感じでつぶされてましたね。川田さんとか、こういうグラスに焼酎いっぱいで一気するんです。水とか入ってないんですよ? ぼくらもしょうがないから飲んで。

 

── 天龍さんはイメージどおりですね! 飲む相手は変わっていった感じですか?

 

小橋:自分にも付き人がつくようになると、もう若いのとだけで行ったりするようになりましたね。でも三沢さんとは合いましたね。川田さんとは飲まなくなりました(笑)。やっぱり試合で向かい側に立つようになると、プライベートで一緒に行動することはなくなるんですよ。よく飲んでた三沢さんとも、やっぱり試合で頻繁に当たるようになったら、ご飯とか食べることはなくなりますよね。お祝い事の時とかくらいで。別に険悪でいがみあってるわけじゃないけど、試合見た人が、その後ぼくと三沢さんがご飯食べてるところ見たらしっくりこないと思うんです。僕らにとってもお客さんにとっても、やっぱりリング上でめらめら燃え上がるものをぶつけれるようにするのが一番大事なので。

 

f:id:Meshi2_IB:20170919124746j:plain

── その意識の高さもあって、小橋さんはノア時代に「絶対王者」と呼ばれるなど、試合内容も結果も素晴らしいものを残していきました。しかし、けがや病気との闘いもありました。

 

小橋:そうですね……。やっぱり腎臓がんが一番きつかったですね。腎臓ってたんぱく質が一番よくないんです。でもたんぱく質を取らないと、筋肉が作れない。だからスポーツ選手で腎臓がんになった人は、まず復帰できないんですよ。特にコンタクト系の選手は。ぼくも絶対だめだってさんざん言われました。

 

── お医者さんからはまず復帰は無理だと。

 

小橋:せめて一試合だけ復帰したいと思っていたんです。なんでかっていうと、「プロレスラーは怪物であれ」というのを馬場さんに言われていたんです。プロレスラーは怪物でないといけない、そしてリングを降りたら紳士であれ、という教育を受けてきたんです。そして腎臓がんから復帰したレスラーはいない。だったら、ここから復帰して試合出来たらそれは怪物じゃないか、という意味で一試合だけでもいいから復帰したかったんです。

 

── 馬場さんの教えを守るために。

 

小橋:だから手術して先生から診察受けるたびに「復帰していいですか」って聞いてたんですね。先生は「ダメですよ」って普通に返してたんですけど、3カ月くらいしたら「何言ってるんですか!」ってついに怒られて(笑)。すごい温厚な先生なんですけどね。でも怒られても聞かないといられない自分がいたんです。

 

── ただそう簡単にゴーサイン出せないくらい復帰困難な病気なんですね、レスラーにとって。

 

小橋:そうなんだと思います。それで手術から半年経った時に、ひさしぶりに挨拶にファンの前に立ったんです。12月の武道館でしたね。その10日後に検査があったんですけど、そこまで腎臓の数値は良くもなく悪くもなく、だったのが良くなってたんですよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20170919124800j:plain

小橋:それで先生に挨拶しにいって、また言ったんですよ。「先生、復帰していいですか?」って。そしたら「いいですよ」ってはじめてゴーサインもらって。「本当にいいんですか?」って聞いたら、「一緒に頑張りましょう」って言ってくれて、それからちょっとずつたんぱく質を増やしていって。

 

── やっぱりファンの前に立つのが一番の薬だったんですかね。とはいえ日常生活に戻るのならまだしも、プロレスの試合が出来るまでに筋肉を戻すのはかなり大変でしょう。

 

小橋:とにかく毎日体と心が葛藤する中、自分を上げていくのはキツかったですね。ドクターストップ寸前の時もありました。腎臓の数値って、ゆっくりじゃなくて急激に悪くなるらしいんです。だから「もうやめましょう」と言われたこともありましたし。自分も復帰するならみんなに祝福してほしいですから、どうしても無理なら諦めよう、と思っていました。無理に自分が出ていって、悪化したら先生たちの責任になるじゃないですか。そんなことはしたくない。そういうギリギリのところで復帰まで持っていけた感じです。

 

── その中で小橋さんを支えてくれたものって何でしょう?

 

小橋:その時の食生活を支えてくれた妻ですね。その当時はまだ結婚してなかったんですけど。食生活、それと心の部分を支えてくれました。

 

── そうなんですね。たんぱく質が取れないということで、食事は特殊になりますよね。

 

小橋:腎臓食ってのは本当にひどいもので、最初はわからなくて宅配の腎臓がんの患者用の食事を食べていたんです。

 

── 普通の食事とどう違うんですか。

 

小橋:どういうのかというと、たとえばエビフライをつまんで持ち上げると、衣がぽとん、と落ちて、鉛筆の芯みたいな海老がついてるんです。普通は海老が7割か8割じゃないですか。腎臓食は逆で、衣がほとんど。普通たんぱく質9で脂質が1ならもうそれが逆なんです。

 

── 身体のためとはいえ、せっかくの食でそれは気分が上がりませんね。

 

小橋:それを見て妻が「もうわたしが作る!」って言い出したんです。

 

── その頃の奥様の思い出の料理ってありますか?

 

小橋:ポテトサラダですね。ふつうのポテトサラダなんですけど、塩分少なめでたんぱく質も少なくしていろんな工夫をしてくれたのを思い出します。ぼくが食べやすいようにしてくれて……ありがたかったです。今も妻のご飯食べてますけど、ぼくの人生の中で忘れられないメニューですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20170919124807j:plain

「あまりグルメじゃないから!」と笑顔で断りながらも、生まれてからこれまでの食について語ってくれた小橋建太さん。

その中で印象的な食事としてあがったのが、母親のご飯と奥様のご飯、というのが小橋さんの飾らない性格そのままが出ているようで、納得させられました。

身近な人の気持ちの込められたご飯が一番おいしい。

そう受け止める真っ直ぐさこそ “絶対王者” の強さであり優しさだったのではないでしょうか。

 

※この記事は2017年10月の情報です。

 

小橋建太オフィシャルサイト:小橋建太 Fortune KK http://www.fortune-kk.com/

twitter.com

 

書いた人:大坪ケムタ

大坪ケムタ

日本全国どこに入っても手早く安心して食べれるチェーン店好き。特に茶色い食べ物と期間限定メニューには目がない。天丼はえび天よりかき揚げ派。普段はアイドル・芸能etcよろず請け負うフリーライター業。

過去記事も読む

常連になってしまう人が続出?噺家みたいな店主がいる居酒屋さんに行ってみた【大阪】

f:id:mesitsu_lc:20170831164637j:plain

どうも、こんにちは!ミステリーグルメが大好きなレポーターのハシモトです。

今回もまた、私が暮らす地元にある居酒屋さんをご紹介したいと思います! このお店は、多くの人がまた行きたくなる。常連になってしまう。そんな秘密の魅力を持っているそうなので、それについて調べてみました。

 

住宅街の一角にある、味わい深いお店「居酒屋あづまや」

こちらが今回、ご紹介するお店「居酒屋あづまや」の外観です。住宅街の一角で営業しており、この特徴的な大きな看板は道ゆく人の視線を釘付けにしてくれます。なんと、宣伝上手な店主さんなんでしょうか。

f:id:mesitsu_lc:20170831165052j:plain

なんとも古めかしい、趣が深い店構え。こだわり深い料理を出してくれそうな雰囲気が漂います。

 

そして、店内へ。

f:id:mesitsu_lc:20170831165326j:plain

カウンターのみ8席。目の前で調理した料理をパッと出してくれる、この距離感に親しみを感じます。

 

f:id:mesitsu_lc:20170831170835j:plain

そして、食材ケースを備えているのも、最近の居酒屋さんでは珍しいポイント。

 

f:id:mesitsu_lc:20170831170224j:plain

「その日、仕入れた食材をここに入れておくわけです。食材を見ておいしそうと感じて注文してもらう。それで食材ケースを使ってるんですが、まあ、そういうお客さんはいませんね(笑)」

 

乗っけから冗談を飛ばしてくるのが、店主さん。とにかく料理のおいしさや安さだけではなく、この店主さんが噺家のようで面白いことも大きな魅力のひとつなんです。とはいえ、恥かしがり屋の店主さんは残念ながら撮影はNG。文章で表現すると、見た目もやっぱり調理師というよりはなし家の方が近いかもしれません。

 

寿司店時代の技術を居酒屋メニューへ

カウンターの上部には、見慣れぬ蛇口があります。これは、なにかご存じでしょうか?

f:id:mesitsu_lc:20170831171040j:plain

これは、昔の寿司店に多くあった手洗い場。お寿司を手でつまんで食べるので、これで指先を洗っていたそう。ということは、ここはもともと……。店主さんにたずねてみました!

 

「そうですね。この場所で40年以上、寿司店をやっていたんですが、ほとんど一人で仕込みや調理や出前とやっていると、ものすごくカラダがしんどいんです。年齢も60歳を超えたんで、簡単な料理を出すお店にしたいと思って居酒屋さんにしたんですよ。ただただ、楽をしたかったワケちゃいますよ! ちゃんと、寿司店時代に培った技術は煮物や刺身なんかで活かしてますからね!」

 

なるほど! ということは「お寿司を出さない居酒屋さんですか?」とたずねてみると、

 

「それほど、手の込んだ料理はしてませんな!」

 

と、豪快に笑う店主さん。冗談好きな方なので、それが本当か嘘かわからない。そんな、楽しい会話もそこそこに、さっそくオススメのメニューを作っていただきました。

 

600円以下のメニューがズラリ

「うちはね一応、こういうメニューは並んでいます。でも、オススメはホワイトボードに書いてるメニューです。その季節の旬なものとか、そういうものばっかりなんで、そのときにしか食べられない料理を楽しめますよ」

 

こちらがメニュー。

f:id:mesitsu_lc:20170831172220j:plain

f:id:mesitsu_lc:20170831172346j:plain

f:id:mesitsu_lc:20170831172417j:plain

f:id:mesitsu_lc:20170831172436j:plain

ご覧の通り、金額はすべて600円以下! こんな安過ぎる居酒屋さんが今までにあったでしょうか?

 

そして、アルコールメニューもリーズナブル。生ビール、ハイボールが390円。焼酎(ロック、水割り、お湯割も)が350円。ソフトドリンクは250円。タイムセールではなく、通常営業でこの安さに驚きです。

 

そんなことを考えている間に、店主さんはカウンター横で黙々と調理をしながら、

f:id:mesitsu_lc:20170831173055j:plain

一気に4品のメニューを作ってくださいました。

 

それが、こちら。

f:id:mesitsu_lc:20170831173146j:plain

一品ずつ紹介していきましょう。

 

まずはこちらから。

f:id:mesitsu_lc:20170831173415j:plain

▲ホワイトボードメニューの「鰯煮」 280円

 

店主さん自ら仕入れた鰯(イワシ)をグツグツ3時間かけて煮込んで作ったメニュー。

f:id:mesitsu_lc:20170831173558j:plain

この肉厚感がたまりません! お酒でもご飯のお供にもオーケーな料理。

 

店主さんいわく、「骨まで食べれるんですよ。それくらい柔らかいんです!」ということで、まずはお箸で割ってみると……。

f:id:mesitsu_lc:20170831173709j:plain

店主さんのお話の通り、柔らかさは本物でした。

 

一口食べてみると、鰹節でしっかりとったという出汁の豊かな風味、そして上質な味わいが口いっぱいに広がります。コクのおいしさは大人向けの味でしょう。

 

f:id:mesitsu_lc:20170831174121j:plain

▲「ポテトサラダ」 280円

 

「特別な調理はなにもしていない」という店主さんの話が信じられないくらい、家庭の味とは明らかにちがうおいしさを堪能できます。具材は、じゃがいも、きゅうり、にんじん、たまねぎ、卵と一般的。それが、しっかり混ざっているのではなく、ほどよく良い加減に混ざっているので、口の中ではじめてマッチしていくのが、これほどおいしいのかと驚くこと間違いなしです。

 

f:id:mesitsu_lc:20170831174551j:plain

▲「小松菜の煮付け」 280円

 

これは、寿司店時代にもサイドメニューとして作っていたという一品で、お酒の肴というより前菜。あっさりとした出汁の味わいがおいしさを引き立ててくれます。

 

そして最後に。

f:id:mesitsu_lc:20170831174812j:plain

▲「焼きそば」 400円

 

「これが年齢に関係なく、お客さんの多くが注文するメニューです。牛肉、キャベツ、玉ねぎ。味付けは、ソースと塩こしょう。オーソドックスな味はお酒によく合いますし、なにより常連さんやったら麺の量を2倍とかにしてあげるんです。たまに、若い人でお腹減ってそうかなと思うと2倍にしてあげますね。やっぱり、『もうけ』より喜んでもらう方がうれしいですから。だから、あんまり儲かっていないとも思うんですが(笑)」

 

たしかに、量が多い! 具材も大きい! これだけでお腹がいっぱいになりそうです。

 

f:id:mesitsu_lc:20170831175727j:plain

味は想像通り。関西人ならご飯といっしょに食べたいと思うし、酒飲みならお酒の肴にもなりそうなスタンダードなおいしさ。シンプルな味付けと具材で、これだけおいしく仕上げるのが、料理人である技なのでしょう。

 

お持ち帰り用にもらった、「チキンカツ」 600円

ここまでお話を聞いたところで、お客さんがやってきて取材終了。慌てて、帰り支度をしていると、ものの数分でなにかをパック詰めしている店主さん。

 

「これ持って帰って食べや! このチキンカツもうちのお店では人気メニュー。一回、食べてみて!」

 

ということで、自宅に持ち帰ってパックを開いてみると、

f:id:mesitsu_lc:20170831180231j:plain

このチキンカツも見た目はシンプル。この一枚ずつきれいにまとった衣と、揚げ色は、食欲をそそられます!

 

f:id:mesitsu_lc:20170831180511j:plain

やはり、一品ずつ手作りしたメニューだけあって、繊細な味付けが特徴。濃すぎず、薄すぎず、ソースがなくてもご飯のおかずに、お酒の肴にピッタリな味でした。

 

ちなみに、お店で作ってもらったメニューの合計金額は4品で1,240円。チキンカツを合わせると1,840円。2,000円以下で、ちゃんと店内で調理した料理をお腹いっぱい食べられる「居酒屋あづまや」。そして、調理は手早く、店主さんのトークも面白い。そんな「安い! うまい! 面白い!」の三拍子がそろっているからこそ、お客さんはこのお店の魅力にハマってしまい、気づけば常連になってしまうのでしょう。

 

お店情報

居酒屋あづまや

住所:大阪府堺市北区東浅香山町1-145
電話番号:072-252-1675
営業時間:12:00~22:00
定休日:日曜日
Twitter:https://twitter.com/azumayaasaka

 

※この記事は2017年8月の情報です。
※金額はすべて消費税込です。

 

書いた人:ハシモトアカネ

ハシモトアカネ

大阪在住の覆面ライター。たけし軍団への入団を断られて以来、まっとうな仕事に就くことなく売文業一直線。WEBや雑誌の編集をやりながら、ペンネームで各媒体に原稿を書き続ける日々。

過去記事も読む

ほおばりながらハイボールをグイ! 西の主夫代表 かめきちパパの「牛肉入りポテトサラダ」

f:id:kamekichipapa:20161212162611j:plain

まさかのマヨネーズなし!? がっつり系「男のポテトサラダ」

子どもから大人までみんなが好きなんちゃうかな、ポテトサラダって。入れる材料によって味もいろいろと楽しめます。今回は、ちょっとぜいたくながっつり系ポテトサラダ!

牛肉を使い、味付けはマヨネーズではなくヨーグルトと塩、黒胡椒、粒マスタードと大人の味でいただきます。メインが肉料理のときは少し肉を少な目にしたり…… といろいろ楽しめますよ!

 

かめきちパパの「牛肉入りポテトサラダ」

【材料】(2人分)

  • じゃがいも(メークイン) 3個(200g)
  • 牛肉切り落とし 100g
  • 玉ねぎ 1/4個
  • バター 20g
  • 塩 少々
  • 黒胡椒、乾燥パセリ 各適量
  • ヨーグルト 大さじ1
  • 粒マスタード、砂糖 各小さじ1

 

作り方

f:id:kamekichipapa:20161212162614j:plain

1. 皮をむいてひと口大に切ったじゃがいもを耐熱皿に入れ、ラップをして、800wのレンジで3分前後加熱します。串を刺してスッと通る程度が目安です。取りだしたらマッシャー(木べらや金属製のスプーンでもOK)で粗くつぶします。

 

f:id:kamekichipapa:20161212162757j:plain

2. 玉ねぎは薄切りにして、牛肉は食べやすい大きさに切ります。

 

f:id:kamekichipapa:20161212162623j:plain

3. 熱したフライパンにバターを溶かして牛肉と玉ねぎを中火で炒めます。火が通ったら1に入れざっくりと混ぜて、塩、黒胡椒、ヨーグルト、粒マスタード、砂糖を加えて再びざっくりと混ぜます。器に盛ってパセリを振りかけて出来上がりです!

 

ポテトサラダを食べながら、白ワインもハイボールも!

f:id:kamekichipapa:20161212162626j:plain

じゃがいもはしっかりと水分を切り荒くつぶすのがポイント! お好みで男爵を使ってもOKです。どうしてもマヨネーズがないと物足りない人、しゃあないからマヨネーズをつけながら食べてもええよ~。

ポテトサラダは大口開けてほおばらなあかん! そこにハイボールをグイっていうのが醍醐味ですよ!

 

トップに戻る